キヤノン EOS Rシリーズ初のAPS-C対応ズームレンズ|RF-S18-45mm F4.5-6.3 IS STM

金森玲奈
キヤノン EOS Rシリーズ初のAPS-C対応ズームレンズ|RF-S18-45mm F4.5-6.3 IS STM

はじめに

 EOS RシリーズのAPS-Cモデルに対応した標準ズームレンズ「RF-S18-45mm F4.5-6.3 IS STM」。小型軽量なだけでなく、マウントアダプターを介さずにEOS Rシリーズのフルサイズモデルにも装着可能なところなど、Rシリーズユーザーにとってシームレスに兼用できるのも魅力です。同時期に発売されたEOS R10のキットレンズでもある本レンズの実力をご紹介していきます。

デザイン・仕様

 全長は約44.3mm、重さは約130gと、かなり軽量です。EOS R10に装着しても総重量は600g弱ですので、日常使いだけでなく旅行に持って行く機材としても活躍してくれるでしょう。スイッチを使わないレンズ収納機構を採用しているので、ズームリングの回転操作のみで鏡筒をコンパクトに収納できます。

 沈胴機構を採用しているのと、AF/MFの切り替えスイッチが省略されているため非常に軽量でコンパクトな標準ズームレンズとなっています。また、コントロールリングが搭載されているので、自分がよく使う機能を割り当てることで撮影時の操作性が高まります。

 レンズ前面の焦点距離などの表記は印刷ではなく刻印されているので、少しだけ高級感を感じます。また、文字の色も白ではなく黒にしていることで、映り込みを気にせず撮影できるのも地味に嬉しいポイントかもしれません。手ブレ補正機構も搭載しており、EOS R10装着時は4.0段分、ボディ内手ブレ補正機構を搭載したEOS R7では協調ISにより6.5段分の補正効果を発揮するのも魅力です。

軽さは正義。久しぶりの遠出を一緒に楽しむ

 秋が深まり冬の気配を感じ始めた11月から12月の初めにかけて、久しぶりに横浜と鎌倉に足を延ばしました。鎌倉は我が家から1時間半ほどのショートトリップにちょうど良い距離の観光地です。駅前のメインストリートだけでなく、一歩入った路地裏など、新しさと古さが共存する鎌倉界隈は何度訪れても楽しい場所で、一日中歩き回っても回りきれないほど魅力的なものであふれています。

 そんな日のお供となる機材は、なるべく軽いのが嬉しいものです。今回はEOS R10とRF-S18-45mm F4.5-6.3 IS STMのセットを連れて、いざ鎌倉へ。

■撮影機材:Canon EOS R10 + RF-S18-45mm F4.5-6.3 IS STM
■撮影環境:1/80sec F5.6 +1 2/3 ISO125 WBオート

 だいぶ人通りも戻ってきた小町通りを歩いていると、洋風のおしゃれな外灯を見つけたので人波が途切れた瞬間を狙って一枚。ボディとレンズがとてもちいさいので、混雑した場所でもサッと構えてスマートに撮影ができます。

暗い場所でも頼もしいAF精度と解像力

 英国のアンティークを扱う博物館にお邪魔しました。館内にはアンティークの銀食器などが所狭しと飾られていて、まるでイギリスの古いお城に迷い込んだような錯覚を覚えるほど。重厚な雰囲気を壊さないように暗部でピント合わせをサポートしてくれる「AF補助光」設定は切っていたのですが、ピント合わせに迷う場面はほとんどありませんでした。また、シャドウ部からハイライトに向かう階調の再現性もなめらかで、長い時間を経たアンティークたちの存在感をより引き立ててくれたように思います。

■撮影機材:Canon EOS R10 + RF-S18-45mm F4.5-6.3 IS STM
■撮影環境:1/20sec F7.1 -2/3 ISO6400 WBオート

 キャビネットに飾られたトランプの置物を撮影しました。かなり暗い条件でしたが、4段分の光学式手ブレ補正のおかげで手ブレを気にせず撮影に集中できました。F値を少し絞りましたがシャンデリアの光が綺麗な玉ボケになったのも好印象です。

■撮影機材:Canon EOS R10 + RF-S18-45mm F4.5-6.3 IS STM
■撮影環境:1/80sec F7.1 -1 2/3 ISO3200 WBオート

 木馬の置物のタテガミや瞳、月日を感じさせる木の質感も見たままに忠実に再現できました。

■撮影機材:Canon EOS R10 + RF-S18-45mm F4.5-6.3 IS STM
■撮影環境:1/80sec F5.6 -1 1/3 ISO2000 WBオート

 まるでビロードの椅子に鎮座しているような凛とした佇まいのヴァイオリンに目が惹きつけられました。

心地良い画角で捉える洋館スナップ

 RF-S18-45mm F4.5-6.3 IS STMの焦点距離は35mm換算で29〜72mmと、ワイド端で考えると広角域としては少し狭い印象を受けるかもしれません。普段フルサイズ用のRF24-70mm F2.8 L IS USMを使うことが多い私も、最初のうちはこの焦点距離に若干狭さを感じたのは事実です。ですが、個人的な意見にはなりますが、使っているうちに35mm換算約30mmのワイド端の距離感に心地良さを覚えるようになりました。

 私はスナップの際、メインの被写体を取り巻く周りの情景を広めに入れるのが好きなのですが、いわゆる広角と呼ぶには若干狭く、標準と呼ぶには少し広いRF-S18-45mm F4.5-6.3 IS STMのワイド端の画角が、この時の視点に思いがけずマッチしたからです。値段に関わらず、使い心地の良いレンズと出会えるのはとてもラッキーなことだと思います。

■撮影機材:Canon EOS R10 + RF-S18-45mm F4.5-6.3 IS STM
■撮影環境:1/80sec F5.0 ISO1000 WBオート

 横浜の山の上にある山手西洋館はシーズンごとの装飾が見どころの人気の観光スポットです。洋館近くの民家もおしゃれな佇まいの建物が多いので、窓に映り込んでも雰囲気を壊しません。

■撮影機材:Canon EOS R10 + RF-S18-45mm F4.5-6.3 IS STM
■撮影環境:1/50sec F4.5 +1 1/3 ISO6400 WBオート

 子供の頃こんなおもちゃが家にあったら…と思わず妄想してしまうような可愛らしいクリスマスの世界がぎゅっと詰まっていました。ほんの少し子供の目線を意識してローアングルで撮影しました。

撮影機材:Canon EOS R10 + RF-S18-45mm F4.5-6.3 IS STM
撮影環境:1/80sec F4.5 +2/3 ISO800 WBオート

 坂の上にある季節のパフェが美味しい喫茶店に寄り道。ワイド端18mmではMF時の最短撮影距離がAF時よりも5cm短くなるため、引きのないシチュエーションでもフレーミングの幅が広がります。

撮影機材:Canon EOS R10 + RF-S18-45mm F4.5-6.3 IS STM
撮影環境:1/80sec F5.0 +1 1/3 ISO6400 WBオート

 広角寄りの28mmで撮影。壁や窓枠のラインも歪むことなくすっきりとした描写なのが気に入りました。

さいごに

 EOS Rシリーズ初のAPS-C機向けレンズとして登場したRF-S18-45mm F4.5-6.3 IS STMは、軽量コンパクト、且つ低価格でありながらAFの精度や解像感は十分満足できるレベルのレンズといった印象を受けました。また、フルサイズのEOS Rシリーズにもマウントアダプターなしで装着できるのは画期的と言えるでしょう。APS-C仕様のため、画角はクロップされますが、気軽なスナップ撮影などには重宝すると思います。

 ただし、開放F値はそこまで明るくないのと、防塵防滴性能を有していない点では撮影のシチュエーションを選ぶ必要があるかもしれません。それでも、EOS R10のキットレンズとして購入した場合のお得感などは、ミラーレス一眼を初めて購入しようと考えている人にとっては魅力的だと思います。

 

 

■写真家:金森玲奈
1979年東京生まれ。東京工芸大学芸術学部写真学科卒業。東京藝術大学美術学部附属写真センター勤務等を経て2011年からフリーランスとして活動を開始。日常の中で記憶からこぼれ落ちていく何気ない瞬間や怪我と障害がきっかけで引き取った2匹の飼い猫との日々を撮り続けている。

 

 

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