キヤノン EOS R5 Mark IIを野鳥撮影でインプレッション
はじめに
多くのキヤノンユーザーが待ち望んでいた第2世代機の「EOS R5 Mark II」。すでに大人気すぎて「手に入らない!」と私のところにも声が届くほどだが、こればかりはどうしようもないので早く供給不足が解消されることを願っている。
2024年7月の発表直後から私のところに「どんなカメラだ?AFが凄いってほんとうか?」などなど問い合わせが多く寄せられたが、その時は私自身も触ってないし情報が無いので「知らない」と言うしかなかった。それでも機会があって一足早くこのカメラを試すことができたので、野鳥撮影でのファーストインプレッションをお届けしたいと思う。
ファーストインプレッション
初めてEOS R5 Mark IIを箱から出して手に持った感想は「ふぅ~ん」だった。感動はないのか?と言われても、私のメイン機が先代のEOS R5なので度肝を抜くほどの衝撃はなかった。細かな違いはあるものの、先代機から外観が大きく変化することもなく馴染みのあるデザインだ。
しかし、レンズを付けてファインダーを覗いた瞬間・・・「えっ」と声が出てしまった。ファインダーの見え味が全然違う!素晴らしく見やすいし、とにかくきれいなのだ。ドット数は変わらないものの約2倍の高輝度パネルが採用されたということで、はっきり言うがEOS R5よりも格段に良いのを痛感。私のように動く・飛ぶ・走る・隠れる「野鳥」という被写体を追う身としてはファインダーの見え味は超重要で、これだけでかなり心がワクワクしてしまった。
操作系に関しては今までのEOS Rシリーズとは違っていると感じた部分もあるが、既存のカスタム設定では快適に操作できないと感じたところもあるので、そこはあとから「戸塚的設定」として書いてみたい。
ボタン配置に関して、私はEOS R5・R7をメインに使っているので、EOS R5 Mark IIも加えた3台では少しずつ違う部分があり多少混乱する場面もあった。とは言え基本的な配置は変わらないので慣れてしまえば問題ない。
少し気になったのは新しいシューカバーの存在だ。ロック機構付きのシューカバーへと刷新されたのだが、これがなかなか着脱しにくい。シューカバーが外れて無くなることが多いのでこのような仕様になったのだろう。ちなみに私は静止画と動画を両方撮るので、基本的にはアクセサリーシューに外部マイクを付けっぱなしにしており、シューカバーは外して保管してある。無くしたくない人は私のように外して箱などに大事にしまっておくのがおすすめだ。
高感度ノイズ
先代のEOS R5とEOS R6を比べた場合、画素数の大きいR5の方が高感度ノイズは発生しやすかった。対してEOS R5 Mark IIとEOS R6 Mark IIの比較では、R5 Mark IIは画素数が大きいにも関わらずR6 Mark IIに肉薄している感じを受けた(あくまで個人的感想)。これはもちろんニューラルネットワークノイズ低減を使っていない状態での感想だ。
EOS R5 Mark IIになって、今まで高感度ノイズを考えて躊躇していたISO感度の自由度がぐんと広がったと感じる。暗がりで高速シャッターを使うために高感度にするとどうしてもノイズが目立っていたが、今後はニューラルネットワークノイズ低減も使えるので気にせず感度を上げていける。これで不可能だったことがまた可能になった!
上の写真で分かる通りEOS R5でISO20000だとかなり高感度ノイズが出てしまうが、EOS R5 Mark IIで撮影したこのツバメはISO40000でもきれいに撮れている。さらにニューラルネットワークノイズ低減を適応させるとISO40000とは思えない画像を得ることができた。
▼ノイズ低減なし(ISO40000)
▼ニューラルネットワークノイズ低減 ON
高速連写
連写性能だが、メカシャッター&電子先幕使用時は最高約15コマ/秒、電子シャッター使用時は最高約30コマ/秒となっている。先代のEOS R5の場合、電子シャッターを選択すると(最高約20コマ/秒)無音になり、シャッターが切れている間はファインダー/モニター内の枠が点滅することで連写をしていることを確認できたが、これが慣れないとわかりづらい欠点であった。
EOS R5 Mark IIは電子シャッターでの撮影時にシャッター音も出るし、音量調整もできるし、無音にすることも可能になったのもありがたい。やはり音が出ることは重要で、どれぐらい連写しているかも音でわかるし連写音でテンションも上がる(ここ、私的にはかなり大きい)。また、ブラインドの中で静かに野鳥の撮影をしたい時には無音にすることもできる。
最近、私は電子シャッターをメインに使っている。理由はメカシャッターのブラックアウトがどうしても気になるからだ。しかし電子シャッターで注意しないといけないのがローリングシャッター歪み。EOS R5に比べて約40%も低減したとのことだが、実際に使ってみてローリングシャッター歪みが気になることは少なく、電子シャッターを普段使いしても全く問題ないと感じた。
私は連写のコマ数で「約30コマ/秒」を使うことは少ない(プリ連続撮影時には約30コマ/秒を使用している)。理由は被写体に動きがない場合「撮れ過ぎてしまう」からだ。通常は15コマ/秒に設定しておいて、ここ一番と感じたときに30コマ/秒に切り替えて使うのが私の撮り方だ。
プリ連続撮影
EOS R6 Mark IIやEOS R7にはRAWバーストという機能がある。これはシャッターを押し込む約0.5秒前から画像を記録してくれる機能だ。今までは野鳥が飛び立つ瞬間を写し止めるのはなかなか至難の業だったが、この機能なら飛び立つ前から記録が可能なため、狙った瞬間を簡単に撮ることができる。野鳥がいつ飛ぶかわからないシーンで重宝する機能だ。
今回、EOS R5 Mark IIでは「プリ連続撮影」という機能に変わっているが、これが全く別物!RAWバーストは名前のようにRAW記録でしか使えず、DPPでの現像時でもロールされたものを解凍して現像という手間もあったが、プリ連続撮影ではそれもなくなり使い勝手の良さは格段に上がった。
プリ連続撮影は普段RAW撮影をせずJPEGオンリーなユーザーには願ったり叶ったりな機能だといえる。ただ、この機能を頻繁に使うとカメラが熱でダウンすることがあるので注意が必要だ。キヤノンではそれに対応できる、冷却ファン付きのバッテリーグリップ(クーリングファン CF-R20EP)も用意している。
クーリングファンは動画撮影用と思っていたが、プリ連続撮影は動画を撮影して静止画で切り出す機能と考えれば納得できるだろう。さすがに冬の北海道なら熱の心配はないだろうが、炎天下の夏の愛知県では熱停止してしまった。クーリングファンがあれば撮り続けられたかもしれないが、あいにく手元にはなく検証ができなかったことが残念だ。
アップスケーリング
映像エンジンDIGIC Xに加え、もう一つの映像エンジン「DIGIC Accelerator」が搭載されたことでカメラ内アップスケーリングが可能となった。撮影した画像の画素数をアップできる機能だ。約4500万画素のJPEG/HEIF画像を1億7900万画素相当の画像に拡大することができる。
使い方は簡単で、再生メニューのカメラ内アップスケーリングから拡大したい画像を選択するだけ。画素数が上げられるということはトリミング前提での撮影も可能になるし、風景的な写真を大きく出力することもできる。野鳥の場合「近づけない」というジレンマからも解放される。
ただし1.6倍クロップで撮影された画像はカメラ内でアップスケーリングさせることはできない。しかし、DPPの有料プランでアップスケーリングを使うことができるので、それならどの画像も拡大可能だ。そうなるとわざわざ撮影時に1.6倍クロップを使わなくてもいいのではと思われそうだが、例えば図鑑用のカットを撮るときには不必要に画素が多いのも後から手間がかかるし、1.6倍クロップで撮影するときはファインダーでのピントがしっかりと確認できるので個人的には併用できる利点がある。
▼トリミング後
▼トリミング後
視線入力
ミラーレスEOSではEOS R3で初搭載された視線入力機能。このEOS R5 Mark IIにも搭載されたが、どうやって使う?ホントに必要?と言われることもあるが、これも「あれば便利」な機能だと思う。野鳥が群れでいる場合、狙っていない個体が突然アクションを起こした際にそこに視線を移すだけでポインターが移動するのでピント合わせが楽ちん!
また、EOS R3に比べて視線入力の精度が上がっていることもさることながら、キャリブレーションも楽になり使い勝手はいい。視線入力を常時ONにしておくとファインダー内のポインターが邪魔に感じるので、ボタンカスタマイズで設定しておき素早くONとOFFができるようにしておくのが便利だ。
AFトラッキング
「被写体追尾(トラッキング)」の項目はEOS R3から登場して、カメラ任せでピント合わせをするのに便利な反面、意図しないフォーカス動作をすることもあり意外と使いづらい場面も多かった。その点、EOS R5 Mark IIはかなり進化した感じがあり「これは使える!」と実感。
とはいえ鳥が小さかったり、周辺に紛らわしい物が多かったりする場所では、狙っていない箇所にピントが合ったまま離れてくれないこともあるので、ケースバイケースで使いたい。空を飛ぶ鳥を追尾する際にはとても有効なのでぜひ活用してもらいたい。
バッテリーの互換性
EOS R5 Mark IIではバッテリーが新型のLP-E6Pとなった。旧型のバッテリーLP-E6NHも使用可能だが、機能が一部使用できなくなる。特に野鳥撮影においてはプリ連続撮影が使用不可となるので要注意だ。加えて、今までよりバッテリーの減りが若干早い気がするが、考えてみればいろんな新機能が相当なパワーを使うと思えば致し方ない。
機能制限があると撮影時に困るのでやはりバッテリーはLP-E6Pを使うのがいい。ただし旧型のLP-E6NHも互換性があるので、やむを得ない場合に使えると考えるのが良さそうだ。
まとめ
今回はEOS R5 Mark IIの新機能に注目して紹介をしてみた。次回は各機能の設定やどのようなシーンで有効活用できるかについて書いてみたいと思う。
価格的に高いと感じられる方も多いと思うが、値段相応というか、使ってみれば値段以上の物が詰め込まれたカメラだと実感できるはず。最近のミラーレス機は一昔前の一眼レフ機では不可能だったことがどんどんできるようになり、まさにEOS R5 Mark IIはその進化を実感できる1台となっている。
また、静止画メインで動画性能は不要だと思われる方も中にはいるだろうが、4K動画の美しい映像も素晴らしいので、チャレンジしてもらえたら楽しみがさらに広がると思う。
■野鳥写真家:戸塚学
幼少の頃から好きだった自然風景や野生の生き物を被写体として撮影。20歳の時、アカゲラを偶然撮影できたことから野鳥の撮影にのめり込む。「きれい、かわいい」だけでなく、“生きものの体温、ニオイ”を感じられる写真を撮ることが究極の目標。作品は雑誌、機関紙、書籍、カレンダー、コマーシャルなどに多数発表。
・日本野鳥の会 会員
・西三河野鳥の会 会員
・日本自然科学写真協会(SSP)会員