広角レンズで切り取る風景撮影の楽しみ方|齋藤朱門
はじめに
前回に引き続き、今回は超広角・広角レンズ(12mm~35mm程度)を使った風景撮影の楽しみ方について紹介していきます。一般的には広角レンズと言うと焦点距離が20mm~35mmのレンズのことを指しますが、風景撮影では更に広い画角で撮れる超広角域のレンズを使う場面も多いので、合わせて紹介していきたいと思います。
超広角・広角レンズの使いどころ
超広角・広角レンズは人の視野よりも広範囲を撮影することが可能なため、広大な風景をダイナミックに表現することや、またパースペクティブ効果を生かして、迫力あるシーンをより強調する表現が可能になります。
筆者の場合は次のようなシーン・撮り方のケースで使うことが多いです。
奥行き感を強調したい時
渓流や海で水の流れを入れつつ、奥の風景も入れたいようなシーンでは超広角レンズで撮りたいと思うことが多いです。奥行き感を出そうと考えると手前から奥の風景まで入れた構図にしたいため、必然的に広く撮れるレンズを多用することになります。
栃木県のスッカン沢での一枚。奥の紅葉とスッカンブルーと言われる青い水の色の組み合わせが美しいシーンを創り出していました。
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■撮影環境:マニュアル露出・16mm・F9・ISO100・1.0秒
千葉の海岸にて撮影。夕焼けで赤く染まる空の色が映り込む海水と引いていく波の流れを狙って撮影しました。
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■撮影環境:マニュアル露出・14mm・F16・ISO100・2.5秒
アメリカ・カリフォルニア州にあるモノ湖で撮影した一枚。これも奥の岩と手前の岩の両方を入れつつ、空のグラデーションも入れるような構図とするために比較的広角の32mmくらいの焦点距離で縦構図としています。
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■撮影環境:マニュアル露出・32mm・F16・ISO100・0.5秒
広大なシーンを表現したい時
広角レンズを使うケースで多いのが、広大なシーンでの撮影です。360度見渡す限り素晴らしい景色が広がっているシーンでは、臨場感を表現するために広角レンズでその場の雰囲気や視野外から入ってくる情報も一緒に取り込む必要があると思います。筆者の場合は国内であれば北海道や海外にあるような広大な場所で活用することが多いように思います。
こちらはカナダのバンフ国立公園での一枚。見渡す限りの絶景が広がる場所での撮影はどうしても意識が広くなるためか、比較的広めの構図でその場の雰囲気や臨場感を収めたくなります。
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■撮影環境:マニュアル露出・35mm・F16・ISO100・1/15秒
こちらもおなじカナダのバンフ国立公園ですが、冬は湖も全て深い雪に埋もれていました。
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■撮影環境:マニュアル露出・14mm・F11・ISO100・1/320秒
北海道の糠平湖にて。湖面が全て凍っており、湖面下にはアイスバブルと呼ばれる気泡が閉じ込められていました。このアイスバブルと広大な湖と空を入れた構図とするために超広角レンズを使用して、湖面近くの低い位置で撮影しています。
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■撮影環境:マニュアル露出・12mm・F16・ISO100・1/125秒
星景を撮影する時
星景を撮影する場合は、星空とそこに広がる風景の両方を同時に捉える必要があるので、やはり広角レンズを使うと便利です。この例では14mmレンズを使っていますが、より明るい20mm f1.8レンズもよく使うことがあります。
立山の室堂にて。冬の北の夜空に輝く星の日周運動をインターバル撮影したものです。
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■撮影環境:マニュアル露出・14mm・F2.8・ISO2000・30秒(複数枚を比較明合成)
夏の天の川を撮影する場合も、天の川銀河の中心と風景を一緒に撮影する場合は14mm~20mm程度の超広角レンズがあると撮影しやすいと思います。
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■撮影環境:マニュアル露出・14mm・F2.8・ISO3200・15秒
ダイナミックな風景を表現したい時
壮大な山や草原があるようなシーンでは、そのダイナミックな情景を表現するために、28mm~35mmくらいの広角レンズを使用することがあります。自分の視野よりもやや広めにはなりますが、視野外の部分も入れることでその場にいるような臨場感を得られると思っています。
イタリア・ドロミテにて撮影した一枚。35mmくらいで撮ろうと意識していたわけではないですが、しっくり来る構図がやはり35mmでした。
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■撮影環境:マニュアル露出・35mm・F16・ISO100・1/80秒
冬の西穂高近くから撮影した一枚。35mmよりも少し広い28mmですが、28mmも自然にしっくりくるバランスの良い構図となる場合が多いように思います。
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■撮影環境:マニュアル露出・28mm・F13・ISO100・1/30秒
広角レンズ作例
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■撮影環境:マニュアル露出・32mm・F11・ISO160・0.8秒
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■撮影環境:マニュアル露出・14mm・F13・ISO100・1/8秒
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■撮影環境:マニュアル露出・14mm・F16・ISO100・1/640秒
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■撮影環境:マニュアル露出・14mm・F13・ISO100・1/6秒
撮り方・テクニック
パンフォーカスを活かす
広角レンズを使用し、絞ることで被写界深度を深く取ることができ、幅広い範囲にピントがあっている状態(パンフォーカス)で撮影することができます。特に奥行きがあるようなシーンで、手前の前景から奥までピントを合わせて撮影したい場合には活用すると良いでしょう。
パースペクティブに注意
また、広角レンズはパースペクティブによって、垂直なものが斜めに写ってしまう場合があります。自然風景を撮影する時はあまり気にならないことも多いですが、垂直な木々や建造物などを撮影する場合は気をつけないと不自然に感じる場合もあります。そういった場合は、被写体をなるべく画面の中心に配置したり、同じ高さから撮影したりすることで緩和することができます。
さいごに
風景撮影というと、広角レンズでの撮影をイメージする方も多いと思います。筆者の場合も最初に風景写真を始めた際、購入したレンズは広角ズームレンズだったことを覚えています。
やはり風景写真で人気のあるダイナミックで広大な風景や、奥行き感を捉えるには広角レンズが適していることが多いように思います。以前は高画質な超広角レンズは重く大きいものが多かったですが、最近はミラーレスカメラ用にコンパクトで高画質なレンズも登場したおかげで手軽に持ち運べるようになりました。
ぜひ、自分のお気に入りの超広角・広角レンズを持って風景撮影を楽しんでください。
齋藤朱門さんの撮影テクニック連載記事はこちら
・丘や山での撮影テクニック|齋藤朱門
https://www.kitamura.jp/shasha/article/483573391/
・星景写真の撮影テクニックと機材|齋藤朱門
https://www.kitamura.jp/shasha/article/483154709/
・滝・渓流での撮影テクニック|齋藤朱門
https://www.kitamura.jp/shasha/article/482531059/
・海での風景撮影テクニック|齋藤朱門
https://www.kitamura.jp/shasha/article/484586478/
・冬の風景撮影とテクニック|齋藤朱門
https://www.kitamura.jp/shasha/article/485081309/
・望遠ズームレンズで切り取る風景撮影の楽しみ方|齋藤朱門
https://www.kitamura.jp/shasha/article/485398095/
・標準レンズで切り取る風景撮影の楽しみ方|齋藤朱門
https://www.kitamura.jp/shasha/article/485888321/
■写真家:齋藤朱門
宮城県出身。都内在住。2013年カリフォルニアにて、あるランドスケープフォトグラファーとの出会いをきっかけにカメラを手に取り活動を始める。海外での活動中に目にした作品の臨場感の素晴らしさに刺激を受け、自らがその場にいるかのような臨場感を出す撮影手法や現像技術の重要性を感じ、独学で風景写真を学ぶ。カメラ誌や書籍での執筆、Web等を通じて自身で学んだ撮影方法やRAW現像テクニックを公開中。
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