キヤノン EOS R6 Mark IIでヒコーキを撮る|A☆50/Akira Igarashi
はじめに
EOS R6 Mark IIは2022年12月に発売されたRFシステムのミドルクラスカメラ。初代EOS R6が2020年8月の発売でしたから、約2年で行われたフルモデルチェンジに当時は驚いたことを思い出します。
ただ、中身は着実な進化を遂げており、様々な部分が丁寧にブラッシュアップされている印象。色々な被写体ジャンルのユーザー、シチュエーションに対応できるオールマイティかつ完成度の高いカメラです。各スペックすべてが高次元でバランス良くまとめられているのが特徴。とにかく「ちょうどいい」高性能ミラーレス一眼なのです。
外観と携行性
先代EOS R6と比べ、大きさは高さが約1mm高くなった程度でほぼ同一。重さも10gほどMark IIが軽くなった程度ですから、ほぼ先代とMark IIに違いはありません。グリップ感もちょうど良く、手の大きさに関わらず握りやすい印象。
レンズもRF50mm F1.8 STMのようにコンパクトなものから、RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USMのようにズッシリ感のある超望遠ズームまでバランス良く装着でき、手持ち撮影も楽々こなせます。操作系のボタン配置に若干の変更が見られますが、電源スイッチが右手側に移動しサブ電子ダイヤル2と同じ配置に。左手側には静止画と動画の切り替えスイッチが配置されています。
素早く操作することが多いダイヤル系の操作部分など、主な操作系はEOS R7などと同様、右手側に集中。シュー部分は先代より進化し、高速データ通信などに対応したマルチアクセサリーシューを搭載している。防塵・防滴仕様でマグネシウム合金ボディを採用。完全に水やホコリなどを防ぐものではありませんが、主に屋外での撮影が主となるヒコーキ撮影においては非常に助かる仕様です。
EOS R6 Mark IIの画質
心臓部には約2420万画素の35mm判フルサイズCMOSセンサーを搭載。R6に比べてR6 Mark IIは約400万画素多くなっています。
ただ、肉眼でハッキリわかるほどの画質や解像感の差はなく、どちらも画質性能は優秀。近年ではスタンダードな画素数ながら解像感に不満はなく、ディテール部分の描写力が問われることの多いヒコーキ写真の世界においても満足度が高くなっています。
レンズの性能をしっかり引き出すセンサーという印象。映像エンジンDIGIC Xも随所で良い仕事をしているのがわかります。むしろ約400万画素増えていながら、高感度域においてほぼ同等の画質を保持していることに進化を感じます。輝度ノイズ、カラーノイズともにバランス良く抑えられていて、夜間の撮影においてはISO12800までだいぶ気軽に設定させてもらいました。
EOS R6 Mark IIのAF性能
ヒコーキが繰り出すまたとない一瞬を切り取ることを生きがいにする筆者が、もっとも重要視するカメラの性能がオートフォーカス(以下AF)性能。
「AFで合わせつつ最後にフォーカスリングで…」とやる時間が無い場面が多くあり、この部分は大いにカメラの性能に頼ります。EOS R6 Mark IIにはAFの被写体認識に「飛行機」が採用されています。ヒコーキ撮影をされる方にとってはこの部分こそEOS R6からもっとも進化した部分と言っても過言ではありません。
正直なところ、撮り方自体が変わるほどの機能で、今まではONE SHOT AFを用い置きピンをしていたシーンでも、AIサーボを使用して機体にフォーカスを合わせつつシャッターを切るようになりました。離着陸シーンなどでは、機体がまだ遠くにある時は機体をワンポイントに置いて風景的に撮り、機体が近づいてきたら機体そのものをアップで撮ったりすることもあります。これですと、AFモードの切り替えや咄嗟の操作が必要なことも多く、思った通り正確に切り取ることが難しく感じるシーンも多々ありました。
それが、この被写体認識によって劇的に楽になりました。画角の中で機体が小さくても機体やコクピットの窓を検出。寄りのカットではコクピット窓が見えている時はその部分を検出してくれます。機体に対して順光であれば食いつきや精度に問題はほぼ感じません。ただ、逆光や夜間、シルエットの機体や暗い機体が物影や闇夜に紛れるシーンでは今まで通り置きピンを使用したり、機体の明暗差のある部分に適切なAFフレームを任意で設定したりするのが無難です。
基本的なAFシステムも相変わらず満足度が高く、向かってくる機体にも瞬時にフォーカスを合わせ、捕まえ続けてくれます。EOS R6 Mark IIが搭載するデュアルピクセルCMOS AF IIは、撮影した画像に対して位相差専用画素のための画素補間処理をおこなう必要が無いため、画質的に有利な面が多くなっているのも嬉しいポイントです。
EOS R6 Mark IIの連写
EOS R6 Mark IIの連写はメカシャッター、電子先幕で最高約12コマ/秒、電子シャッターは最高約40コマ/秒。メカシャッターと電子先幕は先代R6とほぼ同等ですが、電子シャッターは約2倍程度に進化しています。
近年、電子シャッターの秒間コマ数の進化は凄まじく、瞬間を切り取りやすくなりました。月に機影をど真ん中に射止めやすくなったことなど、ヒコーキ写真作品の進化は連写性能の向上抜きには語れません。
ただ、電子シャッターの最高約40コマ/秒のドライブは瞬間をとらえやすい反面、シャッターを押し込める時間が短くすぐにバッファフルに至るため使い所は慎重に見極める必要があります。
また、電子シャッター特有の機体や背景の歪みなども改善は見られますが、夜間の衝突防止灯の光が霧の日などは四角く表現されるなど、ヒコーキ撮影においてはまだメカと電子をシーンによって使い分ける必要性がありそうです。
連写性能で特筆しておきたいのが、キヤノン社の35mm判フルサイズセンサー搭載機としてはじめてRAWバーストモードを搭載した点。EOS R7などに搭載されていた機能ですが、EOS R6 Mark IIにも搭載されました。RAWバーストモードをONにしておくと、シャッターボタンを押す直前の約0.5秒前から画像が記録されるというもの。
以前は雷の作品を撮る時は「光りそうだな…」と思ったところで連写を開始し、光らなければ連写したすべての画像を捨てるという撮影を繰り返していましたが、RAWバーストモードがあれば光ってからシャッターボタンを押しても間に合うことが多く、これまたヒコーキ写真の撮り方が変わる機能のひとつだと感じました。
キヤノン社のこの機能は、その名の通りRAWでの記録ができる点が優秀。月に機影が刺さるシーンなどでも重宝する機能といえます。
EOS R6 Mark IIの手ブレ補正
手ぶれ補正効果はボディ内手ぶれ補正(IBIS)とレンズ光学式手ぶれ補正(IS)との協調制御により、最大8段分の効果を発揮。手持ち撮影の多いヒコーキ撮影においては頼もしい補正効果です。
超望遠域を多用するヒコーキ撮影ですから、手ブレ補正ON/OFFでEVFや液晶に映し出されたライブビューを見るだけでその効果の大きさを実感できます。動画撮影においても、手持ち撮影を敢行した時にはその効果の大きさを実感することができました。
まとめ
前述の通り、とにかく「ちょうどいい」カメラであると感じました。画素数やAF、連写性能などが非常にバランス良く絡み合い、ピーキーさや難しさというものを感じさせないカメラです。EOS R6 Mark IIは非常に守備範囲の広いカメラで、色々な被写体を撮る方にもオススメ。静的な被写体から動的な被写体まで、高レベルな作品を撮影可能です。以前は撮影するのが難しいと感じたシーンも、よりカンタンに、より正確に撮影することができるようになりました。
ヒコーキ撮影で例えますと、RAWバーストモードを用いた雷のシーンや、AFの被写体認識に「飛行機」が採用されたことによるコクピットなどへの精密なフォーカス合わせなど。価格帯や性能面で見てもRFシステムのちょうどド真ん中。エントリー機種とは言い難いですが、これだけバランスがとれているカメラですから、スマホからのステップアップやはじめての高機能カメラとしてもオススメしてしまいます。
■写真家:A☆50/Akira Igarashi
絶景ヒコーキ写真を求め全国を駆け巡る瞬撮系航空写真家。雑誌、WEB、TVなど各種メディアに出演、作品を提供するかたわら大手航空会社やカメラメーカーなどのオフィシャル撮影を担当。公益社団法人 日本写真家協会会員。