応募作品への寸評会!|風景写真の引き出しを増やす!その4:構図 編
- はじめに
- quattroさんの作品 ●良かった点 輝度差の大きな難しい状況ながらしっかりとしたテクニックで、素晴らしい朝日の作品に仕上げています。広角24mmレンズで手前の船を大きく取り入れた三分割構図で主題と遠近感を強調。四隅まで隙の無い画面構成です。 ●アドバイス 太陽付近の白飛びが極力飛ばないような露出は良いのですが、画面の左1/3の部分が暗く落ち込み、たるみを感じます。全体をもう少し明るめにするか、レタッチアプリ等をお使いでしたら、その部分のみを少し明るくするとより画面が引き締まります。それから広角レンズとはいえ、カメラから手前の船までの距離が相当近いのでもう少し絞った方が良いと感じました(F11~16程度)。フィルターの枠なのかもしれませんが、画面上部にケラレが見受けられるのでその点にも注意しましょう。 【元の写真】 【全体を明るく、さらに左部分のシャドウ部を明るくした写真】 清瀬のナスさんの作品 ●良かった点 覆いかぶさる桜を手前に大きく取り入れ、道と川、2本の曲線を無駄なく配置することで遠近感が上手く表現されています。借景的に扱った富士山と桜の枝先が被ることが無いよう良い高さにカメラを構えられています。 ●アドバイス 画面構成自体は上手く出来ているのですが、画面左下の光を欲張りすぎたように感じます。入れたい気持ちはよくわかるのですが、この明るさが結果的に富士山へと導く視線移動を止めてしまいます。その部分を少しカットするとより良いでしょう。肖像権への配慮が必要なので一概には言えませんが、奥に写っている人物がもう少し手前だと画面がより引き締まります。それからカメラの設定なのかもしれませんが、ややコントラストが高く見受けられました。輝度差の大きな状況なので、もう少しコントラストを抑えると桜と青空の色がより引き立ちますよ。 【元の写真】 【左下の光をカット、全体的にコントラストを弱めた写真】 ひろっち(姫路)さんの作品 ●良かった点 茜色の空が干潟に映り込んだ美しい作品ですね。曲線を効果的に取り入れてリズミカルなパターン構図で描かれています。手前部分のハッキリとした模様を取り入れる事で干潟らしさがより強調されています。 ●アドバイス 画面手前の模様を入れたこと自体は良いのですが、どこで切って良いのか迷いがあったように見受けられます。結果、左下の曲線を欲張った事で黒い部分が多くなり茜色を弱めてしまいました。いっそ大胆に曲線の先端をカットすると印象が強まるでしょう。ただしそのラインは重要なポイント。曲線感を損なわない程度に左下隅に少しだけ残す事を意識しましょう。また望遠域を使うと被写界深度が浅くなりがち。F16まで絞ってはいるものの奥のピントが浅く、ピント位置が手前過ぎるように感じました。画面下から約1/3くらいの所にピントを置くと良いでしょう。 【元の写真】 【左下隅の黒をカットした写真】 East5さんの作品 ●良かった点 作者自身の気持ちに沿って素直にカメラを向けたことが伝わってきます。二分割構図っぽく見えていますが、この場合は主題が「夕焼けと東京タワーの赤色」と明らかなので、それらをセンターに配置して強調したことが功を奏しました。一見、暗めに見えるものの赤色を強調するための露出としては適切で、シャドウ部の暗さも問題ありません。 ●アドバイス 単焦点レンズのカメラから更にクロップしての撮影なので仕方がないのですが、欲を言えばもう少し主題部分が大きく撮れていれば・・・という印象を受けました。これ以上トリミングすると大きくプリントするのは難しくなりますが、PCやスマートフォンでの鑑賞であれば問題ありませんので参考になさってください。 【元の写真】 【全体をややトリミングして赤の印象を強めました】 kurumiさんの作品 ●良かった点 見た瞬間に不思議な印象を受けた作品です。私もどうなっているのか最初わからなかったのですが、いただいたコメントを拝見して納得。手前1/3の映り込みは手すり上面に出来た水たまりの反射を利用しているとの事です。三分割構図で水たまり部分、鏡のような映り込みとゆらぐ水面と対比させ、異空間のように描かれています。良い所に目をつけたと感心させられました。 ●アドバイス 構図に関しては無駄がありません。構図以外で、しいて言うなら光の当たり具合が順光気味で全体がのっぺりと見える事くらいです。撮影地がもしご近所ならサイド光や半逆光になる時間を意識しておき、雨上がりのタイミングが合えば再度トライしてみて下さい。さらに完成度の高い作品が撮れるかもしれませんよ。晴れている時の光の扱いに関しては過去にアップしたShaShaの記事「天候を味方に!条件を生かす撮影法 その1:晴天編」を参考にして下さいね。 [shasha_relation_post id="" slug="486286855"] 【元の写真】 しんたろうさんの作品 ●良かった点 一見、何でもない枯れ枝ですが、影の斜めラインと組み合わせてパターン構図を作っています。良い所に目をつけましたね。半逆光の光線状態でキラキラとした様子が伝わってきます。低めの位置にカメラを構え、主題の前後を少しぼかしているところも絶妙です。 ●アドバイス 美しい斜めラインを探して撮影しているだけに、画面の上中央部分の曲線を取り入れたことが惜しいと感じられました。少しトリミングをしてその部分をカットすればもっとパターン構図が引き立ちます。カメラをもう少し左に振り、枯れ枝を画面中央よりやや右に配置、影の方向に沿わせれば右上から左下への視線誘導がより明確になります。枯れ枝を影にかぶせていますが(それが悪いという訳ではありません)少し太陽の向きが変わり、枯れ枝が日なたになるのを待てば、もう一本斜めラインが加わりますので、時間が許すなら狙ってみるのも良かったでしょう。雪の質感を出すにはもう少し暗めの露出が向いています。 【元の写真】 【トリミングと枯れ枝の位置イメージ】 ※わかりやすいよう画像加工で枯れ枝を移動させています。 本来は撮影時に考えることなのでご参考までに。明るさも少し暗くしています。 TOSIOさんの作品 ●良かった点 三分割構図で空を2/3、山の稜線から下を1/3の割合とすることで主役がドラマチックな夕空だと感じさせてくれます。これほど輝度差が大きいと地面の部分はほぼ黒つぶれになってしまうので、撮影時に空がメインだと定めてその割合を高めたことが良い結果につながりました。脇役の鉄塔群の背景が明るくなっている事で、そのシルエットが際立っているところも良いですね。 ●アドバイス 前述の通り構図の考え方としては良く、空の上部までもっと明るく焼けていればこれでOKでした。しかしこの状況だと画面上部の黒い雲が重く感じてしまうのと、それに加えて山の右側にかかる黒い雲が稜線のラインを目立たなくさせてしまいました。同じ三分割構図でも、もう少し望遠側を使って夕空に対して黒い部分の面積を減らせば、より主役が明確になりますよ。 【元の写真】 【上下の黒い部分をトリミングした写真】 mikaさんの作品 ●良かった点 のんびりとした秋の様子が伝わってくる作品です。湖面に浮かぶボートをあえて小さめに扱うことで風景の広さが表現出来ています。ボートと人物の映り込みはハッキリ。それでいて湖の中央部分には少しさざ波があり、穏やかな風が感じられるところもグッドです。 ●アドバイス ボートの進む方向から考えると画面右が空きすぎてしまったように感じます。あらかじめ、やってくる事に気付いていたならシャッターを切るタイミングをもう少し早くして、ボートの位置が三分割の右ライン付近にあればなお良かったでしょう。また空の面積比に関しては三分割構図に当てはめた場合、これで間違ってはいないのですが、画面下部に明確な主役があることから少し空を減らすと主役がより引き立ちます。 【元の写真】 【空のトリミングとボート位置のイメージ】 ※わかりやすいよう画像加工でボートを移動させています。 本来は撮影時に考えることなのでご参考までに。 saykazさんの作品 ●良かった点 ほぼ真上を向き、超広角レンズで木々が伸びあがる様子をダイナミックに描いています。このようなシーンでは画面が散漫になりがちなのですが、画面上部から下に向けての枝ぶりがポイントとなり画面を引き締めています。色変わり中の紅葉を逆光で捉え、キラキラとした色表現になりました。 ●アドバイス とは言え、気になるのが画面左側の青空のスペース。この部分が空いている事で紅葉のボリューム感が損なわれているように感じます。撮影時に画角を狭めてその部分をカットすると良いのですが、それだと太陽の位置が窮屈になってしまいます。同じカメラ位置で画角調整するのではなく、自分が左右や前後にポジションを変えることで画面全体に紅葉を分布させ、かつ太陽が良い位置に入るようにすればもっと良くなります。もしくは時間をずらして太陽の位置が変わるのを待っても良いでしょう。光条のラインについては、もう少しハッキリと出ていると良いと感じました。絞りの設定は良いのですが、こちらもカメラポジションを微調整して木の枝などに太陽がかかるようにすればシャープさが増すので試してみて下さいね。 【元の写真】 【左側の青空をカット、少し明るくしたイメージ】 ※5:4にトリミングしています。太陽の位置が窮屈になってしまいますが、紅葉の分布具合の参考にしてください。 孤太郎さんの作品 ●良かった点 ピークの紅葉、色変わり中の黄葉、そして葉を落とした木、秋から晩秋にかけての季節の移り変わりが閉じ込められており「現在、過去、未来」が1枚に凝縮されています。怪しげにも見える落葉の枝ぶりにも意識を配って構成、鮮やかさだけにとらわれることなく、眼前の風景としっかり向き合っていることが感じられます。やや暗めの露出も雰囲気に合っています。 ●アドバイス 概ね三分割構図に沿っているのですが、左のスペースがやや多いように感じます。そこをカットすればもっと画面が引き締まるとともに枯れ枝の造形が主張してきます。それ以外はOKなのですが、しいて言うなら光の強弱がもう少し感じられればとも思います。この場所、天候では難しいと思うのですが、曇りにおいても光を意識できる場所探しの練習もしてみて下さいね。曇り天候での光の強弱に関しては過去にアップしたShaShaの記事「天候を味方に!条件を生かす撮影法 その4:曇り編」にも書いています。 [shasha_relation_post id="" slug="landscape"] 【元の写真】 【左をカットした写真】 まとめ 写真寸評いかがでしたか?ご自分が撮っている気持ちになって参考にしていただけると嬉しいです。 構図には一応セオリーがあるとは言え、「絶対にこうしなければならない」という決まりもありません。それだけに今回応募の作品の中にも迷いが見受けられる写真が多々ありました。先月の記事のおさらいとなりますが、構図に関しては定番を頭に入れつつも作者の想いを優先することを考えると良いでしょう。最後までお読みいただきありがとうございました。 ■写真家:高橋良典 (公社)日本写真家協会会員・日本風景写真家協会会員・奈良県美術人協会会員・ソニープロイメージングサポート会員・αアカデミー講師
- 清瀬のナスさんの作品
- ひろっち(姫路)さんの作品
- East5さんの作品
- kurumiさんの作品
- しんたろうさんの作品
- TOSIOさんの作品
- mikaさんの作品
- saykazさんの作品
- 孤太郎さんの作品
- まとめ
はじめに
皆さんこんにちは。今回はShaSha写真寸評の記念すべき第1回目をお送りいたします。初めての試みに私もキタムラスタッフも写真が集まるかどうか不安を抱えた状態でのスタートでしたが、たくさんのご応募をいただき本当にありがとうございました。
応募作品の中には非の打ち所がない素晴らしい写真もあり、楽しく、そして感心しながら拝見いたしました。枚数に限りがある中ですが、その中で特に構図の参考になるような作品10点を選ばせていただきました。
quattroさんの作品
●良かった点
輝度差の大きな難しい状況ながらしっかりとしたテクニックで、素晴らしい朝日の作品に仕上げています。広角24mmレンズで手前の船を大きく取り入れた三分割構図で主題と遠近感を強調。四隅まで隙の無い画面構成です。
●アドバイス
太陽付近の白飛びが極力飛ばないような露出は良いのですが、画面の左1/3の部分が暗く落ち込み、たるみを感じます。全体をもう少し明るめにするか、レタッチアプリ等をお使いでしたら、その部分のみを少し明るくするとより画面が引き締まります。それから広角レンズとはいえ、カメラから手前の船までの距離が相当近いのでもう少し絞った方が良いと感じました(F11~16程度)。フィルターの枠なのかもしれませんが、画面上部にケラレが見受けられるのでその点にも注意しましょう。
清瀬のナスさんの作品
●良かった点
覆いかぶさる桜を手前に大きく取り入れ、道と川、2本の曲線を無駄なく配置することで遠近感が上手く表現されています。借景的に扱った富士山と桜の枝先が被ることが無いよう良い高さにカメラを構えられています。
●アドバイス
画面構成自体は上手く出来ているのですが、画面左下の光を欲張りすぎたように感じます。入れたい気持ちはよくわかるのですが、この明るさが結果的に富士山へと導く視線移動を止めてしまいます。その部分を少しカットするとより良いでしょう。肖像権への配慮が必要なので一概には言えませんが、奥に写っている人物がもう少し手前だと画面がより引き締まります。それからカメラの設定なのかもしれませんが、ややコントラストが高く見受けられました。輝度差の大きな状況なので、もう少しコントラストを抑えると桜と青空の色がより引き立ちますよ。
ひろっち(姫路)さんの作品
●良かった点
茜色の空が干潟に映り込んだ美しい作品ですね。曲線を効果的に取り入れてリズミカルなパターン構図で描かれています。手前部分のハッキリとした模様を取り入れる事で干潟らしさがより強調されています。
●アドバイス
画面手前の模様を入れたこと自体は良いのですが、どこで切って良いのか迷いがあったように見受けられます。結果、左下の曲線を欲張った事で黒い部分が多くなり茜色を弱めてしまいました。いっそ大胆に曲線の先端をカットすると印象が強まるでしょう。ただしそのラインは重要なポイント。曲線感を損なわない程度に左下隅に少しだけ残す事を意識しましょう。また望遠域を使うと被写界深度が浅くなりがち。F16まで絞ってはいるものの奥のピントが浅く、ピント位置が手前過ぎるように感じました。画面下から約1/3くらいの所にピントを置くと良いでしょう。
East5さんの作品
●良かった点
作者自身の気持ちに沿って素直にカメラを向けたことが伝わってきます。二分割構図っぽく見えていますが、この場合は主題が「夕焼けと東京タワーの赤色」と明らかなので、それらをセンターに配置して強調したことが功を奏しました。一見、暗めに見えるものの赤色を強調するための露出としては適切で、シャドウ部の暗さも問題ありません。
●アドバイス
単焦点レンズのカメラから更にクロップしての撮影なので仕方がないのですが、欲を言えばもう少し主題部分が大きく撮れていれば・・・という印象を受けました。これ以上トリミングすると大きくプリントするのは難しくなりますが、PCやスマートフォンでの鑑賞であれば問題ありませんので参考になさってください。
kurumiさんの作品
●良かった点
見た瞬間に不思議な印象を受けた作品です。私もどうなっているのか最初わからなかったのですが、いただいたコメントを拝見して納得。手前1/3の映り込みは手すり上面に出来た水たまりの反射を利用しているとの事です。三分割構図で水たまり部分、鏡のような映り込みとゆらぐ水面と対比させ、異空間のように描かれています。良い所に目をつけたと感心させられました。
●アドバイス
構図に関しては無駄がありません。構図以外で、しいて言うなら光の当たり具合が順光気味で全体がのっぺりと見える事くらいです。撮影地がもしご近所ならサイド光や半逆光になる時間を意識しておき、雨上がりのタイミングが合えば再度トライしてみて下さい。さらに完成度の高い作品が撮れるかもしれませんよ。晴れている時の光の扱いに関しては過去にアップしたShaShaの記事「天候を味方に!条件を生かす撮影法 その1:晴天編」を参考にして下さいね。
しんたろうさんの作品
●良かった点
一見、何でもない枯れ枝ですが、影の斜めラインと組み合わせてパターン構図を作っています。良い所に目をつけましたね。半逆光の光線状態でキラキラとした様子が伝わってきます。低めの位置にカメラを構え、主題の前後を少しぼかしているところも絶妙です。
●アドバイス
美しい斜めラインを探して撮影しているだけに、画面の上中央部分の曲線を取り入れたことが惜しいと感じられました。少しトリミングをしてその部分をカットすればもっとパターン構図が引き立ちます。カメラをもう少し左に振り、枯れ枝を画面中央よりやや右に配置、影の方向に沿わせれば右上から左下への視線誘導がより明確になります。枯れ枝を影にかぶせていますが(それが悪いという訳ではありません)少し太陽の向きが変わり、枯れ枝が日なたになるのを待てば、もう一本斜めラインが加わりますので、時間が許すなら狙ってみるのも良かったでしょう。雪の質感を出すにはもう少し暗めの露出が向いています。
TOSIOさんの作品
●良かった点
三分割構図で空を2/3、山の稜線から下を1/3の割合とすることで主役がドラマチックな夕空だと感じさせてくれます。これほど輝度差が大きいと地面の部分はほぼ黒つぶれになってしまうので、撮影時に空がメインだと定めてその割合を高めたことが良い結果につながりました。脇役の鉄塔群の背景が明るくなっている事で、そのシルエットが際立っているところも良いですね。
●アドバイス
前述の通り構図の考え方としては良く、空の上部までもっと明るく焼けていればこれでOKでした。しかしこの状況だと画面上部の黒い雲が重く感じてしまうのと、それに加えて山の右側にかかる黒い雲が稜線のラインを目立たなくさせてしまいました。同じ三分割構図でも、もう少し望遠側を使って夕空に対して黒い部分の面積を減らせば、より主役が明確になりますよ。
mikaさんの作品
●良かった点
のんびりとした秋の様子が伝わってくる作品です。湖面に浮かぶボートをあえて小さめに扱うことで風景の広さが表現出来ています。ボートと人物の映り込みはハッキリ。それでいて湖の中央部分には少しさざ波があり、穏やかな風が感じられるところもグッドです。
●アドバイス
ボートの進む方向から考えると画面右が空きすぎてしまったように感じます。あらかじめ、やってくる事に気付いていたならシャッターを切るタイミングをもう少し早くして、ボートの位置が三分割の右ライン付近にあればなお良かったでしょう。また空の面積比に関しては三分割構図に当てはめた場合、これで間違ってはいないのですが、画面下部に明確な主役があることから少し空を減らすと主役がより引き立ちます。
saykazさんの作品
●良かった点
ほぼ真上を向き、超広角レンズで木々が伸びあがる様子をダイナミックに描いています。このようなシーンでは画面が散漫になりがちなのですが、画面上部から下に向けての枝ぶりがポイントとなり画面を引き締めています。色変わり中の紅葉を逆光で捉え、キラキラとした色表現になりました。
●アドバイス
とは言え、気になるのが画面左側の青空のスペース。この部分が空いている事で紅葉のボリューム感が損なわれているように感じます。撮影時に画角を狭めてその部分をカットすると良いのですが、それだと太陽の位置が窮屈になってしまいます。同じカメラ位置で画角調整するのではなく、自分が左右や前後にポジションを変えることで画面全体に紅葉を分布させ、かつ太陽が良い位置に入るようにすればもっと良くなります。もしくは時間をずらして太陽の位置が変わるのを待っても良いでしょう。光条のラインについては、もう少しハッキリと出ていると良いと感じました。絞りの設定は良いのですが、こちらもカメラポジションを微調整して木の枝などに太陽がかかるようにすればシャープさが増すので試してみて下さいね。
孤太郎さんの作品
●良かった点
ピークの紅葉、色変わり中の黄葉、そして葉を落とした木、秋から晩秋にかけての季節の移り変わりが閉じ込められており「現在、過去、未来」が1枚に凝縮されています。怪しげにも見える落葉の枝ぶりにも意識を配って構成、鮮やかさだけにとらわれることなく、眼前の風景としっかり向き合っていることが感じられます。やや暗めの露出も雰囲気に合っています。
●アドバイス
概ね三分割構図に沿っているのですが、左のスペースがやや多いように感じます。そこをカットすればもっと画面が引き締まるとともに枯れ枝の造形が主張してきます。それ以外はOKなのですが、しいて言うなら光の強弱がもう少し感じられればとも思います。この場所、天候では難しいと思うのですが、曇りにおいても光を意識できる場所探しの練習もしてみて下さいね。曇り天候での光の強弱に関しては過去にアップしたShaShaの記事「天候を味方に!条件を生かす撮影法 その4:曇り編」にも書いています。
まとめ
写真寸評いかがでしたか?ご自分が撮っている気持ちになって参考にしていただけると嬉しいです。
構図には一応セオリーがあるとは言え、「絶対にこうしなければならない」という決まりもありません。それだけに今回応募の作品の中にも迷いが見受けられる写真が多々ありました。先月の記事のおさらいとなりますが、構図に関しては定番を頭に入れつつも作者の想いを優先することを考えると良いでしょう。最後までお読みいただきありがとうございました。
■写真家:高橋良典
(公社)日本写真家協会会員・日本風景写真家協会会員・奈良県美術人協会会員・ソニープロイメージングサポート会員・αアカデミー講師