雪の中でのセルフポートレート撮影のコツ|Rinaty
はじめに
皆さんこんにちは。セルフポートレート写真家 Rinatyです。
もうすぐ雪の季節ですね。
私は雪景色が大好きで、毎年様々なロケーションで自分自身を撮影しています。
今日はなるべく安全に雪の中で人物を撮影できるよう、私流のコツをお伝えしようと思います。
撮影場所を事前に確認しておく
雪撮影は命に関わることがあります。そのため事前準備は非常に大切です。
雪が降ると、崖や池の部分にも雪が積もります。普段は見えていても、雪が降るとただの雪原のように見えます。そんな場所に足を入れると落下し、最悪の場合命を落とすことがあります。また、クレバスと呼ばれる氷河や雪渓にできた深い溝が存在し、そこに落ちると自力で戻ってくることは困難です。雪解けの季節は特に注意しましょう。
ふわふわの雪の上にダイブするのも実は大変危険です。雪の下に木の枝などが隠れていることもあり、身体に刺さる可能性があります。あらかじめ現地の地図を確認し、危険な場所には近づかないようにしましょう。雪が降る地域に車で向かう際は、必ずスタッドレスタイヤを装着してくださいね。
防寒対策をしっかり
雪撮影には防寒対策は欠かせません。
私は-10℃の環境で朝9時から夕方17時までほぼ休憩無しで撮り続けたことがあります。
気合いがあったからという理由もありますが、防寒対策のおかげで長時間の撮影に耐えることができました。
風邪をひかないように気を引き締めて挑みましょう。
防寒対策で必要なものをご紹介します。
・カイロ
・靴下用カイロ
・インナー
・レギンス
・防水靴下
・スノーブーツ
・スキー用ウェア
・保温性能がある水筒
・空のペットボトル(なるべく丈夫なもの)
・サングラス
●カイロ
カイロは太い血管が通っている首、大きな筋肉がある背中や太もも、お腹、腰、足首に貼ると全身が暖まりやすいです。
肌に直接貼らないようにしましょう。私は一回の撮影で10枚以上使用します。
●靴下用カイロ
足の裏に貼ります。足の指先から冷えることが多いため、忘れずに貼りましょう。また、なるべく長時間持続するものを使用しましょう。
●インナー
寒い時のインナーはヒートテックを思い浮かべると思います。しかし、ヒートテックは気温がとても低い環境かつ、発汗を繰り返す場合には向いていません。汗の乾きが遅く、体が冷える場合があります。
そのため、重たい機材を持ったり山に登る場合はヒートテックではなく、吸汗性や保温性に優れたコットン、シルク、ウール素材のインナーがおすすめです。
●レギンス
寒い日はタイツをはく人が多いと思います。私はタイツではなく、裏起毛のレギンスを着用しています。理由は雪で靴下が湿ってしまった場合、すぐに履き替えることができるからです。濡れた衣類を長時間着用し続けるのは非常に危険です。
レギンスとレッグウォーマーを組み合わせると最強です。
●スノーブーツ
雪の中を歩く際はスノーブーツまたは長靴の着用がおすすめです。
スノーブーツは暖かいだけでなく、履き口を紐で縛り、雪の侵入を防ぐことができます。
●スキー用ウェア
雪に降られたり雪の上に座ったりすると、雪が溶けて服が濡れます。そのため、防水性や撥水性が高く、暖かいウェアを着込みましょう。
●空のペットボトルと保温性のある水筒
水筒と聞くと、温かい飲み物を持っていくんだなと想像する人が多いでしょう。
私の場合は飲んで暖まるために持っていくだけではなく、手を温めるために持っていきます。
写真だけ撮る場合は手袋を着用しておけばいいのですが、私の場合、手袋を外してモデルを務めなければなりません。
ポージングをしているうちに指先がかじかみ、機材の操作が難しくなります。手袋を外している間に手袋が凍り、冷えてしまうこともよくあります。そのため、手袋を外さなければならないモデルさんやセルフポートレートを撮る人に効果的です。
熱湯を水筒に入れていき、少しだけ中身をペットボトルに移します。そのボトルを握りしめると指先が温まります。
今までカイロや電熱線の入った手袋など色々試してきましたが、これが一番効果的でした。
●サングラス
晴れている日の雪撮影は、太陽光の反射がとても眩しく、目に負担がかかります。
強い光は疲労に繋がりますので、サングラスを持っていると移動中に便利です。
その他、撮影前後は身体を温める食べ物や飲み物を選んで口にするようにしています。
【温める食べもの】
・キムチ
・生姜
・納豆などの発酵食品
・冬が旬の根菜類(かぼちゃ、にんじん、さつまいもなど)
・唐辛子
・ココア
・生姜茶
・肉や魚
【冷える食べ物】
・豆腐
・夏野菜
・白砂糖
・白米
・乳製品
・小麦製品
・大根
・コーヒー
・緑茶
・南国で育つフルーツ
寒さや水に強い機材を使用
撮影する環境に応じた機材を持っていくことが大切です。
予め、自分が行くロケーションがどれくらいまで気温が下がるか調べておきましょう。
また、地域によって雪の質が異なります。
たとえば長野県は服に積もってもすぐに払うことができるくらいサラサラとしていますが、富山県は比較的重たい雪が降ります。
防塵防滴かつ-20℃くらいまで耐えられるカメラだと安心です。
結露防止のコツ
寒いところで撮影し、休憩するために暖かい場所に入ると、温度差でレンズが曇り撮影ができなくなってしまいます。
結露ができるとカビも生えやすくなるため、慎重に取り扱う必要があります。その予防法もお伝えしましょう。
1.休憩時にカメラを室内に持ち込まない
暖房がきいた車や建物の中で休憩する際、カメラは持ち込まず、外に置いておくようにしましょう。急激な温度変化がなければ結露することはありません。
2.レンズヒーターを用いる
レンズヒーターをレンズに巻き付けることで、レンズの温度を上昇させて露点温度より高くすることで結露を防止できます。屋外で撮影し、室内の撮影をすぐに開始する場合は、屋外の撮影時にレンズヒーターを使用しておくと、急激な温度変化を避けられます。
撤収する際はカメラについた雪を払い、レンズケースなどに入れて徐々に温度を変化させることをおすすめします。
凍傷対策
寒い場所で撮影していると、指先が凍傷になる可能性があり危険です。できる限り手袋を着用しましょう。
また、機材の金属部分を触るときは素手で触ることを避けましょう。手が金属部分に張り付き、皮膚を持っていかれてしまうことがあります。私は撮影の際、カーボン製かつ金属の部品が少ない三脚を持っていくようにしています。
雪作品紹介
ここからは実際に雪の中で撮影した作品を紹介していきます!
こちらの作品はNikon Zfで撮影。
気温は-10℃、風速20mの環境で撮影したセルフポートレート作品です。
非常に厳しい環境でしたが、止まることなく1時間自撮りし続けることができました。
この作品ではH&Y filterのGNDフィルターを使用して空の部分を減光し、さらにストロボを使用。被写体である私に視線が集まるように調整しています。
こちらの作品はNikon Z9で撮影。
気温は-5℃でそこまで寒くはありませんが、地面は凍結しツルツル。
スノーブーツにアイゼンを取り付け、滑らないように対策をして撮影しています。大きなオーガンジー素材の造花を用意し、氷の花のように見せています。
こちらの作品はNikon Z8で撮影。
気温は0℃くらいで暖かいですが、ノースリーブのドレスのため肌寒く感じます。また、天の川が現れる1時過ぎから夜明けまで撮り続けなければならないため、体力が必要です。
少し青っぽくしたかったため、オレンジ色のフィルターを装着したストロボを2灯用意し、カメラ側のホワイトバランスを3000Kに設定しました。そして先幕シンクロでシャッターが切れるタイミングで布を飛ばして20秒間身体が動かないように静止しました。
1枚撮るごとに時間がかかり、天の川の位置がどんどんと変化し、夜明けに近づく度に空が明るくなるため、非常に難しい撮影でした。
こちらの作品はNikon Zfで撮影。
長野県の王ヶ頭で撮った1枚です。王ヶ頭には電波塔が多くそびえ立っており、その異質な雰囲気を残したいと思いました。
しかしこの日は非常に天気が悪く、白い霧で景色がほとんど見えない状況でした。
それでも霧が晴れる一瞬を狙い、1時間待機して撮影することができました。
こちらの作品はSONY α7R IIIで撮影。場所は山形県の蔵王です。
行きのロープウェイに乗るまで2時間、帰りのロープウェイに乗るまで2時間、撮影時間は1時間という、待ち時間のほうが長かった撮影。
待ち時間の間にかなり体温を奪われて寒かったのですが、気合いを入れて撮影しました。
樹氷の根本は窪んでいて、近くに立つと足が埋もれます。すると、足がかなり短く写ってしまいます。そのため、超広角レンズを使用し、ドレスのトレーンをレンズの近くまで伸ばし、脚が長く見えるように工夫して撮影しました。
こちらの作品はNikon Z8で撮影。
2024年9月に玄光社から出版された私の初著書、「撮影もモデルも全部わたし。#セルフポートレートの裏側」の表紙用に撮影した一枚。
私はこれまでに6回も立山連峰に登って撮影をしていますが、天気に恵まれず一度も夕日を撮ったことがありませんでした。
しかし念願が叶い、美しい夕焼けを撮ることができました。太陽が沈んでいき、数分ごとに背景が変わるため、雪の上を走り回って懸命に撮影しました。ストロボを使って人物が浮き上がるように撮っています。
おわりに
いかがだったでしょうか。
雪撮影は危険がたくさん潜んでいる一方で、非現実的な世界に一瞬で連れて行ってくれる魅力があります。安全や体調管理に注意しながら、雪撮影を是非楽しんでください!
■写真家:Rinaty
2021年よりフリーランスフォトグラファーに転身、大阪を拠点として全国で活動中。カメラマン・モデル・ヘアメイク・スタイリング・アートディレクションを全て一人でこなすセルフポートレート写真家として多くの作品を残す。フォトウォークやセミナー等の撮影イベントも多く開催し、上田安子服飾専門学校ファッションフォトグラフィックコースにて講師を務める。その一方でウェディング前撮り、成人式前撮り、プロフィール撮影、キッズ撮影、広告撮影、商品撮影など幅広く活躍している。
日本写真家協会 正会員・東京カメラ部2022 10選