キヤノン RF24-240mm F4-6.3 IS USM|オールラウンダーな高倍率ズームレンズ
はじめに
今回ご紹介するレンズは2023年1月現在、EOS Rシリーズ唯一の高倍率ズームレンズ「RF24-240mm F4-6.3 IS USM」です。風景やスポーツだけでなく、これ一本でいろいろな撮影シーンに対応することができるオールラウンダーなレンズです。RFシステムで進化した点や、高倍率ズームならではの使い勝手の良さなどを解説していきます。
デザイン・仕様
全長は約122.5mm、重さは約750gと、200mmを超える焦点距離を備えたズームレンズとしてはかなりの軽量化を実現しています。24mmの広角から240mmの望遠までをカバーするレンズを三本持ち歩くことを思えば、旅先などでの利便性も高いと言えるでしょう。また、APS-C機と組み合わせればテレ端で384mmと超望遠レンズとしても使えるのは魅力です。
レンズは繰り出し式で、望遠側はそれなりに前玉が繰り出されます。フィルター径も72mmと大きいので別売りのレンズフード「EW-78F」を装着することをオススメします。レンズフードの役割は不要な光をカットすることが主目的ですが、このように前玉が大きなレンズの場合に、うっかりレンズ面に触れてしまうのを防ぐのにも一役買ってくれます。
レンズの繰り出しをロックするスイッチはレンズ右側にあります。前述した通り望遠側ではかなりレンズ前玉が繰り出すので、移動時などはロックしておくと安心でしょう。
AF性能も画質も隙なし
ひと昔前の高倍率ズームは、単焦点は言うに及ばず標準的なズームレンズなどと比べても、画質の面で見劣りする部分があったりピント合わせが遅かったりと、その辺りを多少犠牲にしてでも幅広い焦点距離を一本のレンズで完結することを主目的としているものが多かったように思います。
RF24-240mm F4-6.3 IS USMは、キヤノン独自の超音波モーター「ナノUSM」とEOS Rシステムのミラーレスカメラに搭載されている「デュアルピクセルCMOS AF」の組み合わせによって、高速で高精度のAF性能を実現しています。これにより、かつての高倍率ズームの欠点とも呼べる部分は劇的に改善された印象を受けました。
水族館のイルカショーでイルカの大ジャンプを狙いました。サーボAFとゾーンAFの組み合わせでイルカがジャンプするタイミングに集中していましたが、飛び出しの瞬間にしっかりイルカを捉えてくれたことでダイナミックなジャンプを撮影することができました。
動物園でユキヒョウを撮影しました。ユキヒョウは雨が苦手ならしく、残念ながらこの日は外に出てきてくれることはほとんどありませんでした。金網越しでの撮影でしたがAFが迷うことはなく、こちらを見つめる力強い眼差しを瞬時に補足してくれました。
木立の奥にいたオシドリをテレ端で撮影しました。色鮮やかなオシドリの羽の質感や色の再現性、羽に留まった水滴の描写も実にクリアで、雨模様のしっとりとした空気感まで感じられました。フルサイズ換算で約400mmの焦点距離が描き出す前ボケの描写もなめらかで、主役を引き立てるのに良いアクセントになりました。
街スナップにも大活躍
240mmというと風景やスポーツ撮影などで活躍する焦点距離といったイメージがあるかもしれませんが、RF24-240mm F4-6.3 IS USMは高倍率ズームとしてはコンパクトなサイズなので身近な街スナップに連れ出すのにもオススメです。
商店街の角を曲がったら陽気なイラストが目に飛び込んできました。海外の街角のような雰囲気を生かしたくて周囲が写らないようにフレーミングしました。とはいえ、「止まれ」の看板の存在感が強すぎるのはご愛嬌ですね。
町内会の当番か何かでしょうか?年季の入った木札にどこかなつかしさを覚えました。
芸術的なデザインのケーキが人気の喫茶店におじゃましました。ワイド端での最短撮影距離は0.5mと決してそこまで寄れませんが、レンズ本体がコンパクトなのでバリアングル液晶を駆使して、お店の雰囲気を取り入れつつ主役が引き立つ一枚が撮れました。
寄って、引いて、ふたつの世界を楽しむ
同じ場所を撮影しても広角レンズと望遠レンズでは見える世界がまったく異なります。撮りたい被写体をどう表現するかを考えた時に、どの距離感で切り取るかは重要な要素のひとつです。特にスナップの場合は撮りたいと思ってからレンズ交換をしていては、せっかくのシャッターチャンスを逃してしまうこともあるかもしれません。
240mmという、私たちの目では見えない世界を見せてくれる焦点距離ならではの写真を楽しんだすぐあとに広々とした世界を見る、撮影者の思いつくままに自由に目の前の情景を写す「目」を切り替えられること、撮りたい瞬間を逃さない選択肢の多さは高倍率ズームの強みと言えるでしょう。そして、その判断に瞬時に応えるポテンシャルがRF24-240mm F4-6.3 IS USMにはあります。
砂浜ギリギリまで波に乗るサーファーをスナップしました。逆光でシルエットになった姿と輝く水面の対比が良い感じに表現できました。
サーファーを連れてきた波が砂浜にぶつかる瞬間が綺麗で、テレ端で波打ち際をクローズアップしました。お陽さまに照らされてキラキラと輝く水面の細かい泡がまるで宝石のように見えました。
波打ち際を撮っていて顔をあげると遠くに一組の親子を見つけました。波が怖いのか、少し腰の引けた娘さんと手をつないだお父さんの姿がかわいらしく、そのかわいさをサイズ感で表現するためにワイド端で撮影しました。
APS-C機EOS R7を使いテレ端で撮影しました。フルサイズ換算約400mmの超望遠で見ると、浜辺の近くを進むカヌーもまるで遥か陸地から離れた大海原を航海しているような錯覚を覚える一枚に変身しました。
さいごに
さまざまなシチュエーションに対応できるのが高倍率ズームの強みですが、前述した通り、ひと昔前のものは画質や携行性などにはやや難があり、選択肢の優先順位としては決して高くはありませんでした。今回RF24-240mm F4-6.3 IS USMを使用してみて、このレンズがかつての高倍率ズームの概念を塗り替えてくれたように思います。高倍率ズームの新しい可能性を感じられたRF24-240mm F4-6.3 IS USM、機会があればぜひ試してみてください。
■写真家:金森玲奈
1979年東京生まれ。東京工芸大学芸術学部写真学科卒業。東京藝術大学美術学部附属写真センター勤務等を経て2011年からフリーランスとして活動を開始。日常の中で記憶からこぼれ落ちていく何気ない瞬間や怪我と障害がきっかけで引き取った2匹の飼い猫との日々を撮り続けている。池尻大橋のアトリエで写真を手に取れる形で残すためのプリントレッスンや各種撮影会、モノクロ暗室ワークショップなどを企画運営している。