梅の花の撮り方|北村佑介
はじめに
新年、明けましておめでとうございます!北村です。本年もどうぞ宜しくお願い致します。より一層皆さんのお役に立てる記事を書いていけたらと思っています。今回は、梅の花の撮り方を紹介させていただきます。寒い時期に咲く花ではありますが、梅の花を眺めると春がそう遠くはないんだなと感じます。
全国的な枝垂れ梅名所で撮影
普段は135mmの中望遠単焦点レンズで撮影することが多いのですが、この梅園は大きな大きな枝垂れ梅が園内狭しと咲き乱れていたので、思わず20mmの広角レンズを使用しました。正直20mmでも全然おさめきれず、もっと広いレンズを使いたいなと思ったくらいです。次に行く時は、もっと広いレンズを用意しイメージ通りの一枚を撮影できたらと思います。
ボケは使わず、手前の地面から奥の空までピントが合っているように見せたかったので、このレンズの最小絞り値、F16まで絞りました。このくらいのF値を使用すると小絞りボケによる解像感の低下を懸念される方もいると思いますが、筆者は小絞りボケを気にすることはほとんどありません。許容できるラインは人それぞれですが、花の写真ならばF16くらいまではそこまで気にしなくても良いと思っています。また、光芒の写り方も絞り込んだ理由の一つです。
咲き始めの一輪
まだ咲き始めの可愛らしい一輪を撮りました。温かい色味がやがて来る春を連想させてくれます。この色味はホワイトバランスをカスタムで7500Kに上げて作りました。筆者はこの辺りのホワイトバランスを使うことはあまりありません。花の色が必要以上に暖色系に寄ってしまったり、背景の色が花とミスマッチになってしまうことが多いためです。ただこの写真は元々の花の色がとても薄かったこと、曇天で蕾(つぼみ)や枝の色が強くなかったことが理由で、高めのホワイトバランスで温かいイメージに寄せることができました。
このように色の薄い花を撮る場合は、露光量に気を付けましょう。花の写真はハイキーで撮影することも多いと思いますが、シチュエーションを考えず色の薄い花をただただ露光量を上げて撮影すると、簡単に花の色がなくなってしまいます。露光量をどうするかは花の色、シチュエーションをよく見極めてからにしましょう。
紅梅
紅梅を撮影しました。花だけでなく開き始めたつぼみもとても可愛らしかったので、それらをセットで切り取りました。この写真はつぼみも主役の一つなので、花までの距離とつぼみまでの距離がなるべく等しくなるようにカメラを構え、少し絞って花とつぼみのどちらにもピントが合うようにしました。
紅梅は色が濃く、露光量を上げても色が残りやすいです。ですので、他の梅よりもハイキーで撮りやすいです。また、背景に薄い色を選ぶことができれば比較的簡単にメリハリも付けられます。冬は薄い色の背景も見つけやすいと思います。ハイキーの梅の写真をなかなか撮ることができない方は、まずは紅梅で練習してみるのはいかがでしょうか。
綺麗な色をした梅
散歩中に綺麗な色をした梅を見つけました。このピンクは筆者が最も好きな色の一つです。ピンクが好きと胸を張って言えるような柄ではないので小声で言います。これも咲き始めを撮りました。
梅は咲き始めを撮るのがおすすめです。他にも咲き始めがおすすめな花はたくさんありますが、梅は特におすすめです。数輪密集して咲く花なので、満開前後に撮ると主役の花が伝わりづらくなります。また、咲き始めでシベが短いうちにとると可愛さが伝わり易いというのも大きな理由です。撮りたいイメージにもよりますが、是非咲き始めを撮ってみてください。
お寺の白梅
お寺で白梅が綺麗に咲いていました。白と青の組み合わせがとてもお気に入りです。背景の青はお寺の一部です。遠く離れたグレーに近い色のものは、ホワイトバランス次第で綺麗な青となってくれることがあります。
人工物が背景に入ってしまうロケーションでは、その人工物は色として使えるかもしれないと考えると撮影の幅が広がります。そして人工物を色として使うには、よくボケてくれる望遠レンズがとてもおすすめです。望遠レンズで圧縮し、その色を引き寄せることができます。単焦点だとより効果的です。
梅は横や後ろから撮ると形の良さや可愛らしさが伝わりづらいので、なるべく正面を捉えるようにしましょう。形を捉える方ことを優先した方が良いタイプの花だと考えています。
満開の枝垂れ梅の一部分を切り取る
満開付近の枝垂れ梅は密集度が高く、望遠レンズの圧縮効果を使えば比較的簡単に花の色で埋め尽くすことができます。満開付近の梅は一本の枝に複数輪花が咲いているので、最短撮影距離付近まで寄って撮り、どの花が主役なのかをわかりやすくしました。元々が小さめの花なので、寄って撮っても花の可愛さが充分に伝わります。
満開の枝垂れ梅が咲き誇っている庭園へ行ったときの一枚です。帰り際、綺麗な夕陽が差し込みました。その夕陽にそっと照らされた枝垂れ梅に心惹かれ、シャッターを切りました。この写真は梅が照らされているところがポイントなので、そこが伝わりやすくなるように背景は暗い部分を選びました。
ここまで紹介した写真は枝の先端付近に咲いている花を撮ったものが多いですが、そうした撮り方が多いのは、写る枝の面積を少なくするためです。梅は撮るのが難しい花です。枝や主役以外の花の主張が強くなりやすいというのが理由の一つです。先端付近の花を撮ると自然と枝や主役以外の花が写り込みづらくなるので、是非参考にしてみてください。
広大な梅林で様々な種類の梅が一斉に咲いている様は圧巻でした。その中でも特に見せたい部分を、50mmという画角で切り取りました。曇天でメリハリがなかったので、レタッチで上部を暗く下部を明るくし、梅と背景で明るさのメリハリをつけました。メリハリをつけることによって、この写真のどこを見せたいのかを伝えられる一枚になったと思います。
今回も読んでくださりありがとうございました!また次の記事も楽しみにしていただけたらと思います。
■写真家:北村佑介
出版社勤務・埼玉県観光PRフォトグラファーを経て、ドリーミーフォトと呼ばれる花を撮るフォトグラファーとして独立。年間150回の写真教室や、書籍・雑誌・企業・メーカーへの写真提供、イベントでのトークショーをメインに全国で活動中。著書に「花をながめて大切なことに気づく100の言葉」(かんき出版)などがある。