応募作品への寸評会!|風景写真の引き出しを増やす!その8:冬景色撮影のポイント 編
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はじめに
皆さんこんにちは。今月のshasha写真寸評は冬の撮影がテーマ。ご応募いただいたみなさまありがとうございました。たくさん写真をお送りいただいたのですが、その中から9枚を選んで寸評を行いました。
aokiさんの作品
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●良かった点
広角レンズを使ったダイナミックな作画で風景の広がりを描いています。「ハーフNDフィルターの使用」「カメラの明暗調整機能の活用」「撮影後のレタッチ」これらのいずれかを使っていると思われますが、空と地上の明暗差を上手く整え肉眼で見た風景の感動を伝えています。
●アドバイス
「雪を纏った岩を前景に入れましたが比率が多かったように思いますがいかがでしょうか?」と作者さんからコメントをいただいています。確かにそのように感じますが、特に「画面右下の黒い部分が多い」のが気になっているのだと思います。私も「岩を入れる比率はこれくらいで良い、でも画面右下の黒い部分」が、もう少し何とかなればと感じました。この写真からトリミングをして黒い部分を減らせばよいと考えがちなのですが、そうするとせっかくの広角レンズのダイナミックさが薄らいでしまいます。そうならないようにするには以下3つの選択肢が考えられますので、ご参考になさってくださいね。
【1】もう少し前に出て岩に近づき黒い部分を減らす
【2】同じ場所でカメラを高くして画面の上下幅を増やし黒い部分を減らす
【3】レタッチで右下と中央の岩のディテールを出す
ベストは【2】か【3】なのですが、私はこの場所で撮影したことがなくハッキリとしたことが言えません。
状況が許せばということでお考え下さいね。
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Khun Taさんの作品
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●良かった点
シンプルな構図でまとめられており、雪原にたたずむ樹の様子を上手く描いています。真っ白な空間の中、樹の下に落ちる影がアクセントになっています。
●アドバイス
主役の樹をもう少し左に配置すると良かったと感じます。シンプルな構図だけに3分割構図を意識するとよいでしょう。それから写真がやや暗く感じました。粉雪の舞う天候の中、撮影条件としては今一つだったのかもしれませんが全体を明るくして雪の白さを強調。グレーに写っている全体が明るくなれば作品としても成立すると感じました。天候に合わせて撮り方や露出補正を柔軟に考えると良いでしょう。それからもう一つ。この作品は「樹を主役」に扱っている意味合いですね。それは良いとして、他に樹を小さめに扱った「広い空間が主役」の構図も一緒に撮っておきましょう。
motoさんの作品
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●良かった点
素晴らしい雲海との出会いでしたね。背景の山並みを見せつつ、主題のお城はハッキリと見えるタイミングを待ちシャッターを切られています。連なる雲海の奥行きを縦構図でまとめたところも秀逸です。
●アドバイス
明るめに調整して雲の白さを出せばさらに良くなります。雲海の露出は「順光」なのか「逆光」なのかによって判断すると良いでしょう。この作品は「順光」。作品自体は肉眼で見ているよりやや暗めに写っていると思うのですが、それを肉眼で見ている風景の明るさに近づけるようイメージしましょう。逆に「逆光」の場合は光と影を描くために暗めにまとめることがポイントです。
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こうちゃんさんの作品
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●良かった点
滝の奥、木々への着雪が美しいですね。モノトーン調でまとめられた作品は水墨画を思わせるようです。
●アドバイス
滝の流れに対するシャッタースピードは良いのですが、降りしきる雪の模様が煩雑になってしまい主役の滝が霞んでしまいました。水の流れ自体はもっと低速シャッターでも問題ないので1秒~2秒くらいにシャッター速度を設定、雪の模様が消える程度にすれば滝が引き立ち、さらに静寂が感じられる様な雰囲気に仕上がるでしょう。
フジやんさんの作品
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●良かった点
鹿が木の葉に飛びつくシーンを逃さず瞬発力よく捉えられています。鹿の扱いは小さいながらも、背景が雪景色で明るくシルエットになるため上手く主役に視線誘導ができています。画面上部の木が黒々としていることから降雪の様子が映えました。
●アドバイス
やや露出が暗い印象を受けました。雪の白さが出るよう撮影後で構いませんので、もう少し明るめにレタッチしてみてください。降雪でかすんでいる場合どうしてもメリハリ感に欠ける写真になってしまいがちなのですが、それで改善できます。全体を明るくしても鹿は木陰の暗い所にいるのでシルエットの印象が弱くなってしまうことはありません。それから鹿が左向きの方向性を出していますので右側をトリミングして鹿の位置が画面中央より、やや右側に位置するようトリミングすればもっと写真が引き締まりますよ。
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coyzさんの作品
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●良かった点
ブルーの湖面の色がよく出せており雪景色と相まって寒さが伝わってきます。太陽が低い時間帯の撮影により光と影が入り組み、特に水面に落ちる影模様が画面にリズム感を作り出しています。
●アドバイス
日なたと日陰の明暗差が大きく、その状況を生かし切れていないと感じます。露出調整が難しいシーンなのですが、画面右側の積雪部分を主役と考えもっとアンダー露出にすれば、より陰影が引き立ち作品が締まった印象となりますし湖面のブルーも強調されます。それから画面左側の山の稜線の入り方が中途半端に見えます。画角を広くして稜線を入れ、しっかりと青空を見せられればなお良かったでしょう。もしくは青空をカットしてしまうのもアリです。
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ひつじさんの作品
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●良かった点
穏やかな天気の気持ち良い山岳写真です。しかし画面右側の急な登攀の跡を見ると、ここまでたどり着くことが容易でない険しい冬山である事がわかります。右下の雲海がそのスケール感と高さをより印象付けていますね。実際の稜線と影の稜線、その2本のラインの取り入れ方が良くシンプルな構図でも飽きさせず、人物をあえて小さめに見せたところもグッドです。
●アドバイス
空の面積をもう少しトリミングで減らせば稜線が天を衝くイメージになり、高度感がより強調されます。その他は申し分ありません。センサーにゴミが付着していると思われますのでメンテナンスしておいて下さいね。
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まささんの作品
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●良かった点
広角域24mmで大楠を見上げ、その大きさを表現しています。降りしきる雪が黒っぽい背景のおかげで上手く描かれました。フラッシュを使用しているとの事ですが、その点について詳しくは後述いたします。
●アドバイス
画面左上の白い空が雪の印象を弱めています。5:4の比率でトリミング、空の部分を極力カットすれば雪が協調されますし、画面が引き締まります。もしくは撮影時に状況が許すなら、もう少し左側に動いてアプローチすればカメラの3:2比率でも空の面積を減らせたと思われます。それからフラッシュを使用する場合ですが、絞りを開け気味にしておくのがおすすめです。本作品では16まで絞っている事からよく見るとフラッシュの当たった部分、雪の前ボケが硬い印象です。焦点距離24mmから考えるとパンフォーカスにする場合でも絞りは5.6~8程度で十分です。絞りを開けて雪の前ボケをもっと柔らかく描けばなお良かったでしょう。
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弧太郎さんの作品
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●良かった点
柿の背景に木が生い茂っている箇所を選ぶ事で、雪の存在感が増しました。寂しげになってしまいがちな冬の風景に鮮やかな柿の実が彩りを加えています。
●アドバイス
背景がやや煩雑な印象を受けました。周辺の状況によるのですが、左右もしくは上下に高さを変えカメラを構える位置を探ってみましょう。背景の枝を上手く外すことが出来たなら、よりスッキリとした画面構成になったと思われます。また、柿が大きくなっても良いので焦点距離の長いレンズを使い、背景をぼかすのもアリですね。それから雪がわずかにブレており点になりきっていません。ISOを高く設定して、もう1段階ほどシャッタースピードを速くして雪を写し止める。もしくはISOを低く設定して雪を線で描く。そのどちらかにするとよいでしょう。複数枚シャッタースピードを変えて撮っておられるとの事ですので別カットを探してみて下さいね。
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まとめ
今回の写真寸評いかがでしたか?暖冬傾向もあり年々冬景色を撮影するのが難しくなっているように感じます。
しかし条件に恵まれない時ほど人とは違う写真を撮るチャンス。細かなシーンにも目を向けて独創性のある作品を生みだしましょう。前回の寸評と同じく、ご紹介する写真がご応募作品の内の一部となってしまいましたが、今回寸評できなかった方、申し訳ありません。引き続きテクニック記事と連動する形でこのような企画を行なっていきたいと考えていますので、どうぞよろしくお願いいたします。最後までお読みいただきありがとうございました。
■写真家:高橋良典
(公社)日本写真家協会会員・日本風景写真家協会会員・奈良県美術人協会会員・ソニープロイメージングサポート会員・αアカデミー講師