モルト劣化のジャンクフィルムカメラ「ライカ R4s」のモルトを交換してみました
はじめに
今回は、ジャンクコーナーで見つけた「モルト劣化・露出バラツキあり」表示の一眼レフカメラ「LEICA R4s」です。レンジファインダーカメラのMシリーズに比べて、少々人気の無い一眼レフのRシリーズの中でも、特に手ごろに入手することができる「LEICA R4s」。マウントがRマウントになっておりMマウントのレンズよりもお手頃に購入できたりするので、フィルム一眼レフボディとレンズのセットで手軽にライカテイストを味わいたい方におすすめできるカメラです。
ジャンクコーナーで手に入れた「モルト劣化」の一眼レフ「LEICA R4s」
今回ジャンク品で入手した「モルト劣化・露出バラツキあり」の一眼レフカメラ「LEICA R4s」ですが、ジャンク品でなくても、中古市場では比較的手頃な価格で購入できるカメラです。もともとは「LEICA R4」の廉価版として一部機能を削除し「LEICA R4s」として発売されている事も、手頃な価格で購入できる要因の一つといえます。
ここでライカの一眼レフカメラRシリーズについて少し歴史を確認。
ライカが初めて一眼レフカメラを発売したのは1965年で「LEICAFLEX」というカメラになります。それから代を重ね2002年に発売された「LEICA R9」が最終モデルとなって、ライカのフィルム一眼レフは生産終了しています。レンズマウントはRマウントですが、発売時期によって改良されており(1カム、2カム、3カム、R only、ROM)使用するカメラの機種によっては注意が必要です。今回の「LEICA R4s」であれば、3カム以降のRマウントがベストです。
・1965年 ライカフレックス
・1968年 ライカフレックス SL
・1974年 ライカフレックス SL2
・1976年 ライカ R3
・1980年 ライカ R4
・1983年 ライカ R4s(ライカ R4の廉価版モデル)
・1985年 ライカ R4S-2(ライカ R4sのマイナーチェンジモデル)
・1987年 ライカ R5
・1987年 ライカ RE(ライカ R5の廉価版モデル)
・1988年 ライカ R6
・1992年 ライカ R6.2(ライカ R6の改良版モデル)
・1994年 ライカ R7
・1996年 ライカ R8
・2002年 ライカ R9(ライカ一眼レフ最終モデル)
▼LEICA R4sの仕様
ファインダー | ペンタ部固定式(0.85倍) 視野率 92% |
シャッター | 電子式 オート時1/1000~8秒・マニュアル時1/1000~1秒 |
測光モード | 絞り優先自動露出・マニュアル露出 |
電源 | SR44/LR44型 2個 |
大きさ | 138.5×88.1x60mm |
重さ | 630g(ボディのみ) |
今回購入したジャンク品の「LEICA R4s」は約40年前に製造されたモデルですが、非常に丁寧に扱われていたと思われ、外観に傷や汚れは無く非常にキレイな状態のカメラでした。ジャンク品のプライスタグに表記されていたのは、「難あり:モルト劣化・高速シャッター不良」。
実際に手にして、マニュアル設定でシャッターを切って、シャッター速度の変化を確認してみたところ、低速から1/250秒のシャッターでの速度変化は簡単に確認できたのですが、1/500秒・1/1000秒のシャッター速度が?と感じるぐらいでした。この辺りは実際に撮影してみないと、どこまで影響があるのか分からないところです。
外観はキレイなのですが、裏ブタを開けるとやはり約40年経過した劣化部分を目の当たりにします。特に古いカメラには多く発生しているモルト劣化です。モルトとはウレタン素材である「モルトプレーン」のことで遮光用スポンジになります。カメラの本体と裏ブタをかみ合わせた部分などに貼り付けられていますが、このモルトは加水分解による劣化などで年数が経過するとボロボロになっていきます。
今回購入した「LEICA R4s」もフィルム確認窓の周りなどモルトが貼ってある場所は劣化でボロボロになっており、劣化したモルトがカメラ内部のあちこちにゴミとなって付着した状態になっていました。モルトの交換貼替えに関してはそれほど難しい作業ではないので、材料さえ揃えば自分自身で作業することもできます。という事で時間のある時にでも作業をすればよいかなと思い、ジャンク品をお手軽価格で購入しました。
購入後、実際にこのモルトが劣化した状態で撮影をしたらどうなってしまうのか、フィルムが少々もったいないのですがこのままの状態で撮影して検証してみました。予想からして一番危ないのはフィルムの確認窓の部分です。
案の定、予想通りの結果でフィルム確認窓からモルト劣化の影響により隙間が発生し、外部から光が入って「光線かぶり」をおこしてしまいました。現像したネガを細かく確認した結果、光線モレがこのフィルム確認窓のみでした。他の部分もモルト劣化はしていますが、光線モレをおこすことはないようです。
シャッター速度のムラは少し影響がある感じですが、使用するネガフィルムはラチチュード(オーバーからアンダーまで再現できる領域)が広いので、多少のシャッター速度ムラによる露出の影響は十分にカバーできる感じです。
という事で、次はカメラの劣化したモルト除去、清掃とモルトの貼替え作業です。
ライカ 一眼レフ「LEICA R4s」のモルト貼替え
劣化したモルトの除去作業をします。ボロボロになったモルトやのりの部分を、丁寧に竹串や小さなマイナスドライバーなどを使用して取り除いていきます。この時にボロボロになったモルトがシャッター幕などに付着しないように、シャッター幕の部分にはカバーをしておきましょう。
これで劣化したモルト除去と貼替えが完了です。劣化したモルトがカメラ内部にゴミとしてかなり付着して残っている場合があるので、丁寧にゴミの除去をしていきましょう。またシャッター幕を破損しないように、作業の際にはシャッター幕部分をカバーして作業をしましょう。
今回はモルトの貼替え作業を自分で行いました。それほど難しい作業ではありませんでしたが、自身での作業が難しいと思う方は有料での修理サービスを受け付けている場所もあります。古いモルト劣化したフィルムカメラを購入の際には、お店スタッフに相談してみるのもよいでしょう。
「LEICA R4s」のモルト貼替えをしてスナップ撮影
劣化したモルトの貼替え作業が完了した「LEICA R4s」をもって早速街中スナップ撮影をしてみました。「LEICA R4s」にセットしたレンズはライカの定番レンズのズミクロン「SUMMICRON-R 50mm F2」です。ライカRマウントのレンズは、ライカMマウントシリーズのレンズよりも手頃な価格で入手できます。
まとめ
撮影が終わって、フィルム現像が仕上がるまで撮った状態が分からないのが少々不安でしたが、モルト交換は問題なく成功しており、現像されたネガを確認しましたが光線モレもなく、シャッター速度からの露出の影響も無い状態でした。500円ほどで購入したモルトプレーンシート代だけで自分で修理できたのは良い買い物だったと思います。ジャンク品は、ある程度のリスクがありますが自分で直して使える程度のものであれば、修理したカメラにも愛着がわくものです。
ジャンク品購入にかかわらずフィルムカメラに使用されているモルトに関しては、経年劣化でボロボロになっていく事が多いので、長く使っていないフィルムカメラを持っているユーザーは一度チェックしてみてください。人気のあるフィルムカメラなどは、あらかじめカットされたモルト貼替えキットなどがネットで販売されているので、こういったものを使用すればより簡単に自身で貼替え作業ができます。
■写真家:坂井田富三
写真小売業界で27年勤務したのち独立しフリーランスカメラマンとして活動中。撮影ジャンルは、スポーツ・モータースポーツ・ネイチャー・ペット・動物・風景写真を中心に撮影。第48回キヤノンフォトコンテスト スポーツ/モータースポーツ部門で大賞を受賞。
・公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員
・EIZO認定ColorEdgeアンバサダー
・ソニーαアカデミー講師
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