【オールドレンズ】標準レンズの帝王と呼ばれる「CONTAX Carl Zeiss Planar T* 50mm F1.4」
はじめに
今回のオールドレンズのセレクトは、ヤシカコンタックス時代の「CONTAX Carl Zeiss Planar T* 50mm F1.4」です。以前のレビュー記事 「CONTAX Carl Zeiss Tessar T* 45mm F2.8」の時に少しお話しましたが、「CONTAX Carl Zeiss Tessar T* 50mm F1.4」は筆者が高校生の時の憧れのレンズです。
そんな筆者が大人になって、「CONTAX Carl Zeiss Tessar T* 50mm F1.4」のMMJ型を使ってみました。現在でも人気の高いオールドレンズとあって、中古での玉数も多くご自身の予算・程度にあったものが選びやすい状況です。それでは、本レンズの魅力とその実際の写りをご紹介いたします。
CONTAX Carl Zeiss Planar T* 50mm F1.4の魅力
「CONTAX Carl Zeiss Planar T* 50mm F1.4」にも、「CONTAX Carl Zeiss Tessar T* 45mm F2.8」と同様に生産時期・生産国の違いによる4タイプが存在します。AEJ(1975年発売)、MMJ(1985年発売)が日本製、AEGとMMGがドイツ製です。
AEとMMタイプでは、絞りの形状による違いが大きなポイントです。AEタイプは絞りの形状がギザギザなので、ボケが「手裏剣ボケ」と呼ばれる少し変わった形状のボケをします。筆者はこの「手裏剣ボケ」が好きではないので、MMタイプをチョイスしています。
「CONTAX Carl Zeiss Planar T* 50mm F1.4」の基本的なスペックは、
焦点距離:50mm
最短撮影距離:0.45m
開放F値:F1.4
レンズ構成:6群7枚
絞り羽根枚数:6枚
フィルター径:55mm
マウント:Y/C(ヤシカコンタックス)マウント
この「CONTAX Carl Zeiss Planar T* 50mm F1.4」の魅力は、「標準レンズの帝王」とも言われている性能の高さ。濃厚な発色と空気感を写し込む柔らかな感じと繊細なシャープ感が両立しているレンズです。
もちろん、年数の経過によるレンズ個体の状況の変化によって、シャープ感の低減やその他の写りの繊細さの低下が見られてきますが、その点もレンズの個性として捉え、楽しむのもオールドレンズの世界です。
また「CONTAX Carl Zeiss Planar T* 50mm F1.4」の日本製バージョンは、以前にアップした記事【オールドレンズ】和製ズミクロンと呼ばれるレンズ「RICOH XR RIKENON 50mm F2」でお話した「富岡光学」でOEM生産されたいたレンズと言われています。
今回「CONTAX Carl Zeiss Planar T* 50mm F1.4」で撮影するに当たり、カメラはソニーα7R IIIに、焦点工房のマウントアダプター「K&F Concept KF-CYE.P」(ヤシカコンタックスマウントレンズ → ソニーEマウント変換)を使用しました。このマウントアダプターは実売価格で3,500円程度の価格で入手できる製品です。
オールドレンズを使って撮影する場合のカメラの設定やピント合わせなどのコツは、基本的にはこちらの記事をご参照してみてください。
「マウントアダプターを使ってオールドレンズを楽しんでみませんか?」
https://www.kitamura.jp/shasha/article/483200571/
都内をスナップ
「CONTAX Carl Zeiss Planar T* 50mm F1.4」で、筆者お気に入りの撮り歩きコース「御徒町・浅草」をスナップ撮影してきました。気になった風景やモノを見つけて、じっくりピントを合わせ、絞りの値を考えて試行錯誤しながら撮影するのは、オールドレンズならでは楽しみです。
絞りを絞った写真は、さすが「標準レンズの帝王」と呼ばれた片鱗を見る事ができました。30年ほど経過したレンズとは思えないほどの、シャープさと濃厚な発色を写し出してくれました。
オールドレンズにありがちな絞り開放での滲みはあるものの、絞り開放での描写もピントの合った部分はシャープに描写し、前後のボケも非常に好感の持てる柔らかいボケを描写しています。
奥行き感のある被写体において、「CONTAX Carl Zeiss Planar T* 50mm F1.4」のピントがあった前後のボケは非常にマッチしています。ただ、絞り開放で撮影した際には、パープルフリンジが発生する場合が多く見られました。レンズ個体による違いもあるかもしれませんが、明暗差が大きくあるシーンの撮影では少し注意が必要です。
上の写真の中央上部を拡大した画像が下になります。
逆光などで、明暗差が激しい部分にパープルフリンジが発生しています。実は撮影の時には、ピーキング機能(ピントが合った面に色をつけてピントを合わせやすくする)を使っていたので、ピーキング表示で隠れてしまってパープルフリンジの発生に気づくことができませんでした。
絞り開放では中心部はそれなりの丸ボケを描写しますが、周辺部に向けて少しレモン型になっていきます。
さすがオールドレンズといったところでしょうか、逆光時にはゴーストも出やすいレンズです。
房総半島バイクツーリングスナップ撮影
ちょうど千葉県鴨川市の「菜の花畑ロード」で菜の花が見ごろになっていると情報を聞きつけ、撮影もかねてバイクツーリングで房総半島を走ってきました。
「CONTAX Carl Zeiss Planar T* 50mm F1.4」は、最短撮影距離0.45mと開放F値1.4で撮影できるので、前後の大きなボケを活かした柔らかな表現が可能です。開放で撮影している為、周辺光量落ちが少し目立つので、オールドレンズらしさが余計に演出されています。
バイクツーリング途中で立ち寄った漁港で気になった被写体を撮ってみました。中心部に比べると若干周辺部の解像感は落ちてしまいますが、十分に合格点レベルの描写性能です。
予定外の雪の海岸。
奥行き感と柔らかさを演出する為に、あえて絞りを開けてピントを桟橋の途中に合わせてみました。
最後に館山市の「赤山地下壕」に寄って撮影をしてみました。暗い地下壕の中でオールドレンズを手持ち撮影できるのは、デジタルカメラを使う最大のメリットです。手ブレ補正や高感度設定などで、手持ち撮影も比較的容易にすることができます。
「CONTAX Carl Zeiss Planar T* 50mm F1.4」は絞り羽根の枚数が6枚なので、点光源で発生する光芒は6本線です。最近のレンズは奇数の絞り羽根(光芒数は倍数)が多かったりするので、6本線は非常にシンプルでやさしく感じます。
今回のツーリングに使ったバイクをお気に入りの海岸で撮影。絞りを浅く逆光ポジションで撮影し、メカメカしいイメージを排除し、柔らかな午後のぽかぽか陽気をイメージして撮影してみました。
まとめ
「CONTAX Carl Zeiss」のレンズは「空気までも写す」と言われていますが、「CONTAX Carl Zeiss Planar T* 50mm F1.4」は、絞りを開けて撮影した時こそ、その言葉のイメージがよく分かる気がします。画像全体的な柔らかさの表現が、その場の空気感を表現するような感じで映し出されます。
中古相場でも安定した価格で販売されているオールドレンズですが、現在の「Zeiss」レンズとは一味違った写りをしてくれます。「Zeiss」レンズが好きな方は、是非持っていたいレンズです。
【今回のおまけショット】
「CONTAX Carl Zeiss Planar T* 50mm F1.4」は室内でのペット撮影にもマッチしたレンズですよ。毛並みをやさしく柔らかく表現することができます。
■写真家:坂井田富三
写真小売業会で27年勤務したのち独立しフリーランスカメラマンとして活動中。 撮影ジャンルは、スポーツ・モータースポーツ、ネイチャー・ペット・動物・風景写真を中心に撮影。第48回キヤノンフォトコンテスト スポーツ/モータースポーツ部門で大賞を受賞。
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