風景写真撮影テクニック~構図と撮り方編~|齋藤朱門
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はじめに
今回は風景写真撮影でよく使われるさまざまな構図と、撮影時やRAW現像時に役立つTIPSを紹介したいと思います。
構図の大切さ
目の前に美しい風景が広がっているようなシーンでも、いざカメラを持ってシャッターを切り撮影してみると、なにか物足りなかったり、肉眼で直接見た印象と違うと感じることがあると思います。そういった場合でも、別の構図で撮影して切り取り方を変えてみると、しっくりと自分が表現したい一枚になる場合もあります。
逆に何気ないシーンでも、構図や切り取り方によっては肉眼では分からなかった美しさを感じる作品になることもあります。風景写真に限らずですが、写真撮影において構図は大変重要です。
さまざまな構図と撮影TIPS
風景写真の構図にはさまざまな手法がありますが、今回は筆者が風景撮影で意識して使うことが多い構図をいくつか紹介したいと思います。
さまざまな構図のパターンが頭の片隅にあると、カメラのファインダーを覗いた際に、そのシーンをどう撮影して、捉えるかを考える際にとても重要なヒントになります。
三分割法
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三分割法は有名な構図の手法の一つですので、ご存知の方も多いと思います。筆者の場合も風景写真を始めた初心者の頃、最初に意識するようになった構図だったと記憶しています。
三分割法は縦と横それぞれに3等分の等分割線上に沿って被写体を配置する構図です。こうすることで全体の安定感を得ることができます。また縦と横の等分割線の交点に強調したい部分を配置することで、より印象を強める効果があります。
■TIPS
多くのカメラボティでは9分割線表示が可能だと思います。この9分割線を表示しておくことで常に三分割法を意識しながら構図を考えることができます。
■α7R Vの設定例
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黄金比
三分割法と似ていますが、構図線の比率を1:2ではなく、1:1.618とすると黄金比と呼ばれる構図になります。なぜこの比率を良いと感じるのかの説明は難しいのですが、黄金比の構図線に沿って被写体を配置すると、全体のバランスが取れ、安定しているように感じる効果があります。
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■TIPS
黄金比のパターンを表示できる機能がカメラにはないことが多いので、筆者の場合は9分割表示の少し内側を目安に考えるようにしています。
また、Adobe Lightroom Classicの切り抜き機能では、さまざまな構図のガイド線を写真の上に重ねて表示することができます(現像時に「ツール」「ガイドオーバーレイを切り抜き」で重ねたいガイドを選択)。このガイドを表示することで、RAW現像時に構図ガイドに合わせて微調整することが簡単にでき便利です。
ゴールデンスパイラル(黄金螺旋)
縦と横の比を黄金比 (1:1.618)とした長方形を黄金長方形と呼びますが、この黄金長方形の頂点を結んでできる螺旋はゴールデンスパイラル(黄金螺旋)と呼ばれます。
黄金比の構図と同様にこのゴールデンスパイラルに沿って被写体を配置することで、全体のバランスを整えることが可能です。
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リーディングライン
自然の中になにかに導かれるような線や配置を見つけ、それを構図の中に取り入れることで、鑑賞者の視線を自然に誘導する効果があります。この効果を意識することで、全体の画角の中で視線を集中させたい場所を意図的に作り出すことが可能です。
なんとなく漠然とした風景の中にこのようなリーディングラインとなるものを見つけ、入れ込むと、作品全体がしまります。
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額縁構図・フレーミング
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その名前のとおり、画角の中に額縁を作り出すことで、主題に対してより視線をフォーカスさせることができます。風景写真を撮影していると、前に邪魔な障害物が入ってしまうのを嫌がり、もっと開けたところで撮ろうとしがちですが、あえて障害物をフレームとして活用することで鑑賞者をより引き込むこともできると思います。
シンメトリー
水鏡のリフレクションを撮影する場合によく使う構図ですが、完全に上下対象や左右対称にする構図です。なぜかは説明できませんが、自然と美しさを感じると思います。
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奥行きを活かす
構図を工夫することで遠近感を強調し、写真全体に奥行き感が感じられ迫力ある風景写真に仕上げることが可能です。ここでは奥行き感を強調するためによく使われる構図テクニックを2つ紹介します。
前景+広角+縦構図
前景になにか特徴的な被写体を入れることで、奥行き感をより強調する手法です。超広角レンズを使用し縦構図にすることで、さらに効果を高めることが可能です。
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■撮影環境:マニュアル露出・14mm・F16・ISO100・1/8秒
空気遠近法
遠くの風景が徐々に明度が下がることで遠近感が強調される方法です。霧があるシーンやかすみがあるシーンでは自然とそうなる場合が多いと思いますが、意識しておくことで絶好の機会を逃さず撮影することができます。
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■撮影環境:マニュアル露出・18mm・F16・ISO100・1/25秒
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■撮影環境:マニュアル露出・40mm・F9・ISO6400・1/160秒
作例
作例前述の構図の説明で使用した作例を紹介しておきます。
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■撮影環境:マニュアル露出・52.9mm・F18・ISO100・1/400秒
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■撮影環境:マニュアル露出・46mm・F13・ISO100・8.0秒
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■撮影環境:マニュアル露出・42mm・F11・ISO100・1/10秒
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■撮影環境:マニュアル露出・25mm・F11・ISO100・0.6秒
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■撮影環境:マニュアル露出・16mm・F16・ISO100・3.2秒
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■撮影環境:マニュアル露出・45mm・F18・ISO100・0.4秒
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■撮影環境:マニュアル露出・75mm・F11・ISO100・1/6秒
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■撮影環境:マニュアル露出・66mm・F11・ISO100・1/13秒
まとめ
今回は筆者が風景写真撮影でよく使う構図やTIPSをお伝えしましたが、いかがでしたでしょうか。
定番の構図や自分の好みの構図を覚えておくことで、さまざまなシーンで臨機応変に構図を考えることができるようになり、表現の幅も広くなると思います。今回の記事を是非参考にして頂けると嬉しいです。
■写真家:齋藤朱門
宮城県出身。都内在住。2013年カリフォルニアにて、あるランドスケープフォトグラファーとの出会いをきっかけにカメラを手に取り活動を始める。海外での活動中に目にした作品の臨場感の素晴らしさに刺激を受け、自らがその場にいるかのような臨場感を出す撮影手法や現像技術の重要性を感じ、独学で風景写真を学ぶ。カメラ誌や書籍での執筆、Web等を通じて自身で学んだ撮影方法やRAW現像テクニックを公開中。