キヤノン RF15-30mm F4.5-6.3 IS STM レビュー|風景撮影にぴったりの軽量広角ズーム
はじめに
こんにちは、写真家のGOTO AKIです。原稿を書いている2022年10月時点で28本のRFレンズと2本のRF-Sレンズがラインナップされ、RFマウント対応のレンズがますます充実してきました。
今回は自然風景愛好家に人気の広角ズームレンズから、2022年の8月に発売された「RF15-30mm F4.5-6.3 IS STM」をピックアップ。超広角ズームレンズの非Lレンズは、価格的にもリーズナブルで、今まで「RF15-35mm F2.8L IS USM」に手が届かなかったユーザーにも嬉しいレンズですね!
早速、デザイン、性能、画質をチェックしていきましょう!
外観・デザイン
「RF15-30mm F4.5-6.3 IS STM」は、広角ズームレンズとしては小型軽量で携帯性の高さが特徴のレンズです。全長88.4mm、質量約390gのサイズは、EOS R5などのカメラボディの重さを加えても1kgちょっとで、「今日は荷物になるから持っていくのやめようかなぁ~」と悩まないでいいサイズ感。
レンズの先端にはRFレンズの特徴であるコントロールリングが配置され、ISO感度や露出補正、絞り数値など、皆さんがよく使う機能を自由に割り当てて使えます。マニュアルフォーカスで撮影するときは、ピント調整リングとして使用するなど、撮影シーンに応じて使い分けられるリングです。レンズの横には「フォーカス/コントロールスイッチ」と「イメージスタビライザーのON/OFF」スイッチが並んでいます。
幅広い画角と高画質
「RF15-30mm F4.5-6.3 IS STM」はフルサイズの超広角ズームレンズで、15mmから30mmまで幅広い範囲で撮影ができるため、自然風景の撮影では活躍する範囲が広いレンズです。
「自然風景を撮影する時のレンズの優先順位を教えてほしい。」というご質問をいただくことがあるのですが、筆者の場合は、
1. 望遠ズーム
2. 広角ズーム
3. 標準ズーム
4. マクロ の順番で選んでいます。
望遠域と広角域はレンズがないと何も撮れないのですが、標準ズーム域は、望遠ズームや広角ズームレンズのまま、被写体に近づいたり離れたりしてなんとかカバーできることも多いので優先順位としてはやや低め。マクロは、望遠ズーム、広角ズーム、標準ズームの最短撮影距離を使っても寄り切れない撮れない被写体がありそうな時に持っていきます。
話が少し脱線しましたが、「RF15-30mm F4.5-6.3 IS STM」の描写力はRFレンズならではの繊細さが魅力です。15mmのダイナミックな遠近感を活かした描写から、人の視野に近い30mmの画角まで、自然風景の微細な表情をシャープにしっかり捉えてくれます。
下の作例で焦点距離や画角の違いを見ていきましょう。
焦点距離15mmを活かして、遠近感を強調して撮影した一枚。カメラ近くの被写体から遠景までを写すことで、ダイナミックに描写します。
同じ場所で焦点距離35mmで撮影した作例です。人の視野角に近い自然な描写です。非Lレンズですが、解像力の高さに驚かされます。
広角ズームレンズの撮影では、カメラ位置を低くしてローポジションで撮るのがポイントです。足元の近くの風景から画角に入るため、遠近感が強調されます。この作例では海面にカメラを近づけて撮影しています。
この作例は焦点距離15mmで撮影しました。まるでそこに自分がいるように感じてもらえるよう、レンズのすぐ前にある植物を前ボケとして画角に入れて、臨場感を演出しています。軽くて小さなレンズは、「いいなぁ」と感じた自然風景を素早くスナップ感覚で撮れるのがメリットですね。
強力手ブレ補正機能で、手持ちのスローシャッター撮影
「RF15-30mm F4.5-6.3 IS STM」はレンズ単体では最大約5.5段分の手ブレ補正効果があります。さらにEOS R5やEOS R6などのボディ内手ブレ補正機能を搭載したカメラに装着して使う場合は、最大7段分の協調手ブレ補正効果であるため、気楽に手持ちでのスローシャッター撮影が楽しめます。
その時のスローシャッターのおおよその目安ですが、1/15秒~1/2秒ぐらいの範囲であればOKです。高い確率でピントを合わせてブレのない描写が可能です。筆者の場合は、シャッターを押す力でブレないように、息を吐きながらそっとシャッターを切っています。
三脚がない場合や、三脚に使用が禁止されている撮影地でも、撮影できるのが嬉しいですね。
さて、作例としては自然風景写真で人気の被写体である「滝」や「川」の流れを3枚用意しました。いずれも焦点距離15mmで撮影して遠近感を強調すると同時に、手持ちで撮れるギリギリぐらいのスローシャッターで水の流れを滑らかに描写しています。具体的な秒数はそれぞれの写真のキャプションをご覧ください。
奥入瀬渓流の流れを捉えた一枚。カメラを水面に近づけて、バリアングルを利用してフレーミングし、静かにシャッターを切りました。シャッター速度は1/4秒です。
雨の直後で水量が増している場合は、1/8~1秒ぐらいのシャッタースピードでも流れが動的にそして滑らかに描写されます。シャッター速度は1/4秒で撮影しました。
撮影現場は傾斜のある滝ですが、三脚が使いにくいシーンでも「RF15-30mm F4.5-6.3 IS STM」の手ぶれ補正でスローシャッターを楽しめます。
こちらは少し離れたところを離れる滝を1/8秒で撮影しました。手ブレ補正が強力で便利になりましたが、雑に撮るとすぐにブレますので、手持ち撮影でのスローシャッターは慎重に優しく撮るのがコツです。
開放値から繊細な描写力
「RF15-30mm F4.5-6.3 IS STM」の開放値は焦点距離15mmでF4.5、30mmではF6.3です。RFレンズの個人的なお気に入りポイントは、開放値から線の描写がシャープで被写体の細部を写し出す点です。
焦点距離15mm、絞り開放F4.5で撮影。F2.8のような大きなボケにはなりませんが、背景のボケは広角としては十分な描写です。
焦点距離30mm、絞り数値F6.3で捉えた一枚。中央部分の解像感が抜群です。
焦点距離30mm、絞り数値はF6.3で撮影。直径8mmぐらいのキノコ類の背景はやわらかにボケています。
最短撮影距離はMF&ワイドマクロで撮ろう
「RF15-30mm F4.5-6.3 IS STM」はAFとMFで最短撮影距離が異なります。焦点距離15mmとAFの組み合わせでは最短撮影距離は280mm、MFに切り替えると128mmまで近寄れます。作例を見た方がわかりやすいかなと思いますので、下の写真をご覧ください。
▼焦点距離15mm、AFの最短撮影距離280mmで撮影
▼焦点距離15mm、MFの最短撮影距離128mmで撮影
「RF15-30mm F4.5-6.3 IS STM」の最短撮影距離を最大限に楽しむには、焦点距離15mmでMFで撮ると迫力ある広角ワイドマクロが楽しめますね。MFでの撮影倍率は0.52倍でハーフマクロの領域です。
動画STMでピントはお任せ
焦点距離15mmと30mmの画角で撮影した動画クリップです。
小型軽量の「RF15-30mm F4.5-6.3 IS STM」は、SNSなどでの動画需要にも対応、複雑な動きのある自然風景でもカメラとレンズ任せのAFでストレスなく撮影が楽しめます。
まとめ
フルサイズの超広角ズーム「RF15-30mm F4.5-6.3 IS STM」のインプレッションはいかがでしたでしょうか。
画角的には、以前にレビューした「RF14-35mm F4 L IS USM」、「RF15-35mm F2.8L IS USM」が比較対象になると思います。画質的な抜けの良さ、解像感はLレンズが一歩先をいくクオリティですが、「RF15-30mm F4.5-6.3 IS STM」は必要十分な高画質でありながら、コストパフォーマンスが魅力的なレンズです。気楽に超広角ズームを使いたい。小さくて軽いレンズがいいという皆様にはこのレンズ一択かもしれませんね。
身近になった広角ズームで、自然風景の撮影をたっぷりお楽しみいただけたら嬉しいです。
■写真家:GOTO AKI
1972年、川崎生まれ。1993~94年の世界一周の旅から今日まで56カ国を巡る。現在は日本の風景をモチーフに創作活動を続けている。2020年日本写真協会賞新人賞受賞。武蔵野美術大学造形構想学部映像学科・日本大学芸術学部写真学科 非常勤講師、キヤノンEOS学園東京校講師。