ジャンク品xジャンク品で3倍楽しむ!「ペンタックス smc PENTAX 50mm F1.4」×「ケンコー Macro TELEPLUS MC7」
はじめに
今回もジャンク品のレンズのお話です。今回ピックアップしたのは2つのジャンク品アイテムです。中古市場で多く見られる50mm標準レンズのペンタックス「smc PENTAX 50mm F1.4」と、少し変わり種になりますが非常に安く手に入れられるケンコー「Macro TELEPLUS MC7」です。この2つのアイテムを組み合わせて格安ジャンクレンズを3倍楽しんで撮影してみたいと思います。
ジャンク品「smc PENTAX 50mm F1.4」x「ケンコー Macro TELEPLUS MC7」
今回ジャンク品でピックアップした「smc PENTAX 50mm F1.4」は、ペンタックスのマウントM42マウントからKマウントに変わった時のレンズで、光学的にはタクマーシリーズの設計を踏襲してますが、フィルター径を49mmから52mmに大きくしたため少々重くなってしまったレンズです。この「smc PENTAX 50mm F1.4」は非常に短命で終わったレンズで、発売された翌年には新しく小型化された「SMCペンタックスM」シリーズが発売になっています。
そしてもう一つアイテムは、ケンコーの「Macro TELEPLUS MC7」です。ヘリコイド式マクロ機構がついた2倍のテレコンになります。中古市場では古いテレコンは非常に安い価格で入手する事が可能ですが、この「Macro TELEPLUS MC7」は2倍のテレコンだけではなくヘリコイド機構が使えるのが魅力のポイントです。
「smc PENTAX 50mm F1.4」に「Macro TELEPLUS MC7」を組み合わせる事によって焦点距離100mmF2.8の中望遠レンズ、そして焦点距離100mmの等倍のマクロレンズとしても使えるようになります。
■smc PENTAX 50mm F1.4の基本スペック
焦点距離 | 50mm |
レンズ構成 | 6群7枚 |
開放絞り | 1.4 |
最小絞り | 22 |
フィルター径 | 52mm |
絞り羽根枚数 | 8枚 |
最近接距離 | 0.45m |
マウント | Kマウント |
最大径x長さ | 約63mm x 41.5mm |
発売 | 1975年 |
■ケンコー Macro TELEPLUS MC7の基本スペック
倍率 | 2倍 |
マクロ撮影時 | 1:1(等倍)~1:20(0.05倍) |
レンズ構成 | 5群7枚 |
自動絞り | 連動 |
露出倍数 | 4倍(2絞り分) |
マクロ撮影時 | 4倍~8倍(3絞り分) |
最近接距離 | 0.45m |
マウント | 各種メーカー有 |
最大径x長さ | 約67mm x 約44.5~62mm |
重 量 | 約260g |
今回使用するジャンク品の「smc PENTAX 50mm F1.4」は、外観は綺麗な状態ですがレンズ内部に汚れやカビ、クモリがあるような状態のレンズで、購入価格は2,200円。クリアーな撮影は期待できませんが、味わいのある軟調の写真が撮れると予想しています。
そして「ケンコー Macro TELEPLUS MC7」は、カビやクモリもほとんど無い状態のキレイな状態のレンズですが、あまり人気が無いせいなのでしょうか、処分品のジャンクコーナーにて2,200円でゲットしたものになります。
今回はこれにマウントアダプター「K&F Concept KF-PKE.P」を組み合わせてみました。
この3アイテムの購入価格を合計しても、10,000円でおつりがくる状態です。果たしてどんな画像が撮れるか楽しみです。
50mm標準の単焦点での撮影、100mmの中望遠での撮影、100mmでのマクロ近接撮影と撮影をしてみました。同じ被写体でも、それぞれ違った表現が格安ジャンク品での組み合わせで簡単にできました。
ジャンク品や中古品は、1点限りの商品です。購入するタイミングを逃すと次に入手するのが難しくなったり同じものを見つけることができなかったりしますが、もっと掘り出し物を見つけることもできるかもしれません。それゆえジャンク品を購入するには、それなりの覚悟も必要な場合もあります。筆者のジャンク品購入の場合は、あくまでも使えなくても仕方がないと割り切って購入する事と、購入金額は低価格のモノと決めています。
お店に並んでいるジャンク品は、定期的に入荷されるため商品はどんどん入れ替わっていきます。お手頃な掘り出し物を見つけるには、定期的にお店を訪れお宝探しをしなければなりません。楽に入手することは難しいですが、自分にとってのお宝が見つかった時はうれしくなります。ジャンクコーナーはそんな場所です。
「smc PENTAX 50mm F1.4」単体で焦点距離50mm撮影を楽しむ
実際にクモリのあるジャンクレンズ「smc PENTAX 50mm F1.4」で都内スナップ撮影をしてみました。予想通りソフトフォーカス調の、コントラストの弱いニュートラルな描写になりました。この程度であれば、普通に撮影を楽しむ事ができるレベルです。特に曇りの日や雨の日などの情緒あるスナップ撮影に丁度いいレンズではないかと感じます。
電球の枠の部分を見てみるとパープルフリンジの収差が発生しています。輝度差の激しい部分ではこのような症状が多く発生しそうです。
背景の玉ボケは収差による輪郭部分が強く出る感じで、少しバブルボケと呼ばれるようなボケの描写をしています。
クモリのあるジャンクレンズなので、逆光での撮影には弱く盛大にハレーションが発生します。
ケンコー Macro TELEPLUS MC7を使って焦点距離100mm撮影を楽しむ
ここからは、クモリのあるジャンクレンズ「smc PENTAX 50mm F1.4」に「ケンコー Macro TELEPLUS MC7」を装着して、焦点距離100mmF2.8で撮影をしてみました。
もともとクモリのあるジャンクレンズ「smc PENTAX 50mm F1.4」をベースにしている事もあるのでしょうが、正直な感想を言えば、予想以上の写りといったところです。昔からテレコンをつけると解像感が大きく劣化すると言われていますが、周辺部の解像感の低下は少し見られますが中心部に関してほとんど問題無い感じです。ベースとなる組み合わせレンズの状態によってはもっとクリアーに写す事ができると思います。
ケンコー Macro TELEPLUS MC7を使って焦点距離100mmマクロ撮影を楽しむ
最後に、クモリのあるジャンクレンズ「smc PENTAX 50mm F1.4」に「ケンコー Macro TELEPLUS MC7」を装着しヘリコイド機構を繰り出してマクロ撮影をしてみました。ヘリコイドの繰り出しは、1:20~1:1の等倍撮影まで連続的に調整する事ができます。
ちょうどアイスチューリップが咲いていたので、マクロ撮影を楽しんでみました。クモリのあるジャンクレンズ「smc PENTAX 50mm F1.4」のおかげもあって、ソフトフォーカス調のマクロ撮影になり、チューリップを柔らかい表現で撮影することができています。今回の絞り設定はあえてすべて開放状態で撮影をしています。本来であれば少し絞って撮影した方がピント面に関しても撮影がしやすいのですが、メインのレンズの状態がそれほど良いわけではないので絞り開放での撮影になっています。
ヘリコイドの繰り出し量によって、撮影倍率も簡単に変えられるので構図の設定など撮影は比較的しやすいと思います。しかしマニュアルでのピント合わせでヘリコイドの繰り出し設定等レンズ部分を操作する事は多いので、三脚を使ってしっかりとカメラを固定して撮影したほうが良いでしょう。
まとめ
「ケンコー Macro TELEPLUS MC7」は、ヘリコイド機構を持った使い勝手の良い2倍テレコンで、標準50mmの単焦点レンズとの組み合わせで、撮影の幅が各段に広がるアイテムです。50mmのオールドレンズを使っている方で、「ケンコー Macro TELEPLUS MC7」を見つけたら是非ゲットしてほしいアイテムの一つです。ちなみに「TELEPLUS MC7」の名前でマクロ機構が無いものもあるので、入手する時には気を付けましょう。
少しクモリのあるジャンクレンズは、柔らかいソフトフォーカスレンズの様な表現をしてくれます。逆光には弱いですが使い方次第では、独特な雰囲気の写真が撮れるかもしれません。
今回は「ジャンクxジャンク」の組み合わせで3倍撮影を楽しめるアイテムのご紹介でした。
■写真家:坂井田富三
写真小売業界で27年勤務したのち独立しフリーランスカメラマンとして活動中。撮影ジャンルは、スポーツ・モータースポーツ・ネイチャー・ペット・動物・風景写真を中心に撮影。第48回キヤノンフォトコンテスト スポーツ/モータースポーツ部門で大賞を受賞。
・公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員
・EIZO認定ColorEdgeアンバサダー
・ソニーαアカデミー講師