【フイルムカメラ】独特なフォルムが魅力のハーフサイズフイルムカメラ「キヤノン ダイアル35」
はじめに
今回セレクトしたカメラは、1963年(昭和38年)に発売されたハーフサイズのコンパクトカメラ「キヤノン ダイアル35」です。「キヤノン ダイアル35」のネーミングは外観からも分かるように、露出計用のCdS受光部の形が電話機のダイアルに似ていることから名付けられたと言われています。この独特なスタイルから、古いコンパクトフイルムカメラの中でも人気のある1台です。
今回はそんな独特なスタイルの「キヤノン ダイアル35」を、お店でカラー現像(C-41プロセス)できる白黒フイルム「イルフォードXP2 SUPER 400」を使って撮影してみました。
キヤノン ダイアル35の魅力と特徴
「キヤノン ダイアル35」はスプリングモーターによるフイルムの自動巻き上げ・自動巻き戻しを特徴としたカメラで、名称は露出計用のCdS受光部の形が電話機のダイアルに似ているところから名付けられたものと言われています。
35mm判の半分のハーフサイズ(24×18mm)判カメラですが、フイルムを縦送りにセットする為、ハーフサイズのカメラながらファインダーは横位置となり、普通の35mmサイズのカメラと同じ様な感覚で使用する事ができます。
スプリングモーターによるフイルムの巻き上げ機能などは、以前に紹介した「リコー オートハーフ E」と同様の仕組みです。フイルムを装填した後にスプリング巻き上げ操作で即撮影状態までフイルムを送る自動空送り機構は、この「ダイアル35」が最初です。
「キヤノン ダイアル35」は独特なスタイルでインパクトも強く、今なお人気の高いカメラです。中古市場での価格はそれほど高いカメラではありませんが、見かける数はそれほど多くはありません。程度の良いモノがあれば是非手に入れたいカメラです。
キヤノン ダイアル35の基本スペック
「キヤノン ダイアル35」の基本的なスペックです。
使用フイルム | 35mmフイルム |
画面サイズ | 24mmx18mm |
レンズ | SE28mm F2.8(3群5枚構成) |
シャッター速度 | 1/250~1/30秒、B、ビハインド式、フラッシュシンクロはX接点式 |
露出計 | CdS素子使用のシャッタースピード優先式EE |
フイルム感度 | 手動 ASA(ISO)8~500 |
ピント合わせ | ゾーンフォーカスマーク式、0.8~15m(∞) |
大きさ | 高さ 99mm X 幅 76mm X 奥行き 44mm |
質量 | 430g |
電池 | 1.3VのH-P型 水銀電池1個 |
発売当時の価格 | 13,800円(ケース1,000円、リストストラップ300円) |
発売年 | 1963年(昭和38年)11月 |
使用する電池は、1.3VのH-P型 水銀電池1個です。このタイプの電池は現状では販売されていない電池です。MR-50(H-P) 水銀電池アダプターを使用して、SR44の電圧(1.55V)を約1.35Vに変換して使用します
キヤノン ダイアル35で江戸東京たてもの園をスナップ撮影
「キヤノン ダイアル35」を持って、昭和のノスタルジーを味わえる「江戸東京たてもの園」で撮影をしてみました。今回撮影に使用したフイルムは、「イルフォードXP2 SUPER 400」という白黒フイルム。カメラの発売時期(1963年)の頃は、カラーフイルムの普及はまだまだで白黒フイルムがメインの時代です。そんな時代を感じる事ができるように白黒フイルムをチョイスしてみました。
この「イルフォードXP2 SUPER 400」フイルムは少し特徴があります。通常白黒フイルムを現像するには、白黒専用の現像液で現像しますが、「イルフォードXP2 SUPER 400」はカラーの現像液で現像処理(C-41)できるので、カラー現像をスピード仕上げで処理しているお店でもスピード現像する事ができる便利な白黒フイルムです。また「イルフォードXP2 SUPER 400」の特徴として「やや軟調」な仕上がりになるフイルムです。硬い感じに仕上がる白黒フイルムを好むユーザーには向かないフイルムですが、とても扱いやすいタイプの白黒フイルムなので、初めて白黒フイルムを使ってみる方にもおススメできるフイルムです。
仕上がった写真を見てみると、露出・ピントが決まった写真は想像していたよりも良い写りをしてくれました。目測式によるゾーンフォーカスのピント合わせは少し悩む事も多かったですが、大きくピントを外したのはフイルム1本中3枚程でした。最短撮影距離が80cm~なので寄って撮影するのは少し苦手なカメラ。アップで撮らない限り大きくピントを外す事は少ないと思います。
スプリングモーター部を構成するグリップホールドによる片手操作が非常に便利な「キヤノン ダイアル35」ですが、シャッター速度が最高でも1/250秒までしか設定できないので手振れには注意が必要です。気楽に片手で撮影しやすいメリットはありますが、撮影の際にはできるだけ両手でカメラを持って手振れをしないように撮影したいところです。
まとめ
とても個性的な見た目の「キヤノン ダイアル35」は、持っているだけで楽しいカメラです。ノスタルジーを感じるデザインでありながらもスタイリッシュなフォルムで、撮影の際にワクワク感を感じるのは、他のカメラにはなかなかないタテ型のカメラデザインが要因なのではないかと感じます。
今回は、白黒フイルム「イルフォード XP2 SUPER 400」での撮影で、よりノスタルジーを感じる写真を撮ることができました。被写体に合わせてカメラとフイルムの組み合わせを考えて撮影するのはとても素敵な楽しみ方だと思います。
余談ですが、実はこの「キヤノン ダイアル35」と同様のデザインで、横型のフォルムで「キヤノン ダイヤルラピッド」(1965年発売)があります。こちらはアグファが1964年に発表したラピッドシステムが採用されたフイルム簡易装填方式のカメラです。
「ラピッドシステム」は残念ながら非常に短命で終わったシステムなので、現在使用するにはフイルムがありませんので注意が必要です。
■写真家:坂井田富三
写真小売業会で27年勤務したのち独立しフリーランスカメラマンとして活動中。 撮影ジャンルは、スポーツ・モータースポーツ、ネイチャー・ペット・動物・風景写真を中心に撮影。第48回キヤノンフォトコンテスト スポーツ/モータースポーツ部門で大賞を受賞。
・公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員
・日本風景写真家協会 会員
・NPO法人 フォトカルチャー倶楽部 参事
・一般社団法人 日本フォトコンテスト協会 理事
・一般社団法人 日本写真講師協会 理事
・ソニーαアカデミー講師
・クラブツーリズム写真撮影の旅・ツアー講師