【オールドレンズ】和製ズミクロンと呼ばれるレンズ「RICOH XR RIKENON 50mm F2」
はじめに
今回のオールドレンズは、和製ズミクロンとも呼ばれている 「RICOH XR RIKENON 50mm F2」をピックアップしてみました。この「RICOH XR RIKENON 50mm F2」は、製造年の違いによって
・XR RIKENON 50mm F2(初期型)
・XR RIKENON 50mm F2 L
・RIKENON 50mm F2
・XR RIKENON 50mm F2 P
これら4種類のレンズが存在します。今回は2代目の「XR RIKENON 50mm F2 L」を使用し特徴とその実際の写りを紹介したいと思います。
RICOH XR RIKENON 50mm F2の魅力
「XR RIKENON 50mm F2」は、一眼レフのフイルムカメラ「RICOH XR500」の発売(1978年)と共に発売されたレンズです。カメラ本体「RICOH XR500」と「XR RIKENON 50mm F2」のセットで定価39,800円という驚きの低価格で販売されていました。なので、当時の「XR RIKENON 50mm F2」の評価は安かろう・悪かろうといった感じのものでした。
筆者がちょうどカメラに興味を持ち始めた頃のカメラで「RICOH XR500」はしっかりと記憶に残っているカメラですが、レンズの「XR RIKENON 50mm F2」は当時まったく印象にないレンズで、安い標準レンズという印象しかありませんでした。しかし40年ほど時を経てオールドレンズのブームもあって、「和製ズミクロン」などど呼ばれるようになり注目を浴びたレンズです。
「ズミクロン」とは開放値F2.0のライカのレンズの名称で、ライカの「ズミクロン 50mm F2」の写りに匹敵するとするのではと言われたのが人気になったきっかけのようです。中古相場でも10倍以上の価格差が付くようなレンズですので、正直「ズミクロン 50mm F2」を超えるような光学性能は持っているとは個人的には思っていません。どちらのレンズもそれ相応の年月を経ているレンズなので、レンズ個体状態によってその写りにはいろいろな差が出るので比較するのも少し難しいからです。
しかし「XR RIKENON 50mm F2」は中古相場も状態にもよりますが、10,000円以内で購入できるものも多く、「和製ズミクロン」と呼ばれるレンズに興味が湧くのは必然だと思います。
「XR RIKENON 50mm F2」が和製ズミクロンと呼ばれる事で人気があるのですが、すべてのタイプで呼ばれているわけではありません。特に人気があるのが、「XR RIKENON 50mm F2(初期型)」と「XR RIKENON 50mm F2 L」になります。
その理由は、このレンズの製造元が大きな要因になります。「XR RIKENON 50mm F2(初期型)」と「XR RIKENON 50mm F2 L」は製造元が「富岡光学」製です。この富岡光学製のレンズはオールドレンズマニアの中では非常に評価の高いレンズになっており、人気のあるレンズになっています。
富岡光学製造のレンズで有名なものは、リコーのレンズ以外にも「CONTAX Carl Zeiss Planar 50mm F1.4」(ヤシカ/コンタックスマウント)などのレンズがあります。「XR RIKENON 50mm F2(初期型)」と「XR RIKENON 50mm F2 L」以外の「RIKENON 50mm F2」と「XR RIKENON 50mm F2 P」の製造元は富岡光学ではない為、残念ながら和製ズミクロンとは呼ばれる事はないと思います。
富岡光学製・和製ズミクロンと呼ばれる「XR RIKENON 50mm F2(初期型)」と「XR RIKENON 50mm F2 L」でも、レンズの仕様は異なっています。「XR RIKENON 50mm F2(初期型)」は筐体が金属製、最短撮影距離も0.45m。「XR RIKENON 50mm F2 L」は筐体にプラスティックパーツを使用し、最短撮影距離が0.60mとなっています。
この2本で比べると、最短撮影距離も短く金属製筐体の「XR RIKENON 50mm F2(初期型)」の方は人気が高く、中古価格相場の値段も高くなります。どのタイプをセレクトするか購入する際には、タイプを良く確認する必要があるレンズです。
また、もともとが廉価でカメラとセット販売されていたレンズなので、程度のいいものを見つけるのもなかなか難しいかもしれません。曇りやカビなどの有無をしっかりと確認して購入したいですね。
カビや曇りがあるレンズは写りに大きく影響がでます。もちろん、カビや曇りがないレンズがベストですが、オールドレンズでは経年劣化も含め多かれ少なかれカビや曇りが発生している個体が多いです。価格とレンズの程度をよく吟味して購入する事が重要です。
今回使用したマウントアダプターは、「TECHART LM-EA7」と「K&F Concept KF-PKM2」を合わせて使用して撮影をしてみました。この「TECHART LM-EA7」マウントアダプターはマニュアルのオールドレンズをオートフォーカスとして使用できる面白いマウントアダプターです。このマウントアダプターのレビューに関しては、また機会があれば詳しくご紹介したいと思います。
※「RICOH XR RIKENON 50mm F2 L」レンズは、Kマウントです。
RICOH XR RIKENON 50mm F2 L で街中スナップ撮影
「RICOH XR RIKENON 50mm F2 L」レンズは5群6枚の構成で、印象は標準の50mmレンズとしては少し大人しめの発色とニュートラルなボケで癖のない絵が撮れるレンズといった感じです。
当たり前ですが絞れば全体的にシャープさは増しますし、開放で撮ればオールドレンズらしい周辺の甘さが発生します。レンズの状態(くもりなどがある場合)によっては、もっと柔らかい感じになる事もありますが、当時の販売価格も考慮しても十分に高いスペックを有している感じです。
絞り開放で撮影すれば前後に癖の少ないボケを演出し、ピントのあった面を上手く引き立ててくれます。
夜のスナップ撮影でオールドレンズをミラーレス機で撮影すれば、フィルムカメラと違ってISO感度を随時変更でき、ブレの防止に対応できるメリットを大きく感じます。また、カメラボディの手ブレ補正効果を使うことができるので、スローシャッターで手持ち撮影する場合も心強いですね。
上の写真のイルミネーションの光源部分を拡大して見てもらうとわかりますが、「RICOH XR RIKENON 50mm F2 L」の絞り羽根の枚数の特徴がみてとれます。「RICOH XR RIKENON 50mm F2 L」の絞り羽根枚数は6枚。絞って撮影した場合には、点光源部分に6本の光芒が表現されます。ちょうどクロスフィルター(6本線)を使ったような感じに撮影することができます。
最近のレンズは絞り羽根枚数はもう少し多いものがほとんどです。また、絞り羽根が奇数の場合の光芒は倍数(9枚であれば18本)になってしまって、少しうるさくなってします、絞り羽根6枚のレンズはイルミネーション撮影などにもおすすめです。
ただ良い事だけではありません。絞り羽根の枚数が少ないと丸ボケの演出が難しくなります。絞り開放で撮影すれば丸ボケを出す事ができますが、絞って撮影すると6角形のボケが発生します。6角形のボケを分かりやすくする為に、ピントを最短撮影距離にしてボカして撮影をしてみました。
RICOH XR RIKENON 50mm F2 L で世界遺産の富岡製糸場を撮影
所用で群馬県に行くことがあったので、世界遺産・国宝の「富岡製糸場」に寄って撮影をしてみました。2014年に世界遺産に登録された際はかなりの観光客で溢れかえっていたのですが、筆者が今回立ち寄った日はお天気も悪い平日で閑散としていました。
どんよりとした冬の曇り空の下、薄暗い室内の「RICOH XR RIKENON 50mm F2 L」での撮影は、よりニュートラル感が増し歴史あるものの重みを写し込んでくれる感じを受けました。この様な被写体を撮影する機会があれば、ぜひオールドレンズを使って撮影してみて欲しい。最新のレンズとは違った雰囲気ある写真を撮ることが可能です。
しっかりと絞って撮影した時の解像力は周辺部でも落ちることなく描写し、スペックの高さをうかがわせますね。
まとめ
「和製ズミクロン」とも呼ばれるレンズ「RICOH XR RIKENON 50mm F2 L」、写りをみて皆さんはどう感じられたでしょうか?オールドレンズらしさをしっかりと感じながらも、どこか現代的なレンズのような写りを感じ取ることができるレンズの様な感じがしました。
夜の都会風景を絞って撮れば、しっかりとしたシャープな直線を描きつつも6本線の控えめな光芒を演出する事ができ、いろいろなシーン・スナップで使いやすいレンズです。状態の良い「RICOH XR RIKENON 50mm F2 L」を見つけたら、是非オールドレンズのコレクションに加えてみてはどうでしょうか。
■写真家:坂井田富三
写真小売業会で27年勤務したのち独立しフリーランスカメラマンとして活動中。 撮影ジャンルは、スポーツ・モータースポーツ、ネイチャー・ペット・動物・風景写真を中心に撮影。第48回キヤノンフォトコンテスト スポーツ/モータースポーツ部門で大賞を受賞。
オールドレンズ関連記事はこちら
■マウントアダプターを使ってオールドレンズを楽しんでみませんか?
https://www.kitamura.jp/shasha/article/483200571-20210904/
■初めてのオールドレンズにおすすめ!
ツアイスレンズ コンタックス「プラナー T* G 45/2」「ビオゴン T* G 28/2.8」
https://www.kitamura.jp/shasha/article/483729656/
■【オールドレンズレビュー】ニコン NIKKOR-S・C Auto 55mm F1.2|憧れのF1.2大口径レンズ
https://www.kitamura.jp/shasha/article/484178734/
■オールドレンズを手軽にはじめる最初の一本におすすめ!|ペンタックス Super Takumar 55mm F1.8
https://www.kitamura.jp/shasha/article/484936130/
■【オールドレンズ】鷹の目と呼ばれる「Carl Zeiss Tessar T* 45mm F2.8」
https://www.kitamura.jp/shasha/article/485248090/