種清豊のフォトコラムコラム・ギャラリー
2012.03.16【Vol.055】
ご存知の方も多いかと思いますが、多重露光(撮影)とは、ひとつの画像上(コマ)に2つ以上の別カットを重ね合わせて撮影する方法です。合成のようにも見えますが、別々に撮影した画像を後処理(カメラの中以外)で重ね合わせるわけではないので合成と一緒にはされていないようです。
標準撮影
多重露光(ピントをずらして露光)
古くは重ね撮りなどと呼ばれたようですが、本来であれば、ひとつの画像(コマ)に違う画像が重なりあってしまうというのはカメラの不具合など、失敗写真として定義されます。しかしそれを逆手にとって、一枚よりも一層効果的な作品作りを行うために古くから行われてきた技法が多重露光になります。フィルムカメラでは多重露光専用の機能が付いたものが多かったのですが、ようやく最近のデジタルカメラにも機能が付いたものを見かけるようになりました。
多重露光で有名なものに花火の撮影が挙げられますが、原理は簡単でシャッターをBulb(バルブ:レリーズ中はシャッターが開放されたまま)などにして花火が上がるたびにタイミングを見て露光を繰り返すだけです。花火が上がっていない状態など、露光しないときは、うちわや、レンズフィルター径より一回り大きい缶のふたなどで光を遮ればOKです。他にはピント位置を変えて同一被写体を撮影するパターンなども一般的です。撮影方法は花火と同じ要領で、ピントの合った状態とわざとピントをずらした状態の2カット撮影すればOKです。ピントを変更する操作のときに光を遮るわけです。
多重露光の注意点は、重ねる回数を多くすればするほど初めに露光したカットから露出がオーバーになっていくということです。ただし、露出を露光回数に応じた修正値に基づいて撮影してくれるデジタルカメラもありますので、それらを使用すれば撮影者自身の操作面における負担はほとんどなくなりました。
また室内など低照度で撮影する場合、三脚、レリーズなどカメラが安定した状態で撮影されることが望ましいでしょう。