映像作家・写真家のカメラバッグとコンパクトな装備|坂口正臣

坂口正臣
映像作家・写真家のカメラバッグとコンパクトな装備|坂口正臣

はじめに

 今回は、私が普段使用しているカメラバッグと、その中身を紹介しようと思う。撮影機材のパッキングは、複数持っているケースやバッグの中から撮影内容によって、大きさや使い勝手を吟味して、都度最適なものを選んでいる。

 最近は仕事でもプライベートでも、映像と写真の両方を撮影する機会がとても多くなった。どちらも撮影するとなると、荷物は格段に多くなるのだが、できるだけコンパクト化するように工夫している。

 今回は徒歩で撮影ポイントを移動しながらの、ロケ撮影を想定したセットを紹介する。重要なのは移動が苦にならない程度のサイズと重量、そして動画撮影にも写真撮影にも対応できるマルチな装備。それと機能性だけではなく、見た目も考えたい。「いかにもカメラマン」という感じのデザインよりは、アウトドアへ自然に溶け込むデザインであることも重要視する。

よく使うカメラバッグ

 最近出番がとても多いカメラバッグがこのVANGUARD VEO RANGE T 45M。見た目は、キャンパーに人気のタクティカルバッグそのもの。このバッグには、ひとまわり大きい48リットルもあるのだが、あえて45リットルをセレクトしている。理由は大きければ荷物を増やしてしまい、重くなってしまうからだ。大掛かりな撮影でないときは、このバッグに入る分しか持ち出さないことにしている。

 デザイン的にパッと見で気に入ったのはカラー。モノトーンが多いカメラバッグの中でベージュは珍しく、デザインもシンプルで好みだ。

 そして、このバッグの特徴ともいうべき機能が、外側のほぼ全面に取り付けられたウェビング。好みのツールなどを取り付けて拡張できる。バッグ自体が少し小さめのサイズなので、ドリンクやグローブなどは、中に入れず外側に取り付けている。

 パラコードとカラビナは、地面が濡れている時などに、木の枝にパラコードを回してバッグを吊るしたり、レインポンチョをタープのように張ったりするのに使う。ワークランプとヘッドライトはとても役に立つ。マジックアワー狙いで撮影していると、終わった頃には真っ暗になるので、ライト類は必須。簡易的に照明として使用する事もある。この辺は常に付けっぱなしにしている。

メインの収納と機材構成

 メインコンポーネントには、ケージを取り付けたSIGMA fpとfp Lの2台。レンズ4本と周辺機器が入っている。

 fpは動画撮影に適したケージをセットし、fp Lには写真撮影で使いやすいグリップ付きのケージを選んでいる。レンズは16-28mm、28-70mm、90mm、45mmという構成で、全てF2.8のSIGMA DG DN | Contemporaryシリーズを選んでいる。

 軽量コンパクトさと画質が素晴らしい。周辺機器は同じくSIGMAのデジタルビューファインダー EVF-11と、映像転送システムのHollyland MARS 400S PROの送信機のみを携帯している。このコンパクトなスペースに2カメ体制のシステムが収まっている。

サブの収納の中身

 背面とトップフロントの2セクションに分かれているのがこのバッグの特徴。このスペースには動画撮影用の周辺機器やバッテリー類を、ジャンル毎にポーチに分けて収納している。手前のポケットには、音声モニター用のイヤフォンやHDMIケーブルが入っている。

 ポーチの中身は目的毎に分けている。まずは音声収録用のマイク、2ch収録可能なワイヤレスマイクと、右上のポーチには小型のガンマイクのセットを入れている。左下から2つはバッテリー類を納めている。20Wを2口同時出力可能なモバイルバッテリーを2つと、ワイヤレストランスミッターとカメラのバッテリーを入れている。右下はリグ用パーツ類、モバイルバッテリーホルダーや周辺機器をカメラに取り付けるためのパーツなどが入っている。

 カメラや周辺機器用のバッテリーは、あまり多く持ち歩かず、撮影中にチャージしながら運用している。PD対応のバッテリーを複数持っている方が、他の機器もチャージできるので汎用性が高く、結果的に荷物も減らせる。

背面収納

 背面裏のポケットは、13インチまでのノートPCを入れられるようになっている。ここにiPad Pro 11インチとカードリーダーを入れている。ロケ先で撮影データのバックアップや、写真や動画の編集を行うことも多いので必携である。

 iPadを使う理由は、コンパクトであることと、小さめのモバイルバッテリーでチャージが可能なこと。そして、Mars 400S PROの映像信号を受信し、11インチの外部モニターとしても使用できるからである。

ワイヤレスで軽量コンパクト化する

 動画撮影でよく見かける外部モニターを使わずに、MARS 400S PROを使用している理由は、スマートフォンやタブレットを、ワイヤレスで外部モニター化できるからである。外部モニターを持ち歩かない分かなり荷物を減らせる。

 そして、この機種は5.2GHz帯を屋外で使用できる伝送装置なので、2.4GHz帯よりも安定したモニタリングができる。ワイヤレスなので信頼性と安定はとても大切だ。

 音声収録は、マイクをカメラ上部にセットするだけでは、綺麗な音が収録できないことも多く、録りたい音源の近くや、カメラの向きとは別の角度に、マイクを置くことが必要になる場合も多々ある。マイクをワイヤレス化することで、目的のポジションにセットする際の自由度が格段にアップする。

 ベストな場所にマイクを置けるなら、大きくなりがちな鋭指向性のマイクを持ち歩かなくても、美しい音声が収録できる。もちろん対談や自分の声を収録する際も、雑音の少ない明瞭な音声を録音できる。長い延長ケーブルも必要ないので、荷物も減らせる。映像と音声をワイヤレス化することで自由度が増して、結果的に荷物も少なくできるので、機材をコンパクト化する上でのメリットは大きい。

外ポケットには小物類を収納

 リアトップのポケットには、カメラストラップとSDカードケース、奥にはレインカバーも入っている。

 チェストサポート横のポケットには、すぐに取り出せるように予備バッテリーを入れている。

 反対側のチェストサポートのポケットにはツール類をまとめている。マルチツールはリグを組む際には必須、できるだけコンパクトで多機能なものをチョイスしている。

 SmallRig ドライバーレンチセット2213とSWISS+TECH マイクロプラスEX9-in-1この2つで、大抵のことには対応できる。

 薄いものなら入る背面ポケットには、バリアブルNDフィルターや折り畳んだ絵コンテなどを、ノートに挟んで入れている。

おわりに

 今回は、最近お気に入りのカメラバッグとパッキング方法を紹介した。仕事での写真と映像の撮影に、しっかりと対応しつつ、コンパクトで多機能な機材の構成が個人的にベストだと思う。今回のパッキングのように機材をコンパクト化するコツは、「2つ以上の機能をもつアイテム」を積極的に使うこと。そして映像や音声をワイヤレス化すること。撮影現場だけではなく、撮影後のバックアップやコンテンツ制作のためのタブレット端末も必要なので、その全てを37リットルのバックパックに隙間なく収納できているのは我ながら満足している。

 このパッキングには、カメラとレンズのサイズも大きく関係している。特にSIGMA fpとfp Lのような、コンパクトなカメラだからこそ2台体制が可能になっている。当分はこのパッキングで動画と写真の撮影を楽しんでいこうと思う。

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■フォトグラファー/ ビデオグラファー:坂口正臣
雑誌の撮影を経て広告写真・建築写真・映像撮影など福岡を拠点に幅広く活動中。坂口写真事務所(SPO)を運営。

 

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