OM SYSTEM OM-1×木村琢磨|正統進化を遂げた新ブランド初のフラグシップ機

木村琢磨

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はじめに

 OMデジタルソリューションズが発表した新たなブランド、「OM SYSTEM」初のフラグシップ機である「OM-1」がついにその全貌を見せた。OM SYSTEM初のフラグシップ機にOM-1という名称が付けられたことからも、OM SYSTEMの本気度がひしひしと伝わってくる。

 OM-1といえば1972年にオリンパスから発表された、世界最小最軽量の35mm一眼レフ(1972年当時)が真っ先に思い浮かぶ人も多いのではないだろうか。新ブランド初のフラグシップ機にOM-1を命名したことは、まさに「挑戦と継承」だ。今回は発売に先駆けOM-1をお借りすることができたので使用感をレビューしていく。

正統進化したボディ

 OM-1を初めて手に取った時、何の違和感も感じなかった。愛用しているOM-D E-M1シリーズのボディを彷彿とさせる、手に馴染む形状やバランスがそのままOM-1に引き継がれている。このボディバランスはフラグシップでは特に重要で、買い換えてもそのまま違和感なく使えることはカメラに慣れる時間を省略することができるため即戦力となる。

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E-M1シリーズのユーザーであれば違和感なく使いこなせるボディ形状。PROレンズの中でも人気の高いM.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PROやM.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PROとのバランスもちょうどいい。
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OM-1背面
ボタン配置はE-M1 Mark IIIを踏襲。OM-1では新たにAF-ONボタンが搭載されたので親指AF派の人には嬉しいポイント。
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E-M1シリーズではお馴染みのバリアングルモニターが引き続き採用されている。チルト式と意見が分かれるが、私としてはには縦構図、横構図どちらでもモニターが見えるバリアングル方式の方が恩恵があるのでバリアングル派。裏返すことでモニターを保護できるのも良い。
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OM-1軍艦部
フロントダイヤルはレリーズボタン一体型ではなくグリップ先端に搭載。E-M1XとE-M1 Mark IIIを足したようなデザイン。OM-1からRECボタンにハイレゾショットの切り替えが割り当てられている。

 ボタン配置は今までE-M1シリーズを使ってきた人ならすんなり使い始められるはずだ。ISOボタンが独立しているので、ISO感度を頻繁に変更する人には嬉しい配慮だ。個人的に重宝しているE-M1Xから搭載されたマルチセレクターも引き続き搭載されており、ピント合わせがAFメインの人にとってはかなり快適だ。背面液晶はE-M1シリーズと同じくバリアングルモニターで、縦横問わず自由なアングルで撮影可能だ。タッチパネルも感度が良く快適だ。

 そして、今回特に気に入っているのがファインダーだ。覗いた瞬間そのリアルさに驚かされた。ライトボックスに載せられたポジフィルムをルーペで覗いたときのようなリアルさがそこにあった。ファインダーのスペックとしては、解像度が236万ドットから576万ドットへと大幅に向上した。フレームレートは120fps、表示タイムラグは0.005秒とどのジャンルを撮影する場合でも恩恵があるスペックに仕上がっている。

 とにかく発色がいいので、撮影していてモチベーションが上がるので撮影そのものが楽しい。ファインダーの形状も大きく変化しているので、是非実機でそのファインダーの美しさを体験して欲しい。

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バッテリーは新型になりバッテリーライフも大幅に向上した。約520枚撮影可能だが実際に使用してみて600枚以上撮影してもバッテリー切れになることはなかった。PD対応なので移動中にモバイルバッテリーで充電も可能なのでバッテリー切れの心配はほとんどない。
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UHS-II対応ダブルSDカードスロットなのでバックアップも完璧だ。OM-1の性能をフルで引き出すにはUHS-IIのSDカードを使用すること。

 OM-1ではバッテリーも新型になっている。バッテリーライフが大幅に向上しており、撮影に夢中になっていていつの間にかバッテリー残量がゼロ…なんてことがほとんどない。実際に使用してみてバッテリーが完全に空になったことは一度もなかった。移動中や撮影をしていない時にモバイルバッテリーで充電もできるので、旅行に持ち出す時でも予備バッテリーはなくても問題ないくらいだ。

 SDカードスロットは引き続きダブルスロットが搭載されている。E-M1Xと同じく両スロットともUHS-II対応だ。OM-1の性能をフルに引き出すのであれば、両スロットにUHS-IIのSDカードを使いたい。OM-1を使うときはボディに64GB×2枚、予備に64GB×2枚の計4枚あるとちょうど良い。

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水浴びくらいでは撮影中断不要な防滴性能。もはや防水と言っても良いくらいだが…。

 そしてOM-Dユーザーであれば説明しなくても良いくらいだが、OM SYSTEMのカメラといえば防塵・防滴の性能が尋常ではない。防塵・防滴等級IP53、耐低温 -10℃ととにかくフィールドを選ばないスペックなので、まずは撮る側がその環境に耐えられるように鍛えておかなければいけない…。カメラがあっても撮れなければ意味がないので、どんな条件でも撮影ができる安心感がOM-1にはある。

大幅に向上したスペック

 OM-1はボディだけではなく中身も大きく進化。センサーは新型になりエンジンも新エンジンTruePic Xへと進化している。特に新エンジンの恩恵はカメラ全体の処理速度向上にも寄与しており、一度OM-1を使うと旧機種にはもう戻れないくらいの差を感じる。

特に注目のスペックを書き出してみると…

新センサー:画素数約2000万画素
ハイレゾショット:手持ちハイレゾ約5000万画素・三脚ハイレゾ約8000万画素
ライブND:ND2~64
演算処理速度:約300%向上
手ぶれ補正:最大8段
新AF:クアッドピクセルAF・オールクロスセンサー・AF低輝度限界-8EV
AFエリア:1053点 100%カバー・カスタムAFエリア
連写:AF/AE追従 50コマ/秒・AF/AE固定 120コマ/秒・ブラックアウトフリー
顔・瞳認識AF:TruePic Xによる高速演算
AI被写体認識AF:8種(フォーミュラーカー、バイク、飛行機、ヘリコプター、鉄道、鳥、犬、猫)
プロキャプチャー:最高120コマ/秒 (AF/AE固定) 、50コマ/秒(AF/AE追従)
動画:4K60p 10bit/FHD240p/H.265対応/OM-Log/HLG動画/Apple ProRes RAW外部記録 12bit
…etc
と、ざっと書き出しただけでもかなりの量となる。

 画質など実写のインプレッションについては後述させていただくが、センサーとエンジンが新型になったことで基本画質も大きく向上している。画素数は引き続き2000万画素だが、過度なトリミングなどしない限り大判プリントでも十分対応できる。過去に個展でB0サイズ(1030 × 1456mm)にプリントして展示をしたこともあるが、特別画素数が足りないということはなかった。風景写真であればハイレゾショットも使えるので、画素数を求める場合はハイレゾショットを積極的に活用しよう。ハイレゾショットといえば撮影後に処理時間が発生していたが、OM-1ではその処理時間も大幅に短縮されている。

■ハイレゾショット処理時間の比較

OM-1の処理速度は圧倒的だ。E-M1Xを使っているときは処理時間はそんなに気にしていなかったが、OM-1の速さを体感するとE-M1Xの処理速度に耐えられないほど…。OM-1では手持ちハイレゾがデフォルトでいいくらいだ。

 AFエリアは1053点あり、画面内を100%カバーしているので被写体がどこにいても対応できる。AFの速度、正確性、追従性能も大幅に向上し、よりシャッターチャンスに強いカメラに仕上がっている。C-AF追従性能も強力で、激しい動きをする被写体でも一度捕らえるとしっかりと追従してくれる。風景やスナップでもC-AFでピントを合わせてAF半押ししたまま構図を決めるという使い方も可能だ。

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AFエリアは既存の6種類に加えて使い方に合わせてカスタムも可能。個人的によく使うのはSingleとCrossの2種類。
C-AF追従性能も大きく進化している。意地悪なカメラの動きにもしっかりと追従している。

 この強力なAF性能に加えて、AF/AE追従 50コマ/秒+ブラックアウトフリーと連写性能も向上しているので動体をメインに撮影している人には恩恵が大きいだろう。AF/AE固定であれば120コマ/秒と超高速連写も可能なので、まさに一瞬を写し止めることができる。

 さらに、OM-1は動画性能も大きく進化しムービーカメラとしても活躍してくれる。スチルとムービー両方撮影する私としては動画の性能も大きく向上したのは嬉しい。4K60p10bitでの収録やH.265への対応は、スチルはもちろん動画にもしっかりと力を入れていきますというメッセージとして受け取れる。

 OM-1には超強力な手ぶれ補正が搭載されているので動画撮影でもその効果は絶大。簡易的なジンバルがボディ内に入っていると言ってもいいだろう。ボディ内補正なので全てのレンズで手ぶれ補正が効くので撮影の自由度はかなり高い。ラン&ガンの様なカメラを持って走り回るような撮影ではOM-1は最高のパフォーマンスを発揮してくれる。

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私のOM-1での動画撮影スタイル。簡易的なリグを組んで三脚は使用せず手持ちでの撮影が多い。機動力の高いコンパクトな機材は現場で思い浮かんだアイデアをすぐに実現できる。

どこにでも持ち歩ける高画質・高性能

 OM-1は処理速度の向上に加えて画質も大きく進化している。最初に思ったのは色のノリが今までと違う点、そして高感度耐性が飛躍的に向上したこと。E-M1XやE-M1 Mark IIIと比較すると2段分くらい向上している。ディティールはもちろん、高感度での撮影でも色が安定しているので高感度ぽさがかなり減った。今回はOM-1のオールマイティーさを見ていただくために、本来であれば条件があまり良くないシーンも高感度を使用して撮影している。

 さらに、ハイレゾショットで撮影するとより高感度ぽさがなくなるので、日が暮れての風景写真や暗所での撮影は無理に低感度でスローシャッターで撮影するよりも、被写体が静物の場合は高感度+手持ちハイレゾでの撮影をオススメする。

 今回紹介する作例は全てカメラ内で生成されたJPEGとなっているので、OM-1の絵作りや特性を見ていただけたらと思う。

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■撮影機材:OM SYSTEM OM-1+M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PRO
■撮影環境:f/8.0 1/40秒 ISO200 焦点距離8mm(35mm判換算 16mm) 三脚ハイレゾショットにて撮影

OM-1で撮影する風景は色鮮やかだ。彩度を強めても色の破堤が少なくより作風の自由度が増している。私の使い方は基本はカラークリエーターかポップアートIIを使うことが多く、特にカラークリエーターは色を楽しみたい人にはぴったりだ。アートフィルターではハイレゾショットが使えないが(PCでのRAW現像では可能)カラークリエーターとハイレゾショットは併用可能だ。

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■撮影機材:OM SYSTEM OM-1+M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO
■撮影環境:f/8.0 1/10秒 ISO200 焦点距離12mm(35mm判換算 24mm) 三脚ハイレゾショットにて撮影

三脚ハイレゾショットで撮影することで約8000万画素の超高解像度撮影が行える。複数枚の画像を撮影するマルチショットであるため動体では難しいが、風景であればほとんどのシーンで使用可能だ。葉の揺れや川の流れくらいであれば動体補正をしてくれるため、スローシャッターの様な表現になる。

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■撮影機材:OM SYSTEM OM-1+M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO
■撮影環境:f/4.0 1/200秒 ISO200 焦点距離34mm(35mm判換算 68mm) 手持ちハイレゾショットにて撮影

OM-1で撮影した写真はずっと見ていたくなるような気持ち良さがある。OM-1は私が愛用しているM.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PROの性能を引き出してくれる。ズームレンズとは思えない写り。

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■撮影機材:OM SYSTEM OM-1+M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO
■撮影環境:f/4.0 1/3200秒 ISO3200 焦点距離100mm(35mm判換算 200mm) SH1連写 AF/AE固定 120コマ/秒

ISO感度を3200まで上げて撮影。今までであれば使うのを躊躇していた感度だが、OM-1では安心して高感度も使用できる。おかげで開放F4.0でも暗いと感じることがほとんどない。

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■撮影機材:OM SYSTEM OM-1+M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO
■撮影環境:f/5.6 1/320秒 ISO200 焦点距離31mm(35mm判換算 62mm) 手持ちハイレゾショットにて撮影

ハイレゾショットがRECボタンに割り振られているので、瞬時に通常モードとハイレゾショットを切り替えることができる。ハイレゾショットの処理時間が短縮されたこともあり、より気軽にハイレゾショットを使って撮影して欲しいというメッセージなのかもしれない。

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■撮影機材:OM SYSTEM OM-1+M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO
■撮影環境:f/4.0 1/4000秒 ISO800 焦点距離12mm(35mm判換算 24mm) SH1連写 AF/AE固定 120コマ/秒

120コマ/秒の高速連写で撮影して後からベストな一枚をチョイスした。雨雲の下での撮影、雨に打たれながら低照度下での撮影だったが、波のブレを防ぐためISO感度を800まで上げてシャッタースピードを稼いだ。ISO800程度では画質の変化はほとんど見られない。

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■撮影機材:OM SYSTEM OM-1+M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO
■撮影環境:f/8.0 1/50秒 ISO250 焦点距離12mm(35mm判換算 24mm) 手持ちハイレゾショットにて撮影

体が飛ばされそうなほどの砂嵐が吹き荒れるコンディションの中でも安心して撮影ができた。OM-1の防塵性能があってこその一枚となった。

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■撮影機材:OM SYSTEM OM-1+M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO
■撮影環境:f/4.0 1/500秒 ISO200 焦点距離12mm(35mm判換算 24mm)

OM-1はとにかく色が美しい。私の場合は色を強めに表現することが多いので発色の良さはありがたい。色の階調・繋がりが見ていて気持ちがいい。

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■撮影機材:OM SYSTEM OM-1+M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO
■撮影環境:f/5.6 1/200秒 ISO200 焦点距離12mm(35mm判換算 24mm) 手持ちハイレゾ使用

解像感、ダイナミックレンジ、色ノリの良さが向上している。ファインダーの良さも相まって撮影しながらその違いを体感した。手持ちハイレゾショットの処理時間が大幅に短縮されたことで積極的にハイレゾ撮影を使いたくなる。

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■撮影機材:OM SYSTEM OM-1+M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO
■撮影環境:f/5.6 1/500秒 ISO200 焦点距離34mm(35mm判換算 68mm)

雪の鳥取砂丘。階調表現が向上したことでフラットなシーンで立体感を感じる写りに。

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■撮影機材:OM SYSTEM OM-1+M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PRO
■撮影環境:f/8.0 1/3200秒 ISO200 焦点距離25mm(35mm判換算 50mm) 手持ちハイレゾショットにて撮影

氷点下の撮影環境でも安定した動作は言うまでもなく。ただ高画質だけではなく、その高画質を生かすためのボディ性能も大切なスペックだ。カメラに負けない様に体力づくりをしておきたいところ。

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■撮影機材:OM SYSTEM OM-1+M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PRO
■撮影環境:f/5.6 1/125秒 ISO200 焦点距離8mm(35mm判換算 16mm) 手持ちハイレゾショットにて撮影

風景がメインであれば手持ちハイレゾショットをデフォルトの設定にしておくのも良い。約5000万画素の解像感とダイナミックレンジの広さはセンサーサイズの壁を越える表現力だ。

 OM-1は高感度だけでなく常用する低感度の画質も良くなっている。E-M1XやE-M1 Mark IIIと比較しても、抜けの良さやより繊細な表現力を有している様に思う。単純に画質=画素数と捉えられがちだが、ただ画素数が多いだけではなくその画素数を最大限に生かした絵づくりであることが重要だ。同じ2000万画素でもOM-1は更なる高画質化をしたことでハイレゾショットの画質も向上し、高感度撮影でのディティールや色の再現性も相乗的に改善されている。

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■撮影機材:OM SYSTEM OM-1+M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO
■撮影環境:f/4.0 1/50秒 ISO6400 焦点距離12mm(35mm判換算 24mm) 手持ちハイレゾショットにて撮影

マイクロフォーサーズユーザーであればISO6400は避けて通る感度かもしれない。私もISO6400は余程のことがない限りは使うことがない感度だが、OM-1の高感度画質を見て考えが変わった。高感度画質が良くなったことでF4.0通しのレンズの出番がさらに増えることになった。

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■撮影機材:OM SYSTEM OM-1+M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PRO
■撮影環境:f/4.0 1/1000秒 ISO6400 焦点距離25mm(35mm判換算 50mm)

雨が降る森の中での撮影。かなり暗い環境下だが、F4.0のレンズでもISO6400まで上げることでシャッタースピードを1/1000秒を稼ぐことができる。高感度ぽさがかなり軽減されているのでパッと見ただけではISO800程度にも見える。

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■撮影機材:OM SYSTEM OM-1+M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PRO
■撮影環境:f/4.0 1/1000秒 ISO3200 焦点距離8mm(35mm判換算 16mm)

新センサーと新エンジンの効果は絶大で、OM-1を使っていると何世代か飛び越してしまった様な感覚だ。特に最新のレンズで撮影するとより画質が際立つ。M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PROはOM-1と組み合わせると最高のパフォーマンスを発揮してくれる。

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■撮影機材:OM SYSTEM OM-1+M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PRO
■撮影環境:f/4.0 1/1000秒 ISO6400 焦点距離25mm(35mm判換算 50mm)

高速シャッタースピードで水面の波紋を表現するためにISO6400まで感度を上げた。よりベストな瞬間を確実に抑えるために時間を巻き戻せるプロキャプチャーSH1(120コマ/秒モード)で撮影した。

 OM-1にはE-M1シリーズでも人気の高いライブNDや深度合成機能も引き続き搭載されている。ライブNDに至ってはE-M1XやE-M1 Mark IIIではND32が上限だったが、OM-1ではND64まで拡張されている。ライブNDとはカメラ内での処理でNDフィルターを使用した様なスローシャッターの効果を得る機能で、NDフィルターを使用することなく日中でもスローシャッターを切ることが可能だ。

 NDフィルターは経年劣化による変色、レンズのフィルター径ごとに買い揃えなければいけない、装着の手間などがあるがライブNDを使うことで経年劣化の心配もなく、メニューからライブNDを選ぶだけですぐにモードが切り替わる。頻繁に使う人であればボタンをカスタムすることでワンアクションでライブNDを呼び出せる。

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■撮影機材:OM SYSTEM OM-1+M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO
■撮影環境:f/5.6 60秒 ISO200 焦点距離17mm(35mm判換算 34mm)ライブND64使用

夕暮れ時の海岸で波を抽象化するためにライブNDを使用した。通常であればシャッタースピード1秒のところ、ライブND64を使うことで60秒のスローシャッターを切ることができた。

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■撮影機材:OM SYSTEM OM-1+M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO
■撮影環境:f/8.0 4秒 ISO200 焦点距離12mm(35mm判換算 24mm)ライブND64使用

まだ陽がある状況だったので通常であれば1/15秒のシャッタースピードとなるところ、ライブND64を使うことでシャッタースピードを4秒にまで落とすことができた。4秒のスローシャッターのおかげで波の軌跡を表現することができた。

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■撮影機材:OM SYSTEM OM-1+M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO
■撮影環境:f/8.0 20秒 ISO200 焦点距離70mm(35mm判換算 140mm)ライブND64使用

スローシャッターで背景の植物をブレさせることで主役の木を引き立てた。NDフィルターとライブNDの合わせ技で、日中でも20秒のスローシャッターを切ることができる。ライブNDはNDフィルターの拡張機能としても有効的で、手持ちのNDフィルターに+ND2~64の効果を付加させる感覚だ。

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■撮影機材:OM SYSTEM OM-1+M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PRO
■撮影環境:f/8.0 5秒 ISO200 焦点距離9mm(35mm判換算 18mm)ライブND64使用

スローシャッターといえばやはり川や滝などの水の流れを抽象化するのが定番だ。OM-1は高速シャッターからスローシャッターまで、多彩な機能で表現することができるオールマイティーなカメラだ。

 深度合成はE-M1ユーザーにはおなじみの機能の一つだ。ピント位置をずらした複数枚の画像を合成することで、物理的には不可能な強烈なパンフォーカスを作り出すことが可能となる。OM SYSTEMにはティルト・シフトレンズがラインナップされていないため、深度合成機能はありがたい。しっかりホールドして撮影することで手持ちでも効果を発揮してくれる。

 深度合成は画像合成時若干トリミングされてしまうため、広い景色で深度合成をしたい場合は気持ち広めのレンズを使用すると良い。自動でトリミングされるが、深度合成時には記録される範囲が画面内にガイドで表示されるので厳密なフレーミングも可能だ。広角をメインに考えている人であれば、M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PROがマクロにも強く広角~標準までカバーしているのでかなり使い勝手が良い。

 OM-1では画像処理で再現する機能のことをコンピュテーショナルフォトグラフィと呼んでおり、聴き馴染みがない人もいるかもしれないが、実はみなさんが使用しているスマホの写真などはほとんどコンピュテーショナルフォトグラフィと呼んで良い。私はE-300(2005年発売)からオリンパスカメラの愛用者だが、オリンパスは昔からアートフィルターであったりライブビューであったり今となっては当たり前になっている機能を真っ先に取り入れたメーカーでもある。

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上:深度合成なし 下:深度合成あり
■撮影機材:OM SYSTEM OM-1+M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PRO
■撮影環境:f/5.6 1/10秒 ISO200 焦点距離8mm(35mm判換算 16mm)深度合成機能使用

マイクロフォーサーズは被写界深度が深いためパンフォーカスを得やすいが、マクロ域~遠景までピントを合わせるとなると流石に難しい。深度合成機能を使うことで物理的には不可能な強烈なパンフォーカスを生み出すことができるため、まるで絵画を見ているような不思議な感覚になる。

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左:深度合成なし 右:深度合成あり
■撮影機材:OM SYSTEM OM-1+M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PRO
■撮影環境:f/5.6 0.4秒 ISO200 焦点距離8mm(35mm判換算 16mm)深度合成機能使用

8mmの超広角でもマクロ域になると被写界深度は浅くなる。被写界深度の選択肢が増えることで風景の見方が変わってくるだろう。

より本格仕様にパワーアップした動画機能

 ミラーレスカメラが主流になり、スチルとムービーの境界はどんどんなくなりつつある。「写真機で動画も撮れる」ではなく「写真機で動画を撮る」カメラも多く、実際に使われている人も多いのではないだろうか。私もムービー専用のシネマカメラも所有しているが、必ずしも動画専用のカメラがベストな選択というわけではなく、作風であったり動画のコンセプト、スチルの延長線上の動画を撮影する場合にはスチルカメラで撮影するムービーが最適解であったりもするのだ。

 今までのE-M1シリーズでは4K30pが上限であったが、OM-1では4K60pが搭載され10bitでの収録も対応している。また、コーデックがH.265に対応したことでより高画質な映像を撮影することが可能となった。

 映像を撮らない人には動画の仕様はよくわからないという人もいるかもしれないので簡単に解説すると、映像の規格は「解像度、秒間コマ数、情報量」と大きく3つの要素で成り立っており、今回のOM-1のスペックに当てはめると「4K(解像度)、60p(秒間コマ数)、10bit(情報量)」となる。

 つまり、高画質で秒間コマ数が増えて情報量も増えたと言うことだ。コーデックH.265というのは、画質はそのままにデータ量をさらに小さくすることができるという認識で大丈夫だ。

 OM-1には強力な手ぶれ補正も搭載されているので動画を撮影する場合も恩恵がある。OM-1はスチルとムービーを両方撮りたいという人にはちょうど良い選択肢でもあり、今までスチルしか撮っていないという人にこそ、このOM-1でムービーデビューしてもらいたいと思う。写真を撮った後についでにRECボタンを押す、まずはそこからスタートすれば良いのと、スチルの撮影スタイルでそのまま動画が撮れるので違和感もないはずだ。カメラの動きが~などは後から付いてくる技術なので、まずは手ぶれ補正を活用して「動く写真」からスタートすればいいだろう。

OM-1で撮影した4K映像。
使用したレンズは後述の3本のPROレンズ。手振れ補正が強力なので全編手持ちのラン&ガンスタイルで撮影した。4K60p 10bit H.265 OM-Logで収録しAdobe Premiere Proでカラーグレーディングしている。スチルだけでなくムービーの画質も今までの機種と比較すると格段に良くなっているので、ムービーカメラとしても選択肢に入ってくる。

OM-1におすすめのレンズ

 OM-1でOM SYSTEMデビューをする人も多いだろう。OM SYSTEMには豊富なレンズがラインナップされているが中でも私がこのレンズは使ってみて欲しいと言うレンズを3本紹介する。

■M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO

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このレンズに関しては、マイクロフォーサーズユーザーにとってマストな一本と言っても良いだろう。カバーする焦点距離は換算24mmから200mmと広く、これ一本あれば完結してしまう人も少なくない。さらにこのレンズの特筆すべき点はその画質の良さである。便利ズームでしょ?と思っていたらズーム全域で開放からキレッキレな写りに驚かされるはず。さらにレンズに手振れ補正が搭載されており、OM-1と組み合わせると最大7.5段の補正効果が得られる。

■M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PRO

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まさに「こんなレンズを待っていた!」風景写真を撮るのにぴったりな一本だ。カバーする焦点距離は換算16mmから50mmと、超広角から標準域までこれ一本でOK。さらにほぼハーフマクロまでカバーしているので引いてよし、寄ってよしの万能レンズだ。

通常であれば超広角と標準域はレンズ交換必須の関係性だが、このレンズはその壁を壊してくれた。レンズ交換をしないことで機材落下やセンサーやレンズの後玉にダストが付着することを未然に防げるのと、防塵・防滴が優れているとはいえレンズ交換時は無防備になってしまうため、レンズ交換をしなくて良いのはメリットが大きい。さらに、超広角をカバーしているにもかかわらずフィルターが装着できるため、PLやNDを使用しての表現も可能だ。NDが使えることで動画撮影用のレンズとしても活躍してくれる。

■M.ZUIKO DIGITAL ED 20mm F1.4 PRO

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小型軽量なカメラにはコンパクトなレンズが似合う。換算40mmでF1.4の明るさを持つこのレンズはOM-1とのボディバランスも良く、スナップ撮影や日常使いに持ってこいな一本。開放では柔らかいボケ味が特徴で、絞り込むと画面全体の切れ味が素晴らしい。風景でもポートレートでもどちらでも活躍してくれるレンズだ。M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PROとM.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PROの2本をメインに、被写界深度の浅い一枚を撮りたい時や気軽にスナップ撮影したいときには重宝する。なによりサイズがコンパクトとあってカメラバッグに入れても嵩張らないので、予備のレンズとしても入れておいて損はない。

 レンズ名称の最後に「PRO」とついているのはOM SYSTEMのレンズの中でも最上位クラスのレンズで、高い光学性能と防塵防滴、堅牢性を有し、どんな状況下でも常に高画質を提供するプロフェッショナルレンズシリーズとなっている。

 OM-1の性能をフルに引き出してくれるのはこのPROレンズシリーズだろう。マイクロフォーサーズならではの個性的なスペックのレンズも多く、一度全てのレンズラインナップを見ていただきたい。私の場合は気がつくとPROレンズがほとんど手元にある状況で…それほど魅力的なレンズがラインナップされているということだ。

 マイクロフォーサーズという規格がまさに絶妙で、画質とサイズ感のバランスが他のセンサーサイズのシステムと比較しても最も良いと思っている。ボディはコンパクトになってもレンズはセンサーサイズに依存するためアンバランスな組み合わせも多く、その点マイクロフォーサーズのシステムは両立できているので非常に扱いやすい。

まとめ

 2021年10月に新ブランド「OM SYSTEM」が発表され、そして2022年OMデジタルソリューションズ渾身の一台であるOM-1がお披露目された。ネット上ではいろいろな情報や憶測が飛び交い、期待値が爆上がりしている人も多かったはずだ。私自身どんな凄いカメラが出てくるのだろうか?とワクワクして待っていた一人だ。完全にファンなのである。

 OM-1を初めて手に取ったときに「良い写真が撮れそうだ」と感じさせてくれた。私が大切にしているのはカメラを手に取ったときに「楽しそう」を思わせてくるかどうかで、OM-1はまさに手に取った時に気持ちをワクワクさせてくれた。カメラは自分のイメージを具現化する道具であり、自然に使いこなせるカメラであること、モチベーションを上げてくれるカメラであることはとても大切なポイントだ。そして、その次にスペックが重要となる。

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歴史的一台のモデル名を冠した「OM-1」。2022年、いよいよ「OM」の新たな歴史が動き始める。

 E-M1XやE-M1 Mark IIIが元々完成度の高いカメラだったこともあり、後継機種はどの様なアプローチをしてくるのか楽しみだったが、OM-1はまさに正統進化であり期待値通りのスペックを搭載している。連写速度やハイレゾショットの処理速度が速くなるだけでも全く別物のカメラに感じ、色や解像感をさらに追求することで写真表現の幅をさらに広げてくれる。個人的に気になっていた動画のスペックも向上されたこともありスチルとムービーのハイブリッドカメラ感がさらに増した。

 新ブランドの初号機かつフラグシップであるOM-1。まさに「挑戦と継承」を体現したOMの新たな歴史を切り拓く一台だ。

■写真家:木村琢磨
1984年生まれ。岡山県在住のフリーランスフォト&ビデオグラファー。広告写真スタジオに12年勤務したのち独立。主に風景・料理・建築・ポートレートなどの広告写真の撮影や日本各地を車で巡って撮影。ライフワーク・作家活動として地元岡山県の風景を撮影し続けている。12mのロング一脚(Bi Rod)やドローンを使った空撮も手がけ、カメラメーカー主催のイベントやセミナーで講師を務める。

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