富士フイルム X-E4 レビュー|写真を撮るためのカメラ X-Eシリーズ待望の新モデル
はじめに
「写真を撮ること」を喜びとする “Xシリーズらしいカメラが帰ってきた”という印象のX-E4が発売となりました。X-H1以降、動体や動画など動く被写体を主目的にしたカメラのラインナップが続き、さらにX-S10ではそれまでのXシリーズ全てをいいとこ取りしたカメラとなりましたが、ようやく「写真を撮るためのカメラ」が登場したと感じます。
レンジファインダー型のミラーレスカメラとしてはX-Proシリーズに並び人気の高いEシリーズ待望の新モデル。そのファーストインプレッションとキットレンズの魅力を併せてお伝えいたします。
X-E4ボディデザインの魅力
筆者も過去にはX-E2を愛用していましたが、1世代越え、見た目の印象や機能操作面からも全く新しいカメラになったと感じます。X-E4のフルフラットなデザインは、ミニマリズムとしての最良の形と言っても良いのではないでしょうか。クラシカルで美しいデザインは、小さくてカワイイではなく、シンプルでスタイリッシュという表現がよく合います。
持ち歩くことを負担としない軽量・コンパクトなデザイン。軍艦部にはマグネシウム合金を採用した質感の良さなど、剛性を確保しつつ364g(バッテリー、 SDメモリーカード含む)の軽量化を実現し、日常的な持ち歩きにも最適と言えます。普段使いの小さなバッグや、コート、男性用ジャケットならポケットにも入ってしまうサイズ感が何より魅力的です。
プログラムモードをダイヤルに設置
今までXシリーズのカメラ(モードダイヤルのある機種以外)では、プログラムモードはレンズ側の絞りリング位置を「A」に置き、シャッタースピードを「A」にセットして使用するのが通常ですが、今回X-E4で初めてシャッターダイヤルに「P」(プログラムモード)が加わり、咄嗟のシャッターチャンスを逃さない俊敏な撮影を意識していることも感じられます。
もちろん、絞りリングのあるレンズは、従来通りの使用方法でプログラムモードでの撮影が可能です。
操作ボタン・ダイヤルの変更点と外部入出力端子
シンプルになったボディデザインと相まって、ボタン・ダイヤル操作に変更点があります。Qボタンは背面から天面(上部)に配置され、前面のフォーカスモード切換レバーと背面のリアコマンドダイヤルを無くしたことにより、全体的にフラットな形状へ姿を変えました。フロントコマンドダイヤルではSS.→F.→ISOと切り換えます。絞りリングの無いレンズはこのダイヤルで絞りを変更できます。
ボタン数が減っているので、Fn.機能を最小限に割り当て、タッチFn.と併せて使い、また、カスタム設定と上手く組み合わせながら、自分に合った操作のしやすい設定をしていくことが必要になります。
外部入出力端子は、本体充電にType-CのUSBケーブルが使用可能、 HDMIケーブル、3.5mm径のステレオミニジャック(マイク、リモートレリーズ兼用)などが採用され汎用性があります。
タッチパネル搭載の180°チルト式モニター
X-E3が発売された時点で一番残念に感じていたのが、チルトモニターがなかったことでした。その声に応えるべく、また昨今の撮影環境、動体・動画需要に応じた180°チルト式モニターは、3.0型TFTカラー液晶モニター・約162万ドット。
ウエストレベルでの撮影や、テーブルや台に置いたままの高さでの撮影、もちろん180°回転させれば動画・Vlog、セルフィーなどアングルの自由度を上げてくれるので撮影バリエーションが格段に広がります。
タッチシャッターを切ることができるので、これもプログラムモードと併せてスナップ撮影で咄嗟の撮影に活用したい機能です。その他にもAF、フォーカスエリア選択、ダブルタップ画面拡大、タッチFn.などモニター画面にも機能が詰まっています。もちろんモニター画面で操作しない場合は機能OFFも可能です。
Xシリーズの基準となった「X-Processor 4」と「X-Trans CMOS 4」
ハイエンド機X-T4から引き継がれた高速な情報処理を実現している「X-Processor 4」による描写性能と、イメージセンサーの全面(約100%)に渡り像面位相差画素を216万画素配置しており、「X-Trans CMOS 4」のフォーカス性能、画面端にある被写体も高速且つ高精度で捉えられます。動くものを瞬間的にキャッチするこのスペックも今やXシリーズの基準となっています。
18色のフィルムシミュレーション
富士フイルムの色として定評あるフィルムの色彩や質感をベースした18色のフィルムシミュレーションに加え、カラークロームエフェクト、カラークロームブルー、モノクロームカラーなど、個性的に表現するために調整パラメーターで仕上がりを変更して楽しみたいもの。
RAW+JPEG撮影しておけば、撮影後にカメラ内RAW現像で微調整もできる上、富士フイルムの色から「自分のこだわり色」に変わる楽しさがあります。これらは、画像処理エンジン「X-Processor 4」の処理能力の高さと「X-Trans CMOS 4」だからこそ実現可能なエフェクトです。
赤や黄色といった色飽和しやすい色ではカラークロームエフェクトを加えることで立体感が出せます。カラークロームエフェクトで壁面の赤色の深みと質感を引き立て、シャドー部をマイナスにして引き締めました。
快晴の青空を強調するならカラークロームブルー。より印象的で鮮やかな青色に仕上がります。
この他にもモノクロームカラーや、ホワイトバランスシフト、ハイライト・シャドーのトーンカーブ補正、質感とエッジの際立つ明瞭度など、カメラの中でできることが多く撮影後も存分に楽しめます。
キットレンズと呼ぶのは勿体ないXC15-45mmF3.5-5.6 OIS PZ
X-S10の時にも紹介しましたが、キットレンズと呼ぶには忍びないほど描写力の高いレンズであるXC15-45mmF3.5-5.6 OIS PZは、パンフォーカスでの撮影に最適で、周辺減光もほとんど感じられず、画面の四隅までクリアな描写が得られます。
陽に透ける葉脈の一本、一本までしっかりと写し込めており階調も美しく表現できています。
広角端15mmの汎用性は高く、35㎜換算で約23㎜の広角レンズなので、パースを活かした構図で狙いたい建物・空間などでも描写力の高さを感じます。薄暮時間の空をカラークロームブルーで引き立てています。
スナップ撮影にもふさわしく、開放的な視野がとても気持ちよい15mm。長く伸びる影も広角によって強調されています。歪曲もほとんど感じさせません。ここでもカラークロームブルーで青空を強調しました。
望遠端45mm(35mm換算で約69mm)は最短撮影距離35cm~となっており、近距離での撮影ではボケの表現ももちろん可能。
程よい距離感で直線的な建物を切り取るときも、料理や小物などの正対で撮影する被写体にも適した画角です。
滑らかな電動ズームは、動画・Vlogで威力を発揮し、様々なシーンにおいて幅広く対応できます。使用頻度の高い焦点距離をカバーしたこのレンズは、日常から旅先での様々なシーンで活躍する1本になっています。
オールドレンズで雰囲気写真も味わう
今回は、オールドレンズも試してみました。筆者の持ち合わせているオールドレンズはロシア製Industar 50-2 50mm/f3.5という小型パンケーキレンズ。Carl ZeissのTessarをモデルにしたレンズです。オールドレンズ使用時は、「マウントアダプター設定」をレンズの焦点距離を合わせ、操作ボタン・ダイヤル設定で「レンズなしレリーズON」にして使用します。
夕日を浴びてまどろむネコ。町中でのスナップ撮影には距離感もちょうど良く、クラシックネガを選べばフィルムライクな懐かしい雰囲気と味わいを表現可能。
早咲きの河津桜は、逆光によるフレアで優しく光が回り、柔らかく春らしい雰囲気に。クラシッククロームで色を抑えてみました。
解像感溢れる写真だけでなく、オールドレンズを使用することによって改めてフィルムカメラのような感覚でじっくりと撮影するのもX-E4らしいですね。
おわりに
あれもできる、これもできる。といった万能なX-S10とは異なり、「一枚の写真を撮る、瞬間を切り取る。」本来の“写真を撮るためのスタンス”を根本に考えられた良さが感じられるX-E4。
見た目のデザインの良さも、携行性の良さも、描写性能の高さも写真を撮る楽しみを存分に味わえる一台。じっくりと写真に向き合いたい人に迎え入れてもらいたい大人の雰囲気を漂わせるカメラに仕上がっています。
■写真家:こばやしかをる
デジタル写真の黎明期よりプリントデータを製作する現場で写真を学ぶ。スマホ~一眼レフまで幅広く指導。プロデューサー、ディレクター、アドバイザーとして企業とのコラボ企画・運営を手がけるなど写真を通じて活躍するクリエイターでもあり、ライターとしても活動中。
~ 「X-E4」はこちらの記事でも紹介されています ~
■FUJIFILM Imaging Plaza東京でのX-E4取材記事
富士フイルム X-E4|携帯性をアップしたXシリーズ最小最軽量カメラ
https://www.kitamura.jp/shasha/article/479865060/
特集ページ
X-E4特集ページでは、他製品とのスペック比較や同製品に合う人気アクセサリーなども紹介しています。ぜひコチラの特集ページも合わせてご覧ください。