キヤノン RF16mm F2.8 STM × スナップ|鶴巻育子

鶴巻育子

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はじめに

 今回はキヤノンRFシリーズでは初の超広角単焦点レンズ「RF16mm F2.8 STM」の使用感や描写についてご紹介したいと思います。ミラーレスではコンパクトでお手頃なレンズを使用する派の私にとってピッタリの機材です。現在使用しているRF50mm F1.8 STM、RF35mm F1.8 MACRO IS STM、RF100mm F2.8 L MACRO IS USMの3本の単焦点、ズームレンズRF24-105mm F4-7.1 IS STMに加え、新たに活躍する1本となるのは間違いないです。とは言え、”超”がつく広角レンズを使用することは、これまでほとんどない私。どんな世界が撮れるのかドキドキでした。

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■撮影機材:キヤノン EOS R6 + RF16mm F2.8 STM
■撮影環境:f/6.3 1/640 ISO200 +0.7

質量・価格ともにコンパクト

 サイズは最大径約69.2mm、全長約40.2mm、重量約165g。RF50mm F1.8 STMとほぼ一緒。歪曲収差などの補正をカメラ側で行うことを前提とした設計によって、開放F2.8の大口径でありながら軽量コンパクトを実現しています。宅配便で本レンズを受け取ったとき、本当に段ボールの中に入ってるか疑ってしまったほど。とにかく撮影では身軽さを重要視しているので予備のレンズを携帯することはあまりしませんが、この軽さならついつい持ち歩きたくなります。軽い機材はスナップの見方だと心底実感します。

 旅のお供としてもストレスフリーです。もはや「機材」という言葉が似合わない。わざわざカメラバッグを用意しない気軽な旅でも、スマホやお財布を入れる小さなバッグにだってすっぽり入ってしまうので、何かと荷物が増えてしまう旅ではもってこいのレンズと言えます。今回も機内用バッグに忍ばせて空の旅の間も撮影を楽しみました。

 サイズだけではなくお値段もコンパクトだからまた嬉しい。開放F2.8大口径レンズが4万円以下で手に入るなんて以前は考えられませんでした。価格を抑えられた理由のひとつは、RF50mm F1.8STMにも搭載されているPMo(プラスチックモールド)非球面レンズを1枚含む7群9枚のレンズ構成によるもの。RFレンズは高額なものが多く、欲しいレンズを全て揃えるのは、写真家であっても厳しいです。そこで、このようなお手頃価格レンズが登場するとホッとします。安価だと写りが気になるところですが、高画質は維持しておりますのでご安心を。

描写力

 携行性の良さとお手軽な価格のワケについては十分に伝わったと思いますが、肝心な描写力について触れなくてはなりません。結論から言いますと、申し分ない描写力です。言い過ぎかもしれませんが、高コントラスト、解像感のあるシャープな写り、綺麗なボケ、自然な歪み、どれをとっても文句のつけようがありません。もちろん、Lレンズと比較すれば差が生じるのは当然でしょうが、広告写真撮影などは別として、普段のスナップ撮影においてRF16mm F2.8 STMは満足度の高いクオリティと個人的には感じます。

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■撮影機材:キヤノン EOS R6 + RF16mm F2.8 STM
■撮影環境:f/16 1/160 ISO200 -0.7

 ショーウィンドは魅力的な被写体のひとつ。見ているだけでも楽しくなります。超ワイドな画角によって、ウィンドウの中にあるオブジェが迫力満点に写ります。オブジェのディテールと鮮明な色も再現され抜群な描写力が確認できます。

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■撮影機材:キヤノン EOS R6 + RF16mm F2.8 STM
■撮影環境:f/14 1/500 ISO200 -0.7

 巨大な看板で埋め尽くされた渋谷駅前。下から見上げ、思いっきり逆光状態で撮影。フレアは若干確認でき、よく見るとゴーストも発生してはいますが、ほとんど邪魔にならないレベルです。

 渋谷は訪れるたびに変化しています。駅周辺の開発も進み昔の面影が日に日に消えていき寂しさを覚えると同時に、日々写真に記録することの大切さを感じています。

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■撮影機材:キヤノン EOS R6 + RF16mm F2.8 STM
■撮影環境:f/2.8 1/4000 ISO400 +1.3

 最短撮影距離は0.13mと短く、かなり被写体に寄ることができるのも本レンズの魅力のひとつでしょう。絞り開放F2.8で撮影。合焦部分の羽根の一部シャープネスは良好です。ボケの輪郭の滲みが若干気になり「とろけるような」という表現までには僅かに至らないですが、主役を際立たせるには十分な柔らかさであると思います。

自然な歪み

 歪曲収差や周辺光量の補正をカメラ側で行う電子補正は、いまやミラーレスでは珍しくありませんね。RF16mm F2.8 STMをEOS R6に装着すると自動的に歪曲収差補正がされる仕組みです。カメラのメニュー画面から「レンズ光学補正」を表示してみるとわかりますが、「歪曲収差補正」のオンオフ切り替えが操作できない状態になっています。

 歪みの強い描写があまり好みではないため、これまでは超広角レンズを積極的に使用することを避けていたのですが、RF16mm F2.8 STMは不自然さを感じさせず、肉眼では味わえない迫力をシンプルに味わえるので写欲も上がります。

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■撮影機材:キヤノン EOS R6 + RF16mm F2.8 STM
■撮影環境:f/5 1/1250 ISO200 -0.3

 コロナ禍ということもあり、人通りの少ない朝の渋谷センター街。さすが超広角。遠近感が強調された奥行きある風景が表れました。変な表現ですが「超広角レンズっぽくない」写りが気持ち良いです。ビルや看板部分を見ると解像感の高いシャープな描写も確認できます。

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■撮影機材:キヤノン EOS R6 + RF16mm F2.8 STM
■撮影環境:f/4.5 1/40 ISO200 -0.3

 入口がやや狭い8畳ほどの部屋を撮影してみました。小さい部屋や狭い場所を見た目に近い写りで撮影したい場合、歪みが生じる広角レンズはできるだけ使用したくありませんが状況によっては引けない場面があります。当然パースはつきますが違和感を感じない自然な写りであれば、躊躇なく超広角レンズを多様してしまいそうです。

街を撮る

 街スナップは広い範囲が写り込むワイドな画角が断然おもしろい。と言っても、16mmの超広角でのスナップは今までほとんど撮ったことがないのが事実。普段とは違う機材を使うのは、長く写真を撮っててもワクワクするもの。EOS R6にRF16mm F2.8 STMを装着し、いざ、渋谷の街に繰り出しました。

 ファインダーの中の世界は予想以上に広い画角。ファインダーの中のど迫力な絵に始めはなかなか慣れませんでした。しかしどのレンズにも言えますが、画角や被写体との距離の感覚を身体に染み込ませることでイメージ通りの画を瞬時に捉えることができるようになります。街中で人にカメラを向けると威圧感を与えてしまうこともありますが、レンズが小さければそれが軽減されますし、いつも通り肩にカメラをかけて都心を歩き回っても疲れない。軽い機材は街撮りの味方です。

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■撮影機材:キヤノン EOS R6 + RF16mm F2.8 STM
■撮影環境:f/16 1/400 ISO200 -1

 渋谷と言えば109。ロゴは変わりましたが、フォトジェニックなビルは健在です。渋谷に行く度についついカメラを向けてしまいます。超広角の効果により、両脇のビル群が入り込むことでY字路が強調され、109ビルの存在感も増して写ります。
 
 渋谷の街は、Y路地が至るところにあるのを知っていますか?地形を気にしながら街をスナップしてみると色々な発見があって楽しいです。

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■撮影機材:キヤノン EOS R6 + RF16mm F2.8 STM
■撮影環境:f/16 1/400 ISO200 -1

 縦でも撮ってみました。手前が大きく後ろが小さく写る広角レンズの特徴によって、横断歩道のシマシマがやけに目立ちます。渋谷のような雑多な街並みはパースペクティブを生かした表現がよく似合います。

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■撮影機材:キヤノン EOS R6 + RF16mm F2.8 STM
■撮影環境:■撮影環境:f/5 1/160 ISO200 -0.3

 上を見上げると古びた旗が靡いていました。建物の隙間から狭い空が覗く光景は都市ならでは。普段はアイレベルがほとんどですが、ワイドなレンズを持つと色々なアングルで撮りたくなります。

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■撮影機材:キヤノン EOS R6 + RF16mm F2.8 STM
■撮影環境:f/8 1/500 ISO200 -1

 16mmのデフォルメ効果は、やり過ぎなくらいがおもしろい。実際のハチ公は控えめで可愛らしい雰囲気ですが、RF16mm F2.8 STMで近づき大きく捉えてみたら太々しく見えてきました。これは銅像ですが、動物や子どもに近づいて撮影すると、頭でっかちになり可愛らしく写るので本レンズの被写体としておすすめです。

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■撮影機材:キヤノン EOS R6 + RF16mm F2.8 STM
■撮影環境:f/5 1/80 ISO200

 宮下公園に繋がる小さなトンネル。狭い路地などは、より奥行きが強調されてユニークな描写が得られます。両サイドの自転車の金属部分に微かな光が当たり良いアクセントとなっています。

自然風景

 広い空や壮大な自然風景を見たままに再現したり、それ以上にダイナミックに捉えることができるのも超広角レンズの魅力です。RF16mm F2.8 STMで風景写真を撮ってみたい!と思っていたところに、タイミングよく北海道出張がありました。壮大な風景を撮影しようと意気込んでいたものの、つい目の前のミニマムな世界に惹かれてしまう癖が抜けない写真になってしまいました。とは言え、雪が残る3月の北海道での撮影を堪能することができました。

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■撮影機材:キヤノン EOS R6 + RF16mm F2.8 STM
■撮影環境:f/5.6 1/8000 ISO100 -1.7

 平野が広がる北海道ならではの光景が望める高台へ。水平垂直をしっかりと出したい風景写真で広角レンズを使用する場合、その美しさを歪みが邪魔をする場合がありますが、見ての通り自然に写っているのがわかります。手前の雪の質感も美しく再現され、ダイナミックな空も立体的に捉えられています。

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■撮影機材:キヤノン EOS R6 + RF16mm F2.8 STM
■撮影環境:f/8 1/500 ISO100 +0.3

 背の高い樹木を真下から狙いました。アングルの工夫によって、超広角レンズの特徴であるパースがより生かされます。モノクロに変換してみましたが、黒のグラデーションが美しく表現されてるのがわかります。

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■撮影機材:キヤノン EOS R6 + RF16mm F2.8 STM
■撮影環境:f/8 1/320 ISO100 +0.3

 カメラを向けると興味津々でこちらに近づいてきた散歩中の白い犬。轍や足跡が付いてる雪の道が画面いっぱいに写り、雪国らしいスナップ写真に。画面隅に飼い主さんが配置されたことで歪みが生じ、犬と人間のサイズ感に違和感を持ちますが、これこそ超広角レンズのおもしろさでしょう。

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■撮影機材:キヤノン EOS R6 + RF16mm F2.8 STM
■撮影環境:f/8 1/500 ISO100 -0.7

 移動中の車窓から。曇り空から太陽が顔を出しました。汚れのように見えますが、細かい雪が舞っています。ガッツリと風景写真を撮るというよりは、どんな場面でも気軽に撮るスタイルがマッチするレンズですね。

まとめ

 「RF16mm F2.8 STM」で私が一番気に入ったポイントは、不自然な歪みのない描写。これからは35mm、時々16mmでスナップを楽しもうと思います。みなさんも是非、気軽な超ワイドレンズでいつもとは違う写真を撮ってみてはいかがですか。

■写真家:鶴巻育子
1972年、東京生まれ。広告写真、カメラ雑誌の執筆のほか、ワークショップやセミナー開催など幅広く活動。写真家として活動する傍ら、東京・目黒、写真専門ギャラリーJam Photo Gallery 主宰を務める。ライフワークでは、これまでに世界20カ国、40以上の都市を訪れ、街スナップや人物を撮影。主な写真展 Brighton-a little different(2012年、オリンパスギャラリー)、東京・オオカミの山(2013年、エプソンイメージングギャラリーエプサイト)、3[サン] (2015年、表参道スパイラルガーデン)、THE BUS(2018 年、ピクトリコギャラリー・PLACE M)、PERFECT DAY(2020年、キヤノンギャラリー銀座)など。THE BUS(2018年、自費出版)、PERFECT DAY(2020年、冬青社)、夢(2021年、Jam Books)がある。

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