ダイナミックな風景を捉える!|キヤノン RF15-35mm F2.8 L IS USM 実写レビュー
はじめに
こんにちは、風景写真家の八木千賀子です。今回ご紹介するのは、キヤノン RFマウント・超広角ズームレンズ「RF15-35mm F2.8 L IS USM」です。
広角レンズは風景写真において、ダイナミックな表現や奥行き感を出す上で欠かせない存在です。このレンズは、15mmから35mmまでの焦点距離をカバーしており、F2.8の明るさと強力な手ブレ補正を兼ね備えています。
広角端の15mmでは、雄大な自然や広大な都市風景をダイナミックに捉え、遠近感を強調した迫力のある写真を撮影することができます。一方、35mm端では、標準レンズのようなバランスの取れた構図で、風景写真だけでなくスナップ写真にも活躍します。
また、F2.8の明るさは、暗い場所での撮影や、浅い被写界深度で背景をぼかしたいときに威力を発揮します。さらに、強力な手ブレ補正により、手持ちでの夜景撮影や流し撮りも安定して行うことができます。
このレビュー記事では、「RF15-35mm F2.8 L IS USM」のレンズ紹介とともに、風景写真撮影におけるメリット、具体的な撮影シチュエーション、作例などを紹介し、広角ズームレンズの新たな可能性をお伝えしていきます。
風景写真における広角レンズの役割
広角レンズは、風景写真を撮る上で欠かせないレンズの一つです。その特徴的な画角を生かして、雄大な自然風景をダイナミックに表現することができます。広角レンズが風景写真に適している理由は下記のようになります。
広大な風景をそのまま切り取れる
超広角レンズは、私たちの目が見ているよりも、もっと広い範囲を一度に写真に収められる特別なレンズです。まるで、広いお部屋を小さな窓から覗いているのと同じように、広い風景をギュッと写真の中に詰め込むことができるんです。
15mmの超広角レンズで撮影した写真は、手前から奥の雄大な山並みが写り、空との一体感を強調し圧倒的な広がりを感じさせます。
一方で、24mmの広角レンズで撮影した写真は、山並みの立体感と奥行きがより明確になり、自然な遠近感が表現されています。
遠近感を強調できる
超広角レンズを使うと、写真に面白い効果を出すことができます。その一つが「遠近感を強調する」ということです。遠近感とは、近くのものが大きく、遠くのものが小さく見えることです。私たちの目は、普段からこの遠近感を感じながら世界を見ています。超広角レンズを使うと、この遠近感が写真の中でより強調されます。つまり、近くのものはさらに大きく、遠くのものはさらに小さく見えるようになるんです。
広角レンズの遠近感を巧みに利用することで、中央上部の赤い鳥居が消失点となり、石段が一直線に奥へと続く線遠近法、そして手前の石段が大きく、奥に行くほど小さくなる大きさの変化が、奥行き感を強調しています。さらに、遠くの景色の青みと手前の緑のコントラストが、より奥行きを際立たせています。赤い鳥居が緑豊かな自然の中に孤立して配置されていることで、視線は自然と奥へと誘導されます。
開放感のある写真になる
開放感とは、写真を見た人が「わぁ、気持ちいい!」「広々して気持ちいいね!」と感じるような、広くて明るい雰囲気のことです。超広角レンズを使うと、より広い範囲を一度に写真に収めることができるので、写真を見た人に「広くて気持ちいい!」と感じてもらいやすいんです。 広角レンズで開放感のある写真を作るには、広い範囲を一度に撮影することで、写真を見た人に「広くて気持ちいい!」と感じてもらいやすく、低い位置から撮影したり、前景を入れたり、明るい場所で撮影したり、シンプルな構図にすることで、より開放的な雰囲気を出すことができます。 より具体的に説明するなら、例えば青い空や海、緑いっぱいの公園を大きく写し込むことで、すがすがしいさや広大な雰囲気、心が安らぐような開放感を表現できます。
広大な自然の中で咲き誇る桜の生命力と、それを取り巻く空の青さが織りなす、開放感あふれる風景を切り取った一枚です。桜のピンク色と空の青色の鮮やかなコントラストが生命力に満ち溢れた自然の息吹を感じさせてくれます。
RF15-35mm F2.8 L IS USM 広角から標準域までをカバーする柔軟性
RF15-35mm F2.8L IS USMは、15mmの超広角から35mmの標準域までをカバーするズームレンズです。この画角の幅広さは、風景写真において非常に大きなメリットをもたらします。
15mmの超広角
雄大な自然や広大な都市風景をダイナミックに捉え、奥行き感を強調できます。
超広角レンズ特有の遠近感の強調により、奥行き感が生まれ、まるでその場にいるかのような臨場感を味わえます。特に、ツツジの絨毯が広がる様子は、その広大さを強調し、見る者に開放感を与えます。また、遠くの山々までを捉えることで、自然のスケール感をダイナミックに表現しています。空に架かる虹のアーチは、その大きさと美しさで、見る者の心を奪います。
35mmの標準域
35mmは、人間の目が見た世界に近い画角を持つため、違和感なく風景を捉えることができます。広角レンズほど誇張された遠近感ではなく、自然な奥行き感を表現できます。
35mmで撮影したことで建物の歪みが少なく、自然な遠近感が表現されているので、奥行きを感じつつも全体のバランスがとれており、その自然な遠近感のおかげで桜のトンネルの奥行きが強調され、まるで桜の花の中に包まれているような感覚になります。そして、古寺のたたずまいと満開の桜のコントラストは、日本の伝統美を象徴する、静かで美しい風景を作り出しています。
RF15-35mm F2.8 L IS USM 特徴
画質
●解像力:中心部から周辺部まで高い解像力を誇り、細部までクリアに描写します。特に、風景写真で重要な遠景の描写力も優れています。
●ボケ味:F2.8の大口径を生かし、美しいボケ味を実現しています。背景を柔らかくぼかして、被写体を際立たせることができます。
●色再現性:自然な色彩を忠実に再現し、鮮やかな風景写真を撮影できます。
●周辺光量落ち:周辺部への光量落ちが少なく、画面全体が均一に明るいため、安心して撮影できます。
AF性能
ナノUSMにより高速かつ高精度なAF性能を備えており、動画撮影にも対応できます。風景写真においては、ピント合わせの速さが重要となる場合がありますが、このレンズはストレスなく撮影を進めることができます。
操作性
●ズームリング、フォーカスリング:操作感が良く、スムーズなズーミングとピント合わせが可能です。
●各ボタンの配置:各ボタンが使いやすい位置に配置されており、直感的な操作が可能です。
●防塵防滴性能:風景写真での撮影にも安心な防塵防滴構造を採用しています。
●サイズ・重さ:88.5×126.8mm、約840g。EF16-35mm F2.8L III USMと比べると少し重いですが、その分、高い剛性と安定した撮影を実現しています。
手ブレ補正効果
レンズ単体で最大5段分の手ブレ補正効果。強力な手ブレ補正機構を搭載しており、手持ち撮影でもブレの少ないクリアな写真を撮影できます。特に、低光量下での撮影や望遠側での撮影時にその効果を発揮します。
絞り優先AEモードでF13、シャッタースピード1秒、露出補正+0.67EV、ISO100という設定で、水の流れを表現しています。三脚が使えない状況だったので手持ち撮影でしたが、このレンズの強力な手ブレ補正のおかげで、ブレることなく撮影することができました。
逆光耐性
このレンズには、SWCとASCというコーティングが施されており、逆光時のフレアやゴーストを効果的に抑えるため、逆光下での撮影でもクリアな画像が得られます。
太陽が木々の間から差し込み、水面に反射している逆光の状態です。このような撮影条件では、通常、レンズ内に光が入り込み、フレアやゴーストが発生しやすいのですが、この写真では、太陽の周りにフレアやゴーストが見当たりません。これは、このレンズに施されたSWCとASCというコーティングが、逆光時のフレアやゴーストを効果的に抑制しているためです。このレンズの優れた光学性能のおかげで、逆光下でもクリアで美しい写真を撮ることができました。
F2.8の大口径を生かした表現
F2.8の大口径レンズは、風景写真において、被写体を際立たせたり、低照度下での撮影を可能にしたり、星空撮影の幅を広げたりと、様々な表現が可能です。レンズの特性を理解し、撮影条件に合わせて使いこなすことで、より魅力的な風景写真を撮影することができます。
F値が小さいほど、ピントが合う範囲が狭くなります。そのため、F2.8のような大きな絞りを開けると、ピントの合った水仙はくっきりと見え、背景の桜は柔らかくぼやけることになります。この背景のボケが、水仙をより一層際立たせ、立体感や奥行きを感じさせます。
F2.8という大きな開口径は、レンズに多くの光を取り込むことができます。暗い夜空でも、より多くの星光を集めることができるため、暗い星や天の川をより鮮やかに捉えることができます。東の空がわずかに白み始めているので山々も明るく撮影することができました。
風景写真における活用法
RF15-35mm F2.8 L IS USMは、風景写真において、その広角レンズならではのダイナミックな表現力と、F2.8という明るい開放絞り、そして高い光学性能を活かして、幅広い撮影シーンに対応できる魅力的なレンズです。雄大な自然風景を迫力ある一枚に収めたり、自然なパースペクティブで撮影したり、暗い場所での撮影や手ブレの心配なく撮影したり、といった様々なシチュエーションで活躍します。Lレンズならではのシャープな描写と高いコントラストは、隅々までクリアな美しい写真を約束してくれます。
前景を強調する
手前の要素を大きく写し込むことで、写真に奥行き感が生まれ、より立体感と迫力のある表現が可能になります。
この写真では、前景の枯れ木を大きく写し込むことで、奥行き感、立体感、迫力、そして物語性といった様々な要素が効果的に表現されています。この構図は、風景写真において、奥行き感を出し、より立体感のある写真に仕上げたい場合に非常に有効な手法と言えます。
見上げる構図
自然を下から見上げる構図は、開放感と雄大さを表現する上で非常に効果的です。
被写体を大きく写し込むことで、迫力のある写真にすることができます。例えば、広大な自然を下から見上げる構図は、その広大さを強調し、開放感を生み出します。
森の中、樹々に絡まるツタウルシが見事に紅葉し、燃えるような赤色に染まっていました。見上げる構図で撮影することで、その鮮やかな色彩と木々が織りなす繊細な模様が際立ち、まるで自然が描いた芸術作品のよう。生命力あふれるツタウルシが秋の深まりを感じさせる息をのむような光景でした。
見下ろす構図
高い位置から見下ろす俯瞰構図は、風景全体を把握し、広大な景色を表現するのに適しています。特に、広角レンズを使うことで、よりダイナミックな遠近感を生み出すことができます。
広角レンズは、高い位置からだけでなく、少しレンズを下に向けるだけでも、近景から遠景までを広く捉えることができます。
広角レンズは、遠近感を強調する効果があります。この写真では、レンズを少し下に下げて撮影したことで、手前の雪の模様と遠方の湖面と山のシルエットとの間に、強い遠近感が生まれています。これにより、奥行きのある立体的な風景が表現されています。
空を大きく入れる
広角レンズを使って空を大きく写し込むことで、写真に開放感を与え、ドラマチックな演出が可能です。特に、夕焼けや朝焼けなど、空の色がダイナミックに変化する時間帯に撮影すると、その変化をダイナミックに捉え、見る人に感動を与えるような写真に仕上がります。広角レンズの持つ遠近感の強調効果は、風景の奥行きを際立たせ、より雄大な自然の姿を表現するのにも役立ちます。
この日空にはハロ(日暈)が出ていました。広角レンズを使い空を大きく捉え、富士山を下にちょこんと配置することで雄大な自然の広がりを演出しました。これにより、写真全体に開放感が生まれ、すがすがしい印象を与えます。
水面の反射
広角レンズを用いて水面の反射を捉えることで、現実と虚が入り混じった、幻想的で美しい世界を写真に表現することができます。水面に映り込んだ風景との対称性は、見る者の心を惹きつけ、まるで鏡の中のもう一つの世界が広がっているかのような錯覚を与えます。広角レンズの持つ遠近感の強調効果は、この対称性を際立たせ、より幻想的な雰囲気を作り出すことができます。
夕焼け色に染まった水面に映りこんだ風景が完璧な対称性を描き、静寂感を感じることができます。広角レンズを使用したことで奥行きのある立体的な風景が生まれ、広い範囲を捉えることができるため開放感が生まれます。
まとめ
RF15-35mm F2.8 L IS USMは、広大な風景をダイナミックに捉えたい写真家にとって、まさに理想のレンズです。F2.8の明るさを活かして、夕焼けのグラデーションを美しく表現したり、夜景の煌めきを捉えたりすることができます。5段分の強力な手ブレ補正機構により、手持ちでの夜景撮影も安定して行えます。高い解像感とコントラストは、雄大な山岳や広大な風景を細部までクリアに描き出し、見るものを圧倒するような写真に仕上がります。また、スナップ写真にも対応できる汎用性の高さも魅力です。このレンズ一本で、あなたの表現の幅が大きく広がることでしょう。
■写真家:八木千賀子
愛知県出身。幼い頃より自然に惹かれカメラと出会う。隻眼の自分自身と一眼レフに共通点を見いだし風景写真家を志す。辰野清氏に師事し2016年に【The Photographers3 (BS 朝日)】出演をきっかけに風景写真家として歩み始める。カメラ雑誌、書籍など執筆や講師として活動。