写真家に教わるスマートフォン撮影のコツ!|食べ物を撮る編
はじめに
誰でも手軽に美しい写真が撮影できるスマートフォン。いつでもどこに行くときも常に携帯しているので、フォトジェニックなシーンを撮り逃しません。今や人々に「一番使われているデジタルカメラ」と言ってもいいでしょう。これだけ多くの人たちに使われるようになった理由に「操作が簡単だから」ということがあります。撮りたいものにスマートフォンを向け、シャッターボタンを押すだけでいいのですから。
何気なく撮影してしまうスマートフォンですが、ちょっとした気配りでより見栄えのする写真を撮ることが可能です。この連載ではそのコツを皆さんにお伝えしていきます。
第5回目は「食べ物を撮る」編です。お店での食事や家庭での料理、ピクニックに代表される屋外でのお弁当など、食べ物を撮る機会はとても多いと思います。iPhone 11 ProやPixel 4を使って、食べ物を美味しそうに撮れるコツをお教えします。今回のキモは「シズル感」です。
キーポイントは「シズル感」
食べ物や飲み物を美味しそうに表現するには、ソースや肉汁に映る光、グラスについた水滴などのキラキラ感に注目しましょう。それらは俗に「シズル感」と呼ばれるものなのですが、そのキラキラ感を見つけて上手くスマートフォンで撮影できればグンと見違えた写真になるはずです。このキラキラ感がないとメリハリのない、沈んだ「メシマズ写真」になりがちです。
食べ物を目の前にしたらよくその被写体を観察してみましょう(といってもノンビリしていると、食べ物が冷めたりのびたりしちゃうので素早く!)。ラーメンでしたらスープにお店の照明が映り込んでいないか、ハンバーグだったらかかっているデミグラスソースに窓の光が入ってないかなど注意深く見るのです。食べ物の一番光っている部分を見つけてあげるのが○です。ちょっと見る位置を変えることや、お皿を移動または回転させるだけで「シズル感」が現れる場合があるのでチェックしてみましょう。このキラキラ感こそが、食べ物の鮮度や味わいを伝えてくれる写真のエッセンスなのです。
美味しそうなラーメン。スープにキラリと入っている「シズル感」がキモです。素早く撮影してのびる前に食べましょう!
新鮮でプリプリしたお刺身も見る位置をちょっと変えるだけでこんなに「シズル感」が違って見えます。座ったままでもお皿を回転させるだけで印象が変化しますよ
洋食の王様オムライスもスマートフォンの高さと位置をわずかに動かすだけでこんなに見栄えが違ってきます。何カットか撮影して食後にいいカットを選ぶのもいいでしょう
メインを明確に
料理が運ばれてテーブルにセットされると、どうしても全体像を撮りがちです。記録として残すのであればもちろんそれでOKですが、ちょっとオシャレに見せたい場合は料理の中の「主役」を決めグッと引き立てて撮りましょう。iPhone 11 ProやPixel 4の場合、複数のカメラを搭載していますので、望遠カメラに切り替えて撮ることをオススメします。
とある居酒屋でのランチ。たいていの人はこのように記録写真的に撮ってしまいがち。何を食べたか址で参照するのにはいいでしょう
そこでグッと主役のチキンをクローズアップしました。周りの皿は一部しか写っていませんが、このくらいの情報量の方が、メインを引き立たせます。
撮影時にはグリッド線をディスプレイに表示すると、傾きやキチンとセンターに被写体があるかなど参考にできます。過去記事をご覧になってぜひとも設定してください。
・第1回「基本設定編」
・第2回「都会を撮る編」
・第3回「風景を撮る編」
・第4回「人物を撮る編」
さて今度は屋外でお弁当を撮りました。お店の中と違い移動できるので、撮影も自由度が高くなります。上から横から斜めからと、シズル感を探してスマートフォンの位置をいろいろ変えて撮ってみましょう。だいぶ写真の印象が異なってくるはずです。
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斜めからお弁当を撮りました。おにぎりとおかずの配置がよくわかりますね
もし真上から撮りたい場合、iPhone 11 Proだとディスプレイ上中央に2つの「+」が表示されるので、それらを重なるようにすればそこが真上、ということになります。
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遠足や旅行などの場合は背景を写し込むようにすると「あ、あそこで食べたんだな」と場所の記憶がすぐ蘇ってくる写真になりますよ。主役はお弁当ですが、行った場所を脇役として写し込むというわけです
スマホの影に注意!
料理を撮る際に気をつけたいのが「影」です。撮影するのに構えたスマートフォンの影が料理にかかってしまったことはありませんか?レストランでは照明がテーブルの真上にあることが多いので、上方から撮ろうとするとこういうケースになりがちです。
影を避けようと一所懸命スマートフォンの位置を変えたり、お皿を動かしたりしても画面の隅に黒い影が落ちてしまいます
こういう時は望遠カメラを使いましょう。望遠なら料理から離れて撮影できるので、照明の影響を受けにくくなるからです。このカットは上のものと同じ位置でiPhone 11 Pro撮影したものです。望遠カメラを使えばより「主役」を大きく撮ると同時に、影の呪縛から逃れることも可能なのです。望遠カメラを活用してみましょう
明るく鮮やかに写す
美味しいものは明るく色鮮やかに撮影するとより一層引き立ちます。第1回「基本設定編」などでもお伝えしたように「露出補正」をして、キレイに撮影しましょう。コツはハイライト部(白い部分)が飛んでしまわない程度にプラス補正をかけることです。
日光が差すカフェでの軽食を撮りました。強い西日の影響で影がキツくコントラストが高くなってしまいました。また露出もアンダーで暗く写っています
iPhone 11 Proのディスプレイを指先でタップして太陽アイコンを表示させます。そして上方向へスライドしてやれば写真が明るくなります
明るく露出補正したことによって、サンドされた具の中身も判別できるようになりましたし、モチモチとしたバンズのシズル感も出てきました。露出をコントロールすると、このように食べ物の美味しさを引き出すことが可能です
Pixel 4の場合はハイライト部とシャドウ部の露出補正が独立して可能です。これを「デュアル露出補正」といいますが、自分のイメージ通りに白い部分も黒い部分もコントロールできます。2つのスライダーを指先で動かしましょう
この写真のように生シラスなどの質感表現が難しいものでもとても美味しそうに撮ることができます。透明感とみずみずしさはデジカメを凌駕しそうな描写ですね
ポートレートモードで雰囲気よく
「え?料理にポートレートモード使うの?」と驚かれるかもしれませんが、このモードは人物だけに限りません。静物や食べ物などにも有効なのです。
有名な蕎麦をテラス席でいただきましたが、iPhone 11 Proのポートレートモードを使って、背景を美しくぼかすことができました。iPhoneの場合は距離の制限があるので注意が必要です
Pixel 4のポートレートモードは、透明なグラスや細いストローなどでもきちんと判別して背景をぼかすことができます。もしうまくボケないようなら、撮影ポジションをいくつか変えて試すといいでしょう
iPhone 11 Proは細く透明な被写体の場合はうまくぼかせないケースがあります。このカットでは箸で持った唐揚げが宙に浮いているようになってしまいました。このような場合は通常の望遠カメラでの撮影でクリアしましょう
まとめ
スマートフォンでの食べ物撮影のキモは「シズル感」をしっかりと見極めること。そして「主役」となる食べ物にフォーカスして、明るく色鮮やかに撮ることです。その際にはスマートフォンの影や、テーブル上の余計なものが画面に入っていないかなどをよく確認してシャッターを切りましょう。
またレストランなどでは、撮影時にお店の人に断ってから撮るなど撮影エチケットも忘れずに。何よりも出来たての食べ物は美味しいうちに食べるのが一番です。撮影がスピーディーに済むよう、ご自宅で練習しておきましょう。