風景写真撮影テクニック~長時間露光編~|齋藤朱門
はじめに
今回は、筆者が普段撮っているさまざまな風景写真の中でも長時間露光(※)で撮影した作品や、その撮影方法などについて紹介したいと思います。霧や雲海があることで、普段は撮影せずに通り過ぎてしまうような何気ない場所も、印象的・幻想的なシーンに変化し楽しむことができます。
※長時間露光の定義はさまざまだと思いますが、ここでは約0.5秒以上の露光時間(シャッタースピード)を長時間露光と呼んでいます。
長時間露光で風景写真を撮る
長時間露光で撮影した作例をいくつか紹介したいと思います。
奥入瀬渓流にて。渓流の流れと周りの木々を意識しながら撮影した一枚。雲の隙間から差し込んだ光が印象的でした。
秋田県の海岸で撮影。波飛沫をややスローシャッターで捉えることで流れや躍動感を強調しています。
秋田県の元滝伏流水にて。やや長めの露光時間とすることで、わずかにシルキーな印象になっています。滝や渓流はシャッタースピードによって表情が大きく変化するのが面白いと思います。
日没後の岩礁にて。激しい波飛沫を長時間露光で撮影。
長時間露光撮影の方法とTips
NDフィルター
撮影シーンにもよりますが、長時間露光撮影を行うために必要なアイテムとしてはNDフィルターが一般的です。NDフィルターにも様々なタイプのものがありますが、筆者の場合は角型NDフィルターと丸形の可変NDフィルターを使い分けています。
それぞれ使い分けとしては、角型NDフィルターの場合は複数のNDフィルターを重ねることで、超長時間露光が可能になるため、だいたい1分以上の露光時間で撮影する際に使用しています。また、角型の場合はケラレにくいため、主に広角レンズと併用する場合に使うことが多いです。
可変NDフィルターは1つで持ち運びがしやすく、また露光時間調整のための段数調整も簡単なので、滝や渓流のシーンでちょっとだけ露光時間を長くしたい時に使うことが多いです。また、最近の可変NDフィルターはムラが無く、色被りもかなり少ない製品も登場していますので、撮影シーンに合わせて活用する場面が増えています。
ブレを防ぐ
当然ですが、露光時間が長くなることでブレやすくなりますので、しっかりした三脚にカメラを固定して撮影することがとても重要になります。最近は、手振れ補正性能も向上してきているので、1秒以内程度であれば手持ちでもブレない場合がありますが、撮影結果の出来栄えを重視するのであれば、なるべく三脚を使用することをオススメします。
シャッターを押した瞬間の振動を抑えるためにはレリーズを使うと良いでしょう。レリーズがない場合は、カメラのタイマー機能でシャッタータイミングを遅らせることでも代用できますが、シャッタータイミングを合わせるのが難しいデメリットもあります。
Tips
カメラによっては長時間露光のための機能が搭載されているものもあります。例えば、α7R VではBULBタイマー機能を使うことで、タイマーレリーズが無くても任意の露光時間を設定して撮影することができます。
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シーン別撮影方法
滝・渓流
筆者の場合、滝や渓流では約0.5秒前後とすることが多いです。水流の速さにもよって調整しますが、経験的には水流の動きのダイナミックや躍動感を表現するに適した露光時間であることが多いです。また、全体的にシルキーな雰囲気にしたい場合はより長い露光時間にしています。
海
海での撮影では、波の強さや潮の変化によって毎回波の形が異なるので、連続撮影も併用しながら、納得の行く表現になるまで撮影を繰り返してみると良いでしょう。
海では30秒以上の超長秒露光で動きを止めたり、滝や渓流とは別の表現が可能です。
湖・沼
湖沼では長時間露光により、多少の水面の揺れを抑えることができ、リフレクションをより美しく撮影できることがあります。
霧・雲海
雲や霧の動きの速さと表現したいイメージに合わせて露光時間を調整することで、さまざまな表現の風景写真が撮影できます。
立山にて撮影。激しい雨が上がった後、徐々に雲の隙間から山々が見え始めてきたシーンで撮った一枚。
まとめ
今回は長時間露光の作例や撮影方法をお伝えしましたが、いかがでしたでしょうか。
同じ撮影シーンでも長時間露光時を行うことで、さまざまな表現で撮影することが出来ると思います。この記事の例に上げたような、滝や海、雲海・霧等の撮影をする機会があれば、是非この記事の内容を参考にして長時間露光撮影を試していただけると嬉しいです。
■写真家:齋藤朱門
宮城県出身。都内在住。2013年カリフォルニアにて、あるランドスケープフォトグラファーとの出会いをきっかけにカメラを手に取り活動を始める。海外での活動中に目にした作品の臨場感の素晴らしさに刺激を受け、自らがその場にいるかのような臨場感を出す撮影手法や現像技術の重要性を感じ、独学で風景写真を学ぶ。カメラ誌や書籍での執筆、Web等を通じて自身で学んだ撮影方法やRAW現像テクニックを公開中。