スイセン・わたげの撮り方|北村佑介
はじめに
こんにちは!北村佑介です!今回は、スイセンとタンポポのわたげの撮り方を紹介させていただきます。スイセンの本格的な季節はまだ先ですが、筆者は12月末から1月にかけて撮影することが多いので、今回記事にさせていただきました。
つい先日も、道端で咲き誇るスイセンを見かけました。スイセンを見ると、年の瀬が迫っていることを感じます。やり残したことがまだたくさんあるような…来年頑張ります。わたげは、春の終わりに見かけるイメージがありますが、意外とどの季節にも見かけることができます。なので、筆者は花の少ない冬に撮ることも多いです。ちなみに筆者がわたげを題材にする時は、ネタに困っていることが多いです。
咲き始めのスイセン
公園で、まだ咲き始めのスイセンを見つけました。筆者は、咲き始めの花を撮ることが多いのですが、スイセンは特に咲き始めがおすすめです。その理由は、スイセンは数輪密集して花を咲かせるので、満開付近になると1~2輪だけ撮ることが難しいからです。1~2輪だけ撮ると花の形の可愛らしさがよく伝わります。どの花を主役にして撮ったのかも伝わりやすいです。また、白い花なので枯れてしまった部分や傷んでしまった部分も目立ちやすいですが、咲き始めだとそういった花も少ないです。
写真をご覧いただいてわかる通り、スイセンは本当に可愛らしい形をした花です。この可愛さは正面を捉えないとなかなか伝わらないため、横や後ろから撮るよりも正面から撮りましょう。正面を捉えないと形の良さが伝わらない花、横や後ろから撮っても形の良さが伝わる花。それぞれを撮影時に意識することがとても大切です。
名所で捉えたスイセン
スイセンの名所で撮影した一枚です。満開のスイセンの中で、一輪お気に入りの花を見つけました。1月上旬の昼間、とても強い光を背に受けているので、とにかく花を白飛びさせないことを最優先に考えました。逆光で花を透過させて撮ると花びらの美しさが増しますが、色の薄い花、特にこのような白い花は白飛びさせてしまうことも少なくないと思います。このように明暗差があるシチュエーションでは尚更です。白飛びに関しての考え方は人それぞれだと思いますが、筆者は主役の花は可能な限り白飛びしている部分がない方が良いと考えています。このようなシチュエーションに出会った時は、主役の花を白飛びさせないことを第一に考えましょう。
大雪が降った日のスイセン
数年前に東京で大雪が降った時の一枚です。今まで雪の日に花を撮影する機会はそう多くはなかったため、その分行く場所や撮る花、撮りたいシーンのイメージは前もって考えていました。そのおかげで、ほぼイメージしていた通りに撮ることができました。この時、「イメージしておく」ということがとても大切だと改めて感じました。
普段、ほとんどの写真を絞り優先で撮っていますが、この時は降りしきる雪の写り具合を考えてシャッタースピードを自分で決めました。F値はいつも通り開放にしたかったので、マニュアルモードを使いました。どんよりして薄暗いシーンだったので、ISOは500まで上げて、降りしきる雪を止めて写すことができるシャッタースピード1/1250を確保しました。雨や雪を止めて写す時のシャッタースピードは、シチュエーションやイメージによって異なりますので注意しましょう。
筆者は薄着が好きなので氷点下近かったこの日も、まるで秋晴れの日のバーベキューに行く
ような格好で撮影しました。結果、帰宅後数日間高熱でうなされることとなりましたが、それも含めて思い出に残る一枚となりました。皆さんは、寒い日は暖かくしてお出かけください。
夕方公園で見かけたスイセン
12月下旬、16:00頃に近所の公園で撮りました。この日はとても綺麗な夕日が降り注いでいたのを今でも覚えています。ホワイトバランスをカスタムで下げ、夕暮れのオレンジのイメージを残しつつ花の白さを表現できる値に設定しました。晴れた日の夕暮れ時は、ホワイトバランスを太陽光や曇りに設定すると必要以上にオレンジに寄ってしまうことがあるので注意しましょう。
晴れた日の朝や夕方など、光の色の変化が目まぐるしい時は適切なホワイトバランスに変更するのは簡単ではありません。二度と訪れないシャッターチャンスをものにするため、日頃から練習しておくことをおすすめします。
いつもよりも広角のレンズで撮りました。右から左にかけてのフレーム状に配置した葉っぱがお気に入りです。望遠レンズだとボケてしまってここまで葉っぱの質感は残せなかったかもしれません。少し上から撮り、こじんまり感をイメージしました。イメージを優先したので、花の形を捉えるということを少し犠牲にしています。花と地面の距離が近いので後ろボケも綺麗になりづらいシチュエーションでしたが、開放F値が1.4であったため、綺麗にボケてくれました。
逆光で捉えたわたげ
ここからはわたげの撮り方を書いていきます。真冬の陽が落ちる直前に逆光で撮りました。夕陽に照らされてキラキラと光る水滴を上手く一緒に収めることができました。わたげは球体なので、開放で撮ると1点にしかピントが合いません。それでも良いのですが、わたげのピントが合っている範囲をもう少し増やしたかったので少し絞りました。斜面に咲いていたので、前ボケと後ろボケを両立させることがとても難しかったです。
この写真の醍醐味である水滴を綺麗に見せることを一番に考えると、後ろボケに気を遣わなくてはなりません。わたげと背景がなるべく離れているラインを狙い、その中でもコントラストがないなだらかな部分を選びました。後ろボケを優先したので、その分前ボケはあまりありません。
モノクロのわたげ
先程の写真をモノクロで仕上げてみました。花は色が大切なので、筆者はほとんどモノクロにすることはありません。この写真はわたげと水滴以外を黒く締めたら、見せたいものだけが浮かんで綺麗かもしれないと思いやってみました。色という情報を消して何かを見せたい時や、光と影のコントラストが特に綺麗な時などはモノクロにしてみるのもいいかもしれません。
180mmのマクロレンズを用いてモノクロで撮ってみました。光で照らされたわたげがとても綺麗だったので、そこだけに目がいくようにモノクロで仕上げました。決して色の調整が面倒だったわけではありません。なるべくピントが合っている範囲が多くなるようにF8.0まで絞りました。
マクロレンズで寄って撮るとき、開放で撮るとピントが合っている範囲が狭すぎて何を見せたいのかわからない写真になってしまうこともあります。花の写真は開放で撮るイメージがある方が多いかもしれませんが、マクロレンズを使う時は絞った方が良いシーンもあることを覚えておきましょう。わたげはほんの少しの風でも大きく揺れるので、少なくとも1/1000秒は確保することをおすすめします。
さいごに
今回もお付き合いくださりありがとうございました!何か一つでもお役に立てる内容があったらと思っています。また次回を楽しみにしていただけたなら嬉しいです。
■写真家:北村佑介
出版社勤務・埼玉県観光PRフォトグラファーを経て、ドリーミーフォトと呼ばれる花を撮るフォトグラファーとして独立。年間150回の写真教室や、書籍・雑誌・企業・メーカーへの写真提供、イベントでのトークショーをメインに全国で活動中。著書に「花をながめて大切なことに気づく100の言葉」(かんき出版)などがある。