【オールドレンズ】マクロ撮影からスナップまで万能プラナー「CONTAX Carl Zeiss S-Planar T* 60mm F2.8 AEG」
はじめに
今回のオールドレンズのセレクトは、ヤシカコンタックス時代の 「CONTAX Carl Zeiss S-Planar T* 60mm F2.8 AEG」です。「S-Planar」という名称は少し聞きなれないかも知れませんが、1978年~旧西ドイツで生産されていた近接撮影用のマクロレンズです。後に製造が日本に移管された際に名称が変更がされ、マクロプラナーになった経緯があるレンズです。
筆者の高校生時代にコンタックスRTSを使用していたので、マクロレンズの「CONTAX Carl Zeiss S-Planar T* 60mm F2.8 AEG」は、憧れていたレンズの1本です。当時のカタログ(※1984年のコンタックス/ヤシカシステム価格一覧表)に記載されていた価格は17万円。以前の記事でも登場した「CONTAX Carl Zeiss Tessar T* 50mm F1.4」が4万5千円、「Carl Zeiss Tessar T* 45mm F2.8」が2万円の価格だったので、とても高額なレンズでした。今回は「CONTAX Carl Zeiss S-Planar T* 60mm F2.8 AEG」の魅力とその実際の写りをご紹介いたします。
CONTAX Carl Zeiss S-Planar T* 60mm F2.8 AEG の魅力
「CONTAX Carl Zeiss S-Planar T* 60mm F2.8 AEG」ですが、細かく見ると製造年によって変更がされており、3つのタイプが存在します。初期型と呼ばれる、内面反射を抑える複雑な機構を持った仕様のもの(マウント部は黒)。初期型の機構を廃した中期型(マウント部は黒)と呼ばれるもの。中期型のマウント部分の材質が変わって銀色になったものを後期型として区別されています。
この中で人気の高いものは初期型になります。今回撮影に使用したものは後期型になり、後の名称が変更になったマクロプラナーと構造的にほぼ同等なものになっていると言われています。
「CONTAX Carl Zeiss S-Planar T* 60mm F2.8 AEG」の基本的なスペックは、
・焦点距離:60mm
・最短撮影距離:0.24m
・撮影倍率:1:1
・絞り開放:F2.8
・レンズ構成:4群6枚
・絞り羽根枚数:6枚
・フィルター径:67mm
・マウント:Y/C(ヤシカコンタックス)マウント
「CONTAX Carl Zeiss S-Planar T* 60mm F2.8」は、撮影倍率が「1:1」の等倍撮影が可能です。しかし、マクロ撮影では非常にピント合わせがシビアになるので、拡大表示でのピント合わせや、絞りを絞る撮影方法と合わせて三脚を使用するなどして対応する事が必須です。
今回「CONTAX Carl Zeiss S-Planar T* 60mm F2.8」で撮影するため、カメラはソニーα7R IIIに、焦点工房のマウントアダプター「K&F Concept KF-CYE.P」(ヤシカコンタックスマウントレンズ → ソニーEマウント変換)を使用しています。
オールドレンズを使って撮影する場合のカメラの設定やピント合わせなどのコツは、基本的にはこちら「マウントアダプターを使ってオールドレンズを楽しんでみませんか?」の記事をご参照してみてください。
CONTAX Carl Zeiss S-Planar T* 60mm F2.8 AEGで公園散策撮影
「CONTAX Carl Zeiss S-Planar T* 60mm F2.8」を持って、河川敷の朝の公園を散策してみました。風が吹いて揺れる被写体にピント合わせをするのは至難の業です。普段使っているオートフォーカスマクロレンズのありがたみが良く分かりました(笑)。
下の菜の花の写真は背景に写る水面反射のボケを奇麗にするために、あえて絞りを浅くして撮影しているので、特にピント合わせに苦労しました。ここでは三脚は使わずにある程度ピントを合わせたら、そこからはピントリングでピントを調整するのでは無く、身体をゆっくりと動かしてピントを合わせてシャッターを切っています。
絞りを絞るとピント合わせは少し楽になりますが、背景に光のボケが発生する場合には、絞り羽根6枚による6角形のボケが気になる場合があります。
少し歩いて竹林を散策してみました。こういったシーンではピント合わせが楽になり気楽に撮影を楽しむことができます。あまりマクロレンズという事を意識しない方が、「CONTAX Carl Zeiss S-Planar T* 60mm F2.8」レンズは使いやすいかも知れませんね。
青空のもとのカラフルな観覧車。とても自然な発色とシャープな描写をしています。
CONTAX Carl Zeiss S-Planar T* 60mm F2.8 AEGで都内をスナップ撮影
河川敷公園でのマクロ撮影でピント合わせなどの苦戦をしたので、気分を替えて後日お気に入りの場所である浅草でスナップ撮影をしてみました。今回はマクロレンズを意識しないで、少し寄れる標準レンズという感覚で持ち出してみました。普段使う焦点距離50mmよりも少し長い60mmですが、その差をそれほど気にする事なく撮影を楽しめました。
天気が良かったせいもありますが、メリハリの効いたコントラストのある写真は40年弱経過したオールドレンズである事を感じさせない描写です。
散策スナップ中のおやつ。こんな時には寄れるマクロレンズの威力を発揮します。ランチやスイーツの写真を多く撮る人には魅力的なオールドレンズです。
スナップ撮影でも非常に使いやすい「CONTAX Carl Zeiss S-Planar T* 60mm F2.8」ですが、あえて問題点を挙げるのであれば、その重さになるでしょうか。「CONTAX Carl Zeiss Planar T* 50mm F1.4」の重さの倍の重量があります。
CONTAX Carl Zeiss S-Planar T* 60mm F2.8 AEGで室内撮影
少しシチュエーションを替えて、室内で撮影をしてみました。お花の写真をマクロでアップ撮影なのですが、焦点距離60mmのマクロレンズではワーキングディスタンスが非常に短いため、クリップオンのフラッシュでは撮影ができないので、ワイヤレスユニットを使用してサイドからフラッシュを当てて撮影をしています。
使用した機材は、ソニーフラッシュ「HVL-F45RM」と電波式ワイヤレスコマンダー「FA-WRC1M」になります。電波式ワイヤレスコマンダー「FA-WRC1M」を使うことによって、フラッシュ「HVL-F45RM」を任意の場所にセッティングして発光させることができます。室内でお花などを撮影する機会が多い方には、自由なライティングができるワイヤレスフラッシュのシステムはとてもおすすめできるアイテムです。
今回は電波式ワイヤレスコマンダー「FA-WRC1M」を装着したカメラに、「CONTAX Carl Zeiss S-Planar T* 60mm F2.8」を装着し、三脚にセット。フラッシュ「HVL-F45RM」は、ベルボンの「ウルトラスティックスタンド」にセットしてみました。このベルボンの「ウルトラスティックスタンド」は非常に小型で収納にも優れていて、カバンにも収納可能サイズなのに、伸ばせば154cmの高さまで伸びる便利なアイテム。ワイヤレスフラッシュを使った屋外でのポートレート撮影にも使えそうなので、ワイヤレスフラッシュで撮影する方にはおすすめの一品です。
お花の次は猫を撮影してみました。逆光で撮影したシーンではかなり柔らかい感じの写りになりますが、そうでない場合でも全体的には柔らかい印象です。室内でのペット撮影やお子様などの撮影にマッチするレンズの様な感じがします。
まとめ
「CONTAX Carl Zeiss S-Planar T* 60mm F2.8」は、マクロレンズとして使うとなかなか苦戦する場合もあるかもしれませんが、寄れる標準レンズとして考えて使えば、非常に使いやすく万能なオールドレンズです。初期型と呼ばれる内面反射を抑える複雑な機構を持った仕様のものは、コレクションアイテムにもなっておりなかなか市場にもでてきませんが、もし見つけたら是非手に入れたいレンズです。
■写真家:坂井田富三
写真小売業会で27年勤務したのち独立しフリーランスカメラマンとして活動中。 撮影ジャンルは、スポーツ・モータースポーツ、ネイチャー・ペット・動物・風景写真を中心に撮影。第48回キヤノンフォトコンテスト スポーツ/モータースポーツ部門で大賞を受賞。
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