望遠ズームレンズで切り取る風景撮影の楽しみ方|齋藤朱門

齋藤朱門

望遠ズームレンズで切り取る風景撮影の楽しみ方.jpg

はじめに

 今回は望遠ズームレンズを使った風景撮影の楽しみ方について紹介したいと思います。

 風景写真撮影と言うと、広角レンズで広大な景色をダイナミックに切り取るような写真をイメージされる方も多いのかもしれませんが、シーンによっては望遠ズームレンズを使うことで魅力ある風景写真を撮ることもできます。

望遠ズームレンズの使いどころ

 風景撮影における望遠ズームレンズの使いどころは様々ですが、筆者の場合は次のようなシーン・撮り方のケースで使っています。

遠くの風景を切り取る

 遠くにある風景の一部分を切り取る撮り方になります。筆者が望遠ズームレンズを使う場合ではこのケースが多いように思います。

 撮影地で周りをよく見渡し、遠くになにか気になるようなポイントがあれば、その部分を超望遠ズームレンズでクローズアップして切り取ってみます。

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■撮影機材:ソニー α7S + ソニー FE 70-200mm F2.8 GM OSS + 2Xテレコン
■撮影環境:マニュアル露出・310mm・F8・ISO100・1/400秒

表現したい被写体を大きく見せる

 普段は広角レンズで撮るようなシーンでも、望遠ズームレンズを使うことで見せたいポイント・被写体をより迫力ある構図で撮ることができます。

 イタリアのドロミテで撮影した写真ですが、別の撮影地に向かう途中に遠くに見えた山脈と雲と光の作り出す雰囲気が気になり、登山道の途中から望遠ズームレンズで狙って撮っています。

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■撮影機材:ソニー α7R III + シグマ 100-400mm F5-6.3 DG OS HSM
■撮影環境:マニュアル露出・100mm・F6.3・ISO100・1/320秒

圧縮効果を活用する

 望遠ズームレンズを使うと圧縮効果があるため、都市風景でぎゅっと凝縮感を増すことができたり、遠くから山や建物と太陽(月など)を一緒に撮ることで、太陽を大きく見せたりすることができます。

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■撮影機材:ソニー α7R II + ソニー FE 70-200mm F2.8 GM OSS + 2Xテレコン
■撮影環境:マニュアル露出・368mm・F16・ISO100・1/320秒

 雲海と夕日。広大な雲海を広角レンズでも撮影していましたが、日が落ちる直前に雲の隙間から綺麗な夕日が出てきたので、慌てて望遠ズームレンズを装着して撮影した一枚。

 このシーンでは200mmだと不足していたため、2倍テレコンも併用しています。テレコンを持っていると、手軽に焦点距離を2倍まで延長することができるため、望遠ズームレンズと一緒に持っていくことが多いです。

抽象的な表現

 夕日で黄金に輝く海面や、湖面などを望遠ズームレンズでクローズアップして撮ることで、抽象的な表現も可能になります。揺れる水面の場合、シャッタースピードを少し変えただけでも大きく表情が変化するので、いろいろなシャッタースピード設定で撮影してみると面白いと思います。

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■撮影機材:ソニー α7R III + シグマ 100-400mm F5-6.3 DG OS HSM
■撮影環境:マニュアル露出・400mm・F7.1・ISO100・1/320秒

望遠ズームレンズ作例

 熊本・阿蘇にて。広大な阿蘇の景色の中、ふと遠くを見渡した時に、森の中から見えた風景が気になり切り撮った一枚です。

望遠ズームレンズで切り取る風景撮影の楽しみ方10.jpg
■撮影機材:シグマ sd Quattro H + シグマ 100-400mm F5-6.3 DG OS HSM
■撮影環境:マニュアル露出・269mm・F11・ISO100・1/320秒

 早朝の撮影の後、まだ遠くに薄っすらと霧が広がる牧草地帯の中、遠くの霧の中に見えた景色が印象的だったので、それまで使っていた広角レンズを望遠ズームレンズに持ち替えて撮影しました。

 同じシーンでも、望遠ズームレンズを使えば別の切り取り方ができ、大きく印象を変えることもできます。

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■撮影機材:シグマ sd Quattro H + シグマ 100-400mm F5-6.3 DG OS HSM
■撮影環境:マニュアル露出・190mm・F8・ISO100・1.0秒

 熊本・阿蘇にて。360度見渡せる場所から望遠ズームレンズで光があたっているポイントを中心に、バランスの良い構図を決めて撮影しました。

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■撮影機材:ソニー α7R III + ソニー FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS
■撮影環境:マニュアル露出・321mm・F11・ISO100・1/60秒

 夜明けから徐々に濃い霧に包まれる盆地を、山頂付近から望遠ズームレンズで撮影。霧の幻想的な雰囲気が、望遠ズームレンズによってより繊細に捉えることができました。

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■撮影機材:富士フイルム GFX100S + ペンタックス smc FA645 80-160mmF4.5
■撮影環境:マニュアル露出・160mm・F11・ISO100・1.0秒

 秋のカラマツ林。高解像度カメラとの組み合わせで繊細な木々の様子を描写できるのも、望遠ズームレンズの醍醐味です。

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■撮影機材:富士フイルム GFX100S + ペンタックス smc FA645 150-300mmF5.6ED
■撮影環境:マニュアル露出・300mm・F11・ISO100・1/15秒

 こちらは冬のカラマツ林。遠くにカラマツ林が雪と霧氷に覆われた様子が見えたので、車を止めて望遠ズームレンズで撮影しました。

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■撮影機材:富士フイルム GFX100S + タムロン SP150-600mm F/5.6-6.3 Di VC USD
■撮影環境:マニュアル露出・356mm・F16・ISO100・1/35秒

撮り方・テクニック

ブレを抑える

 望遠ズームレンズの場合、広角レンズに比べて焦点距離が長いため、ブレが目立ちやすくなりがちです。また、レンズ自体も大きく重いものが多く、三脚を使っていたとしても、屋外では微小なブレが生じやすいので、注意が必要です。

 ブレを抑えるために、撮影時のシャッタースピードをなるべく短くすることも有用ですが、レンズの重量をしっかりと支えることができる雲台・三脚を使うと良いでしょう。また、レンズフット付きの望遠ズームレンズの場合、レンズフットを使うことで全体の重心バランスが良くなります。特に鏡筒が長いため、レンズサポートも併用すると尚良いです。

切り取りポイントの見つけ方

 上にも書きましたが、撮影地では遠くの方にも意識を持って観察することで、時折、普段は気づかないような遠くの美しい風景を見つけることがあります。

 肉眼では小さくてはっきり見えないものも、なんだろう?と思ったら望遠ズームレンズで覗いてみると意外と印象的なシーンが見えることもあるので、ぜひ望遠ズームレンズで周りを探してみることをオススメします。

 超高画素カメラを使用している場合は、広めに撮っておいて、後でクロップすることでも望遠ズームレンズと同じ効果を得られますが、どうしても画質が下がりますし、プリントで引き伸ばしたい時に不利になるので、なるべく撮影時に構図を決めたほうが良いでしょう。

さいごに

 望遠ズームレンズは大きく重いものが多く、撮影場所に持っていくのがつい億劫になりがちですが、広角レンズとはまた違った風景撮影の楽しみ方ができますので、無理のない範囲でカメラバッグには入れておくと、思わぬところで普段とは違った撮影ができることがあります。

 ぜひ、望遠ズームレンズでも色々な風景を切り取ってみてください。また、この記事の内容が風景撮影の参考になると嬉しいです。

齋藤朱門さんの撮影テクニック連載記事はこちら

・丘や山での撮影テクニック|齋藤朱門
https://www.kitamura.jp/shasha/article/483573391/

・星景写真の撮影テクニックと機材|齋藤朱門
https://www.kitamura.jp/shasha/article/483154709/

・滝・渓流での撮影テクニック|齋藤朱門
https://www.kitamura.jp/shasha/article/482531059/

・海での風景撮影テクニック|齋藤朱門
https://www.kitamura.jp/shasha/article/484586478/

・冬の風景撮影とテクニック|齋藤朱門
https://www.kitamura.jp/shasha/article/485081309/

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