愛猫の美しい姿を撮るコツ|ペトグラファー小川&湯沢

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はじめに

 愛猫をキレイに撮りたいけど可愛さを引き出せない!美しい毛が上手く表現できない!いつも同じ雰囲気の写真ばかりで撮っていてつまらない。というお悩みを良く聞きます。そこで今回はマンネリ化しない愛猫撮影のコツについてお話ししたいと思います。

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■撮影機材:ソニーα7R IV +FE 50mm F1.2 GM
■撮影環境:f/1.4 1/400秒 ISO160 露出補正+0.7 焦点距離50mm

明るい窓際でくつろぐ所を背後からこっそり撮影し自然な姿を狙う。(撮影場所:ネコカフェMONTA)

光を感じる写真を撮ろう

 きれいな写真を撮る上で明るさはとても重要な要素です。室内撮影での悩みの多くは明るさが足りない事が原因です。壁や天井に囲まれた室内撮影では屋外撮影に比べて明るさの確保が難しくなります。室内で撮影する時はまず第一に明るさを確保する事を意識しましょう。

 撮影に適した時間は太陽の光がある昼間の時間帯です。出来れば窓のある部屋で外からの光を取り込んで撮影すると良いでしょう。環境によっても異なりますが、冬は窓から光が差し込む時間がとても短く、夏に比べ太陽の位置が低いため朝の早い時間はあまり光が差し込んできません。太陽の位置が高くなるお昼前後が比較的撮りやすいのでこの時間帯を狙ってみましょう。

 ペットを窓辺に誘導したら、外からの光がペットのサイドか斜め後ろからあたるように、ペットの立ち位置を決めましょう。こうする事で写真に立体感が出て光を感じられる写真に仕上がります。ただこのまま撮影すると光が当たっていないペットの顔あたりが暗くなってしまうので、露出をプラス補正にして明るめに撮りましょう。又は白い厚紙をレフ版代わりにし、窓から入り込む光をペットの顔に反射させて明るく撮るのもいいですよ。でも1人でレフ板を当てながら片手でカメラの操作をするのは難しいものです。その場合は猫の足元に白いラグや毛布を敷きましょう。白いラグがレフ版のかわりになり、両手でカメラを操作できるので1人で撮影する場合はこの方法をおすすめします。

 またペットの顔の向きも室内の方向を向くのではなく窓側を向くように誘導すると顔に光が当たってなお良いです。

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■撮影機材:キヤノンEOS R5 + EF85mm f/1.2L II USM
■撮影環境:f/1.6 1/640秒 ISO500 焦点距離85mm

レースのカーテン越しに降り注ぐ光を生かして撮影。光に照らされた毛の質感がとても美しく表現されています。

 窓辺で撮ってみても平面的な写真になってしまうという方がいらっしゃったら、それはきっと外からの光が弱いからだと推測します。外からの光が弱く、室内の人工光の方が強い場合は室内の光量を弱くするのがベストです。しかしこれだと全体的に光量が下がり暗い写真になってしまいます。こんな時私たちはストロボを使っています。窓の外から室内に向かってストロボを発光すると人工的に窓から差し込む光を作り出すことが出来るのです。本格的なストロボがなくても、クリップオンストロボやLEDビデオライトなどでも同じような事ができるのでお手持ちの照明機材を使って試してみてください。

 外から光を当てるときはレースのカーテン越しに照らすようにすると自然に見えます。光が上手く被写体に当たっていれば美しい毛並みもしっかり表現出来ますし、難しいとされる黒い子もキレイに撮る事が出来ます。

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■撮影機材:キヤノンEOS R5 + EF24-70mm f/2.8L II USM
■撮影環境:f/2.8 1/200秒 ISO400 焦点距離45mm

曇りの日に撮影。普通に撮ると写真左の窓が暗く写ってしまいますが、外からストロボを当てる事で光を感じる写真に仕上がりました。

ブレないように撮るには

 室内撮影の大敵はブレです。ブレが発生しないようにシャッター速度にも注意しましょう。具体的には止まっている猫の撮影では1/125秒以上のシャッター速度で撮りましょう。もしも動く子であれば1/400秒以上になるようにISO感度を上げて調整してください。ISO感度は上げすぎるとノイズが入って画質が悪くなりますので必要以上に上げないように意識しましょう。ISO感度をなるべく抑えるためにも室内撮影では明るい単焦点レンズを使うと良いでしょう。猫をお部屋で撮影する時のおすすめのレンズは35mmと50mmです。開放値がF1.4やF1.8のレンズがあれば室内撮影で重宝するでしょう。

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■撮影機材:ソニーα7R IV + FE 50mm F1.2 GM
■撮影環境:f/1.2 1/400秒 ISO125 露出補正+0.7 焦点距離50mm

こちらは50mm単焦点レンズで撮影。美しいぼけ味によって猫が引き立ちました。(撮影場所:ネコカフェMONTA)

色の表現で世界観を作る

 室内撮影で次に気を付けたいのが写真の色味です。色味はホワイトバランスやクリエイティブスタイル(カメラメーカーによってフィルムシミュレーション、ピクチャースタイルなど呼び方は様々)で決まります。

 ホワイトバランスとは白いものを白く写すための色味の調整です。撮影する場所の光源に合わせて適切な設定をする事で正しい色で撮影する事ができますが、大体の場合はオートホワイトバランスや光源に合わせて電球、蛍光灯、太陽マークなどに合わせればそれほど問題はないです。ただオートでは思うような色にならない場合はマニュアルホワイトバランスや色温度を調整してお好みの色に合わせましょう。見た目通りの色を再現したい、青っぽい幻想的な雰囲気を出したい、赤味を強くして暖かなイメージにしたいなどご自身の表現したい世界観をホワイトバランスで作り出してみましょう。

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■撮影機材:ソニーα7R IV + FE 50mm F2.5 G
■撮影環境:f/2.5 1/500秒 ISO1250 焦点距離50mm

爽やかな朝の感じを表現したかったのでホワイトバランスで少し青みを強くして撮影。

 そしてもう一つ写真の雰囲気を左右するのがクリエイティブスタイル(フィルムシミュレーション、ピクチャースタイル)です。スタンダード、風景、ポートレート、ニュートラル、モノクロなど沢山の選択肢がありますが、私たちが普段室内撮影で良く使うのは「スタンダート」「ニュートラル」です。

 ある程度色味を鮮やかにしっかり出したい時は「スタンダード」、ちょっとレトロな感じで落ち着いた色味にしたいなという時には「ニュートラル」をと使いわけています。さらにもっとこだわりたい時にはこの各項目の詳細設定に進むと、コントラストの強弱や彩度、シャープネスを調整する項目があります。中でもコントラストは使う頻度が高く、例えば1枚の中で明暗差が激しい場合、特に黒い猫が暗くなりすぎてしまう場合などはコントラストをマイナスにしてあげると明暗差が縮まります。またレトロ感を強調したい時は彩度をマイナスにすると色があせている感じを表現出来ます。

 RAWデータで撮っていれば現像時にこれらの設定を自由に変える事ができます。後からじっくりと現像したい方や撮影時にどうしても思い通りの色味に設定できない場合はRAWデータも撮っておくといいですよ。写真全体だけでなく部分的に色温度を変えることなどもできるのでこだわりたい方におすすめです。撮って出ししたい方やRAW現像が苦手という方は撮影時にしっかりと設定してから撮影しましょう。

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■撮影機材:ソニーα7R IV + FE 50mm F1.2 GM
■撮影環境:f/1.3 1/400秒 ISO320 焦点距離50mm

ニュートラルに設定しどこか懐かしくレトロな感じを表現しました。(撮影場所:ネコカフェMONTA)

脱マンネリ写真!

 光と色味が整ったらあとは撮影です。でもいつものお部屋でマンネリ化してしまってつまらない、、、という方も多いはず。そんな時は少しだけスタイリングもしてみましょう。凝ったスタイリングだと大変ですが、「背景にするもの」、「床に敷くもの」、「小物」のこの3点があればいつもと違った写真撮りを楽しむ事が出来ます。まずは背景ですが、こちらは猫の背後に写りこむため写真の中で大部分を占める事が多いです。そのためあまりごちゃごちゃしていない方がよりペットを引き立たせる事が出来ます。どのような背景にするかはペットの毛色との統一感で決めたり、季節にあった背景を選ぶのも良いでしょう。私たちの場合、測り売りの壁紙を2~3mくらい買ってきて壁に仮止めして背景とする事が多いのですが、特に購入しなくてもお部屋の壁をそのまま使い、壁にガーランドをつけて脱マンネリをするのも良いですね。次に床になる部分。これはペットの足元として写真に写りこんできます。床もいつもと雰囲気を変えるのなら壁紙を敷くか、ラグやマルチカバー等を敷いて撮るのもおすすめです。

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■撮影機材:キヤノンEOS R5 + EF24-70mm f/2.8L II USM
■撮影環境:f/2.8 1/160秒 ISO100 焦点距離70mm

ブルーグレーの木目柄の壁紙を背景にして撮影。床には膝掛けを敷いて撮っています。

 最後に小物。ペットの横にちょこんと添えると写真のアクセントとなって良いです。私が良く使うのは洋書ですが、開いた洋書の上に猫の手がちょこんと乗るように配置して撮っています。その他落ち着きの無い子には木箱やプレゼントBOX等を使ってその中に入ってもらって撮ると猫の動きが制限出来るのでかわいい写真が短時間で撮影でき、猫の負担を減らす事ができます。

 このような形で少しスタイリングするだけでも脱マンネリが出来るので試してみてくださいね。また壁の近くには物が多くて壁が使えない、、、なんて方は、床だけ片付けて俯瞰から撮影してみましょう。この時にカメラ目線を撮れれば猫の見上げる仕草を可愛く撮る事ができますよ。

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■撮影機材:キヤノンEOS R5 + EF24-70mm f/2.8L II USM
■撮影環境:f/2.8 1/200秒 ISO125 焦点距離50mm

毛布を床に敷いて俯瞰から撮影した1枚。カメラ目線になるように猫じゃらしで誘導しています。

まとめ

 室内撮影ではブレに注意しながら、出来れば自然光を使って撮ってあげると立体感のある素敵な写真に仕上がります。お部屋の粗を隠したいなら単焦点レンズがおすすめ。35mmや50mmレンズが使いやすいです。また脱マンネリにはちょっとしたスタイリングを。季節の小物を取り入れてのスタイリング撮影を楽しんでみてはいかがでしょうか。

■写真家:小川晃代・湯沢祐介
ペットやキッズの撮影を得意とする夫婦の「ペトグラファー」。トリマー、ドッグトレーナーの資格を持つ小川と、猫じゃらしを持たせたらピカ一!「猫じゃらしの魔術師」の異名を持つ湯沢の最強コンビで、これまでに撮影した頭数は7万頭以上。『ゆるねこ×ブッダの言葉』(インプレス)、『ちいさいののちゃん』(講談社ビーシー)、『ねこもふ。ごーじゃす』『手乗りねこ』(宝島社)、『ねこの撮り方まとめました!』(日本カメラ社)、『こいぬ』『こねこ』(ポプラ社)、『ねこきゅう』(東京書店)などの写真集ほか、ペットカレンダーも多く手がけている。東京都世田谷区でペット&キッズ専門の写真スタジオ「アニマルラグーンSTUDIO」を運営。

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