春の花の撮り方(復習編)|北村佑介
はじめに
こんにちは!北村です。今回は、春の花の撮り方、復習編をお届けします!夏本番となる前の丁度良いタイミングだと思い、このテーマにしてみました。花は季節ごとに撮り方がガラッと変わるので、次の季節に進む前の復習に役立ててもらえたら嬉しいです。この記事で紹介する写真は、ほとんどレタッチをしていないものを多く選びました。ですので、普段レタッチをしないという方にも参考になるかと思います。SNSにも載せていないものばかりなので、是非ご覧ください。
スイセン
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■撮影環境:絞り優先・135mm・F1.8・ISO100・1/8000秒
桜並木の横に鮮やかな黄色のスイセンが咲いていました。道に沿って植えてありましたが、咲いていたのはこの2本だけでした。日中に順光で撮ったので、強い光が花に当たっています。このような場合は露光量の上げ過ぎに注意しましょう。測光モードにもよりますが、明るくなっているものを露光量を上げて撮ると、色が飛んでしまうことが多いです。この時もハイキーのイメージを持ってはいましたが、花の色を残すことを優先すべきだと考え、露光量は少し上げる程度に留めました。
また、日中に順光で撮った時は全体的にのっぺりしてしまうことも多いです。そんな時も、何かしらで写真にメリハリを持たせることをおすすめします。この写真は、青空の青とスイセンの黄色でメリハリを持たせました。このスイセンは意外と大きい種類です。少し離れたくらいでは可愛らしくポツンとしたイメージにならないので、ぐっと離れて撮ってみましょう。その際、中望遠以上の焦点距離が長いレンズだと離れて撮っても前ボケが生まれ、後ろボケも綺麗になります。
タンポポ
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■撮影環境:絞り優先・135mm・F1.8・ISO100・1/500秒
草むらの中、綺麗に開いたタンポポを見つけました。綺麗に開いて真上を向いている花を撮る時は、ほんの少しだけ上から撮ると形の良さが伝わるアングルとなることが多いです。真横から撮ってしまうと、せっかく綺麗に開いている様子が伝わりづらくなってしまいます。ほんの少しとはいえ、上からのアングルとなることによって、抜けの良さや前ボケ後ろボケの綺麗さを少し損なうことになりますが、花の形を捉えることを優先し、ほんの少しだけ上から撮ることをおすすめします。
また、このタンポポの後ろはフェンスでした。何も考えずに撮るとフェンスが目立ってしまうシチュエーションだったので、なるべく葉や草のボケで隠しました。葉や草は、このように写したくないものを隠すボケとして使ったり、色として使ったりできるので邪険にしないようにしましょう(笑)
ムスカリ
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■撮影環境:絞り優先・135mm・F1.8・ISO100・1/640秒
まだ咲き始めのムスカリ。朝露がついた草むらの中でひっそりと咲いていました。とても小さい花を小さく撮る時は、主役の花と同じ色をなるべく入れない。主役の花の色よりも薄い色を花の背景にする。等の工夫をすると、主役感がしっかりと出ます。写真上部の暗い緑が花の背景だったら、ここまで主役感は出なかったでしょう。ムスカリは色が濃いものが多いので、花よりも薄い色の背景を見つけやすいです。
この写真は、カメラのコントラストの設定をマイナスにして撮りました。普段マイナスにすることはあまりないのですが、上部の暗い緑と下部の明るい緑の差をなくした方がイメージに近かったためです。
桜
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■撮影環境:絞り優先・135mm・F8.0・ISO800・1/125秒
大雨が上がった直後の早朝。水たまりの中も桜が満開でした。水たまりに触れてしまうくらいの低い位置でカメラを構え、リフレクションさせて撮りました。焦点距離が長いレンズだと僅かな水たまりでも画面いっぱいのリフレクション写真を撮ることができます。
普段は絞り開放で撮ることが大半ですが、この時は写真全域が主役だったためF8まで絞りました。早朝で薄暗かったのでISOは800まで上がっています。そして早朝や夕方は、通常の時間帯と色合いが大きく異なります。この写真は、カメラの設定で色温度を大きく上げました。花の写真にとって色は非常に大切な項目です。シチュエーションごとに適切な色温度に設定できるようになると、よりイメージに沿った一枚を撮ることができると思います。オートホワイトバランスや太陽光等の既存の設定を使っても問題ないですが、適切なケルビンの値に自分で変えられるようになっておくことを強く強くおすすめします。
藤の花
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■撮影環境:絞り優先・135mm・F1.8・ISO100・1/2500秒
綺麗に咲いた藤の花が朝の光を浴びていました。藤の花を望遠で撮ると、似通った切り取り方をしてしまいがちです。ありきたりな写真にならないよう、かなり寄って撮ってみました。一つ一つは小さい藤の花ですが、寄って比較的大きいサイズで撮ったのでどの花が主役かはっきりとわかる写真になりました。
普段、筆者は花を引いて小さく写すことが多いですが、こういうシチュエーションに遭遇すると寄れるレンズであることに越したことはないと感じます。小さい花を撮る時は、寄れるレンズも選択肢に入れてあげるといいかもしれません。主役の花の後ろに色の薄い場所を選び、より主役感が伝わるよう工夫しました。藤の花のように一面同じ色になってしまいがちな花を撮る時は、この点に特に注意しましょう。横から撮ると形の良さが全く伝わらなくなってしまうので、できる限り正面から撮ることもポイントです。
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■撮影環境:絞り優先・28mm・F11・ISO100・1/250秒
こちらは満開の藤の花。木の下に入ることができるロケーションだったので、真下から撮ってみました。なかなか珍しいロケーションで、一部を切り取るだけでは勿体ないと思い少し広め、28mmのカメラを使用しました。画面内に太陽が入ったので、光芒が綺麗に写るようF11まで絞りました。
アリッサム
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■撮影環境:絞り優先・28mm F8.0・ISO125・1/125秒
こちらは花壇に咲いていたアリッサム。特に強く光が当たっていたエリアを選び、その中でも少し飛び出て花とその影を主役にしました。丸みを帯びた花なので横から撮っても形の良さが伝わりますが、今回は影も主役の一部というイメージなので上から撮りました。主役の周囲も取り入れて明暗差を強調するために28mmで、影やその周囲もボカさず写したかったのでF8まで絞りました。白い花や色の薄い花は、しっかりと色を残すのが難しくハイキーで撮るのが簡単ではありません。反対にローキーで撮るのは比較的簡単にできるので、是非気軽にチャレンジしてみてください。
ポピー
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■撮影環境:絞り優先・135mm・F1.8・ISO100・1/4000秒
麦畑の中でポツンと咲く赤いポピー。ポピーを撮る時にまず気をつけて欲しいのが、シャッタースピードです。数ある花の中でも特に揺れやすい、風の影響を受けやすい花と言えるでしょう。麦畑の中の一本のポピー。そのまま撮るだけでも絵になるようなシチュエーションでしたが、麦畑の中に光と影がより多く入り混じった部分を切り取ったので良いメリハリがついてくれました。
また、このポピーを真ん中や左に配置すると右にある背の高い草が目立ってしまうため、ポピーの位置はこれがベストだったと思います。麦のボケ具合を考えてこのサイズで切り取りましたが、多少ボケを犠牲にしてでももう少し小さく写せば、ポピーがポツンと咲いているイメージが強調されたかなと思います。
さいごに
今回も最後までお付き合いくださりありがとうございました!だいぶ初夏らしくなり、アジサイもかなり見かける季節となりました。前回の記事、アジサイ・道端に咲く花の撮り方も是非合わせてご覧ください。また次回を楽しみにしていただけると嬉しいです。
■写真家:北村佑介
出版社勤務・埼玉県観光PRフォトグラファーを経て、ドリーミーフォトと呼ばれる花を撮るフォトグラファーとして独立。年間150回の写真教室や、書籍・雑誌・企業・メーカーへの写真提供、イベントでのトークショーをメインに全国で活動中。著書に「花をながめて大切なことに気づく100の言葉」(かんき出版)などがある。