ソニー α7 IV レビュー|風景写真家 高橋良典
はじめに
2018年3月発表のベーシック機α7 IIIから4年弱が経過、いつ登場するかと待ちわびていたα7 IVが2021年12月にとうとう発表、発売されました。キャッチコピーは「Beyond Basic」。さて、どれほどの進化を遂げたのか?α7 IIIやその他上位機種との比較を交えて風景写真家目線・静止画目線でのレビューをお届けいたします。
サイズと重量
サイズ感や重量感はほぼ据え置き。αシリーズの特徴でもある軽量・コンパクトさは全く損なわれていません。しいて言えば7mm程、厚みが増していますが、そのおかげでα7 IIIよりホールディングが良くなったと感じました。筆者の手はごく普通の成人男性くらいの大きさですので、多くの方にとっては手にした感触が良いと感じていただけるのではないでしょうか。
外観・操作系
大きな変更点として液晶モニターがチルト式からバリアングル方式になりました。この点については撮影者の好みもあるので一概には言えませんが、私個人としては大歓迎。チルト式モニターでは難しかった縦位置でのローアングル&ハイアングル撮影が容易に出来るようになりました。
【下2枚】バリアングル方式になったことで縦構図時の自由度が増しました。
液晶モニターの画素数はα7 IIIが93万ドット→α7 IVが103万ドットと微増ですが、ファインダーの解像度は236万ドット→368万ドットと大幅アップ。α7 IIIでやや物足りないと感じていた視認性が高まりました。特にMF時、画面の一部を拡大してのピント合わせや撮影後の再生画像チェックが格段に行いやすくなりました。
カメラ右肩部分、露出補正ダイヤルの刻印がなくなり、露出補正以外の機能が割り当て可能になりました。これは歴代αを通して初めてのこと。筆者は露出補正の単位を0.5EVに設定しているため従来の0.3EV刻みのみで機能する露出補正ダイヤルは全く出番がなく使っていませんでした。それだけにこの変更は嬉しいもので早速ISO感度を割り当てたところ、従来、ボタン+ダイヤル操作で行なっていたISOの変更がダイヤル単独で出来るようになり、操作性の大幅アップにつながりました。ダイヤルロック機構が備わっているため勝手に設定が変わってしまう事もありません。ちなみに露出補正はその左隣の後ろダイヤルに割り当てて使っています。
そして2段式のモードダイヤルもαシリーズ初搭載です。上段は従来通り露出モードと撮影設定登録(1)(2)(3)の切り替えが出来ます。(α7 IIIでは(1)(2)の2つでしたがα7 IVは上位機種と同じく3つ登録可能になりました。この点も◎)そして下段に静止画⇔動画モードの切り替えがついたことで動画撮影時も、よりスピーディーな設定が可能になりました。
そしてC1ボタンと録画ボタンの位置が入れ替わり、α7S IIIと同じになりました。私の場合は静止画メインでα7R IVとの併用となるので録画ボタンにWB変更を割り当てて使っています。αシリーズはカスタマイズの自由度が高いので、まず購入したら自分が使いやすいように設定してしまうのがおすすめです。
画質・撮影機能
有効画素数が約2400万画素から900万画素増え3300万画素となりました。引き画の風景写真では細かな絵柄が被写体となるので高画素化は嬉しく感じました。より高画素が欲しい場合はα7R IVを選ぶ手もありますが、通常の使用であれば3300万画素あれば十分に対応できます。また、トリミングやAPS-Cモード使用の場合にも元の画素数が大きくなったことで心強くなりました。
画素数アップにも関わらずダイナミックレンジの広さや高感度性能は、全く損なわれておらず、撮影後のレタッチで少々無理をしても高画質が保たれており安心しました。連写速度も秒間10コマが維持されています。ただし「非圧縮RAW/ロスレス圧縮RAW」に設定した場合のみ連写スピードが遅くなってしまうのは、唯一残念な点だと感じました。
画素数がアップした新開発のセンサーは全倍以上に大伸ばししても安心感があります。
【下2枚】冷え込んだ早朝に霜を撮影。しっかりとした解像性能で冷たさが伝わってくるようです。
【下2枚】輝度差の大きなシーンでもハイライトからシャドウまで諧調描写に優れています。
画像処理エンジンがBIONS X→BIONS XRに進化。それに伴いメニュー画面も大きく変更され上位機種のα1やα7S IIIと同じになりました。正直、α7 IVを使い始めるまでは慣れるのに時間がかかりそうだと思っていたのですが、新メニューはきちんと階層ごとに項目がまとまっているので機能を呼び出しやすく非常に使いやすいものでした。こうなると併用している高画素機α7R IVは旧メニューなので、早くα7RⅤが発売にならないかと期待してしまいます。
また、クリエイティブスタイル→クリエイティブルックと名称が変わりました。こちらもα1やα7S IIIと同様になり、彩度やコントラスト、シャープネス、明瞭度など、より細かな設定が出来るようになっています。
【下2枚】従来機のクリエイティブスタイル「スタンダード」に相当するクリエイティブルック「ST」で撮影。
サザンカの赤色、そして凍てついた水面への映り込みが鮮やかです。
メモリーカードスロットは2スロット。スロット1のみSDカードに比べて書き込み速度が2倍以上のCFexpress Type Aに対応。連写時、非圧縮RAW+JPEG撮影でも828枚の連続記録が可能です。しかし、風景写真家目線でいうなら最も嬉しいポイントはSDカードUHS-Ⅱタイプも使えるということ。確かにCFexpress Type Aを使えば高速書き込みが可能です。ただ、被写体が激しく動くことのない風景撮影においてそこまでの高速連写は不要と考えればSDカードでも十分に対応できます。CFexpress Type Aはまだまだ金額も高いため、今までのSDカードをそのまま使いたい方にもありがたいですね。
それから、レンズ交換時にセンサーがむき出しにならないようシャッターを閉じる機能が追加され、風や雨の中でのレンズ交換に安心感が増しました。ただし、電源オフの状態でレンズキャップをしないまま太陽にレンズを向けるとシャッター破損の恐れがあるのでその点は注意が必要です。バッテリー満充電時の撮影可能枚数はα7 III比で若干少なくなっていますが、特に実写で気になることはありませんでした。充電器は付属しないのでカメラのUSBポート経由での充電となりますが、別売りの充電器を購入した方が便利だと感じました。
悪天候時のレンズ交換でも安心感が増しました。
AFの進化と手ブレ補正
最も進化を感じられるのがAF性能と言っても過言ではないでしょう。風景撮影時のフォーカスモードはAF-Sやダイレクトマニュアルフォーカスモードを使うことが多く、その点ではα7 IIIと大差はないのですが、特筆すべきはAF-Cで被写体を追従する場合です。α7 IIIのロックオンAFはα7 IVではリアルタイムトラッキングに進化。追従精度が大幅アップ。しかも、瞳AF(動物)とリアルタイムトラッキングが併用できるようになりました。
さらに人や動物の瞳AFに加えて、α7 IVでは新たに鳥にも対応。これは今まで最上位機のα1のみに搭載されていた機能です。α7 IIIは今でもなおベーシック機として素晴らしいカメラですが、少しでも動くものを撮る方にはやはりα7 IVをおすすめします。5軸ボディ内手振れ補正は5段の補正効果から5.5段の補正効果にアップグレードされています。
AF-Cで撮影。ソニー公式には鹿はリアルタイム瞳AF(動物)対応外ですが鹿の目を捉え続けてくれました。
鹿が身震いした瞬間にシャッターを切ると鹿の胴体がよじれるような面白い写真となりました。瞳を認識しない状況になってもリアルタイムトラッキングが、そのまま鹿の顔を追従してくれます。高感度にも関わらず十分に実用的な画質が保たれています。
リアルタイム瞳AF(鳥)も試してみましたが、これくらいの大きさでもしっかりと働いてくれました。
まとめ
2021年12月17日の発売日にα7 IVが手元に来てから約1か月が経過。その間、しっかりと使い込みましたが、最上位機種α1譲りの一部機能の搭載など全方位にスキの無いまさに「Beyond Basic」としての本カメラの完成度の高さを感じました。
ここまでのレビューの他にも実際使ってみるとわかるのですが、カメラ全体のレスポンスが相当良くなっています。
・フォーマットのスピードが早くなった
・再生時、拡大したままでもコマ送りが早くなった
・メモリーカードへの書き込みに待たされなくなった
などは使ってすぐに体感することが出来ました。
一度、触れてしまうときっと欲しくなってしまうと思いますので、出費を控えたい方はむしろ手に取らない方が幸せかも(笑)。α7 IVはそれくらい魅力的に仕上がっているカメラだと感じました。
フラッシュを使用して雪を玉ボケで表現しました。同調シャッタースピードは1/250(フルサイズ時、APS-Cモード時は1/320)。最上位機α1のような電子シャッター時のフラッシュには対応していません。
■写真家:高橋良典
(公社)日本写真家協会会員・日本風景写真家協会会員・奈良県美術人協会会員・ソニーイメージングプロサポート会員・αアカデミー講師
α7 IV レビューはこちらの記事でもご覧頂けます。
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