種清豊のフォトコラムコラム・ギャラリー
2011.11.18【Vol.038】
現在のカメラにおいてピント合わせの行為はカメラ、レンズが自動的に行ってくれます。撮影者自身はシャッターボタンを半分押すという作業でピント調節を行っているわけです。
昔はレンズ鏡筒を回したり、レンズ前端を回したりして焦点を調節し、レンズ自体の動きとしても前玉繰り出し方式、全体移動式などいろいろな方法がとられていました。双方とも、機械的な構造はそこまで難しくなく、とくに全体移動式は歴史的に最も古い合焦方式です。前玉繰り出し方式、全体移動式ともに廉価版から中級機種と単焦点、ズームと幅広く使われた方式です。
ただ、現在のような角型フードや花形フードを使うとレンズの動きに併せてフードが回転してしまったり、PLフィルターの使用もややこしくなってしまいます。また、レンズ長が変化したり、望遠レンズの場合、一周以上もピントリングを操作しないといけないなんてこともありました。ただ、それら古典的なタイプのレンズも、約30年前から進化し続けるオートフォーカス化の流れの中少なくなり、それらの欠点をカバーしたインナーフォーカスタイプ(IF)のピント調節方法が増えてきました。歴史的にみれば1976年のモントリオールオリンピックのときに使われた超望遠レンズに搭載されたのが初めと意外と古い歴史を持っています。
最近のレンズに多数採用されているインナーフォーカスは、AFの静粛性、高速化が鏡筒繰り出し式に比べ高く、また、ワーキングディスタンスの変化も見られないため、扱いが非常に楽になります。特に望遠レンズの小型化が可能になり、また、マクロレンズ、ズームレンズにも採用されています。
先に述べたように、フードの形状にも左右されず、標準ズームレンズで効果の得られる花形フードが使用できたりと、レンズ前端の動きに影響されることがなくなります。また、レンズ自体の耐久性、コンパクト化にも貢献してくれます。
細かい話ですが、レンズのカタログを見たり、もしくは店頭でレンズを触った際に、レンズの動き方でフォーカス方式は大体わかります。もう一つリアフォーカス方式(RF)もあるのですが、インナーフォーカス同様、前玉固定のメリットがあり、インナーフォーカスと同じく超望遠レンズ、望遠レンズに採用されることが多いようです。
ただ、インナーフォーカスをズームレンズに採用した場合ズーミングによるピントずれが起こってしまう欠点があります。そのため焦点位置の補正を行う機構を搭載したりと構造が複雑になっています。