富士フイルム XC35mmF2レビュー|描写・コストパフォーマンス共に優れた単焦点レンズ

富士フイルム XC35mmF2レビュー|描写・コストパフォーマンス共に優れた単焦点レンズ

はじめに

手頃な価格ながら高い描写性能を誇る富士フイルムの標準単焦点レンズ「XC35mmF2」。発売されたのは2020年2月で、実に5年近くになろうというタイミングで今回初めて使わせて頂きました。

慣れ親しんだ焦点距離の軽量なシステムで高画質な撮影を楽しめる本レンズの魅力を、愛用機であるX-E4とともにお伝えします。

XC35mmF2の特徴

XC35mmF2は富士フイルムXシリーズ用の交換レンズで、手頃な価格ながら高い描写性能を誇る標準単焦点レンズです。コンパクトプライムシリーズのXF35mmF2 R WRと同じ光学設計を採用しており、その廉価版といえます。

プラスチック製の鏡筒で軽量化・低コスト化されていることもあり、絞りリングはなくF値の調整はボディ側のダイヤルで行います。防塵防滴仕様や絞りリングが省かれているものの、画質面ではXFモデルと大きな差異はありません。

<基本スペック>
焦点距離:35mm(35mm判換算で約53mm相当)
絞り:F2(開放)~F16
絞り羽根:9枚(円形絞り)
最短撮影距離:35cm
最大撮影倍率:0.14倍
フィルター径:43mm
サイズ・重量:φ58.4mm × 46.5mm、約130g
マウント:FUJIFILM Xマウント

XF35mmF2 R WRとの比較。デザインが異なるもののサイズ感はほぼ同等
金属製の外装と防塵・防滴・-10℃の耐低温構造ということ以外は、高描写で定評のあるXF35mmF2 R WRと同様の写りを楽しめる

重さわずか130gと非常に軽く、Xシリーズカメラとの組み合わせによる取り回しが良いコンパクトさで、持ち運びしやすいので日常使いや旅行で活躍します。

画質やAF性能もXFモデルとほぼ同等です。インナーフォーカス方式AFとステッピングモーター(STM)を採用し、高速かつ静音AFが可能で、動画撮影時にもフォーカス音が気になりにくい設計です。シャープでクリアな描写性能を備え、開放から優れた画質で周辺光量落ちや歪みも少なく、標準レンズとして汎用性の高さについては定評があります。

最短撮影距離35cmで味わうF2のボケ

最短撮影距離35cmにより、日常の小物や料理などのクローズアップ撮影もこなせます。もちろん、背景を柔らかくぼかした表現も得意で、日陰などでソフトでフラットな光を取り込んだときのフワッとしたトーンは、フィルムシミュレーションの効果も加わってか、優しさを感じました。

この辺り、XF35mmF2 R WRと少々味付けが少々違うのでは?と感じてしまったほどです。

■撮影機材:FUJIFILM X-E4 + XC35mmF2
■撮影環境:SS1/500秒 絞りF2 ISO320 -0.7EV AWB雰囲気優先
■フィルムシミュレーション:ETERNA ブリーチバイパス
■撮影機材:FUJIFILM X-E4 + XC35mmF2
■撮影環境:SS1/2000秒 絞りF2 ISO160 -0.3EV AWB雰囲気優先
■フィルムシミュレーション:クラシックネガ

まち歩き&旅でスナップ撮影ならこれ1本で

歩きながら撮影するのに最適解といえそうな軽量で機動力の高い本レンズは、小型ゆえにレンズ自体の存在を意識させないという点でも大きなメリットがあります。

また、スナップ撮影においてはタイミングを逃さずテンポよく撮影していきたいものです。
ステッピングモーターで駆動させるAFの速さは軽快な足取りに相応しいスピード感で、金属や建造物などの質感をビシッと決めてくれる解像感の良さも、このレンズの魅力になっています。撮影していてコンパクトプライムF2シリーズ同様の写りの良さを随所に感じられ、絞りリングがないこと以外にストレスはほとんどないと言っていいほどです。

■撮影機材:FUJIFILM X-E4 + XC35mmF2
■撮影環境:SS1/160秒 絞りF2 ISO320 -0.3EV AWB雰囲気優先
■フィルムシミュレーション:クラシックネガ
淡いトーンの描写も雰囲気良く写し込めています
■撮影機材:FUJIFILM X-E4 + XC35mmF2
■撮影環境:SS1/4000秒 絞りF2 ISO160 -1.0EV AWB雰囲気優先
■フィルムシミュレーション:クラシックネガ
ガラス越しでもこの金属質とツヤ感の良さ。グッときますね
■撮影機材:FUJIFILM X-E4 + XC35mmF2
■撮影環境:SS1/320秒 絞りF2 ISO320 -1.0EV AWB雰囲気優先
■フィルムシミュレーション:クラシッククローム
■撮影機材:FUJIFILM X-E4 + XC35mmF2
■撮影環境:SS1/4000秒 絞りF2 ISO160 -1.0EV AWB雰囲気優先
■フィルムシミュレーション:クラシッククローム
■撮影機材:FUJIFILM X-E4 + XC35mmF2
■撮影環境:SS1/200秒 絞りF5.6 ISO320 -0.3EV AWB雰囲気優先
■フィルムシミュレーション:クラシックネガ
石畳のグラデーションの細かい表情、質感がたまらなくいいです
■撮影機材:FUJIFILM X-E4 + XC35mmF2
■撮影環境:SS1/4000秒 絞りF4.0 ISO160 -1.3EV AWB雰囲気優先
■フィルムシミュレーション:モノクロ+Rフィルター

秋は光の印象を引き出す

12月に入ったらそろそろ紅葉も終わりかけ。というのが通念ですが、昨年の紅葉はなかなか始まりませんでした。そんなこともあり、紅葉の色合いと冬の日差しという、なんとも素敵なタイミングで撮影ができ、公園散歩もワクワクでした。

フィルムシミュレーションの色合いを被写体や光の状態に合わせながら変更すると、非常に良好な雰囲気が引き出せます。

かえでの黄色いグラデーションに魅了されました
■撮影機材:FUJIFILM X-E4 + XC35mmF2
■撮影環境:SS1/750秒 絞りF2.8 ISO320 -0.3EV AWB雰囲気優先
■フィルムシミュレーション:PRO Neg. Hi
真っ赤なもみじなら、少し彩度を抑え気味にクラシッククロームで
■撮影機材:FUJIFILM X-E4 + XC35mmF2
■撮影環境:SS1/125秒 絞りF8.0 ISO320 -0.3EV AWB雰囲気優先
■フィルムシミュレーション:クラシッククローム
日陰のひんやりとした感じがしっくりはまるクラシックネガ
■撮影機材:FUJIFILM X-E4 + XC35mmF2
■撮影環境:SS1/500秒 絞りF2 ISO320 -0.3EV AWB雰囲気優先
■フィルムシミュレーション:クラシックネガ
落ち着いた静けさが伝わるこの季節が好きです
■撮影機材:FUJIFILM X-E4 + XC35mmF2
■撮影環境:SS1/320秒 絞りF2.8 ISO800 -1.0EV AWB雰囲気優先
■フィルムシミュレーション:クラシックネガ
地面の小さな塵が反射して玉ボケとなってアクセントに
■撮影機材:FUJIFILM X-E4 + XC35mmF2
■撮影環境:SS1/3200秒 絞りF2 ISO320 -0.3EV AWB雰囲気優先
■フィルムシミュレーション:クラシッククローム
斜陽が暖かなぬくもりをくれました
■撮影機材:FUJIFILM X-E4 + XC35mmF2
■撮影環境:SS1/200秒 絞りF9.0 ISO320 -0.7EV AWB雰囲気優先
■フィルムシミュレーション:クラシックネガ

夜は冬のイメージと彩りを楽しむ

一粒で二度美味しい。とは、どこかで聞いたフレーズですが、それと同様に12月に秋と冬の両方を楽しめた今回の撮影。夜にはイルミネーションも輝くこの季節は、冬至に向かい陽が落ちていくのがどんどん早まりますが、空気も澄んで彩りも一層鮮やかさを増します。

手ブレ補正のないX-E4と組み合わせた時も開放F2の明るさが発揮され、被写体をしっかりと認識してキャッチしてくれる安心感があり、夜景や室内などの光量が足りないと感じる場所でも安定した撮影を可能にしてくれます。

ショーウィンドウを背景にシルエット撮影
■撮影機材:FUJIFILM X-E4 + XC35mmF2
■撮影環境:SS1/90秒 絞りF4.0 ISO800 -1.3EV AWB雰囲気優先
■フィルムシミュレーション:Velvia/ビビッド
階段に写り込んだカラフルな色が目を引きました
■撮影機材:FUJIFILM X-E4 + XC35mmF2
■撮影環境:SS1/15秒 絞りF3.2 ISO800 -1.7EV AWB
■アドバンストフィルター:POP
イルミネーションは点光源を前ボケに
■撮影機材:FUJIFILM X-E4 + XC35mmF2
■撮影環境:SS1/320秒 絞りF2 ISO320 -0.3EV AWB
■フィルムシミュレーション:PROVIA/スタンダード
店内のムードある大人の雰囲気が引き出せました
■撮影機材:FUJIFILM X-E4 + XC35mmF2
■撮影環境:SS1/100秒 絞りF2 ISO800 -1.7EV AWB雰囲気優先
■フィルムシミュレーション:クラシッククローム

おわりに

富士フイルムのXC35mmF2は、エントリーモデルながらも高画質・軽量・手頃な価格というバランスに優れたレンズです。人間の視野に近い写り方をする標準レンズといわれる約50mmの焦点距離を使いこなすことは、撮影技術を上げるために良い方法かつ基本だとよく言われています。いつでも持ち歩いて、昼夜、環境を問わず気軽に撮影ができますし、お財布に優しい価格も魅力です。見た目のデザイン以外には何も申し分ないでしょう。

ズームレンズを卒業したい方は、まずはこのレンズからステップアップを目指してみることをおすすめします。コスパ最強といわれる所以も、間違いなく実感できますよ。

 

 

■写真家:こばやしかをる
デジタル写真の黎明期よりプリントデータを製作する現場で写真を学ぶ。スマホ~一眼レフまで幅広く指導。プロデューサー、ディレクター、アドバイザーとして企業とのコラボ企画・運営を手がけるなど写真を通じて活躍するクリエイターでもあり、ライターとしても活動中。

 

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