滝・渓流での撮影テクニック|齋藤朱門
はじめに
今回は滝・渓流での撮影方法と必要な機材について紹介したいと思います。滝や渓流は新緑の春から夏にかけて清々しい水の流れを見せてくれます。秋の紅葉や落ち葉と絡めて写すのも醍醐味の一つですね。また、冬は雪景色とともに氷瀑(ひょうばく)が撮影できる場所もあるので、比較的一年中楽しめる撮影スポットだと思います。
滝を撮る
秋田の元滝伏流水で撮影した作品。有名な場所ではありますが、自分なりの構図を探し、上流の滝と支流とのバランスを考えて構図を決めて撮影しました。詳しくは後述しますが、イメージしたとおりの水の流れ・ダイナミックさを表現するためにはシャッタースピードがとても重要になります。
栃木県のスッカン沢で撮影。スッカンブルーと呼ばれる青い水と紅葉のコントラストを意識して撮った一枚。
構図
滝や渓流の場合、水の流れをどう表現するかが最も重要なポイントになるので、あらかじめ画になる構図・流れのパターンをイメージしておくと、撮影ポイントを見つけやすいと思います。例えば、S字や黄金螺旋(おうごんらせん)や三角構図のような配置が当てはまるようなポイントを見つけると構図バランスが良くなります。
有名な青森の渡良瀬渓流で撮影した一枚。紅葉が美しい時期だったこともあり、カラーバランスにも気を配りながら撮影してました。こちらも後述しますが、シャッタースピードだけでなく構図としても工夫しているポイントがあります。
また、この作例では左右の木をわざと入れ込むことで構図の中にフレームを作っています。有名な場所の有名な写真は誰かがバランスの美しい構図を見つけたポイントの一つです。同じような構図で撮ることはとても学びが多いですが、せっかくですので、是非自分なりの美しい構図ポイントも見つけて撮ってみることをオススメします。
シャッタースピード
水流を表現する際に、とても重要になるのがシャッタースピードです。
シャッタースピードを1/13秒、1/3秒、1.3秒と変えて撮った写真を見てみます。
水量・水流の速さによっても表現が変わってくるので、一概に何秒が良いということは言えないのですが、筆者の場合は、1/3秒~0.6秒くらいのシャッタースピードでの表現が水の生き生きとした動きが表現できるので好みです。
NDフィルターをつけて超長秒露光で撮影することで、シルキーな幻想的な雰囲気を表現することもできます。
シャッタースピードを長くする場合、周りの木々などが微風でも動いてしまうので、注意が必要です。シャッタースピードに決まったルールは無いので、好みや表現したいイメージに合わせて調整すると良いですが、シャッタースピードを何秒にするか迷った時は露出ブラケット機能を使って、複数のシャッタースピードが異なるショットを撮っておくと良いです。こうしておくと、後でセレクト時やRAW現像時にそれぞれを比較して一番好みのものを選ぶことができます。
天候と光
筆者の場合、あまり天気が良くない曇りか弱雨の日に滝や渓流へ撮影することが多いです。というのも、天気が良すぎると時間帯によっては水面がギラついてしまったり、苔や木々が乾いてしまうためです。あまりに光がないどんよりとした日も面白くないので、時折雲の隙間から太陽の光が差し込むくらいの日が個人的にはベストです。
場所にもよりますが、よく晴れた日は木漏れ日からの光芒を撮ることもできるので、撮影場所と撮りたいイメージに合った天候の日に撮影するのが良いでしょう。
光と滝の作例
晴れた日でしたが、鬱蒼と木々に囲まれた滝で夕方の時間帯に撮影。ちょうど滝や滝壺周辺の苔に柔らかい光が差し込んでいました。
もともとは曇りの日でしたが、撮影中に雲の合間から日の光が差し込み、苔むす岩をスポット的に照らしてくれた瞬間を捉えた一枚です。
必要な機材
基本的には通常の撮影と同様にカメラ・レンズ・三脚があれば撮影できますが、三脚を水に入れて撮ることが多いので、撮影後はしっかり水を拭き取り乾かすと良いでしょう。
撮影時の光の角度にもよりますが、水面の反射を抑えるためのCPLフィルターは必携です。各社の様々なCPLフィルターがありますが、NDフィルターと同時に使うことができるタイプのものが便利です。
また、シャッタースピードを調整するためにNDフィルターがあると良いでしょう。特に数秒間の超長秒でシルキーに取る場合は必須アイテムです。丸形や角型など様々なタイプがありますが、使用するレンズに合わせて色かぶりやムラの少ないものを選択すると良いでしょう。
最近はバリアブルNDフィルターの性能も良くなってきているようです。バリアブルNDフィルターは減光率を変えたい場合にフィルターの付け直しが不要な可変式になっているので便利です。
ただし、天気や場所にもよりますが、1/3秒~0.6秒くらいのシャッタースピードの場合は、CPLをつけて絞るだけで十分な場合も多いです。
撮影機材ではないですが、滝・渓流撮影の時にあると便利なのが長靴です。場合によっては渓流釣りの方が使っているようなウェーダー(足から太もも、胸、首まで伸びる防水ブーツまたはオーバーオール)があるとさらに安心ですが、撮影ポイントまで距離があるなどで履き続けての移動が難しい場合や、機材を減らしたい時は折りたたみができるコンパクトな長靴があると便利です。
ただし、長靴やウェーダーあると思って油断していると、思わぬ急流や水深が深い場所、滑りやすい場所等もありますので、撮影時は十分に注意してください。カメラ・レンズの水没も注意です。
さいごに
滝・渓流の撮影方法をお伝えしましたが、いかがでしたでしょうか。春夏の緑や花々が美しい季節、秋の紅葉、冬の雪景色と一年中楽しむことができる撮影スポットだと思います。滝・渓流を撮影する機会があれば、是非この記事の内容を参考にしていただけると嬉しいです。
■写真家:齋藤朱門
宮城県出身。都内在住。2013年カリフォルニアにて、あるランドスケープフォトグラファーとの出会いをきっかけにカメラを手に取り活動を始める。海外での活動中に目にした作品の臨場感の素晴らしさに刺激を受け、自らがその場にいるかのような臨場感を出す撮影手法や現像技術の重要性を感じ、独学で風景写真を学ぶ。カメラ誌や書籍での執筆、Web等を通じて自身で学んだ撮影方法やRAW現像テクニックを公開中。
齋藤朱門さんの撮影テクニックの連載記事はこちら
・丘や山での撮影テクニック|齋藤朱門
https://www.kitamura.jp/shasha/article/483573391/
・星景写真の撮影テクニックと機材|齋藤朱門
https://www.kitamura.jp/shasha/article/483154709/
・海での風景撮影テクニック|齋藤朱門
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・冬の風景撮影とテクニック|齋藤朱門
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・望遠ズームレンズで切り取る風景撮影の楽しみ方|齋藤朱門
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