【レビュー】iPhone 11 Proの写真性能が分かる3つのポイント|三井公一
はじめに
毎秋恒例、アップルの新しいiPhoneが登場した。2019年は2眼カメラ搭載、6.1インチディスプレイの「iPhone 11」、5.8インチディスプレイの「iPhone 11 Pro」、6.5インチディスプレイの「iPhone 11 Pro Max」シリーズの3本立てとなった。「Pro」と銘打つシリーズは3眼カメラ搭載となり夜間撮影にも強くなったが、カメラ性能で先行していると言えるAndroid機にどのくらい対抗できるのかが注目である。今回は「iPhone 11 Pro」のカメラ性能をインプレッションしてみよう。
3つのポイント~3眼カメラ~
キモは3点である。
- 3眼カメラ(特に超広角)
- 新搭載のナイトモード
- ポートレートモードの進化
■再開発真っ只中の渋谷駅前を広角カメラで撮影。新しく建ったビルの窓ガラスなど、ディテールもしっかりとしており、曇天の空気感もうまく写し捉えている
■望遠カメラでビルをクローズアップ。フルサイズ換算52mm相当なのでデジカメで言うと標準レンズとほぼ同じ画角だ。iPhoneらしい安定感のある仕上がりだ
■フルサイズ換算13mm相当の超広角カメラに切り替えると、フレーム内に駅前の全景が入ってしまうほどである。周辺部の描写が甘いがこれは仕方ないだろう
「iPhone 11 Pro」最大の特徴は何といっても3眼カメラを搭載したことだろう。Android機はすでに3眼カメラは珍しいものではなくなっているが、それにようやくアップルが追いついた格好となった。
3つのカメラはそれぞれ、フルサイズ換算13mm(アップルは13mmと言っているが Exif だと実は14mm相当)F2.4の超広角、フルサイズ換算26mm F1.8の広角、フルサイズ換算52mm F2.0の望遠となっている。画素数は全て1200万画素だ。各カメラの切り替えはディスプレイ上に現れるアイコンをタップして行える。
またその部分を指先でスライドさせることによって連続して切り替えが可能だ。0.5倍の超広角から最大10倍のデジタルズーム域まで一気に撮影範囲を変更できる。
・超広角カメラ
■新宿副都心のビル群を超広角カメラで見上げてみた。高層ビルをドーンと迫力満点に捉えられた。画面上の「0.5x」というアイコンをタップすれば誰でもカンタンに撮影できるのがうれしい
■同じく超広角カメラで新宿・歌舞伎町の入り口から中心部を狙ってみた。ビルの直線は真っ直ぐと描かれ、大胆なパースとともにウルトラワイドの世界を堪能できた。発色はやや派手めでコッテリとした印象を受ける
■フルサイズ換算13mm相当の超広角カメラは街中のスナップで面白い効果を見せてくれる。人物を効果的に配置すれば引きのない路地でもドラマチックなシーンに見えてくる。残念なのは超広角カメラではナイトモードが効かないところか。
■渋谷ハチ公前交差点をスナップ。フルサイズ換算13mm相当の画角はスッポリと渋谷駅前を飲み込んで写し出す。風景やスナップ、旅行にもってこいの焦点距離だろう。屋外から室内まで有効に使えそうだ
■カメラのキタムラ「東京・玉川高島屋店」が入る玉川高島屋SCに飾られているオブジェを超広角カメラで。他の人々は離れた場所から撮影しないと全景が入らないのに対し、iPhone 11 Proなら楽々その姿を写すことが可能だった
3つのポイント~新搭載のナイトモード~
暗所が不得意だったiPhoneシリーズだが、それを克服すべくようやく「ナイトモード」が搭載された。これは1回のシャッターで複数の写真を自動的に撮影し画像を合成、ノイズを低減して明るい写真に仕上げてくれるモードだ。
被写体が暗いとディスプレイ上に月のアイコンが表示される。これがナイトモードの目印だ。月アイコン横の秒数だけiPhoneを保持していると撮影が終了する。
そのカットはiPhoneで撮ったとは思えないほど明るく低ノイズな写真が撮影できてビックリするはずだ。このモードが可能なのは広角カメラと望遠カメラに限定される。
なお月アイコンをタップして露光時間を調整することも可能だ。
■ライトアップされた東京都庁をナイトモードで。暗い場合自動的にこのモードに切り替わる。あとは手ブレさせないようにホールドすれば美しい写真を撮影可能だ。通常モードよりディテールがしっかりとし、空も明るく描写された
■肉眼ではほぼ真っ暗に見える路地にiPhone 11 Proを向けてシャッターを切った。驚くことに建物や路地の様子がクッキリと浮かび上がった。今までiPhoneでの夜間撮影で苦労したのがウソのような写りである。ようやくGoogle Pixel 3シリーズに追いついた印象だ
■こちらもほぼ真っ暗な駐車場にレンズを向けたカットだ。しっかりと暗部を明るく写しとり、ヒトの見た目以上の情報を得ることができた。「暗所に弱いiPhone」というイメージは過去のものになった
■競技場を撮ったが空にはしっかりと星が写っているのがわかる。光害がなく空気が澄んだ高所ではもっと星が写ることだろう。ナイトモードでは強烈な点光源に注意が必要だ。盛大なフレアやゴーストの発生が出ないようフレーミングに気をつけたい
■iPhone 11 Pro(左)とGoogle Pixel3(右)のナイトモード比較画像。iPhoneは夜とは思えない明るさで写してくれており、相当暗い撮影にも対応する姿勢を見せているように見受けられる。
3つのポイント~ポートレートモードの進化~
背景を一眼カメラのように大きくぼかせる機能「ポートレートモード」もアップデート。望遠カメラだけでなく広角カメラでもそれを味わえるようになったのだ。これによって明るいF値を持つ広角レンズで撮影したような写真を簡単に撮ることができるように進化した。
ディスプレイ上のアイコンをタップすると望遠カメラから広角カメラに変更できる。ただしあまり近すぎたり遠すぎたりするとこのモードが有効にならないのは今までのとおり。撮影時には注意したい。
被写体とぼかしたい背景の境目がシチュエーションによって曖昧になるのは相変わらずなのでこちらも撮影時に気を配ることが求められる。ボケ量は撮影時、または撮影後にカメラロールの編集でF値を変えることによってコントロール可能だ。効果「ポートレートライティング」に追加された「ハイキー照明(モノ)」も撮影時もしくは撮影後に適用できる。
■iPhone 7 Plusから搭載されたポートレートモード。背景をソフトウェアの力でぼかす機能だが、相変わらず被写体を背景の境界部分は弱点のようで、うまく輪郭を処理できていない。アクビをするネコのヒゲ、ミミの先端が背景に溶け込んでしまっている
■これまでは望遠カメラでしかポートレートモードを使うことができなかったが、広角カメラでも背景をぼかすことが可能になった。撮影時、もしくは撮影後カメラロールからF値を変更してボケ量を調整できるのも前モデル同様だ。こちらも残念ながらネコのミミ先端部が背景に溶け込んでしまっている。アップルのポートレートモードは近すぎても遠すぎてもダメなので、広角カメラだと小さな被写体はシンドイかもしれない
■新しいポートレートライティング「ハイキー照明(モノ)」は白バックで撮影したような印象の写真が撮れる。プロフィールや証明写真でも使えそうな仕上がりになる。ジャケ写のようなイメージが楽しい
最後に
「iPhone 11 Pro」のカメラ機能はこのように先行するAndroid機にようやく追いついた印象だ。歓迎したいのはやはり「ナイトモード」機能だろうか。今まで躊躇していた暗い風景や室内でもクリーンで明るい写真を撮ることができるからだ。三脚いらずの暗所撮影ができる魅力は驚きが大きい。
また新搭載の超広角カメラも面白い。iPhoneと比較するとデジタル一眼カメラの超広角レンズは大きく重たいし、しかも一般的に使用頻度は低いだろう。それをこの「iPhone 11 Pro」で代用できるのは大きいだろう。フルサイズ換算13mmという広大な画角をうまく使えるかはフォトグラファーのセンスに頼る部分も大きいが、スマートフォンの盟主であるiPhoneにこの画角が搭載されたことは興味深い。
今後アップデートで搭載される「Deep Fusion」機能にも注目したい。
最大9カットもの写真をニューラルエンジンで解析し、高精細でノイズが少ない1枚を仕上げてくれるというもの。デジタルカメラのハイレゾショットのようなイメージだが、手軽に高品位のカットを撮れるようになるらしいので期待しよう。
このように「iPhone 11 Pro」は写真、カメラファンが使ってもの楽しめる端末になっている。ぜひ実機をカメラのキタムラ店頭で手に取って試して欲しい。