富士フイルム GF23mmF4 R LM WR|GFX用広角単焦点レンズレビュー
はじめに
こんにちは。旅写真家の三田崇博です。今回はGFXシリーズ用の広角単焦点レンズである「GF23mmF4 R LM WR」をレビューします。このレンズは発売からすでに5年が経過していますが、フルサイズ換算18mm相当という現行のGFレンズの中では最広角のレンズとなります。私自身が広角レンズ好きで、旅に出ると標準レンズよりも出番が多くなることもあります。
このレンズの特徴
焦点距離 | 23mm(35mm判換算18mm相当) |
レンズ構成 | 12群15枚 |
絞り羽枚数 | 9枚(円形絞り) |
最短撮影距離 | 0.38m |
フィルター径 | 82mm |
質量 | 約845g |
メーカー希望小売価格 | 339,500円(税別) |
1. 23mmという画角について
最近はフルサイズ換算で15mmや12mmというレンズも珍しくないので、個人的には超広角と言うにはやや物足りない印象ですが、フルサイズ換算18mmという画角は広すぎず狭すぎずちょうどいい画角ではないかと思います。その証拠に私が標準ズームレンズと一緒に持ち出す際にこのレンズの方が使用頻度が高いことが多いです。
2. 手ぶれ補正
レンズ自体に手ぶれ補正は備わっていないので、GFX100・GFX100S・GFX50S IIとの組み合わせではボディ内手ぶれ補正を活用することになります。例えばGFX50S IIに装着した場合は、ボディ内手ぶれ補正によって6.5段分の補正効果が得られます。
3. その他
防塵・防滴・-10℃の耐低温構造になっているので雨天などの撮影にも安心して使うことができます。また、フィルター径が82mmなのでKANIの角型フィルターを装着する際にステップアップリングをつけずに直接アダプターが付けられるところも気に入っています。
画質
高画素のラージフォーマットセンサーの能力を最大限に引き出すためにレンズの解像度はとても重要です。特に広角レンズの場合気になるのが周辺部の画質です。下記作例の中央部分と周辺部分をピクセル等倍で切り出してみました。中央部分は絞り解放から良好な画質でF11からF16あたりが最も解像度が高い結果となりました。ピントは中央付近に合わせていますがF11くらいになると画面全体にピントがあったようになり、周辺部分の画質も良好な結果となりました。
作例
実際に今年の3月から5月にかけて撮影した作品を見ながらレンズの特徴を解説していきます。本当は海外に行く予定でしたがウクライナ情勢の影響を受けて延期に。その分、日本の春景を撮影することができました。
毎年撮影している東大寺の修二会(お水取り)です。中判カメラで激しい動きを撮るというのは少し前までは考えられないことでしたが、小型化や手ぶれ補正の恩恵もあり持ち出してみました。かなり暗い場面だったのでピントはマニュアルで固定(置きピン)しての撮影です。センサーの大きさを生かしてISO12800まで感度を上げて、火の粉が点で写るように表現してみました。
奈良三大梅林のひとつでもある月ヶ瀬梅林です。雲海の発生する可能性のある日を狙っていくのですが、思ったような雲海が出てくれるのはとても稀です。自然風景を写す分には周辺の歪みはほとんど気になりません。
世界遺産の薬師寺で3月末に行われる鬼追い式の様子です。ぶれにくい広角レンズとボディ内の手ぶれ補正との組み合わせで、かなり遅いシャッター速度でも手持ち撮影が可能です。
「桜ボール」と呼ばれている円形に整えられた桜が雨上がりの水たまりに写り込むと、まさに完璧な球体がそこに現れます。照明のライトが明るかったので絞り込んで撮影していますが、ゴーストやフレアも見られず綺麗な光条が出てくれました。
桜大仏として有名な壷阪寺。夜のライトアップ時には特に神秘的な姿が見られます。さすがに画面右端の建物に歪みが見られますが現像ソフトを使うことによって簡単に修正することができます(掲載写真は修正前)。
日本で最初の都が置かれたとされる藤原京は、春は桜と菜の花とのコラボレーションが見られる人気スポットです。広角レンズで切り取ると青空とのコントラストがとても綺麗でした。
日本のさくら100選にも選ばれている大和郡山城の桜。ハーフNDフィルターを使って映り込みとのバランスを調整しながら撮影しました。KANI角型フィルターのアダプターがステップアップリングを介さず直接装着できるのが便利です。
この写真もNDフィルターを使って水に浮かぶ花びらの流れを表現しています。風が来て花びらが動くのを待つという根気のいる撮影でしたが、広角レンズの遠近感を生かした撮影ができました。
琵琶湖北岸にあるさくらの名所です。昼間は道路が渋滞するので早朝の早い時間に訪れました。高解像度のレンズと大型センサーによる広いダイナミックレンジのお陰で、見事なグラデーションを表現することができました。
2021年に世界遺産に登録された「北海道・北東北の縄文遺跡群」の構成資産のひとつでもある大湯環状列石です。この日は真っ青な青空が広がっていたので広角レンズで空を広く入れた構図で撮りましたが、建物の歪みも少なく撮影することができました。
弘前城の桜並木で最近話題になっているのがハートスポット。ある角度から見るとハート型の空間が現れるスポットです。標準レンズだとハート部分のみしか見えませんが、広角レンズを使うことによって周りの雰囲気も写し込むことができました。
「百万ドルの夜景」と言われる函館山山頂からの眺めです。全体を収めようと思うと広角レンズが必要ですが、どうしても空の面積が広くなってしまうのでGFXに搭載されている16:9のフォーマットで撮影しました。周辺部分の解像度も高いこのレンズだとこのような表現も可能です。
五稜郭タワーから満開の桜に囲まれた五稜郭を撮影しました。ガラス越しでの撮影のため少し色被りしましたが、周辺減光は最小限に抑えられています。
ネモフィラの花で有名なひたち海浜公園ですがとにかく人が多かったです。そんなときは広角レンズでぐっと花に近づくと遠近感が強調され、後ろにいる人々もあまり気にならなくなりました。
アメリカCNNの「世界の夢の旅行先」にも選ばれたことのあるあしかがフラワーパーク。頭上に広がる藤棚を写すには広角レンズが必須ですが、暗い中でしたが周辺光量落ちも少なく画面の端々まで高画質で撮影することができました。
峠道を走っていると突然濃い霧に包まれました。広いダイナミックレンジのお陰で霧が白とびせずに木々の質感も残すことができました。
海外作例
2020年に開催した写真展「絹道遺産」にも本レンズを使用した作品を多数展示しました。中国からヨーロッパまで陸路で移動しながらのハードな撮影でしたが、防塵・防滴・-10℃の耐低温構造の本レンズは砂漠などの過酷な環境下でもトラブルなく撮影することができました。
まとめ
現在(2022年7月)のところGFXシリーズ対応の純正唯一の広角レンズとなります。取り扱いやすい画角に、画質的にも1億画素にも十分に対応できる性能を持つレンズに仕上がっています。さらに広い20-35mmの画角を持つズームレンズの開発もアナウンスされていますが、単焦点レンズである本レンズのほうが画質面では有利になると思われます。海外撮影時にも使用頻度がとても高かったレンズで、GFXシリーズで風景撮影をするならぜひ持っておきたい一本です。
■写真家:三田崇博
1975年奈良県生駒市生まれ。旅好きが高じ、現在までに100を超える国と地域で350か所以上の世界遺産の撮影を行う。作品は各種雑誌やカレンダーへの掲載に加え全国各地で写真展を開催している。
日本写真家協会(JPS)会員・FUJIFILM X-Photographer・アカデミーX講師