冬の風景写真の楽しみ方|齋藤朱門
はじめに
今回は冬の時期の風景写真の作例を紹介したいと思います。
冬は雪原や霧氷・樹氷、氷などなど、楽しみな風景が多く、一年の中でも撮影が楽しくなる季節だと思っています。撮影場所によっては気温や気候条件も厳しく、過酷な状況下で撮影することも度々ありますが、そんな寒さも忘れるほどに撮影に夢中になってしまいますね。
作例
長野県の霧ヶ峰高原付近の森で撮影した1枚です。雪を纏った木の幹や樹氷化した枝に極寒の冬の厳しさや美しさを感じてシャッターを切りました。
福島県の裏磐梯の森での1枚。降りしきる雪によって霧に包まれたような雰囲気の森を撮ってみました。冬は森の表情も一変するのが面白いですね。
深い雪に覆われた森とその中を流れる川が印象的な美しい場所でした。手前の雪の上にうっすらと残る動物の足跡も冬の自然を感じさせられます。
唐沢の滝にて。滝の一部分は既に完全に凍結し氷爆となっていました。真冬の極寒の中で徐々に”動”から”静”へと変化していく様子を捉えることが出来るのも冬の季節ならではではないでしょうか。
積雪が作り出す、まるで波のような凹凸の様子も美しく、雪原を訪れると、ついお気に入りの場所を探してしまいます。特に1枚目は飛び出した枝?にも興味を惹かれ撮影した1枚。
また、こういった雪原はコントラストが低いことが多いため、撮影後の後処理もその雰囲気をなるべく壊さないように軽めに仕上げています。
長野県の美ヶ原高原にて。強風によって地吹雪が発生し、雪の粒子がまるで地を這うように雪原の上を流れ続けている様子がとても美しく印象的でした。激しい強風に吹きさらされて変形してしまった木々と夕日によって雪の粒子が輝く瞬間を狙った1枚です。
霧氷
冬の風景といえば、筆者の場合、個人的には外せないのが霧氷です。カラマツの霧氷が作り出す理路整然とした様子や、何気ない木々が真っ白に霜を纏う姿には不思議な美しさを感じてしまいます。霧氷が発生するためには特定の条件が必要となるので、年によってはなかなか撮ることが難しい場合もあります。空振りすることも多くありますが、それでも狙いたくなるテーマの一つです。
この2枚はどちらも長野県の霧ヶ峰高原で撮影したものです。カラマツを撮影する場合は比較的遠くから、400mmくらいの超望遠レンズで撮影することが多いです。この撮影の時は中判ミラーレスカメラを使用していたこともあり、600mmのズームレンズを装着して撮影しています。(35mmフルサイズ換算で約474mm)
霧氷撮影のコツ
霧氷を超望遠レンズで撮影する場合、しっかりした三脚を使っていてもちょっとした振動でもブレの影響が大きくなるため、なかなかシャープな写真を撮ることが難しい場合があります。そのような時は望遠レンズ用のレンズサポート等を使って、レンズとカメラ全体の重心位置に雲台が来るように設置することで、振動を最小限に抑え安定させることが出来ます。また、レリーズシャッターやシャッタータイマーを併用すると、より安定して撮影をすることが出来ます。
早朝のまだ薄暗い時間帯に撮影した1枚。濃い霧に包まれてしまい、霧氷が見え隠れするような天気でしたが、霧が抜け、無風となった一瞬を狙って撮影しました。
これを撮影した日は濃い霧と降り積もった雪で空も地面も真っ白になった世界がとても印象的な日でした。これは濃い霧の中、霧氷を纏い、佇む姿が印象的な木を撮った1枚です。
冬の撮影に必要な機材
最近のカメラはカメラジャケットのような防寒装備なしでも通常の撮影自体は問題ない場合が多いように思います。ただし、カメラによっては寒い場所でのバッテリーの保ちが悪い場合もありますので、そのような場合は予備バッテリーも多めに持っておくと良いでしょう。また、寒い場所での撮影でキンキンに冷えた撮影機材をそのまま温かい車内や室内に持ち込んだりするとレンズが結露する場合がありますので、急激な温度変化がないようにケアすることが必要です。
冬の撮影は防寒着もとても重要になってきます。特に明け方や夜中などに長時間撮影を行う場合は、体が冷え込みますので十分に温かい防寒着を着て撮影することをおすすめします。
さいごに
今回は冬の時期の風景写真の作例を紹介させて頂きました。
冬の時期は雪景色や霧氷・樹氷など、冬にしか見れない風景がとても多く、普段行かないような場所でも、思いがけない美しいシーンに出会えるチャンスがあるかもしれません。撮影に出かける際には、防寒の備えをしっかりとするのと、車の場合は運転にも十分に注意して撮影へ向かいましょう。また、この記事の内容を参考にしていただけると嬉しいです。
■写真家:齋藤朱門
宮城県出身。都内在住。2013年カリフォルニアにて、あるランドスケープフォトグラファーとの出会いをきっかけにカメラを手に取り活動を始める。海外での活動中に目にした作品の臨場感の素晴らしさに刺激を受け、自らがその場にいるかのような臨場感を出す撮影手法や現像技術の重要性を感じ、独学で風景写真を学ぶ。カメラ誌や書籍での執筆、Web等を通じて自身で学んだ撮影方法やRAW現像テクニックを公開中。