【ジャンク】リバースアダプターとジャンクレンズを使って手軽に高倍率の接写を実現
はじめに
今回はリバースアダプターを使って、キットレンズのジャンク品などで超接写を楽しむ撮影方法をご紹介します。昔の一眼レフキットレンズのジャンク品が格安に入手できたので、何か面白い活用方法がないかと考えたときに、そういえば以前に使ったリバースアダプターがどこかにあったはずと仕事部屋を探して見つけ出し、早速組み合わせて撮影をしてみました。季節的に暖かくなり春の花が咲き誇る季節なので、リバースアダプターを使って花の接写を楽しんでみました。
リバースアダプターってなに?
「リバースアダプター」ってどんなのものかご存じですか?
リバースアダプターはレンズの前面にフィルターのように装着して、レンズを逆向きにしてカメラに装着する為のアダプターです。そのためレンズに装着する為にネジ切りした面の反対側は、ボディのマウントに合った形状をしています。
マウントの種類やフィルター径の大きさなどは各種あるので、使うカメラやレンズのフィルター径に合わせたものを用意します。レンズ前面のフィルター枠に装着するため、電子接点などは無くEXIF情報が記録されないのはもちろんのこと、絞り連動やオートフォーカスなどはまったく機能しなくなります。そういった制限がありますが、レンズを逆付けすることにより、高倍率での接写が可能になるアイテムです。
今回使用したリバースアダプターは、キヤノンEFマウント用でフィルター径は58mmのものです。ずいぶん昔に1,000円程度で入手したものになります。
レンズを装着すること自体は簡単にできますが、撮影に関してはあまり簡単ではありません。レンズを逆付けする事でマクロレンズのような接写が簡単にできるのですが、使うレンズの種類によっていろいろな制限があったり、拡大率も大きく変わります。レンズを逆付けするため、広角レンズを使用するとより撮影倍率が大きくなります。よって望遠レンズでは接写ができないので、リバースアダプターには不向きなレンズとなります。
またリバースアダプターを使用すると、ワーキングディスタンスが非常に短くなるため撮影に大きな制限がでてきます。被写体の距離が近くなりすぎるので、被写体に当たる光を遮ったり、気をつけないとレンズが被写体に当たってしまいそうなシーンもでてきます。レンズを逆付けすることで、本来のレンズの後玉が前面でむき出し状態になってしまうので、より注意が必要です。レンズの後玉に傷でも付いてしまっては大変です。
そんな事もあって、ジャンク品のレンズを使えば気持ち的に楽で、気軽にリバースアダプターで撮影をする事ができます。
上の写真はリバースアダプターを使って、レンズ焦点距離22mm側で撮影したスイセンの花です。広角レンズでリバースアダプターを使うことで、ここまでアップで撮影する事が可能になります。
この後は3本のジャンクレンズでリバースアダプターを使用して、どのような違いがでるか実際に撮影をしてみました。
リバースアダプターでジャンクレンズEF22-55mm F4-5.6 USMを使ってみる
最初に撮影をしてみたレンズは、キヤノンの「EF22-55mm F4-5.6 USM」です。このレンズが発売されたのは25年ほど前になる1998年で、発売当時の価格は30,000円。APS対応一眼レフ「EOS IX50」のベストマッチレンズとして開発された小型・軽量のズームレンズです。「EOS IX50」は、APSフイルムに対応した一眼カメラだったので、35mm換算で28-69mmになるこのレンズが開発されたようです。実際にはEFマウントなのでフルサイズ機にも対応可能なレンズになっています。
Canon EF22-55mm F4-5.6 USMの仕様
焦点距離 | 22-55mm |
レンズ構成 | 9群9枚 |
開放絞り | 4-5.6 |
最小絞り | 22-32 |
フィルター径 | 58mm |
絞り羽根枚数 | 5枚 |
最近接距離 | 0.35m |
マウント | EFマウント |
最大径x長さ | 66mm x 59mm |
重量 | 175g |
発売 | <1998年 |
「EF22-55mm F4-5.6 USM」はフルサイズにも対応しているので、リバースアダプターを使用しないで焦点距離55mmでの最短距離撮影と、リバースアダプターを使用して焦点距離55mmでの撮影、さらにリバースアダプターを使用して焦点距離22mmでの撮影比較をしてみました。
1枚目がレンズをそのままの状態で焦点距離55mmの最短撮影距離で撮影した写真。このレンズの最短撮影距離は0.35mなので、もともと寄れるレンズにはなっています。
2枚目はリバースアダプターを使用して焦点距離55mmにして撮影。撮影倍率は約0.9倍程度で、ほぼ等倍に近い撮影が可能になり、等倍マクロレンズの感覚に近い状態で撮影することができます。
3枚目はリバースアダプターを使用して焦点距離22mmにして撮影。撮影倍率は約2.2倍程度になり、普段撮影する事ができない超接写の世界を撮影することができます。
リバースアダプターを使用することで、手元にある標準レンズで簡単にコストをかけずに接写を楽しむ事ができますが、いいことばかりではありません。ワーキングディスタンスが短すぎる点や、そもそもピントリングの調整ではピントも合わないので、被写体の構図の制約が大きくなるのが欠点になります。そこを標準系のズームレンズを使用することで、撮影倍率は変化してしまいますが、ズームリングを使用してピント調整をすることで多少撮影が楽になります。
また、このレンズには絞りリングが無いので、リバースアダプターを使用した際に絞りの調整をする事ができません。非常に高い倍率で撮影できるのですが、絞りが開放状態でしか撮影できないので、ピント合わせが非常にシビアになります。手持ちでピント合わせをして撮影するのは困難なので、三脚を使用することをおススメします。
ジャンク品を2,000円程度で入手した「EF22-55mm F4-5.6 USM」ですが、やはり古いオートフォーカスレンズなので、通常使用ではいくつか問題も発生しました。今回使用したシグマMC-11マウントアダプターで通常撮影した場合に、残念ながらオートフォーカスの挙動は不安定になり、オートフォーカスでのピント合わせができないシーンが多く発生しました。もともとマウントアダプターMC-11のサポート外ですので仕方がありません。また、絞りの連動が正しく動作しないことも多々ありました。
下の写真は通常撮影で、焦点距離22mmで撮影したものになります。レンズ自体にクモリなどは無いのですが、逆光には弱く霞が発生します。順光での撮影である程度絞りを絞れば、それなりの解像感を得ることはできるので絞って使うことが前提になりそうです。
キヤノン「EF22-55mm F4-5.6 USM」は、そのままフルサイズで撮影できる広角系のズームレンズとして使えますし、リバースアダプターを使用すれば撮影倍率が2倍以上にもなる撮影が可能なレンズになり、ジャンク品でお得に購入できれば使い勝手が良いレンズかもしれません。
リバースアダプターでジャンクレンズEF-S18-55mm F3.5-5.6 USMを使ってみる
次に撮影をしてみたレンズは、キヤノン「EF-S18-55mm F3.5-5.6 USM」です。このレンズが発売されたのは2004年で、発売当時の価格は30,000円。EF-Sレンズ対応デジタル一眼レフカメラ専用の標準ズームレンズで、初代「EOS kiss Digtal」のキットレンズとして採用されていたレンズです。
Canon EF-S18-55mm F3.5-5.6 USMの仕様
焦点距離 | 18-55mm |
レンズ構成 | 9群11枚 |
開放絞り | 3.5-5.6 |
最小絞り | 22-36 |
フィルター径 | 58mm |
絞り羽根枚数 | 6枚 |
最近接距離 | 0.28m |
マウント | EF-Sマウント |
最大径x長さ | 68.5mm x 66mm |
重量 | 190g |
発売 | 2004年 |
このレンズはAPS-C用ですので、EF-Sレンズに対応したカメラ以外には装着できないよう、取り付け位置までレンズが入らないメカ構造を採用しています。またレンズ後端部には、保護用のゴムリングを装着しているので、もし誤って装着しようとしてもカメラ本体を傷つけないよう配慮されています。
ですので、フルサイズ機での通常使用には制限がかかってしまいますが、リバースアダプターを使用する場合にはこの制限は関係なくなるので、焦点距離が18mmスタートの超広角レンズを使用することと同じになり、撮影倍率も約2.7倍ほどの接写が可能になるレンズになります。
扱い方は、先に紹介したレンズと同様で絞りリングが無いため絞りは開放状態での撮影になり、ズームリングを使いながら倍率やピント合せなどをして撮影をします。
基本的な写りや操作性に関しては、先に紹介したキヤノン「EF22-55mm F4-5.6 USM」とあまり変わりなくフルサイズでの使用も問題ありません。こちらのレンズの方が新しいですし、よく売れた「EOS Kiss Digital」のキットレンズなので、お手頃な価格で入手しやすいレンズになります。今回使用しているマウントアダプター「シグマMC-11」に関しては、EF-Sレンズの装着は非対応なので通常使用はできなかった点が残念なポイントです。
リバースアダプターでジャンクレンズsmc PENTAX 50mm F1.4を使ってみる
最後に撮影をしてみたレンズは以前の記事、ジャンク品xジャンク品で3倍楽しむ!「ペンタックス smc PENTAX 50mm F1.4」×「ケンコー Macro TELEPLUS MC7」で使用した、レンズ内部に汚れやカビ、クモリありのレンズ「smc PENTAX 50mm F1.4」です。
前回の記事では「ケンコー Macro TELEPLUS MC7」を使用することで、撮影倍率を等倍までになるようにしましたが、今回は焦点距離50mmのレンズ単体でリバースアダプターを使用することにより同等の等倍撮影を可能にしています。
先に紹介した広角域があるズームレンズに比べて撮影倍率の調整はできませんが、このレンズには絞りリングがあるので、絞りの調整する事が可能です。絞りを絞ることにより被写界深度を稼げるので、接写時のピント位置調整も多少楽になります。
下の2枚の写真は絞りを変更して撮影したものになります。開放での撮影と絞りを絞った写真では大きく表情が変わってきます。可能であればリバースアダプターを使用する際には、絞りリングがあるレンズを使用した方が、表現の幅が広がります。
このレンズはレンズ内部に汚れやカビ、クモリありのレンズでしたので、やや軟調な仕上がりになっていますが、お花などの撮影においては、これくらいが丁度良いかもしれません。
まとめ
今回はジャンクレンズにリバースアダプターを使用して接写を楽しんでみましたが、もちろんジャンクレンズだけでなく、通常のレンズを使用して接写を楽しむことも可能です。ただレンズを逆付けして使用するため、レンズの後玉がむき出し状態になるので、高額なレンズでこの撮影を楽しむのはあまりおすすめできません。後玉に傷でも付けてしまったら大変です。その点ジャンクレンズなどで今回のような格安のキットレンズなどを使用するのであれば、気分的にも楽に使用することができます。気になった方はぜひリバースアダプターで接写にチャレンジしてみてください。
■写真家:坂井田富三
写真小売業界で27年勤務したのち独立しフリーランスカメラマンとして活動中。撮影ジャンルは、スポーツ・モータースポーツ・ネイチャー・ペット・動物・風景写真を中心に撮影。第48回キヤノンフォトコンテスト スポーツ/モータースポーツ部門で大賞を受賞。
・公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員
・EIZO認定ColorEdgeアンバサダー
・ソニーαアカデミー講師