マクロで撮ろうチューリップ!|クニさんの季節の花レシピ
はじめに
春になるとたくさんの花が咲き始めて、心ウキウキワクワクしますね。
陽射しも暖かく柔らかくなって、花を撮影するには最高に楽しい季節です!
ぜひその楽しい心のままマクロレンズを一本持って、近くの公園やお花畑に撮影に行きましょう!
きっと春らしい明るく楽しい花写真が撮れますよ!
花と同じ目線で撮ろう
黄色いチューリップが並んでいるお花畑を低いアングルから写しました。
その奥に咲いている赤いチューリップがボケて赤色のグラデーションになり、パステルカラーの春らしい作品に仕上がりました。
花撮影で大事なことはいろいろありますが、その一つがアングル。
自分の目線と花の高さが同じになるようにカメラを構えて撮影します。
この作品の場合はさらに低く、チューリップを下から覗くようなアングルで撮影しています。
そうすると普段見ているのとはまた違った見え方がして、面白い発見がありますよ。
低い体勢で撮るのは大変ですが、最近のデジカメならチルト式やバリアングル式の背面液晶の使用で、角度を変えて撮ることができますのでうまく活用して撮影してください。
このような作品の場合は露出に注意が必要です。
黄色や白のチューリップはそのまま撮ると暗くなってしまって、色が濁った汚い印象になりがちです。
そこで露出を多めにプラスして明る目に撮影することできれいな花の色が表現でき、春らしいポップなイメージに仕上がります。
さらに花を少し斜めに配置して、爽やかな風に吹かれて楽しげな動きが感じられるように表現しました。
絞り開放でボケを活かそう
群生の中の一輪をクローズアップしました。
手前に咲く花を大きな前ボケにしてふんわりやわらかな雰囲気を出しています。
このときに大事なのは、絞り値。
絞りを絞ってしまうと、ふわっとした前ボケになりません。
絞りを開放(F値の一番小さな数字)にすることで、大きくやわらかなボケが得られます。
チューリップの左下の光っているように見える部分は、陽射しが当たって明るくなった手前の花が大きくボケて、光がボワッと拡散したような効果になったものです。
雨の日には雫撮影を楽しもう
撮影日和なのは晴れた日だけとは限りません。
雨の日はどうしても出かけるのが億劫になりがちですが、思いきって出かけてみると、雨の日にしか撮れない雨ならではの風景に出合えますよ。
花びらの上に乗った雫。
よく見ると雫の中に、後ろにある赤い花が写り込んでいます。
こんな時はどこにピントを合わせますか?
これが正解という決まりがあるわけではありませんが、ぜひ雫の中の花にピントを合わせてあげましょう!
雫に閉じ込められた花。。。なんだかいろいろな物語が浮かんできそうですね。
そんなイメージを膨らませながら撮影するのも楽しいものです。
もし撮影中に映り込んでいるものがはっきりわからなかったり、何も映り込んでいなかったときは、雫のフチにピントを合わせて、雫の丸い形を強調してあげましょう。
いろいろなアングルから撮ってみよう
真上からチューリップの中を覗いて、シベを主役にしました。
横から見たときの可愛らしさとは裏腹に、ちょっと不思議で不気味な感じすらしますよね。
シベだけをクローズアップしてもいいのですが、少し開きかけの花を選ぶとこのように花びらが前ボケとなってさらに不思議な雰囲気になってくれます。
なんだか中心に向かってぐるぐる回転しているようにも見えますね。吸い込まれそう。。。
最初にアングルのお話をしましたが、横からだけでなく、上から、下から、斜めから、いろいろな角度から観察してみましょう。
そうすることでそれまで気づかなかった、思いがけない姿を見つけることができますよ!
気になる部分を大胆に切り取ろう
マクロでの撮影となれば、やはり思いきったクローズアップ撮影を楽しみたいもの。
その時のコツは、形や色など、その花の面白いと感じる部分を見つけること。
特に変わったものである必要はありません。
自分がなんだか心に惹かれると感じる部分があれば、思いきってクローズアップして切り取りましょう。
マクロレンズでクローズアップすると、被写界深度(ピントが合ったように見える範囲)が極端に狭くなり、代わりに大きく柔らかなボケが得られます。
この大きなボケの表現が、クローズアップ撮影の最大の楽しみと言っても過言ではありません!
ここではチューリップの花びらに注目しました。
ひらひらと波打つような花びらのフチに心惹かれ、余計なものを画面から排除して花びらのラインと色のグラデーションだけで構成しています。
絞り開放にすることでボケを大きくし、花びらのリアルな質感を失わせています。そうすることでふんわりやわらかく幻想的な表現になるのです。
遠い花でもマクロレンズで!
マクロレンズは近づいてクローズアップするもの、とは限りません。
普通の単焦点レンズと同じように遠くを撮ることもできるのです(意外とこのことを知らなくてビックリ!って方もいらっしゃるんです)。
広々としたネモフィラ畑の奥にぴょこんと飛び出した一輪のチューリップを主役にしました。
手前に咲くネモフィラを大きくボカすことで、主役のチューリップに視線を集めています。
チューリップが咲いている場所まではちょっと距離が離れていて、マクロレンズだけではあまり大きく写すことができませんでした。
そこで、マクロレンズに加えて2倍のテレコンバーターを併用しています。
テレコンバーターはレンズの焦点距離を伸ばしてくれるものです。
富士のXシリーズには1.4倍と2倍のテレコンバーターが発売されています。
ただし、テレコンバーターが使用できるレンズは限られていて、どんなレンズにも使えるものではありません。
XF80mmF2.8 R LM OIS WR Macroは嬉しいことにテレコンバーターにも対応しているので、このように望遠レンズの代わりとしても使うことができるのです。
前ボケを活用して主役を引き立たせよう
群生の中に、小さな一輪のチューリップを見つけました。
まるで大人たちの陰に隠れてそっとこちらを覗き見しているちびっ子のようです。
ここでも低いポジションから撮影しています。
手前に咲いている花よりも更にポジションを低くし、花の下から撮影しています。
花の下には直線的な茎がたくさんあるので、そのまま撮ってしまうと画面が煩雑になりがち。そうすると、この小さなかわいいチューリップの印象が弱まってしまいます。
そこで、手前に咲く花を前ボケに使って、主役のちびっ子に視線を集めました。
画面いっぱいに大きな前ボケを入れたことでふんわりやわらかな描写になり、優しいイメージの作品に仕上がったと思います。
逆光から狙おう
晴れた日のチューリップ畑にて逆光から撮影しています。
逆光とは、自分の正面から太陽に照らされている状況です。
逆に自分の背後に太陽がある場合は、順光となります。
花を撮影するときは逆光で狙うと、花びらを透けて通る透過光が花を美しく見せてくれます。
順光では花の正面から直接光が当たるため、コントラストが上がって汚い影も出てしまい、やわらかな表現を狙う場合にはあまり向いていません。
ふと見ると逆光から透過した光が、ハートを逆さまにしたような形を花びらに描いてくれていました。
その形ができるだけわかるように少し暗めの露出で撮影しています。
開放絞りを選び背景をシンプルにすることで、映り込んだ逆ハートに視線が集まるよう意識しました。
おわりに
チューリップと聞くと真っ先にワイングラスのような、あの形を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか、
花びらのカーブも美しいし、かわいいし、、そんな姿をしっかり撮っておきたいですよね。
でもそこで終わらないで、ぜひ別のアングルや角度をあれこれ探って、いろいろなポジションから撮影してみてください。
きっと、いままで気づかなかった思いがけない花の姿が発見できますよ。
ここに挙げた撮り方はほんの一例です。
いろいろな撮影方法にチャレンジしながら、ぜひ自分なりの撮り方を見つけてくださいね。
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■写真家:くにまさ ひろし
1971年生まれ。大阪在住。身近にあるちょっとした幸せ「プチ・ハピ」をテーマに、マクロレンズで花や虫たちの小さな世界をふんわりやさしく描く。
各種写真教室では、マクロ撮影の面白さを楽しくわかりやすくお伝えすることを意識している。
・写真展 2020年、2022年「花色の息吹」(大阪・東京)、2021年「花の鼓動~Life~」(大阪)
・写真集「花色の息吹」(風景写真出版)
・日本風景写真家協会(JSPA)会員
・一般社団法人 日本写真講師協会認定インストラクター
・フォトマスターEX(総合)
・カメラのキタムラ フォトカルチャー倶楽部 講師
・富士フイルムアカデミーX 講師
・OM SYSTEMゼミ 講師
・クニさんの花マクロ写真塾 主宰