ヒマワリの撮り方 | 北村 佑介
はじめに
なかなか梅雨が明けませんが、いよいよ8月!夏本番です!今回は夏を象徴する花、ヒマワリの撮り方をご紹介します。この時期になると、ヒマワリが可愛く撮れない、といった声をちらほら耳にします。それは、春に咲く小さな花と同じ撮り方をしようとしていることが原因であることが多いです。決して撮りやすい花ではないので、ヒマワリの良さや咲いているロケーションを活かした撮り方をすることがとても大切になります。その部分をなるべくわかりやすくお伝えできたらと思っています。
広大なヒマワリ畑での一枚
ずっとずっと見たかった光景で、初めて目にした時の感動は今でも鮮明に覚えています。筆者が撮った数ある花の写真の中でも最もお気に入りの一枚です。
この写真では満開のヒマワリ畑に見えますが、行ったタイミングが少し遅く、実際は満開過ぎでした。開花状況を全く調べずに行ったなんて、立場的に口が裂けても言えません。花は少し頭を垂れ、密度も低いです。ですが、望遠レンズの圧縮効果のおかげで満開かのように見えます。さらに絞り開放でピント位置を奥にすることによって、手前の枯れている花や少しスカスカに見える部分は、ボケて目立たなくなってくれました。
ピント位置を遠くに置いても前ボケ・後ろボケが作れるのは望遠レンズの特権です。このような写真を撮る場合は、望遠レンズで撮っても画角の中にたくさんの花が入るロケーションを見つけることが何よりも大切です。望遠レンズであれば圧縮効果が生み出せるとはいえ、咲いている花は多いにこしたことありません。花畑を撮るときは、一本の花を撮るときと比べて何倍もロケーション選びが大切になります。
先程の写真とほぼ同じ時間帯に撮りました。設定と場所も同じですが、今度は花畑の中の主役を一本決めて撮りました。
ヒマワリは花の顔、ほぼ正面を捉えてあげないと、形の良さが損なわれてしまう花です。そのため主役を決めて撮る場合は、なるべく正面を捉えてあげると良いでしょう。主役を目立たせるために、前ボケを増やして余計なところに目が行かないようにしました。
前ボケを作る際は、その被写体に近付くと前ボケが作りやすくなります。この時は手前の花に近付きました。さらにレンズの高さを下げると前ボケとして使えるものが増えるので、前ボケが上手く作れないときは、「寄る・下げる」を意識しましょう。
主役にする花は、まずは背の高い花を選ぶのがオススメです。背が他の周りの花よりも高ければ、その花のみにピントを合わせやすいためです。ピントが合っている花が複数あるとどの花が主役かわかりづらいですが、ピントが合っている花が一本だと明確にこの花が主役、ということを伝えやすくなります。
この写真も、先程の2枚と近い時間帯です。場所は同じで、今度はイメージをガラッと変え、標準域でシンプルに撮りました。これも主役を一本決めて撮りましたが、やはり花の顔を捉えるということが肝になっていると思います。
標準域でそこまで寄らずに撮っているため、前ボケらしい前ボケはあまりありません。前ボケがないと主役以外のものが隠せないので、背の高い花を選ぶなどして前ボケがなくても主役の花がわかりやすくなるよう心掛けましょう。
ヒマワリを撮る時、青空との組み合わせをイメージしている方も多いと思います。ヒマワリの黄色と空の青は補色の関係に近く、色の組み合わせがとても良いので、晴れた日は積極的に青空と写してみてください。
公園の花壇に咲くヒマワリ
近所の公園の花壇に小さなヒマワリが花束のように集まって咲いていました。この花壇は通路が非常に細く自由に行き来しづらい場所ですが、花との距離さえ撮ることができれば、望遠レンズの圧縮効果とボケを活かした写真を撮ることができます。
花のすぐ右側は通路となっていて、それを画角に入れてしまうと柔らかなイメージが損なわれてしまうシチュエーションでした。どんな場所でも見せたい部分だけを切り取って写すことができる、というのは望遠レンズの大きなメリットだと思っています。
地面付近からカメラを構え、地面や手前に咲いている草花を前ボケに使い、ヒマワリのみにピントが合うように撮りました。花壇なので周りにもたくさんの花が咲いています。他の花にもピントが合ってしまうとヒマワリの主役感が薄れてしまうので、できるだけ前ボケで主役以外を隠すよう心掛けました。
また、花を撮ると主役以外は緑一色という写真になってしまうことが少なくありません。花壇で撮るとたくさんの花が色となって写真を彩ってくれるので、とてもオススメです。
こちらは最短撮影距離付近、寄れるだけ寄って撮りました。花びらと後ろの緑が逆光でキラキラと輝いているのがとても綺麗だったので、それらをメインに見せようとこのような写真になりました。いつもは、花の可愛さが伝わるよう小さく撮ることをオススメしているので、皆さんからどういう反応があるかドキドキです。
花の切り取り方に少し迷いましたが、一番見せたい花びらたちに目が行くように大胆に切り取りました。背景は、花との距離がある、なるべく離れた緑を狙いました。見せたい箇所が明確な時は、寄って撮るのも良いでしょう。
少し短めの焦点距離で撮る
16:00頃の陽が低くなり始めた時に逆光で撮った一枚です。一面が雲で覆われていて青空とはかけ離れていたので、そのシチュエーションを活かしたイメージで撮りました。
曇り空に合わせて、レタッチで黄色と緑の彩度を下げ、くすんだ色のイメージにしました。ヒマワリの写真は、黄色や緑の彩度を上げた写真をよく見かけます。確かにヒマワリの黄色は彩度を上げた方が見栄えが良いですが、周りの色とのバランスをよく見極め、彩度を下げた方が良いシチュエーションがあることも頭に入れておきましょう。
35mmという焦点距離ではありますが、開放F1.4という明るいF値のおかげで前ボケと後ろボケの両方をしっかりと生み出すことができました。そうすることによって、見せたいエリアが明確になっています。
端っこにちょこんと咲くヒマワリ
広大なヒマワリ畑の端っこに、ちょこんと咲いていました。ヒマワリは元々のサイズが大きい品種が多く、小さく可愛く撮ることが難しいです。ですが元々小さいヒマワリ、例えば咲き始めや大きくならない品種の花を撮れば、決して難しくありません。小さく撮りたいのに撮れない時は、元々小さい花を撮る。当たり前のことを言っているようですが、とても大切なことです。
さいごに
今回は空を入れた写真を何枚かご紹介しましたが、空と組み合わせたヒマワリを撮りに行く時、オススメのロケーションは「ヒマワリと空がダイレクトに繋がっている」かどうかです。ヒマワリと空の間に何もないか、木や建物が入っていないか、それだけでイメージは大きく変わります。ヒマワリと空の間に何もないロケーションは多くはありませんが、撮りに行く場所を決める時、是非参考にしてみてください。
この記事が少しでも参考になって、お気に入りの写真を撮ってもらえたならとても嬉しいです。それではまた次回。