【オールドレンズ】オートフォーカスで動くミラーレンズ「ミノルタ AF 500mm F8 REFLEX」
はじめに
今回のオールドレンズのセレクトは、ミノルタの「MINOLTA AF 500mm F8 REFLEX」です。このレンズは「ミラーレンズ」や「レフレックスレンズ」とも呼ばれる反射望遠レンズです。ミラーレンズは、フィルム一眼レフ全盛期の1970年代~1980年代に比較的手軽な価格で超望遠の世界が楽しめるレンズとして発売されていて、当時ミラーレンズを使ったユーザーも多いのではないでしょうか。
多くのミラーレンズが発売されてきましたが、その中でも唯一の存在と言っていいミラーレンズがこの「MINOLTA AF 500mm F8 REFLEX」です。レンズ名にAFの文字があるところで分かると思いますが、オートフォーカスが使えるミラーレンズは、この「MINOLTA AF 500mm F8 REFLEX」が世界初です。
「MINOLTA AF 500mm F8 REFLEX」はオートフォーカスのレンズで、マウントがミノルタAマウント。ミノルタのAマウントはソニーのAマウントに引き継がれているので、ソニーのAマウントからEマウントに変換するマウントアダプター「LA-EA5」などを使用する事によって、オートフォーカスのレンズとしてEマウントのαボディで活用する事ができます。それでは「MINOLTA AF 500mm F8 REFLEX」の気になるスペックとその写りをご紹介します。
ミノルタ「MINOLTA AF 500mm F8 REFLEX」の魅力とスペック
ミラーレンズは一般的な光学レンズとは違って、ミラーを使用した反射光学系でレンズ自体を非常にコンパクトにできる構造をしています。小型軽量という大きなメリットがあるミラーレンズですが、独特の癖がある写りをするレンズなので、好き嫌いの好みがハッキリするレンズかもしれません。しかし、個性的なレンズであるのは魅力のポイントでもあると言えるでしょう。
MINOLTA AF 500mm F8 REFLEXの基本的なスペック
焦点距離 | 500mm |
最短撮影距離 | 4m |
最小絞り | F8固定 |
レンズ構成 | 5群7枚(フィルター1枚含む) |
フィルター | レンズ後部差し込み式フィルター |
大きさ(最大径x長さ | 89x118mm |
重量 | 665g |
マウント | ミノルタAマウント |
発売 | 1989年 |
発売当時の価格 | 定価 78,000円(フード・フィルター・ケース付) |
今回の撮影では、ソニー純正のマウントアダプター「LA-EA5」を使用して撮影をしています。このマウントアダプターは、最新のEマウントボディ本体の像面位相差AFに対応するだけでなく、リアルタイム瞳AFやリアルタイムトラッキング搭載モデルであれば、高性能なAF機能を生かした撮影が可能になる便利なマウントアダプターです。
しかし、残念ながら「MINOLTA AF 500mm F8 REFLEX」では、その高性能な機能を発揮することできません。というのは「MINOLTA AF 500mm F8 REFLEX」のオートフォーカスは、「カメラの中央フォーカスフレームのみでAF可能」という仕様の為、自動的にカメラ側のオートフォーカスフレームが制御され「中央固定」になり、他のフォーカスエリアの選択ができなくなります。フォーカスエリアが固定されてはしまいますが、それでもオートフォーカスが利用できるメリットは非常に大きく、超望遠での撮影を楽にさせてくれます。
「MINOLTA AF 500mm F8 REFLEX」は、ミラーレンズの構造上レンズ全長が短く、超望遠ながら驚くほどの軽量・コンパクト化を実現し、機材を軽くしたいシーンの撮影に向いています。
ただ、レンズ中心は副鏡に遮られる部分があるため、輝度の高い点像がリング状にぼけて写る「リングボケ」が発生します。下の写真でも「リングボケ」が多く発生していますが、特に写真上部の青い信号の描写が「リングボケ」の描写をよく表しています。本来であれば青信号の全体が描写されるボケなのですが、「ミラーレンズ」で発生する「リングボケ」で信号の緑の中心部が抜けてしまっています。「MINOLTA AF 500mm F8 REFLEX」を使うときは、前景・背景のボケの表情に注意をする必要がでてきます。
「MINOLTA AF 500mm F8 REFLEX」で動物園撮影
「MINOLTA AF 500mm F8 REFLEX」を持って、動物園で撮影をしてみました。「MINOLTA AF 500mm F8 REFLEX」の重量は665g、マウントアダプター「LA-EA5」の重量は88gなのでレンズの重量は合計で753gと、フルサイズで500mmのオートフォーカスレンズとしてはかなりの軽量なので、長時間持っていても疲れないのが魅力のポイントでもあります。
オートフォーカスのポイントが「中央固定」になってしまうので、どうしても被写体を中央に配置してしまう構図が多くなってしまう傾向が出てしまいました。フォーカスロックを使えばこの問題には対応できるのですが、普段フォーカスロックを使っていないと少々手こずるかもしれません。
全体的な解像度は申し分なく実用性も十分なレベルですが、どうしてもミラーレンズの構造上発生してしまう、「リングボケ」がうるさく感じてしまう様なシーンが発生するのがデメリットでもあります。「リングボケ」はすべてのシーンで発生する訳ではありませんが、背景や前景が大きくぼけるシチュエーションでは、輝度の高いポイントがある場合に発生します。
下のフラミンゴの写真の様な、背景が落ちた様なシチュエーションで撮影した場合には「リングボケ」は発生していません。
撮影シーンによって「リングボケ」の出方には様々ありますが、かなりのシーンで「リングボケ」が発生するので、この「リングボケ」のデメリットを魅力あるボケにする撮影方法が必要になってきます。
「MINOLTA AF 500mm F8 REFLEX」で干潟撮影
次に撮影場所を「ふなばし三番瀬海浜公園」に移動して干潟で撮影。海面の反射でキラキラした「リングボケ」を撮影できるのではないかと思って干潟を選んでみましたが、なかなか大きなリングボケを作る事が出来ず悪戦苦闘しました。しかし、動く被写体を撮影する上でオートフォーカスが使えるのは非常にメリットが多く、快適に撮影をする事ができました。焦点距離500mmともなると手持ち撮影で動いている被写体にピントを合わせるのはなかなかハードルが高くなり、ピントを外す事も多くなってきます。
「MINOLTA AF 500mm F8 REFLEX」は現代のレンズに比べて、オートフォーカスの速度はそれほど速くはありませんが、実用的な範囲でしっかりとオートフォーカスが活用できるので、規則的に動く被写体であれば十分対応できます。
まとめ
「MINOLTA AF 500mm F8 REFLEX」はミノルタ時代のレンズですが、ミノルタからソニーへと受け継がれたレンズなので、すでに終売になっています。しかし、同スペックのソニーAマウントのレンズ「500mm F8 Reflex(SAL500F80)」として販売されていました。程度の良いレンズを中古市場で探すのであれば、ソニーバージョンのレンズを探すのも良いかもしれません。
普通のレンズの描写とはちょっと違った「リングボケ」を、気楽にオートフォーカスで楽しみたい方におすすめのレンズです。
■写真家:坂井田富三
写真小売業界で27年勤務したのち独立しフリーランスカメラマンとして活動中。撮影ジャンルは、スポーツ・モータースポーツ・ネイチャー・ペット・動物・風景写真を中心に撮影。第48回キヤノンフォトコンテスト スポーツ/モータースポーツ部門で大賞を受賞。
・公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員
・EIZO認定ColorEdgeアンバサダー
・ソニーαアカデミー講師