アジサイ・道端に咲く花の撮り方|北村佑介
はじめに
こんにちは!北村です。今回はアジサイの撮り方と、今時期に咲く道端の花の撮り方を紹介させていただきます。最後までお付き合いいただけると嬉しいです。
アジサイの撮り方
開花にはまだ早いとは思いますが、まずは初夏を代表する花、アジサイの撮り方をご紹介します。様々な品種があり、様々な撮り方ができる花です。なるべく多くの方のお役に立てるよう、品種を変え撮り方を紹介させていただきます。
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■撮影環境:絞り優先・180mm・F3.5・ISO200・1/200秒
幼い頃からよく行っていた遊園地の中にあるアジサイ園で撮った一枚なのですが、その遊園地は昨年閉園となってしまいました。その為この写真からは遊園地感は一切感じられませんが、とても大切な一枚となっています。こういうことを度々経験してからは、目の前にあるものは永遠でなく今だけのもの、と思うようにしています。
これはアナベルという品種のアジサイの一部分です。一つ一つの花の形がとても可愛らしく、ほのかに染まったピンク色もとても綺麗だったのでマクロレンズでグッと寄って撮りました。それなりの大きさで写しているのでわかりづらいかもしれないですが、この花は1cmにも満たない大きさで、とても小さかったと思います。アジサイのようないくつかの花が集合してできている花は、その中の一つを切り抜くのも面白いと思います。
筆者は普段、中望遠135mmの単焦点レンズを愛用しているのですが、この時はそのレンズの撮影最短距離で撮ってもイメージしていた大きさになりませんでした。とても小さいものをそれなりのサイズで写したい時は、マクロレンズの出番となるでしょう。
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■撮影環境:絞り優先・180mm・F3.5・ISO100・1/200秒
こちらも一枚目と同じアジサイ園で撮った一枚です。先程と同じく、アジサイの中でも特に見せたい一つの花をマクロレンズで大きく写しました。全体を切り取っても絵になりますが、やはりアジサイは一つ一つの花の形がとても美しいので、このような切り取りを選択しました。
この写真はWB(ホワイトバランス)の色温度を基本よりもそこそこ下げ、色味をマゼンタに寄せることでアジサイの綺麗な色味が出すことができました。アジサイは木々の下に咲いていることが多く、そのようなロケーションでは緑被りをしていることが多いです。他の花よりも撮影時に色味をしっかりと確認し、WBや色味を適切な値に設定することが大切になります。
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■撮影環境:絞り優先・135mm・F2.0・ISO100・1/500秒
おたふく(ポップコーン)という、筆者が一番好きな品種のアジサイです。アジサイは品種が非常に豊富です。お気に入りの品種が咲いているかどうかでロケーションを決めるのもアジサイ撮影の醍醐味
と言えるでしょう。
この写真は、見せたい部分とそれ以外でメリハリが上手く出せたところがお気に入りです。これは1,2枚目と異なり、筆者が普段使用している135mmの単焦点レンズで撮りました。アジサイの写真というとこのような写真をイメージする方も多いのではないでしょうか。一般的なイメージに近い分、普通に撮っただけでは個性が出づらいです。これは、特に色の濃い花を主役に選び、色の薄い部分を背景に選んでメリハリをつけました。メリハリをつけたことによって、普通に撮っただけでは出ない個性が出たと思っています。また、主役に選んだ花の形がとても良く、その形がしっかりとわかるアングルで撮ったので、主役とそれ以外のメリハリもついています。
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■撮影環境:絞り優先・135mm・F2.0・ISO160・1/160秒
こちらも135mmの単焦点で撮ったものです。ボケと色で柔らかさを演出しました。まずボケですが、アジサイはボケをを作りづらいことが多いです。特に前ボケを作りづらいと感じることが多いと思います。その理由は、葉が大きく色も濃いためです。花の写真の前ボケの多くは葉で作ることも多いのですが、アジサイではそれが難しいです。なので、無理に前ボケを作る必要はありませんが、柔らかさを出したい時はやはり前ボケがあった方が良いです。他の花を撮る時よりも、レンズを主役の手前の葉や花に近づけることを意識すると良いでしょう。
次に色ですが、アジサイは咲いているロケーション的に花の周りが緑ばかりになりがちです。なるべく緑以外の色を取り入れることを意識すると良いでしょう。おすすめは日の当たった緑です。日の当たった緑を撮ると、黄色として写ることが多いです。黄色は、特に青いアジサイとの相性が良いので、ボケの部分に日の当たった緑が取り入れられそうな時は是非狙ってみてください。
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■撮影環境:絞り優先・135mm・F2.0・ISO160・1/320秒
綺麗なガクアジサイが落ちていたので、水たまりでリフレクションさせて撮ってみました。こうして見ると、アジサイは一つ一つの花の色や形が本当に綺麗で可愛らしいですよね。リフレクションさせた撮り方は今までの記事でも何度か説明させていただいたので割愛しますが、簡単なポイントを言うとしっかりと立つものを選ぶ、形をなるべく正面から捉える、ということになります。
前ボケと後ろボケは地面、アスファルトですが、そのままだとグレーで味気なかったので、レタッチでほんのり色を足しました。
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■撮影環境:絞り優先・135mm・F2.0・ISO160・1/1000秒
6月上旬、18:30頃の綺麗な夕陽に照らされたアジサイ。前ボケはありませんが、温かな夕陽が柔らかさを演出してくれました。アジサイやラベンダーなどのこの時期の花は、夕陽との相性が特に良いと感じます。前ボケが作りづらくバリエーションが生み出しづらい分、夕陽などの光を使ってバリエーションを生み出すのもいいかもしれません。
この写真は逆光で撮りました。強い夕陽を逆光で撮ると、多くのレンズはコントラストが低下しメリハリがない写真になりやすいです。日陰に入っている花や色の濃い花を撮るなどの工夫をすればある程度のメリハリを維持できるでしょう。勿論レタッチでメリハリを出してあげるのも良いと思います。
道端に咲く花
ここからは道端に咲く花を2パターン紹介させていただきます。
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■撮影環境:絞り優先・50mm・F1.4・ISO100・1/8000秒
一つ目は散歩中に見つけた花です。このように花が群生しているシチュエーションの時は、一本の主役だけにピントをあてて浮かび上がらせるのは簡単ではありません。他の花と高さが異なる花や道に飛び出ている花を狙うのが良いでしょう。50mmという標準的な画角ではありますが、開放F値1.4の明るさのおかげで主役の花がよりわかりやすくなりました。また、群生しているシチュエーションでは、主役の花の後ろになるべく同じ色が被らないようにアングルを整えるのもとても重要です。
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■撮影環境:絞り優先・135mm・F2.0・ISO100・1/1600秒
公園の隅の道にシロツメクサが集まっていました。シロツメクサは前ボケが作りやすく、たくさん咲いている中から一本主役を見つけて撮る練習に最適な花ですのでおすすめです。この写真は、一番背の高い花を主役にし、それ以外の花はボケとして使いました。そのまま撮るとありきたりな色味となってしまうので、WBを少し下げイメージしていた色味に寄せました。
最後に
いかがだったでしょうか。記事を読んで、早く撮って試してみたいとかイメージが湧いてきたなどと思っていただけることが何よりも嬉しいです!今回もそんな風に思ってもらえる記事であることを願っています。それではまた次回お会いしましょう。
■写真家:北村佑介
出版社勤務・埼玉県観光PRフォトグラファーを経て、ドリーミーフォトと呼ばれる花を撮るフォトグラファーとして独立。年間150回の写真教室や、書籍・雑誌・企業・メーカーへの写真提供、イベントでのトークショーをメインに全国で活動中。著書に「花をながめて大切なことに気づく100の言葉」(かんき出版)などがある。