森の賢者「フクロウ」を撮る|坂井田富三
はじめに
森の賢者、森の番人、森の物知り博士、森の哲学者などと呼ばれるフクロウ。夜行性のため実際にお目にかかることも少ない鳥類です。それだけに自然の中で見つけ撮影できた時の喜びもひとしおです。
実際に撮影したいと思っても、何処にいるのかは分からないし、仮に生息場所が分かっても森の中では簡単に見つける事はできない、撮れないのがフクロウです。日本に生息する野生のフクロウは11種類。日本全土に生息するものや、北海道でしか生息していないものもあります。
アオバズク
オオコノハズク
キンメフクロウ
シロフクロウ
コノハズク
コミミズク
シマフクロウ
トラフズク
フクロウ
リュウキュウコノハズク
ワシミミズク
※50音順
フクロウを撮るための準備
フクロウ撮影をする前に、最初に野鳥撮影のマナーをよく理解する必要があります。「公益社団法人日本野鳥の会」でとても重要な「野鳥撮影のマナー7か条」を紹介しています。
1、野鳥の巣には近づかない
2、野鳥を追い回さない
3、珍鳥や人気の鳥の情報を公開しない
4、周囲の人や撮影場所選びには十分な配慮をする
5、餌付けや、環境改変は行わない
6、自然にやさしいマナーを心がけよう
7、ストロボは使用しない
フクロウ撮影だけに限らず野鳥を撮影する際には、これらの項目をよく理解し行動をする必要があります。この「野鳥撮影のマナー7か条」の「1、野鳥の巣には近づかない」を守るためには、撮影には必然的に望遠レンズが必要になってきます。通常の300mmや400mmのレンズは足りないシーンがほとんどです。人気のシグマ・タムロンの150-600mmのレンズや、各メーカーの400mmや600mmの大型の単焦点レンズとテレコンバーターなどを組み合わせた機材が必要になってきます。
下の写真は、シグマ150-600mm F5-6.3 DG OS HSM | Sportsを使用して焦点距離600mmで撮影したコミミズクです。コミミズクは草原などでみられる冬鳥で、夜だけでなく日中も活動することがあるため、フクロウ類のなかでも比較的見られやすい種です。一面雪景色の北海道での撮影で真っ白な雪原なので、比較的見つけやすい環境での撮影でした。
「野鳥撮影のマナー7か条」の「3、珍鳥や人気の鳥の情報を公開しない」が原則なので、ここでも基本的には野生で撮影した場所は詳細には記載をいたしません。そういった訳でどこにいったら撮影できるのか?という情報をなかなか手に入れる事ができないのが現状です。実際にこのコミミズクの撮影は、北海道でキタキツネを探しながら撮影していた時に偶然に出逢って撮影したものになります。
フクロウ撮影において、一番難しいのがフクロウを見つけることです。自分で情報収集する方法は、最初は各地域にあるネイチャーセンターなどのガイド情報などを参考にすると良いかも知れません。ネイチャーセンターにあるガイド情報には、その地域で見られる野鳥の種類や時期などが記載されているものがあったりします。また最初はガイドツアーなどに参加して情報取集するのも方法の一つです。
フクロウを撮ってみよう
フクロウを見つける事はなかなか難しいのですが、実は比較的撮影のしやすい所もあります。北海道目梨郡羅臼町のある「鷲の宿」が有名な撮影スポットです。撮影のツアーもあったりする有名なポイントなので場所も含めて紹介させて頂きます。
ここでは宿に宿泊して撮影できるほか、観察施設から「シマフクロウ」を撮影する事ができます。「シマフクロウ」は、国の天然記念物に指定されている超大型のフクロウで、北海道東部(知床・根室・日高)に生息しています。必ず「シマフクロウ」が撮影できる保証はありませんが、宿の間にある渓流で「シマフクロウ」の狩りを観察撮影できるよう、撮影環境が整えられているので初めてのフクロウ撮影には向いている場所です。
・「鷲の宿 観察施設 シマフクロウオブザバトリー Fish-Owl Observatory」のHPはこちらからご覧頂けます。
筆者も北海道の道東方面を撮影に行くときには、この「鷲の宿」を撮影するコースに組み込んでいます。シマフクロウが撮影できる確率は非常に高くおすすめできるスポットです。
この場所ではシマフクロウを1年を通して観察撮影する事ができ、撮影時間は、日没30分後くらいから深夜24時ぐらい迄になります。
こちらは渓流の魚を狩るシマフクロウ
基本的には夜間での撮影になる為、ISO感度を上げて撮影する必要がありますが、この場所ではシマフクロウの目に優しい照明装置が設置されているため、シャッター速度1/80秒でも上記の様な写真を撮影する事ができます。
ここからは別のスポットで撮影したフクロウになります。野生のフクロウは大きな樹の洞を巣にします。ですので野生のフクロウを探すポイントとしては日中に巣になりそうな洞を見つける事がポイントです。
森の中にいるフクロウを見つけるのは容易ではありません。下の写真は焦点距離600mmで撮影したものですが、肉眼では何処にいるのかまったく分かりませんでした。実際の撮影にあたっては、双眼鏡を使って森を観察して見つけてそれから撮影するのがよいでしょう。超望遠レンズをカメラに付けて、ファインダーからこの状況を見つける事はかなり難しいです。
下の写真はフクロウの雛ですが、フクロウの雛の撮影するのには特に注意が必要です。「野鳥撮影のマナー7か条」の「1、野鳥の巣には近づかない」にあたります。雛はまだ飛べないので巣の近くいます。そして雛を見守るように親鳥も近くにいて常に警戒しています。その場所に人間が入っていってしまうと、親鳥が巣の異常を感じたりして巣を見捨ててしまう事も考えられます。巣には不用意に近づかないように注意しましょう。また雛がいる場所、時期がインターネットなどに公開されてしまうと雛が危険にさらされてしまいますので、絶対にしないようにしましょう。
まとめ
フクロウを含む野鳥や野生動物を撮影するには、被写体とのある程度の距離が必要になってきます。できれば600mmクラスのレンズが必需品になるでしょう。APS-Cサイズのカメラと組み合わせれば900mm相当にもなります。また、このクラスのレンズになるとそこそこの大きさになるので、それに合ったカメラバッグや三脚、雲台などを検討する必要があります。また少し大きめの双眼鏡も用意しておくと便利です。
フクロウを含む野鳥撮影は簡単ではありませんが、その分撮影出来た時の喜びもとても大きいものになります。しっかりと被写体の生態を理解して、撮影のマナーを守り、撮影できるポイントを見つけ気長に時間をかけてチャレンジしてみてはどうでしょうか。
【参考】野鳥撮影マナーブック
■写真家:坂井田富三
写真小売業会で27年勤務したのち独立しフリーランスカメラマンとして活動中。 撮影ジャンルは、スポーツ・モータースポーツ、ネイチャー・ペット・動物・風景写真を中心に撮影。第48回キヤノンフォトコンテスト スポーツ/モータースポーツ部門で大賞を受賞。
・公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員
・日本風景写真家協会 会員
・NPO法人 フォトカルチャー倶楽部 参事
・一般社団法人 日本フォトコンテスト協会 理事
・一般社団法人 日本写真講師協会 理事
・ソニーαアカデミー講師
・クラブツーリズム写真撮影の旅・ツアー講師