京セラ CONTAX T2 レビュー|高級コンパクトフイルムカメラの先駆者
はじめに
今回セレクトしたカメラは、今も人気の高級コンパクトフイルムカメラ「コンタックス T2」。高級コンパクトフイルムカメラは、1990年代に登場した高性能なレンズを搭載し、チタンなどの高級金属を採用した外装ボディのカメラが各メーカーから発売されました。
代表的なものは、ニコン 35Ti、ニコン 28Ti、ミノルタ TC-1、コニカヘキサー、リコー GR1、コンタックスT、T2、T3、TVSなどのカメラがあります。コンタックス TVS以外は単焦点レンズが搭載されたカメラで、当時は一眼レフユーザーやプロカメラマンなどもサブカメラとして愛用していた事も多かったようです。
今回紹介する「コンタックス T2」は、高級コンパクトフイルムカメラブームの火付け役となった存在のカメラです。今なお衰えない「コンタックス T2」の魅力をご紹介します。
コンタックス T2の魅力
「コンタックス T2」の魅力はコンパクトフイルムカメラだからという妥協はなく、良いレンズと良いボディがバランスよく組み合わさった贅沢な一台に仕上がっているのが大きな魅力の一つです。
「コンタックス T2」の搭載されているレンズは、カール・ツァイスの「ゾナー T* 38mm F2.8」。この「ゾナー T* 38mm F2.8」の構成は4群5枚で、1929年にカール・ツァイスのペルテレ博士によって設計されたレンズの流れをくむ、レンズの教科書的な存在です。コンパクトカメラのレンズの多くは、コンパクト化をする為に一般的にレンズの後ろに凹レンズを配置してレンズ全体の長さを短くする手法がとられることが多いのですが、「コンタックス T2」は画質最優先で正統のゾナータイプが採用されています。
ゾナータイプのレンズは、絞り開放から優れた画質と平均的な周辺光量が得られる特徴があります。そして、カール・ツァイス独自の多膜層T*コーティングと掛け合ってシャープなコントラスト、豊かな色再現など表現してくれるレンズです。
「コンタックス T2」の「ゾナー T* 38mm F2.8」は、レンズの優秀な光学性能を維持しながらも携帯性を実現するために、沈胴式になっていることも「コンタックス T2」の魅力ある外観デザインに寄与しています。電源オフでレンズはボディ内に収納され、非常にすっきりとしたデザインになり携帯性にも優れたものになっています。
「コンタックス T2」は、コンパクトな機動性を生かすためのオートフォーカスの性能もしっかりと作られていました。「ゾナー T* 38mm F2.8」の絞り開放でのボケ味を生かすことができるように、118ステップの細かなフォーカシング動作をおこなっています。
この頃の一般的なコンパクトカメラのフォーカスは、だいたい3~16段階ぐらいのステップでおこなっていたものが多かったので、118ステップという細かさはより精細なピント合わせができる魅力ある機能の一つでした。
ただ「コンタックス T2」に搭載されていたオートフォーカスの方式は、赤外線式のアクティブオートフォーカスで、カメラ本体から赤外線を発して、反射してきた赤外線を感知して測距する方式でした。その性格上誤操作の問題もあり、黒い物体に赤外線が吸収されたり、赤外線を発する被写体にオートフォーカスが上手く作動しないなどの症状がでたりする事がありました。
もちろん高級コンパクトフイルムカメラならではの、マニュアルフォーカスも選択が可能になっており、撮影者の意思を反映する事もできたので、このオートフォーカスの問題点をカバーすることも可能です。
「コンタックス T2」は、基本的には絞り優先AEで絞り値をF2.8~F16の間で撮影者が被写界深度をコントロールして撮影することができます。少し特徴的なのは、絞りをF2.8で設定した場合には絞り優先プログラムAEモードになり、F2.8よりも絞り込む必要がある場合には、自動的にプログラムAEに変わり絞り値も自動的に変更されます。シャッタースピードが1/500秒までしかないカメラなので、高感度のフィルムを使用した場合でも露出オーバーにならないような仕組みになっています。
露出補正、マニュアルフォーカス、絞り優先AEなどの撮影者の意図をしっかり反映することができる仕様でありながら、洗練されたシンプルなデザイン・外観に仕上がっていて操作性も非常に優れている「コンタックス T2」は、発売から30年以上経過した今でもなお人気です。中古市場では発売当時の価格を超えるような価格になっています。
※1990年の発売時 定価120,000円
コンタックス T2の基本スペック
「コンタックス T2」の基本的なスペックをまとめた一覧になります。
形式 |
35mmレンズシャッター式ストロボ内蔵 自動焦点AEカメラ |
使用フイルム |
35mmフイルム |
画面サイズ |
24mmx36mm |
レンズ |
カールツアイスT* ゾナー38㎜F2.8(4群5枚) |
シャッター |
絞り優先プログラムAE電子シャッター 電子レリーズ方式 |
シャッター速度 |
プログラムAE時 1秒~1/500秒 絞り優先時 1秒~1/200秒以下 ※1秒を超えるとオートバルブ ストロボ発光時 1/30秒~1/500秒 |
セルフタイマー |
電子式 作動時間10秒 |
ファインダー |
ファインダーおよびフォーカシングスクリーン交換式 視野率:縦98%・横95% 倍率:0.9倍(ファインダーFA-1) |
露出制御 |
絞り優先プログラムAE |
測光範囲(ISO100) |
EV3~EV17 |
測光方式 |
SPD素子による外部測光方式 |
露出補正 |
+-2EV(0.5EVステップ) |
フイルム感度 |
自動セット(DX方式)ISO25~5000に連動 ※DXフイルム以外はISO100に設定 |
ピント合わせ |
フォーカスダイヤルによるオートフォーカス、マニュアルフォーカス切替方式 |
測距方式 |
赤外線アクティブ方式 |
ファインダー形式 |
逆ガリレオ型採光式ブライトフレーム 倍率及び視野率 0.6倍(85%) |
ファインダー内表示 |
撮影範囲枠(近接撮影範囲枠付) フォーカスフレーム シャッタースピード、露出補正マーク、フォーカス表示、ストロボマーク プログラムマーク、セルフタイマー作動表示 |
電源 |
3Ⅴリチウム電池(CR123AまたはDL123A) |
大きさ・重量 |
(W)119mm x (H)66mm x (D)33mm 295g(電池別) |
コンタックス T2で小金井公園・江戸東京たてもの園をスナップ撮影
コンパクトなフイルムカメラ「コンタックス T2」だけを持って、東京の小金井を散策しながら撮影を楽しんでみました。カメラは「コンタックス T2」だけなので、カメラバッグではなく普段使いのお気に入りのバッグにカメラを忍ばせてのお散歩。やっぱり荷物が軽いのは助かります。
いつもなら、ボディの他に交換レンズや予備バッテリー、予備メディアなどなど持ち歩いてしまい、荷物が必然的に多くなってバッグが重くなり、肩こりが酷くなったりします。「コンタックス T2」であれば、上着のポケットやジーンズのポケットに忍ばせておく事も可能なので、いろいろなシーンで活躍できます。
今回はお気楽にスナップ撮影する事を決めていたので、カメラの設定は絞りをF2.8に設定して「絞り優先プログラムAEモード」、ピント合わせはオートフォーカスで撮影しています。フイルムは感度400のフイルムを使用しているので、屋外での撮影シーンではある程度絞り値は絞りこまれた撮影になっているはずです。
空が入るようなシーンでは、周辺光量低下が目立ちます。
最短撮影距離が70cmの為、寄って撮影するのが難しいカメラです。その分構図によっては前ボケを大きくする事は可能なので、寄って撮影する場合はオートフォーカスよりもマニュアルフォーカスで撮影した方がよさそうな感じです。
久しぶりにコンパクトフイルムカメラを使ったので、あらためて現像したネガと撮影した時の構図のギャップを感じました。ミラーレス一眼で100%の視野率に慣れてしまったのもあって、「コンタックスT2」のファインダーで見える視野率85%(無限遠)との差をあらためて感じました。
とは言えこのフジカラーCDのデータやプリントに関しては、ネガ全体がデータ化やプリントされる訳ではないので、実際にファインダーでみていたイメージに近い状態になっている感じです。
まとめ
30年が経過してもそのデザインは見劣りしない。どんなシーンでも、どんなシチュエーションでも似合うコンパクトフイルムカメラが「コンタックス T2」。
そんな「コンタックス T2」はお出かけの際に、バッグに潜ませておけるカメラ。何時でもどこでも気楽に持ち運べる相棒になるカメラではないでしょうか。たくさん撮るのではなく、本当に気に入った、気になったシーンだけをゆっくり、じっくりフイルムで撮影するのは、現代の最高の楽しみ方の一つではないでしょうか。
■写真家:坂井田富三
写真小売業会で27年勤務したのち独立しフリーランスカメラマンとして活動中。 撮影ジャンルは、スポーツ・モータースポーツ、ネイチャー・ペット・動物・風景写真を中心に撮影。第48回キヤノンフォトコンテスト スポーツ/モータースポーツ部門で大賞を受賞。
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