初春の花の撮り方 | 柔らかく優しいイメージで撮る
はじめに
季節は間もなく春になります。春と言えば花。その中でも初春に咲く花は、形やサイズ、そして色が可愛いものがたくさんあります。他の時期の花よりも、柔らかく優しいイメージで撮りやすいです。そのイメージで撮りやすい中望遠単焦点、135mmのF値開放で撮った作例をメインに、初春の花の撮り方をご紹介致します。
河津桜を撮る
濃いピンクがとても可愛く、春の訪れを真っ先に告げる河津桜。今年は暖冬の影響でしょうか、例年よりも河津桜が見頃の場所が多いと感じます。桜、というとソメイヨシノがポピュラーではありますが、近年はソメイヨシノと同じくらい人気があるように思います。
まずはそんな河津桜の撮り方をお話させていただきます。
満開の河津桜の中で見つけたお気に入りの一輪
満開の時に一輪のみを撮るのは、普通に撮るよりも難易度は高いです。まず探し方ですが、花は目で探すよりもライブビューで探すのがおすすめで、可動式のものだと尚良いと思います。
勿論撮る時もライブビューがおすすめです。ライブビューで探して撮るのがおすすめの理由は、背の低い花も高い花もライブビューだと高さを合わせやすいためです。目線を上下に動かすより、手持ちのカメラを動かして、どのように映るか確認する方が素早く、沢山構図を確認することができます。
そして目で花を探してから撮るよりも、ライブビューで探して撮る方が、動作が一貫していてテンポ良く撮影を進めることができます。狙う花ですが、なるべく密集していない部分の、孤立している花を選びます。ピントが合っている花を一輪だけにして、主役を際立たせるためです。枝の先端付近の花を狙うと、枝は花の後ろに写るので目立ちづらくなります。そして手前の花を前ボケにして、枝やその他の花を前ボケで隠すことで、より一層主役が浮き出てきます。
一房を狙って河津桜を撮る
次は、一房を狙って撮る時についてご紹介します。後ろボケのピンクは、この一房の数メートル後ろにある満開の河津桜です。このようにターゲットの後ろにあるものを圧縮効果で色として使えるので、中望遠や望遠レンズはとてもおすすめです。
この撮り方の時は、ピント位置がとても大切になり、一房の中でも主役の一輪にしっかりとピントをあてます。この写真の場合は、一番上の一輪にピントを合わせています。正面を向いていて、河津桜の花の形の良さがしっかりと表れているので、この花を選びました。
マクロレンズを使って撮る
この写真はマクロレンズで寄って撮りました。マクロレンズを中望遠として使う方も多いですが、マクロレンズで花を撮る時はとことん寄って撮ってみてください。中望遠には中望遠の、マクロにはマクロの良さがそれぞれあり、どちらも代わりにはなれません。
マクロレンズの良さは寄れること、なのでその特権を活かしましょう。手ぶれ補正が付いているカメラかレンズであれば、これくらいであれば手持ちで大丈夫です。
ピント位置ですが、シベが見えている時は、基本的にはシベの先端にピントをあてます。マクロレンズで寄った時は、AFは利きづらくなるので、MFで少しずつフォーカス位置を変えながら撮るのがコツです。ちなみに花を撮る時のマクロレンズは、180mmが一番おすすめです。
河津桜の並木道
実はこの時は満開過ぎで、葉っぱもかなり目立っていました。中望遠でピンク色が連なっているところを選び、圧縮して葉っぱが目立たないように撮りました。このように遠景を撮る時も開放で撮って前ボケと後ろボケを作ると、見せたい箇所が明確になります。
並木道を撮る際、筆者は木の幹にピントをあてるようにしています。一本の木の幹にピントが合っているだけで、メリハリが生まれます。この写真は3月上旬の18時頃。かなり薄暗い中撮りました。陽が落ちた後は花にコントラストが付かないので白とびしづらく、桜のピンク色をしっかりと出しやすいです。
クロッカス、アネモネを撮る
河津桜の次は、その他の初春に咲く花の撮り方をお話させていただきます。桜のようにメジャーではないですが、春を彩る可愛らしい花を選びました。小ささ、可愛さが伝わるよう小さく撮ることをおすすめします。引いて小さく撮ると、余計なものが入ってしまったり、開放で撮ってもボケづらくなります。
そこで、ここでも中望遠単焦点レンズの出番です。引いて、花を小さく撮ってもしっかりとボケが作れます。さらに画角的に余計なものも入りづらく、見せたいものだけを見せることができます。オールマイティーな焦点距離ではないですが、花を撮る時は一本あると非常に便利です。
クロッカス
公園の花壇脇に咲いていたクロッカス。周りにもたくさん咲いていて、綺麗な花もあったのですがこの一本に心を奪われて撮りました。低い位置に咲いている小さな花は、花の目線で撮ると小さな空間に物語が生まれます。
ただ、花の下の草や枯葉などが写ってしまうとごちゃごちゃしてしまいます。前ボケをしっかりと作って、花から下の写さなくてもよいものは隠しましょう。
また、花壇周りの花を撮る時は、花壇の縁やロープ、杭や柵などが写り込みやすいです。花とレンズの直線上になるべくぶつかるものがない、抜け感の良いラインを選びましょう。ただこの写真のように、杭などを少し入れるのも日常感が出て良いかもしれません。
アネモネ
公園の花壇の中に数本のアネモネが咲いていました。丸まっていてとても可愛かったです。クロッカスの写真と同様に、花の下や周りが小石や小枝でごちゃごちゃしていましたが、手前に咲いていたアネモネや他の花の葉っぱを前ボケにして隠しました。
アネモネは開くと花らしい綺麗な形になりますが、開いた花というのはしっかり花の顔、正面を捉えないと良さが伝わらないため、撮影の難易度が上がります。
しかしこのアネモネのようにつぼまっている花は、360度どこから撮っても可愛さが伝わりやすいです。なので、自分の好きな光の向きや背景で撮ることができるため、とてもおすすめです。
また、このアネモネは色が濃かったため、ハイキーで撮っても色がしっかりと残ってくれました。ハイキーでの花の写真は、色の濃い花が撮りやすいです。
タンポポ、ハナニラを撮る
春は他にも素晴らしい花々が沢山咲いています。次も小ささ、可愛さが伝わるタンポポとハナニラの撮り方をご紹介します。
タンポポ
道端で健気に咲くタンポポ。筆者のとても好きなシチュエーションです。道端の花は、道に沿って撮ると自然と抜け感が出るので、とても撮りやすいです。被写界深度の浅さをフルで活かすことができます。思い切って開放で撮りましょう。
写真の中に色の薄いものが多い時は、白とびに気を付けましょう。ハイキーにする時は、撮る前にハイキーにできるシチュエーションかどうかをよく考えます。何も考えずにむやみに露出を上げるのはNGです。花の写真はハイキーのイメージを持っている方も多いですが、実は花の写真はハイキーで撮れるシチュエーションは限られています。花は色が最も良い部分の一つなので、花の色を残すことを優先しましょう。
ハナニラ
青が綺麗なハナニラを撮りました。綺麗に開いていたので、形を捉えるのに少し苦労しました。このように開いている花は、真横から撮ってしまうと線となって写ってしまい、せっかくの花の良さが台無しです。なので、アングルを工夫したり、少し傾いたり倒れている花を撮ると、花の形を捉えてあげることができます。
ただ、何がなんでも花の形を捉えることを優先して、抜け感が悪いアングルを選んだり、あまり適していない部分を背景にしてしまったりしては意味がないので、そこは注意が必要です。
さいごに
春は、桜やチューリップといった季節を代表する花以外にも、可愛らしい花が日常に溢れています。それらも被写体として見ると、撮影の幅がぐんと広がります。是非、道端の花にも目を向けてください。