露出補正で表現の幅を広げる |カメラ用語を正しく理解しよう vol.5
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はじめに
こんにちは! ShaSha編集部です。いつもご覧いただき、ありがとうございます。
ShaShaはご存じのとおりカメラやレンズなどの機材、また撮影方法などを写真愛好家の皆さまに紹介するサイトです。毎日更新される記事内では、少し難しい専門用語がたくさん飛び交っていますね。もちろん内容をすぐに理解できる写真上級者の方も多いかと思いますが「それってなんのこと?」と、?マークが出ている読者の方もいらっしゃると思います。
このシリーズではそんな初心者の方に、つまづきがちな写真用語をわかりやすく解説していきたいと思います。「なんとなくはわかってはいるけど……」という方も、用語をきちんと理解できると写真生活がますます楽しいものになるはずです。
もちろん中・上級者の方も、おさらいに是非読んでみてくださいね。
露出補正とは?
みなさんにこんな経験はないでしょうか。「逆光でポートレートを撮ったら顔が暗くなってしまった」「暗い空を撮ったらなんだか明るく写ってしまった」など。これは、カメラが決めた露出で撮影したことによって起こる現象です。今回はこれらの補正の仕方についてお話ししていきます。
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カメラには反射光式露出計が組み込まれています。露出計というのは明るさを測る機械で、カメラはその反射光式露出計が測った数値で露出を表します(入射光式露出計もありますが、また別の回で)。
しかし、この反射光式露出計は万能ではありません。目でみた明るさを適正露出と言いますが、この方式では適正露出にならない事もあります。被写体の反射率が18パーセントのグレーを撮影すると想定して作られているので、それより白いものや明るい部分が多いものを撮影しようとするとカメラが「明るすぎる」と判断してしまい、露出を暗くなるようにします。逆に黒いものや暗い部分が多いものを撮影しようとすると「暗すぎる」と判断し、明るくなるような露出設定にしてしまうのです。
そうすると、冒頭で述べたように「逆光でポートレートを撮ったら顔が暗くなってしまった」「暗い空がなんだか明るく写ってしまった」という現象が起きるわけです。
このようなことを防ぐには、このカメラが決めた露出を自身で調整していく必要があります。これを露出補正と呼びます。
露出については第4回を参考にしてみてください。
露出補正の仕方
どうしたら露出補正をすることができるのでしょうか?
ここではキヤノンのミラーレスカメラで見てみましょう。ファインダー内や背面モニターの下に左右に渡って1.2.3…と書かれた露出レベルが表示されます。右に動かしていくと1/3EVずつプラス補正、左に動かしていくと1/3EVずつマイナス補正されます。表示の方法や操作の仕方はカメラメーカーによって違いますので、ご自身のカメラで確認してみましょう。
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プラスにEV補正すると写真が明るくなり、マイナスにEV補正すると写真が暗くなります。
1EVは1段という意味ですから、例えば+1EV分の露出補正をした場合には、全体的な露出がプラス1段分になるようにシャッタースピード、絞り、ISOを調整して1段分多い光をカメラに取り入れます。
逆にEVを-1EVに補正した時には、露出がマイナス1段分となるようにカメラに取り込む光を減少させます。
プログラムオート、シャッタースピード優先モード、絞り優先モードで露出補正を行うと、カメラがシャッタースピード、絞り、ISOを自動で調整してくれます。マニュアルモードの場合はそれらを手動で調整し露出を決めます。
シーンモードのように、いくつかの設定が固定されている場合は露出補正が出来ないことがあります。また最近のミラーレスカメラでは被写体認識の性能が向上し、被写体に合わせて自動で露出が調整されるものもあります。
ちなみにフィルムカメラ時代には液晶画面などありませんでしたので、すべて経験と勘で露出補正する必要がありました。失敗するとフィルムが真っ白だったり真っ黒だったりしたわけです。世の中は便利になったものですね。
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尚、一眼レフカメラは、レンズを通して取り込んだ像がそのままファインダーに映し出されますので、露出補正してもその状態を目視して確認することができません。液晶モニターで確認する必要があります。
露出補正具体例
それでは具体的に、露出補正するとどれくらい違うのか見てみましょう。
下の写真は、桜と青空を撮ったものです。まずはカメラが露出を設定したプラスマイナス0の状態です。
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次は+1EVにしました。
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次は-1EVです。
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このように露出補正すると、同じ被写体がまったく違ったイメージになります。花など微妙な色合いを表現したい場合には1/3段、逆光など光が強いシチュエーションでは1段ずつ補正していくと良いでしょう。
♪豆知識♪
露出が明るいことを「オーバー」「ハイキー」暗いことを「アンダー」「ローキー」と言います。「この写真オーバーすぎて真っ白になっちゃった」「アンダー過ぎて真っ黒になっちゃった」などと用います。
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しかし、露出補正することでメインの被写体は適正露出になったものの、背景が飛んでしまったり、つぶれてしまったりすることがありますので、ご自身でちょうど良い塩梅のところを調整してみましょう。
測光モードによっても露出が変わる
カメラの測光モード(多分割測光、中央部重点測光、スポット測光など) によっても露出が変わってくることがあります。多分割測光では、画面の全体を細かく分割して、平均的な露出を決める測光。中央部重点測光は画面の中央部分をメインに測光して露出を決める測光。スポット測光では特定の部分を測光して露出を決める測光になりますので、おのずと露出が変わってきます。初心者の方は、基本的には多分割測光に設定して、露出補正していくと良いでしょう。
【多分割測光】
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※ピントはすべてバラに合わせました
【中央部重点測光】
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【スポット測光】
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オートブラケット撮影してみよう
オートブラケットとは露出やホワイトバランスなどを、カメラが自動で段階的に撮影する機能です。例えばプラスマイナス0で撮影しても、同時に1段明るい露出、1段暗くなる露出も撮影してくれる優れものです。オートブラケット機能がついたカメラをお持ちの方はぜひ試してみてください。
シーン別露出補正の目安
こちらはシーン別の露出補正例です。いつもこの作例と同じ条件とは限りませんが、撮影する際のおおよその目安にしてみてください。
【都会の夜空】
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【カメラの物撮り】
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【薄曇りの日の桜】
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【強い逆光】
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露出補正ポイント
■白いものや明るい場所を撮る時にはプラス補正する
■黒いものや暗い場所ではマイナス補正する
さいごに
パソコン上で画像を明るくしたり暗くしたりと加工することもできます が、明るく写りすぎていると被写体が飛んでしまっていたり、暗く写りすぎているとつぶれてしまったりします。基本的には撮影時に適正露出で撮影したいですね。 ただし、あえて飛ばす、つぶすなどの表現もありますので、露出補正に慣れてきたらご自身なりの表現を楽しんでください。「適正露出は自分で決める」ことが大切です!
いかがでしたか? 理解できた方も、そんなこと知っているよという方も、なにかしら参考にしていただけたら幸いです。
それでは今日も楽しく撮影に出かけましょう! カシャカシャ!