桜・チューリップの撮り方|北村佑介
はじめに
今年は暖冬の影響で、花の開花時期がかなり早いです。筆者はとても慌てふためいています。この記事が公開される頃は、きっと皆さんも桜の開花具合でそわそわしていることと思います。今回は春を代表する花、桜とチューリップの撮り方をお話したいと思います。
桜(ソメイヨシノ)を撮る
今回は、桜の中でも最もポピュラーなソメイヨシノの撮り方をお話させていただきます。日本中至るところで見ることができるソメイヨシノは、何気ない日常を彩ってくれるとても好きな花です。様々なロケーションで見ることができるので、バリエーションを持たせた撮り方をご紹介致します。
満開のソメイヨシノ
近所の公園で満開のソメンヨシノの中、綺麗な形をした一輪を見つけました。幾度となく桜を撮影してきましたが、最もお気に入りの一枚です。撮影時の体勢が楽なので、目線付近まで垂れている桜を見つけるのが良いと思います。桜は目線よりも上に咲いていることが多く、その場合はカメラを上に持ち上げなくてはならなくなります。その時は地面付近の花に比べ、身体に無理をさせる体勢になることが少なくないので、撮影ポイントは慎重に選びましょう。
レンズの先端を、手前に咲いている花にぎりぎり触れないくらいに近付けて前ボケを作りました。枝によって咲き具合が異なるため、花付きが良い枝を選びます。木に咲く花は枝が入りやすく、苦手と感じる方が多いようです。このように前ボケをしっかりと作ることができれば、枝が隠れ、見せたい部分だけを見せることができます。また、前ボケを主役に被せすぎてしまうと、せっかく選んだ花の色や輪郭が伝えづらくなってしまうため、前ボケの位置にも注意しましょう。難易度がとても高い撮り方ではありますが、是非チャレンジしてみてください。
こちらも近所の公園にて、昇り立ての朝陽を背景に逆光で撮りました。淡いピンクが透過光で輝いていてとても美しかったです。色が薄い花は非常に白とびしやすいですが、その中でも特にソメイヨシノは限りなく白に近いピンクなので尚更です。むやみに露出を上げるのを避け、露出を上げるとしても主役の花の色、脈が残る程度にとどめましょう。
また、この写真には前ボケがありません。その際は枝が目立ってしまいやすくなりがちです。アングルを工夫し、枝にピントが合ってしまう範囲を少なくするだけでかなり印象が違います。この撮り方の場合は、枝の先端付近の花がおすすめです。
焦点距離35mmで広く撮る
この時は雨が降っていたので、花の色が濃くなり、色を残しやすかったです。残しやすいとは言っても元々の色が薄いので、やはり露出の上げすぎには注意です。雨でどんよりとしたイメージに傾いていたので、ホワイトバランスをカスタムで6250ケルビンまで上げ、温かいイメージを作りました。
短めの焦点距離で広く撮る時は、絞って撮ることも少なくないと思いますが、このように絞りを開けて撮ると見せたい箇所が明確になります。主役の後ろに同じ色、似た色が被らないように撮ると、よりはっきりとします。そして長めの焦点距離で撮る時とは異なり、背景にあるものの姿や形が残りやすいので、後ろに写るものの配置にはより気を配りましょう。
役目を終えたバスが満開の桜の下で花見をしているようでした。このロケーションを見つけた時は桜が咲いていなかったのですが、咲いたらきっといい光景だろうなというのはずっと意識していました。満開前にも訪れ、入念にロケハンをしたので、イメージ通りの一枚を撮ることができました。
名所も良いですが、自分の足で見つけた撮影スポットというのは忘れられない思い出の場所となります。きっとこれからも訪れる、とっておきの場所となるでしょう。桜は名所以外にも至るところで咲いているので、是非自分だけのお気に入りの場所を見つけてみてください。
光が当たって色が薄くなった桜を前ボケに使い、比較的日陰の中にあるバスとのメリハリを強調しました。晴れた日の日中にF1.4という明るいレンズの開放で撮影したため、1/8000秒でも光を取り込みすぎてしまいます。この時はISOを拡張で50に設定し、光が入りすぎてしまうのを抑えました。絞って取り込む光の量を抑えてもいいのですが、ボケ具合を優先する時はISOで調整しましょう。
チューリップを撮る
お次はチューリップの撮り方をご紹介致します。こちらも春、と言ったら真っ先に思い浮かべる花の一つだと思います。ここでは一本主役を決めた撮り方をお話しようと思います。
前ボケを柔らかくする
開く前のまんまるのチューリップが、これから来る季節を告げていました。中望遠単焦点、135mmのF値開放で一本主役を決めて撮りました。赤い前ボケは、手前に咲いていたチューリップ。花と花の間にレンズを構え、前ボケが花に被らないラインを狙いました。主役と前ボケが同じ色であるため、普段よりも特に被らないように意識しました。チューリップの葉っぱは形がはっきりとしているので、前ボケに使うと形が残りやすいです。柔らかく撮りたい時は、葉っぱは前ボケに使わない方がイメージ通りになりやすいと思います。
満開のネモフィラ畑の中にポツンと咲いているチューリップを見つけました。少しくたびれていましたが、青と赤のコントラストがとても綺麗でシャッターを切りました。この写真も空という明るいものが写真の中に多く入っているため、F1.4で撮ると光が入りすぎてしまいます。ただ、絞って撮ると思っていたよりもネモフィラの形が残り、チューリップの主役感が薄れてしまいました、そのため、ISOを拡張で50に設定し、開放のF1.4で撮りました。被写体と空の明暗差が少ない向きで撮ると、このように空の色もしっかりと残ってくれます。
背景を単調にしない工夫
草むらの中にひっそりと咲いていたチューリップ。ポツンと一本だけ咲いている花は主役感がとても出しやすいです。ただ、このように草むら等で一本だけ咲いている花を撮った時は、背景がマンネリ化しやすいです。この写真は背景が緑一色だったので、レタッチで黄色を足し、色のグラデーションを作りました。光が当たっているところと当たっていないところを背景に選ぶなどして、単調にしない工夫が必要です。
チューリップは撮るだけで花の形を伝えやすいですが、その中でもベストな向きを捉えてあげると、より可愛らしく写すことができます。この時も、少しずつ向きを変え、花びらの写り方が異なるものを10パターンほど撮りました。
上の写真と同じチューリップを2日後に撮った一枚です。夕方の光がうっすら差していたので、アンダーで仕上げて光と陰のメリハリを残しました。上の写真より花が開いて、よりチューリップらしい形をしています。こんな風に一本の花を追いかけて撮るのも楽しいです。
さいごに
普段花を撮る機会がそこまでない方でも、桜やチューリップは撮るのではないでしょうか。普段から花を撮る方にはもちろん、そんな方にも役に立つ記事であったなら嬉しいです。
最後まで読んでくださり、どうもありがとうございました