「富士フイルム GFX100 II」と一緒に秋と冬の狭間を歩く・札幌円山散歩
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はじめに
11月後半の北海道は、秋と冬の狭間。
紅葉はだいぶピークを終え、すこしずつ風に冬のにおいが混じってくる。
ぴりっとした、凛とした空気。この雰囲気をカメラと一緒に歩きながら味わいたい。
せっかくだから、いつもと違うカメラにしよう。ちょっと憧れのある、あのカメラ。
そう、富士フイルムの「GFX100 II」。
ラージフォーマットのカメラだ。
ラージフォーマット「GFX100 II」
「ラージフォーマット」と聞くとどんな印象があるだろう?
「重そう」「大きくて持ちづらそう」「取り扱いが難しそう」…でも!そうは言っても、ラージフォーマット、つまり35mm判の約1.7倍となるセンサー。どんな写真が撮れるのだろうと気になる。
そう、ラージフォーマットのカメラは何やら「気になる存在」なのだ。
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GFX100 IIは2023年9月に発売となった新しいカメラ。新開発の1億2百万画素高速センサー「GFX 102MP CMOS II HS」と、最新の高速画像処理エンジン「X-Processor 5」を搭載している。だから、高速で高画質。さらに、被写体検出AFや8.0コマ/秒の高速連写などかなり進化している。
ボディサイズは幅152.4mm、高さ117.4mm、奥行き98.6mm、重さは約1,030g(EVF装着時)。GFX100から比べると重さは約370gも軽くなり、サイズもコンパクトに。そして、ボタンやダイヤル類、メニュー画面も操作しやすく、特にXシリーズ愛用者にはなじみ深い設計。モードダイヤルやサブ液晶モニターは電源を入れなくても設定を確認できるので使い勝手が良い。その上、新しいフィルムシミュレーション「REALA ACE」や8.0段分のボディ内手ブレ補正機能など、いろいろ充実。さすが、GFXのフラッグシップ。
初めてGFX100 IIを手に取った時に思い出したのは、過去に愛用していたフルサイズデジタル一眼レフ。個人的な体感だけれど、あのフルサイズ一眼レフを持ったときとほぼ変わらない印象。むしろ、ラージフォーマットなのに、このくらいの重さで済むんだ!と驚いた。もちろん大きくて持ちづらいということもない。
うん、これなら、GFX100 IIと街歩きが楽しめそう。
ラージフォーマットを日常に。まちスナップをしてみよう。
ということで、さっそくカメラをカバンにいれ、札幌・円山エリアへ出かけることにした。
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■撮影環境:1/800秒 f/1.7 ISO100
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■撮影環境:1/1600 秒 f/2.8 ISO320
円山エリアは札幌市中心部から地下鉄で10分圏内にある人気のエリア。メイン道路は往来も多く賑やかだけれど、一歩路地裏に入ると、古いものもじんわりと残る住宅街で、その中に特徴あるカフェが点在している。さらにすこし歩くだけで緑豊かな公園や原始林が広がり、野生動物にも出会えるという、ハイブリットなエリア。札幌に来たら、ぜひ訪れてほしい場所のひとつ。
秋の残り香を探して
円山エリアはぶらりと歩くのが楽しい。
気になる路地を曲がってみたり、小道を歩いてみたり。
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■撮影環境:1/800 秒 f/2.5 ISO500
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■撮影環境:1/500秒 f/3.6 ISO500
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■撮影環境:1/6400秒 f/1.7 ISO500
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■撮影環境:1/500秒 f/8 ISO500
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■撮影環境:1/125秒 f/8 ISO1000
蔦や落ち葉に囲まれたカフェの看板
道ばたで健気に咲く花
昨日の喧騒の残り香を漂わせるビストロ
枯れかけの紫陽花に印象的な光
赤い実と緑の葉のコントラスト
明暗差のあるシーンでもその雰囲気を余すことなく伝えてくれる。
さらに驚いたのが最後の写真。逆光があたる葉の細かな産毛(トライコーム)までしっかり描写されていたこと。ああ、大きくプリントしたら繊細さがたまらないだろうな。これぞ高画質。
GFX100 IIとのまちスナップは、新しい発見と出逢える時間。
20番目のフィルムシミュレーション「REALA ACE」登場
GFX100 IIでまち歩きをしたかった理由のひとつ、それは、新しいフィルムシミュレーション「REALA ACE(リアラエース)」。
「REALA ACE」はGFX100 IIで初搭載された20番目のフィルムシミュレーション。
フィルムシミュレーションが好きで富士フイルムのカメラを使っているという方にとって、新しいフィルムシミュレーションはきっと気になる存在だろう。もちろん、私もそのひとり。
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■撮影環境:1/250秒 f/2 ISO500
歩いていると、紅葉を見つけた。
パチリ。「REALA ACE」でのファーストショット。
なるほど「REALA ACE」は目で見たままに近い色再現の印象。けれど、シャドウ部はより柔らかくて、ハイライトは気持ち強めに表現される。「PROVIA」に近いけれど、それともまた違う。クラシックネガ、ノスタルジックネガが好きな人はきっとこのフィルムシミュレーションも好きになると思う。
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■撮影環境:1/8000秒 f/1.7 ISO500
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■撮影環境:1/4000秒 f/2.5 ISO500
秋の光にとても良く合う。
「REALA ACE」はこれからの時期におススメのフィルムシミュレーション。
繊細さを紡ぐレンズ GF55mmF1.7 R WR
GFX100 IIとのまち歩きで選んだのはGF55mmF1.7 R WR。
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GF55mmF1.7 R WRは35mm判換算で44mm相当。
視野角にもっとも近い画角で、GFX100 IIと同じ日に発売されたレンズ。
柔らかく美しいボケ味と被写体を浮き立たせるメリハリのある表現が特徴。
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■撮影環境:1/200秒 f/3.2 ISO500
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■撮影環境:1/1250秒 f/2.8 ISO500
GFX100 II、GF55mmF1.7 R WR、そしてフィルムシミュレーション「REALA ACE」。
繊細さを紡ぎだすのに最適な組み合わせだと思う。
高倍率・高精細のEVFも見逃せない
繊細さを紡ぎだすのに見逃せないものがもうひとつ、電子ビューファインダー(EVF)。
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ファインダー倍率1.0倍、944万ドットの高倍率・高精細EVFで、それは一度覗いただけでわかるほど、とても見やすい。
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■撮影環境:1/4000秒 f/1.7 ISO250
逆光で土手の上にある小さな葉っぱに光が当たるシーン。このような繊細な表現のときは特に大きな力となった。
しかも、固定ではなく着脱式。
動画撮影のときなど状況に応じて変化できる柔軟性があるのも嬉しい。
路地裏のカフェへ : レンズをもう1本。
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■撮影環境:1/60秒 f/2.8 ISO500
ふと曲がった先にあったカフェに入ってみた。
ここでは、レンズを変えてみる。GF63mmF2.8 R WR。
先ほど紹介したGF55mmF1.7 R WRと近い焦点距離のレンズ。
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GF63mmF2.8 R WRは35mm判換算50mm。長さ71.0mm、重さ405gと小さめなのが嬉しい。描写が美しく、まるで目の前にあるかのような、触れたくなるような質感の表現に、はっとする。GFXのレンズに共通することだけれど、防塵・防滴、さらにマイナス10度の耐低温構造と撮影場所を選ばないのも嬉しい。
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■撮影環境:1/100秒 f/2.8 ISO500
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■撮影環境:1/20秒 f/5.6 ISO500
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■撮影環境:1/40秒 f/2.8 ISO640
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■撮影環境:1/200秒 f/2.8 ISO640
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■撮影環境:1/80秒 f/2.8 ISO640
その場の空気もぎゅっと閉じ込める。質感の描写が素晴らしい。
すこし暗めの室内だったので、写真によってはシャッタースピードが1/20と遅いときもあった。しかし、5軸・8.0段の手振れ補正がしっかりとサポートしてくれた。ラージフォーマットなのに、これはすごい!
出会いは突然に
とかく出会いというのは突然なもので、ふと見上げると、野鳥がやってきた。
わわ!被写体検出AFの出番!と、さっと設定して撮影する。
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■撮影環境:1/200秒 f/2.8 ISO1250
ちょこん。赤い実の真ん中に、コンニチハ。
被写体検出AFは、動物、鳥、車、電車、バイク&自転車、飛行機などの選択があり、その選択にあわせて、動体を検出。さらにピントを合わせたまま自動的に追尾をしてくれるという、とても便利な機能だ。X-H2S、X-H2、X-T5、X-S20では既におなじみの機能だが、GFXでは初めてGFX100 IIに搭載された。
この時は、あいにく望遠レンズをもっていなかったので、主役の鳥はかなり小さめに。
けれど、被写体検出AFがしっかり働いてくれて、撮り逃すことはなかった。
もしその気があれば、ラージフォーマットだから臆することなく、トリミングすることもできる。こんな風に。
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瞳がきらっとして可愛らしい。羽毛の繊細な描写。
これを見て、思わず次の撮影を妄想してしまう。例えば、GF250mmF4 R LM OIS WRだったらどうなのだろう、とか。被写体検出AFや8.0コマ/秒の高速連写は、ラージフォーマットの魅力をさらに引き上げたと思う。むむむ、GFX100 II、恐るべし。
冬の気配を閉じ込める
数日後、ひどく寒い朝、カーテンをあけると、うっすらと雪景色だった。
すこしだけ早起きをして、同じ道をまた歩いてみた。
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■撮影環境:1/100秒 f/4 ISO320
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■撮影環境:1/2000秒 f/4 ISO320
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■撮影環境:1/500秒 f/5.6 ISO320
降りたての雪が太陽にあたって葉っぱの上でキラキラと光りだしていた。そして雪が風に吹かれたあとが、周りに模様のように現れる。この繊細さをしっかり捉えていることに、そしてEVFでそのさまが手に取るようにはっきりと見えて、本当に本当に感嘆しかなかった。
だからこういう写真も撮りたくなった。
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■撮影環境:1/2000秒 f/2.5 ISO320
初雪に耐えるバラのつぼみ。
つぼみにかかる雪氷の美しさ。
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■撮影環境:1/2000秒 f/3.2 ISO320
雪の中、朝日に照らされるほおずき。
光がほおずきに注がれているようなイメージを持ってローアングルで撮る。
これらは、GFX100 IIと一緒だから見られた光景だ。
おわりに
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■撮影環境:1/1000秒 f/1.7 ISO500
新開発の1億2百万画素高速センサー「GFX 102MP CMOS II HS」と、最新の高速画像処理エンジン「X-Processor 5」を搭載することで、ラージフォーマットの可能性をさらに進化させたGFX100 II。20種類目のフィルムシミュレーション「REALA ACE」も魅力的。
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特別なシーンはもちろん、日々を紡ぐスナップにも魅力を発揮する。
ラージフォーマットの新しい楽しみ方をこのカメラに教えてもらった気がした。
さて、次はどんなカメラやレンズと旅に出よう。
きっとたくさんの出会いが待っている。
みなさんも、カメラやレンズと良い旅を。
■撮影協力
チーズケーキ専門店 どるちぇ ど さんちょ
北海道札幌市中央区南3条西23丁目2-25
https://www.instagram.com/dolcedesancio/
■写真家:渡邉真弓
写真家。札幌在住。日常をモチーフに「時の有限性」「薄れゆく記憶」について考察する作品を制作。「写真と一緒にくらしを楽しむ」をキーワードに、写真教室、写真にまつわる執筆・企画提案、撮影など幅広く活動している。北海道カメラ女子の会代表、フォトフェスCuiCui 事務局代表、京都芸術大学通信教育部美術科写真コース非常勤講師。富士フイルム公認X-photographer。地方自治体と地域振興プロジェクトも展開中。