丘や山での撮影テクニック|齋藤朱門
はじめに
今回は丘や山の風景の撮影方法と必要な機材について紹介したいと思います。丘や山は季節ごとに違った表情を見せてくれるので年中撮影が楽しめます。春から初夏の丘は新緑が美しく、秋の紅葉の季節は色とりどりの山肌や森を撮るのも楽しいです。冬は白い雪に覆われた険しい山々の景色も風景写真の醍醐味の一つだと思います。
丘・山を撮る
九州の阿蘇で撮影した一枚。夕日の柔らかく温かい光が遠くの丘を照らしている光景が目に飛び込んできたので、望遠レンズを使って撮影しています。
別の年の初夏に再び阿蘇に訪れた際、さきほどと同じ場所から撮影しています。
冬に訪れた霧ヶ峰にて。朝日に照らさられたススキと遠くに見える富士山が印象的でした。
構図
前者の場合は、ポイントとなる部分を中心にしつつ、丘や山脈が作り出すレイヤーの配置・バランスを意識すると良いでしょう。
また、丘の中腹になにかパターンのようなものを見つけたら、それを望遠レンズで切り取ってみるのも面白いと思います。
2つ目の前景を入れて広角で撮る場合の作例です。
唐松岳からの日の出と雲海を撮影した一枚。朝日が昇り始めるとそれまで濃い雲海で覆われていた山肌が徐々に現れてきました。オレンジ色の光に照らされた岩や山肌を前景とし、遠くの山に見える山々と朝日の構図バランスを意識しています。
筆者は山を主要な被写体ではなく、全体の構成要素の一つとして撮ることが多いのですが、それは、その場の奥行き感・臨場感を意識しつつ各構成要素のバランスを考えて構図を決めると自然とそうなることが多いためと考えています。
天候と光
個人的には雲ひとつなく晴れた天気よりは、ある程度の雲がある天候の方が空にも表情が生まれるので好みなのですが、なかなか狙った天気になることも少ないですよね。そのときの天気や場面に応じて空を入れるバランスや切り取るポイントを変えたりするなど、臨機応変に撮影していくとさまざまな風景が撮影できると考えています。
雨の日は撮るのが難しいですが、雨上がりに発生する霧や靄も美しい光景を生み出してくれる場合があります。
早朝の撮影、現地についたときは少し雨が降っている状況で、もともと撮りたいと考えていたイメージの写真は撮れず少し諦めていましたが、しばらく待っていると時折雲の隙間から差し込む光が予想外の光景を作り出していました。レンズを望遠レンズに変えて撮影した一枚です。
どんよりと曇っている日でしたが、夕日が沈む瞬間に厚い雲の隙間から光が差し込み、あたりをオレンジ色に照らしていました。
絞りとピント位置
絞りやピント位置も構図によって変える必要があります。望遠で切り取る場合はそれほど被写界深度を深くする必要はないので、F8前後のF値で十分な場合が多いでしょう。ピント位置も中心にするのが良いと思います。広角で手前の前景から奥の山々まで、奥行き感があるような感じで撮影する場合は被写界深度をかなり深くする必要が出てきます。パンフォーカスで撮影するために、かなり絞って(F11~F16)、被写界深度が最大になるフォーカス位置にピントを合わせます。パンフォーカスのピント位置を正確に求めるアプリなどもありますが、撮影現場でアプリを使うのが難しい場合、筆者はだいたい画面上の手前1/3くらいの位置を目安にピントを合わせています。
また、レンズにもよりますが、絞ることで太陽の光条(光房)もきれいに出せますので、筆者の場合はかなり絞る(F16くらい)ことが多いです。カメラのフォーカスブラケット機能などを使って複数のピント位置が異なるショットを撮影しておき、後処理で被写界深度合成を行う方法もあります。この場合は、F8くらいの絞り値で、手前、真ん中付近、奥と3~5箇所程度でピント位置を変えたショットを撮っておくと良いと思います。
必要な機材
基本的には通常の撮影と同様にカメラ・レンズ・三脚があれば撮影できますが、特に望遠レンズを使う場合はしっかりとした三脚とレンズサポートを使用し、レンズの微小なブレを軽減すると良いでしょう。シャッターを押す際のブレを軽減するためにレリーズを使用するのも有用です。レンズですが、望遠で切り取る場合は100~400mm、広角で奥行きがあるような写真を撮りたい場合は16~35mmくらいの焦点距離のレンズがおすすめです。
さいごに
今回は筆者なりの丘と山の撮影方法をお伝えしましたが、いかがでしたでしょうか。山や丘の風景は季節を問わずいつでも撮ることができる風景写真の王道ですが、構図や切り取り方を工夫するだけで、さまざまなオリジナルの作品が撮影できると思います。丘や山を撮影する機会があれば、是非この記事の内容を参考にしていただけると嬉しいです。
■写真家:齋藤朱門
宮城県出身。都内在住。2013年カリフォルニアにて、あるランドスケープフォトグラファーとの出会いをきっかけにカメラを手に取り活動を始める。海外での活動中に目にした作品の臨場感の素晴らしさに刺激を受け、自らがその場にいるかのような臨場感を出す撮影手法や現像技術の重要性を感じ、独学で風景写真を学ぶ。カメラ誌や書籍での執筆、Web等を通じて自身で学んだ撮影方法やRAW現像テクニックを公開中。
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・星景写真の撮影テクニックと機材|齋藤朱門
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・滝・渓流での撮影テクニック|齋藤朱門
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