キヤノン RF135mm F1.8 L IS USM レビュー|自然風景を表現力豊かに写し撮る中望遠レンズ
はじめに
こんにちは!写真家のGOTO AKIです。今回は「RF135mm F1.8 L IS USM」を取り上げたいと思います。ポートレート用と紹介されることが多い中望遠レンズ域の単焦点レンズですが、自然風景の撮影ではどうでしょうか?ポートレートだけではないレンズの魅力を、作例をご覧いただきながらレビューしていきましょう。
デザイン・外観
レンズのサイズは最大径89.2mm × 長さ130.3mm、質量は935グラムです。大口径F1.8の単焦点レンズとしては適度なサイズ感と携帯性。EOS R5やEOS R6 Mark IIとの組み合せでは前後の荷重バランスがよくホールドしやすい感触です。
外観で特徴的なのはレンズファンクションボタンです。RFレンズでお馴染みのコントロールリング同様に、機能を割り当てて使用するボタンが二つ搭載されています。
「RF135mm F1.8 L IS USM」は防塵防滴仕様で、過酷な環境でも使用に耐えるメンテナンスがしやすい設計です。また、フィルター径は自然風景の撮影でよく使われている「RF15-35mm F2.8 L IS USM」や「RF24-70mm F2.8 L IS USM」と同じ82mm。フィルターメーカー各社から出ている丸型フィルターの径や角型フィルター用のアダプター径は77~82mmのサイズが標準的なサイズですので、お持ちのフィルターをそのまま活かせる方も多いのではないかと思います。
レンズ側部には「AF/MF切り替えスイッチ」と「イメージスタビライザーON/OFFスイッチ」が配置されています。
自然風景の撮影で有害光の入射を避けるレンズフードが付属しています。
F1.8+中望遠の圧縮効果
「RF135mm F1.8 L IS USM」を初めて手にした時に一番気になったのは「135mm」という焦点距離そのものでした。
なぜでしょう?
自然風景の撮影の場合、「135mm」というのは「70-200mm」の望遠ズームの中間的な数値で、なんとなく使う焦点距離という印象をもっています。今回意図的に「135mm」を意識して撮影してみると、単焦点「35mm」や「50mm」に慣れた目には、被写体が大きく迫ってくるような印象がありました。そこに適度な中望遠域の圧縮効果が加わることで、開放F1.8によるボケがより強調される視覚的な面白さがうまれたようです。F1.8の明るいレンズですが周辺減光も感じられず、抜けの良い描写も魅力です。
「F1.8のボケ+圧縮効果」のハイブリッドのイメージです。木がグッと迫ってくるように見えるでしょうか?開放値F1.8でもピントを合わせた箇所はかなりシャープです。
カメラから前ボケの紅葉までは2メートルほど、背景の紅葉までは6メートルぐらいの距離から撮影しました。見慣れた光景に「RF135mm F1.8 L IS USM」を持ち出すと一味違う新鮮な表情が撮れるでしょう。
繊細な解像感と高速AF
「RF135mm F1.8 L IS USM」は、F1.8からF11ぐらいまでの解像感が素晴らしく、被写体の繊細な線を描きます。F16あたりからは回折現象で少し柔らかな印象になりますが、自然風景自体が複雑な線で構成された被写体ですので、実用上はほとんど気にならないレベルです。カメラのメニューにあります「レンズ光学補正」で「デジタルレンズオプティマイザ」を標準に設定しておけば、キヤノンの純正アプリDPPで現像する際に補正効果でレンズの描写力をさらに実感できるでしょう。
F1.8から安心してキレ味鋭い解像感を味わえるのは、RFレンズに共通のメリット。F1.8で早朝や日没後の薄暗いシーンでもシャッター速度をある程度速く設定できるため、撮影時間帯の自由度が高いのも魅力です。ナノUSM駆動のAFは高速かつ静寂で瞬時に意図した箇所にピントを合わせてくれます。
解像感のピークとなるF値はどれぐらいかなとチェックしてみました。画面四隅までシャープに捉える絞り数値はF5.6~8の印象です。岩のゴツゴツした質感だけでなく、シャドウ部までのディテールも豊かに再現し、隅々まで素晴らしい解像感です。ピントは中央に合わせています。
こちらは冬の朝7時台に撮影した、西の空に溶け込む前の月の写真です。一点AFで月に瞬時にピントを合わせて、手持ち撮影しました。この作例のように画面の中で小さな面積にピントを合わせて撮る場合は、撮影後に拡大してピントの位置やブレがないかを確認しています。筆者の場合は、カメラ背後の液晶モニターは反射などが気になるため使用せず、EVF(エレクトリックビューファインダー)で撮影画像をチェックしています。周辺からの光漏れがないため、拡大した時の細部が見やすいからです。
動きのある波しぶきなどの被写体を、シャッター速度を速く撮影することで瞬間的に発生して消えていく造形として描写します。
ASCコーティングによるフレアとゴーストの低減によって、逆光に近い状態でも被写体の細部を捉えます。明るい雲にピントを合わせて、マイナス補正で白飛びを抑制し、現像で少しシャドウを起こしています。シャドウ部となる波の表情も繊細な描写です。
強力な協調手ブレ補正
「RF135mm F1.8 L IS USM」のレンズ単体の手ブレ補正効果は最大5.5段分。EOS Rシリーズ(EOS R3・R5・R6 Mark II・R6・R7 ※2023年2月現在)のカメラ装着時はボディとの協調制御で最大8段の手ブレ補正効果が得られます。
F11~F16などの深い絞り数値で被写体全体にピントを合わせるとシャッター速度は遅くなりますが、協調制御でスローシャッターでもブレることなく撮影が可能です。シャッター速度の目安としては1/8秒~1秒ぐらいは大丈夫。丁寧に撮影すればピントはバッチリ合うでしょう。暗い撮影シーンでも深い絞りでの撮影が選べるため、表現の自由度が広がるのもメリットです。
また、動画を撮影される方も増えていると思いますが、「動画電子IS機能」で動画の手持ち撮影も楽になりました。滝の静止画と動画クリップをご覧ください。静かに体を安定させて手持ちで撮影しています。
画面右1/3ぐらいの岩にピントを合わせて手持ち撮影。
最短撮影距離を活かした撮影
「RF135mm F1.8 L IS USM」の最短撮影距離は0.7m、撮影倍率0.26倍です。0.7mというのは、使ってみると中望遠域のレンズとしてはかなり近いと感じる距離感です。歩きながら被写体を見つける場合は、中望遠レンズで撮りやすい遠目の景色だけでなく足元の景色も射程に入れて撮影するとバリエーションが増えるでしょう。
「RF135mm F1.8 L IS USM」に搭載されたレンズファンクションボタンを使用。撮影距離を保つためにAFを一次的にストップして撮影したため、AFのサーチ駆動によるピント位置のずれもなく撮影はスピーディー。
最短撮影距離での撮影です。協調手ブレ補正で1/15秒の手持ち撮影でもシャープな描写。EVFを覗きながら仕上がりのイメージを確認して撮影しています。
まとめ
単焦点でありながらも中望遠域から近接撮影まで幅広く楽しめる「RF135mm F1.8 L IS USM」のインプレッションはいかがでしたでしょうか。大口径F1.8のボケのやわらかさとピントを合わせた被写体のシャープな描写力、近接撮影から中望遠まで、自然風景の撮影でも威力を発揮してくれる表現力豊かなレンズです。体を動かして距離を変えながら撮るレンズは楽しく、個人的にもこれからの暖かな季節が楽しみです。機会がありましたら、是非手に取ってお試しください。
■写真家:GOTO AKI
1972年 川崎生まれ。1993~94年の世界一周の旅から今日まで56カ国を巡る。現在は日本の風景をモチーフに創作活動を続けている。2020年日本写真協会賞新人賞受賞。日本大学芸術学部 准教授・武蔵野美術大学造形構想学部 非常勤講師・キヤノンEOS学園東京校講師。