スナップで街めぐり。一瞬の情景を愉しもう。Vol.1|新宿

富久浩二

02_富久浩二さんが新宿大ガードの赤い交差点で撮影した作例.jpg

はじめに

 新宿でスナップを撮影するとしたら皆さんはどのような写真を撮るだろうか。高層ビルやガード、大きな交差点、その交差点を行き交う沢山の人々など、この街らしさはそこかしこにある。今回はそんな新宿の街中で新たな視点を探してスナップを撮ったので、構図の作り方や工夫したところと合わせて紹介したい。

京王デパート前の横断歩道

01_富久浩二さんが京王デパート前の横断歩道で撮影した作例.jpg
■撮影機材:Nikon 1 J3 + 1 NIKKOR VR 10-30mm f/3.5-5.6
■撮影環境:f/6.3 1/15秒 ISO800 露出補正-0.3 焦点距離16mm(35mm判換算で42mm)

 雨の夜、信号が変わるまでの数十秒、真ん中で傘を差しながら信号を待つ女性をどう撮るかでこの写真が決まる。まずはKeioの明かりがついているひさしを真っすぐ綺麗に3つ入れたいと思い全体的な構図作りを行った。次に構図の中で傘を持つ女性のシルエットがしっかりと見えるようにカメラの高さを微調整し、通りの向こう側の人影との間に隙間が出来るようにする。この隙間が非常に大事でとにかくメインの被写体と被らないことを意識した。ここでシャッターを切りたくなるところだが、左右に少し流れた車を入れたいので、シャッタースピードを調整してじっと我慢。そして全てがそろったところでシャッターを切る。予想外の事が起きるのが一番面白い写真になるのだが、この様にすべて考えが纏まって、その通りになるのもまたスナップの面白いところだと思う。

新宿大ガードの赤い交差点

02_富久浩二さんが新宿大ガードの赤い交差点で撮影した作例.jpg
■撮影機材:ソニー α77 + シグマ 8-16mm F4.5-5.6 DC HSM
■撮影環境:f/8 1/800秒 ISO100 露出補正-0.7 焦点距離8mm(35mm判換算で12mm)

 赤い道路に無数のタイヤ痕があったので、それを撮りたいと思った。アクセントをさりげなく入れる事を考え、車だと大きすぎるので自転車がいいかなと思い待つことにした。そこに信号待ちの自転車が現れたので構図づくりをはじめる。交差点の向こう側にはごちゃごちゃした景色があり、そこは入れたくなかったのでカメラを持つ手を上にあげて高い位置からレンズを下向きにして遠くが入らないようにしてから構図を確認。奥行感やバランスを考えると左上の道路の模様は欲しかったのでギリギリ入るようにカメラの向きを微調整する。超広角レンズの端に人や車などを入れると歪んでしまい不自然な形となり、なかなか綺麗な写真にするのは難しいので、腰を境に切り取ることで不自然差を和らげる。上半身の切れてしまったところは影として入れ込んだ。この道路の赤は実際はもう少し柔らかい赤なのだが、ドキッとなるような赤色に編集してインパクトある写真に仕上げた。

新宿大ガードの横断歩道

03_富久浩二さんが新宿大ガードの横断歩道で撮影した作例.jpg
■撮影機材:ソニー α77 + シグマ 8-16mm F4.5-5.6 DC HSM
■撮影環境:f/6.3 1/1000秒 ISO100 露出補正-0.3 焦点距離8mm(35mm判換算で12mm)

 都内でも1番大きな幅と長さのある交差点を超広角レンズの広角端12mmで撮影。カメラは頭より上に持ち上げてレンズを下に向けると横断歩道の射状態が引き立つ。また人がこの位置にいると影が伸びてかっこよくなる。ちょうど信号の変わり際で横断歩道には一人しかいなく、少し駆け足になったところでカメラの性能にまかせて4~5枚を連写、その中から形のいいものを選んだ。人間の反射神経を超えるタイミングが必要な時はカメラ性能に任せるのもありだと思う。

都庁展望台からの運動場

04_富久浩二さんが都庁展望台からの運動場を撮影した作例.jpg
■撮影機材:ソニー α57 + ミノルタ AF200/2.8G

 展望台は遠くの山や景色を見るところというイメージがあると思うが、都心では特に下を見て回ると面白い瞬間がたくさん見つかる。バスケットをしている二人、ボールが浮くとその影が目立つ。なるべくボールと影がわかりやすい位置に来たところでシャッターを切った。また如何にもバスケットしていますといった体勢や動きが出てしまうと狙っている感が出すぎる為、あえて二人が直立している時に撮影。一生懸命さがでない緩い感じに仕上げてみた。

コクーンタワー地下

05_富久浩二さんがコクーンタワー地下を撮影した作例.jpg
■撮影機材:ソニー α7R III + LAOWA 9mm F2.8 ZERO-D
■撮影環境:f/4 1/80秒 ISO100 露出補正-1.7 焦点距離 9mm

 APC-S用の9mmのレンズをフルサイズのカメラに装着してクロップさせずに使用することで、画角はなんとフルサイズで9mm。周辺は真っ黒になるが、元々周辺が暗い場所ではこの様な使い方が可能になる。出来るだけ下がって、余計なものが入りだしたら少し前に出て構図を固定する。その後に人の位置と形を見て撮影した。カラーで撮っているものの、色は少ない方が好きなので彩度を少し下げて仕上げた。

新宿サブナードの通路(地下街)

06_富久浩二さんが新宿サブナードの通路(地下街)で撮影した作例.jpg
■撮影機材:ソニー α700 + ミノルタ AF 35mm F1.4 G
■撮影環境:f/3.2 1/60秒 ISO100 露出補正-0.3 焦点距離35mm(35mm判換算で52mm)

 娘のバレーシューズを買いに出かけた時のこと。四つ並んだバレエの衣装がかわいくディスプレイされているのを見た下の子がお姉ちゃんのバレエの真似をしたところ、お姉ちゃんの怒りを買って、もみ合いになっている場面(笑)。この様な決定的な場面を見てしまうとどうしてもレンズをメインの被写体(子供)に向けてしまいがちだが、そこを我慢して2番目に見てほしい衣装の並びを正面に撮影した。 被写体を追いかけないことによって全体として理想的な構図を守りつつ、瞬間をとらえる写真になったと思う。

新宿のホテルとカラス

07_富久浩二さんが新宿のホテルとカラスを撮影した作例.jpg
■撮影機材:ソニー α57 + ミノルタ AF ZOOM 100-200mm F4.5
■撮影環境:f/10 1/250秒 ISO125 焦点距離140mm(35mm判換算で210mm)

 ビルを撮るときは広角系のレンズを使うことが多いと思うが、望遠ズームでの切り取りも面白い。今回の場合はカラスになるがワンポイントとなるものは遠くの窓となるべく被らないようにする。そして背景ボケを少なくして沢山の窓をくっきり写したいので絞り気味に撮影した。

階段の踊り場

08_富久浩二さんが階段の踊り場を撮影した作例.jpg

 ガラスの反射の中に見つけた蝶々の形。ただカメラをガラスに近づけるだけではなく、そこから回転させたり、ちょっと離したりと調整している。そのままでは手前のガラスに自分の足が映り込んでしまうのでなるべく暗いズボンだったり、カメラバックの裏でガラスの反射をくっきりさせている。また下向きの反射を狙うときは、画角が狭いと窮屈な画になってしまうので、超広角で撮影してみて、余計なものが写る時はトリミングする事をオススメする。

さいごに

09_富久浩二さんが新宿の横断歩道で撮影した作例.jpg
■撮影機材:ソニー α77 + ミノルタ AF200/2.8G
■撮影環境:f/13 1/1000秒 ISO640 焦点距離200mm(35mm判換算で300mm)

 新宿で撮影したスナップ写真はいかがでしたか。瞬間的な出来事をキレイな構図におさめる為に工夫しながら撮影しているので、それらをお伝え出来れば嬉しく思う。普段、生徒さんとの新宿の撮影では、三角ビル、都庁、NSビル(上る)、コクーンタワーの下、大ガードなどを撮影しているので、撮影場所に迷われている方は参考にして欲しい。

■写真家:富久浩二
日々の通勤風景を主に、いつも見ている変わりばえのない、しかし二度とやって来ない一瞬の情景を大切にし、ちょこっと人が入った物語りのある写真をテーマのもとに、人びとの優しく楽しい感情が伝わる事を目標に日々撮影している。子供の頃の目線、何と無く懐かしさを感じて貰える様に、ライブビューを使った低い目線、思い切って背伸びをした様な高さからの撮影が特徴的。

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